屋上の縁から手を離してしまい、キンジの体は下へと落ちてゆく。
まずい!そう感じ俺はすぐにロープ手錠を投げ、キンジの手に手錠をかける事に成功した。
何とかキンジを上げて助け出した。
「悪いな平一…死ぬところだった」
キンジのその喋り、雰囲気からある事に気づいた。
こいつ、さっきヒステリアモードだったはずだ。なのになぜ今解除されているんだ?
「キンジ…今のお前は…」
「ヒステリアモードをブラドに解除されたんだよ。あの雄叫び聞いただろ?あれはブラドの雄叫びなんだ。そのせいでヒステリアモードが解除されたんだ」
ヒステリアモードが解除されたのか…だが、今は問題ない。こちらには秘策があるからな。
「ヒステリアモードがない俺が戦えるかはわからないが…戻る。アリアが今一人だからな」
「ヒステリアモードが解除されてるのか…だが問題ない。キンジ、力を貸せ。俺が言う作戦をアリアに伝えて実行しろ」
俺達がブラドの元に来てみるとアリアが剣を杖のようにして膝をついていた。ボロボロになっており、剣は刃先が折れていた。かなり苦戦してるみたいだ。
そんな状況のアリアにブラドはトドメを刺そうとしているが
パァン!パァン!
俺はブラドの体に二発発砲した。ブラドに銃弾が効いている様子はない。
「ほう……死にに来た無能がもう一人来たか…」
「ならかかってきなよ犬畜生。人間様に敵うと思うなよ」
「いいだろう……アリアはもう虫の息だ。貴様から殺してやろう」
挑発に乗ったブラドは俺の元へゆっくりと来る。余裕そうだな。
「やれるもんならやってみな」
「なら…お望み通りにな!」
ブラドは一気に俺に飛びかかり、拳を俺へめがけて振り下ろした。俺は瞬時に避けるが奴の脚が目の前に来ていた。
まずい、と思ったがその脚は俺の体に衝撃を与え、そのまま吹っ飛ばされた。
「っ………!」
地面に叩きつけられた瞬間に痛みが全身に響き渡り、立つのができないぐらいだった。
だが、ここではない。もっと向こう、中央辺りに俺は行かなければならない。そう自分に言い聞かせて何とか立ち上がった。
しかし、すぐ近くにブラドがいた。
パァン!パァン!
効くはずがない銃を俺はブラドに撃つ。
「ふん……銭形の血を引くものがこの程度かよ」
「ハッ…この程度もあの蹴りで殺せないようじゃ、お前もたかが知れてるな」
「その減らず口を…潰してやるよ!」
ブラドの拳は俺めがけてまたも来る。軽く避け、そして距離を離す。屋上の中央、ヘリポートの円の内側へと向かうように。
パァン!
M360Jの弾がきれてしまった。その様子を見たブラドは笑った。
「銃の無駄撃ちだったな…もう命運尽きたな」
「まだもう一丁あるんだよ!」
コートの内からニューナンブM60を出し、ブラドから逃げながら銃を撃つ。
もちろん効かない。効くはずがない。わかっているが。
後ろを見るとオレンジの線が見えた。ヘリポートの円まで着いたようだ。
ここで俺はブラドを見ようとした瞬間、奴はついさっきまで居た場所には居なかった。
どこに行ったかすぐに察知した。俺は上を見るとブラドは跳んでいて、俺に向かって着地しようとした。
すぐに避けて奴の着地から逃れは出来たが奴のデカい手に掴まれた。
奴は掴んだ拳を自分の顔の前に持っていった。
「捕まえたぞ……」
ヤバいな…こうなるとは想定してないぞ…後ろに視線をやるがアリアとキンジはいない。
何とか外に出ている銃を持つ左手を奴の顔に照準を合わせ
パァン!パァン!パァンパァン!
発砲してみるが意味はない。銃弾が力無く床に落ちる高い音だけが後に響いた。
「最後の悪あがきも終わりか……口だけは達者な無能だ。だが、生かしてやらんこともないぞ…」
「何だ?」
「取引だ…降伏しろ。そうすればお前は生かしてやる…ルパン4世と交尾して5世を産むためだけの種馬になれ。あいつの見てくれは悪くないぞ?どうだ?」
「嫌だね。汚い檻に入れられると聞いたもんでね……それに死ぬのは俺じゃない。お前の方だ」
「そうか……なら、死ねっ!」
ブラドの手に力が入る。それと同時に体中が軋むような痛みが随所から出てくる。
「ぐっ……!」
痛みで歯を食いしばった。ブラドは軽く笑っている。奴は痛みに苦しむ俺を見るためだけにあえて顔の前に置いたのか。
「どうだ?最後に言いたいことはあるか?」
「ふんっ……さ、最後になるわけない…死ぬのは…お前だ…!」
俺のその言葉にブラドは拳の力を強くする。体の中から骨が圧迫される音が聞こえてくるような感じがしてきた。さらに息も苦しくなる。
「か……はっ……」
意識が薄れそうになるが…後ろに視線をやると、キンジとアリアがそこにいた!
「いまだ!やれぇぇぇ!」
身体中の力を振り絞って叫んだ。それと同時にキンジとアリアは手に持ってた俺のロープ手錠を引っ張る。
「な、何…!?」
ブラドの片脚にロープが食い込んだ。奴は引っ張られたせいで前へとよろめき、ロープがない片脚で踏ん張りバランスを崩した。
「行くぞ!」
パァン!パァン!パァン!
アリア、キンジ、俺が放った弾丸は紋章が描かれてる奴の両肩と腹に着弾した。
奴は狙いに気づいたようだ。だが…遅い!
何故ならブラドの頭上には理子の影が見えるからだ。それはやがて奴の顔の前に出てきて
「ブラドぉぉぉぉ!」
「よ、4せぇぇぇい!」
パァーー………ン!
理子が放った銃弾は4つ目の弱点、舌を貫いた。
さっきまでの慢心した姿から一転してしばらく棒立ちして、そして力無く倒れた。
それと同時に俺の体はブラドの握り拳から解放された。立ちあがろうと右手を地面につけると電気が走ったような痛みがきた。握られたせいで怪我したみたいだな。
何とか左手を使い立ち上がったが
「ったぁ……っ!」
立ち上がって右脚からの痛みに耐え切れずに膝をついた。
そうやっていると小さな手が俺の目の前に差し出された。見ると理子の手だった。
「理子、ありがとう」
俺は理子の手を取り何とか立ち上がることが出来た。
「「平一!」」
キンジとアリアの声がした。キンジ達は走って俺達の元へ来た。
「ごめんなさい!私がもう少し早く仕掛けれたら…!」
「いいよ。死ななかったし概ね作戦通りだ」
俺の作戦であるロープ手錠を使ったトラップ作戦は成功した。俺がブラドの注意を引いている隙に手錠を屋上のどこかにかけて、ヘリポートの中心で輪っかを作る。そして奴がそれに足を入れた時にロープを引っ張ってブラドのバランスを崩すその瞬間に弱点を突く。
4つ目の弱点がわかり、俺達の人数が4人だから出来たことだ。
「まぁ…少なくとも理子にやられた時よりは痛くなかったな。犬は肉球だから掴む力が弱いんかね」
「そんな冗談よく言えるわね…」
冗談一つでも言わないと気が紛れない。出ないと痛くて痛くて立てられないからだ。
「……やったな、理子。お前は今、過去の自分に勝ったんだよ。初代ルパンでも、昔のお前でも勝てなかったブラドに勝った。胸を張りな」
「……今回は利害が一致しただけだ平一。オルメスも銭形も我がルパン一族の宿敵である事には変わりはない。だからこそ、次対決する時は容赦はしない」
普段の理子とは打って変わった真面目な口調だ。だが、ハイジャックの時のような狂気に満ちた感じはなく、憑き物が取れたようだ。
「自由を手に入れたんだから喜べよ…いつもの理子みたいにな」
「ふぅん…じゃあ…」
その瞬間だった。理子は俺に一瞬で近づき、キスをした。
一瞬の出来事に俺はたじろいだ。理子の柔らかい唇が俺の口から離れた。
「ふふっ…じゃあ理子はこれで……約束はまた今度ね!ばいばいきーん!」
理子は屋上から飛び降りた。そこから改造制服がパラシュートのように広がって夜景の中へと消えて行った。
突然の出来事にみんな呆然とするも
「な、な、な、なんて破廉恥なの!」
アリアの声に自我が戻った。
「てかあいつなんで逃げたんだ…?……おい、平一」
「あ、あぁ…なんだよ」
「理子が逃げた理由がわかったぞ。目の前を見ろ」
キンジに言われた通り見ると、そこには姉さんが走ってきた。
さらに屋上の周りにはヘリコプターが何台も飛んでおり、そこから出るスポットライトは俺たちを照らしていた。
「平一!」
姉さんは俺を抱きしめた。それと同時にフッと力が抜けた感覚と沈む意識の中で
「怪我人がいる!直ちに搬送しろ!」
姉さんの声を最後に意識はなくなった。
気がつくとまたここ、病院の病室だ。相変わらず無機質な天井が目を覚ますと一番初めに見える。
「平一!目が覚めたんだね!」
見たらわかる事を姉さんはいい俺の手を握りしめた。
足を見ると包帯が巻かれてたから恐らく足をやったんだろうなとなんとなくな想像をした。身体中握りしめられてその程度で済んでる自分の体は凄いなと我ながら感じた。
「神奈川県警からの情報で…ランドタワーの屋上で不可解な事件が発生しているって警視庁に協力依頼が来たと聞いて駆けつけたんだ。まさかと思って現場に来たらブラドに平一達が見えたから心配だったよ」
横浜のランドタワーなら神奈川県警なのに姉さんが来た理由がわかった。ついこないだイ・ウーとは関わるなと言った矢先でこれだから姉さんはさぞ心配しただろう。
俺はスッと息を吸い
「姉さん、話したい事がある。3年前の事件だ。思い出した部分がある」
姉さんはそれを聞いて少し驚いた表情を見せた。
「3年前、俺はアイツ…ブラドに誘拐されていた」
そこから俺が思い出した事全て話した。ブラドに誘拐された事、父さんが助けてくれた事、さらに逃げようとした際に俺はアイツに撃たれた事、思い出した範囲全てを話した。
「……ここから先は…」
そう言おうとした瞬間、姉さんは手のひらを俺に向けて止めた。話してる最中自分が少し息が荒くなっているのに気づいた。姉さんは俺を思って止めたのか。
「その話はここまででいいよ。平一にとっては辛い思い出だから」
「だから話したいんだ。いつまでもこんな事に囚われたくない。あ、あの後…その後は…」
話そうとすると言葉が詰まる。やはりトラウマになっているのだろうな。だが、話さなければならない。理子が過去のトラウマであるブラドを倒したように。俺もそうしなければならないと感じたからだ。
「…前にも話した通りだ。父さんは俺を介抱しながら歩いていた。そしたら…ルパンがいッ!」
ここで鋭い頭痛が走った。ここからは話したくないと脳が止めるように。話したいが話せないぐらいの痛みが頭を襲った。
「……ここからはまだいいよ。また落ち着いた時に話そう」
優しい声をかけて姉さんは水を差し出した。俺は水を一気に飲むと頭痛は治った。話さなくていいと言われたせいなのか水を飲んだおかげなのか、今の俺には分からなかった。
投稿遅れて申し訳ありません
ペースはゆっくり目になりますが再開します!