爆破があったのちに警察が来た。駆けつけた警官が俺を管理官銭形歳子の弟と知ると姉に無線を繋いでくれた。
姉は俺が事件に巻き込まれたと知るとかなり心配し出した。怪我はないと伝えると安心したかのように息を吐いた。
『何もなくてよかった…私はもし平一に何かあったらと知ったら…』
「安心しろよ。俺は昔から運がいいし体は人一倍頑丈だからな。そんなことよりさっき起こった事件だ」
俺は巻き込まれた事件の概要を一通り説明した。
『…話を聞く限りこれは最近起きている爆弾魔…まぁ武偵殺しの犯行に近いね』
「何故そうだと思う?」
『武偵殺しは爆弾を使用するのが特徴、さらにはウージーを載せたセグウェイに人工音声。武偵殺しの特徴がことごとく当たるね』
「成る程ねぇ。となると犯人は武偵殺しか」
姉さんは少し間を置いて
『いや。一点のみ当てはまらないよ。それは武偵殺しは乗り物を狙うんだ。乗り物に爆弾を取り付けて、セグウェイで追い詰めて、最後に爆破させる』
グラウンドにキンジの自転車が無惨な姿になってたのを思い出した。つまり自転車に爆弾を取り付けだということか。それを話したらそれじゃないと姉さんは言った。
『平一を狙ったこと。だって平一は乗り物を使わずに徒歩だったはずでしょ?』
確かにそうだ。犯人は俺に電話をかけてきた。その点は武偵殺しとは全く違う。
「だとしたら俺は何故狙われた?」
『わからない…私も鑑識連れてそっちへ向かうよ』
姉さんの無線はここで途切れた。
その後は警察や学校の鑑識科が来て現場検証が始まった。俺も立ち会いたかったが事情聴取のため警察署、それも警視庁本部に向かうことになった。
事情聴取が終わり帰る際に姉さんに会った。
「平一、見せたいものがあるんだ。時間ある?」
そう言われてついてきたのは警察署内にある鑑識の部屋だった。入ると警察署から研究所に様変わりしたような感じがした。机の上には見たことない機械や試験管やフラスコなどがかなり並べられている。
そんな中で姉さんは一枚の紙を渡してきた。そこにはよくわからない棒グラフのようなものが多数書かれていた。
「それは以前武偵殺しの犯行現場にあった爆破跡の硝煙や延焼部分から抽出して出た元素のデータだよ。そこから元素分析にかけたところ割合が高いのがトリメチレントリニトロアミン、次にセバシン酸ジオクチルと…」
「悪いが化学は苦手なんだよ。わかりやすく言ってくれ」
「簡単にいえばC4爆弾。俗称はプラスチック爆弾というのかな。それでこれが今回の現場から出た分析結果だよ」
渡された2枚目の紙を見て「あっ」と声が出た。何と棒グラフが両者とも一致してるのだ。
「つまり武偵殺しはC4爆弾を使うってことか」
「そうだね。小型でも威力が出やすいから使ってる可能性があるってこと」
「しかしなんでこれを俺に?」
「……情報だけでも渡した方がいいって感じかな」
「どういうことだ?」
「実は最近発生してる爆破事件は表立って報道されないように報道管制を敷いているんだ。理由としては…」
姉さんは言いにくそうに話した。
「武偵殺しを連想するから。武偵殺しは解決してるからね。なのに似た事件が何件か発生してそれを今更になって覆して実は犯人は別にいました、なんて言ったら警察のメンツは丸潰れになっちゃう。それがあるから武偵殺しとしてではなく別の事件として処理してるんだ」
「つまり俺に捜査協力をして欲しいと?」
姉さんは少し俯きながら
「情けない話はそうだね。そのせいで捜査に進展がないんだ。危険な目に遭ったばかりで申し訳ないけど…」
まぁ捜査に協力するのは構わない。だけど俺にそれを話すのか。初耳だっていうセリフが浮かんだ。しかし、警察側も色々あるんだろうと考えた。
「りょーかい。また何かあったら連絡するよ。姉さんも頑張ってね」
武偵高へ到着したのは昼休み前だ。まぁ警察の事情聴取を受けたと言ったら遅刻とはならなかった。自分の新しいクラスを先生から聞いて教室に向かった。
教室に入ると天井には二発の弾痕があったのが見えた。
「キンジ、あれは何だ?」
「あぁあれか…まぁ色々あったんだよ」
「朝の俺たちよりもか?」
「むむぅー!?朝に色々あったってことはつまり理子の推理は正しかったってことぉ!?」
目をキラキラさせながら話に入ってきたのは峰理子。フリフリの改造制服を着ている金髪の子だ。理子は乳がデカいから見てて眼福になるので嫌いじゃない。
「なんだなんだ?何があったのか?」
「ムフフフ…実はねぇ…」
理子はホームルームであったことを説明した。どうもアリア、朝のあの子はうちのクラスに来た転入生らしい。んで、アリアはキンジの隣の席を希望してきてベルトを返してたらしい。なのでキンジとアリアはデキているとクラスが大盛り上がりをしたらアリアはブチギレて発砲したとのことだ。天井の弾痕はそれが理由だ。
ということらしいが理子はそれを大袈裟なジェスチャー混えて話すせいで、乳が揺れてるのに俺は目を取られたため、話の半分は聞いてない。
「つまり、理子の推理ではって…いっくん聞いてる?」
「あーうんまぁわかった。ありがとうな。まぁお前さんの推理とは違うのが真相さ」
理子はどういうことかと聞いてきたため朝あったことを話した。キンジも話を補足してくれたが、やはり朝自転車に爆弾がついていたらしくセグウェイに追いかけ回されたらしい。
「もしかしてそれって武偵殺しって奴かな?」
「何故そう思うんだ?」
「ほら、朝グラウンドでの爆破事件。あれって今ニュースになってるよ。武偵殺しじゃないかってねぇ」
「……そうなんだな」
チャイムが鳴り、授業が始まったため話は切り上げとなった。
学校が終わって放課後となり、俺とキンジは部屋に着いた。
「にしても朝から大変だったな、キンジ」
キンジは少しやつれた感じで空返事をした。まぁヒステリアモード出してたし仕方がない。
「平一は警察から事情聴取とか受けたんだろ?大変だったな」
椅子に座り一息してキンジは言った。
「姉さんの事情聴取、色々情報があったし収穫もあったぜ?最近あった武偵殺しって言われてる爆弾魔の使ってる爆弾がどんなものかというデータとかな」
「それ貰って大丈夫なのか?」
「警察一家である銭形家の長男である俺なら許されるんじゃね?」
「それでもな…ほら、証拠品を流出させたら捕まるんじゃないか?もしかしたら今」
ピンポーン…
キンジが言いかけた時インターホンがなった。
「……証拠品を取り返しに警察が来たんじゃ…?」
「な訳あるか。キンジ行ってきてよ」
ピンポーン…
「俺は疲れてるからパスだ」
「おいおい、キンジはトンズラしただけだろ。俺は警察の対応したからもっと疲れてる」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!
うるさいインターホンの音にキンジは渋々行ってくれた。こんな行儀の悪いインターホンを押す来客は俺の記憶にない。誰だろうと気になったがすぐに答えがわかった。
「遅い!アタシがインターホン鳴らしたらすぐ出なさい!」
朝のあの子…神崎・H・アリアと同じ声が聞こえた。
「おい!神崎!勝手に入ってくるな!」
「アリアでいいわよ。トイレはどこ?」
アリアは持ってたトランクを置き、部屋を見渡した。目的であるトイレは見つかったのかトイレへ向かった。
俺とキンジは顔を見合わせた。
「キンジ。あれはなんだ、何でアリアが来たんだ?」
「尾けられてたんだな…そんなことは逆に俺が聞きたい」
その答えはリビングへ来た。アリアは俺達、いやキンジを見て言った。
「アンタ、あたしのドレイになりなさい!」
俺とキンジはキョトンとした。
「キンジが奴隷ねぇ。どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。キンジはあたしのパーティーに加わって捜査に協力してもらうわ」
「アリア、勝手なこと言うな。平一も少しは止めてくれ」
そう言われてもこんなこと言われたら意味を聞くぐらいしか出来ないだろ。
「来客にコーヒーはないの?エスプレッソで砂糖はカンナ!すぐ出して!」
「な、何を言ってるんだ…」
キンジは困惑する顔をする。こいつ気付いてないようだが旅行用のトランクを持ってきてると言うことはこれはここに泊まる気満々だ。居座らせても困る。
「きび砂糖、ズッケロ・ディ・カンナか。白砂糖よりも甘味は少ないが代わりにコーヒーの風味を邪魔せずに甘味を引き立たせる…アリア、センスはいいな」
「あら、平一はコーヒーに詳しいのね」
「どうやら俺の名前も把握済みか……残念ながら騒がしい客に出すコーヒーはないぞ。帰ってくれ」
「嫌よ。あたしはキンジに捜査に協力してもらうまでは帰らないわよ」
「へぇ。そんなら……」
ポケットの中に手を入れて手錠を掴む。そこから一気に
「実力行使と行こうか!」
手錠をアリアに向けて投げる!もちろんアリアは軽くいなして俺の懐へ入り込み制服のジャケットを掴み投げようとする。これを見抜いていた俺はすぐにアリアの手首を掴み投げられないようにする。しかし
「!?」
アリアの小さい身長のせいで見えなかったが、アリアは踏ん張ってた俺の左足に足を引っ掛けてきた。そのせいで踏ん張ることができない俺の体は宙に舞ってしまった。なんとかテーブルの上で受け身を取り、アリアから距離を取る。割れたテーブルを間に挟みアリアと睨み合う。
「柔道か?俺もやってるから自信はあるぞ」
「違うわバリツよ。ジュードーとは似てるけど違うのよ」
バリツ、確かシャーロックホームズがやってた武術だ。架空のものだと思ったが本当にあるとはな…
「へぇ、ならそのバリツを見せてみな」
手をクイっと振って挑発する。アリアは俺に向かって突撃し、パンチを繰り出すが
「ハァ!」
中段受けでアリアの拳を右へと受け流した。アリアは近くの家具に当たり体勢を崩したので
「もらったぁ!」
右足で俺は回し蹴りをかます。だがアリアはしゃがんで避け立ち上がり、俺の真横に立ち手刀を繰り出す、それを俺の首元で寸止めした。
「勝負ありよ。アンタジュードー以外にもカラテも嗜んでるのね」
アリアはしたり顔をしながら言った。裏拳を出せばまだ勝負はあるかも知れないが距離が近いせいで軽く止められるのが見て取れる。
「アリア、負けたよ。お前かなり強いんだな」
「平一もね。アンタも中々やるじゃない」
実力者に認められるとは悪い気分はしない。しかし、こんな実力を持つアリアが何故キンジに捜査協力を依頼するのかがわからない。
「なぁ、お前ら…部屋がめちゃくちゃなんだが…」
キンジに言われて部屋を見渡すとテーブルは割れてる、棚が倒れたせいで中のものが乱雑に散らばっている。部屋はまるで台風が来たみたいになってる。
「あたしは片付けるの嫌よ。キンジがやりなさい」
「何で俺がやらなきゃならないんだ!平一も片付け……を……」
俺は片付けろと言われると思い一目散に逃げた。
「じゃあなぁ。キンジーあとは頼んだぁ!」