バスジャックから一日経過した。俺は今武偵病院にいる。
怪我はないが先の事件での様子がおかしかったということで病院のカウンセリングルームにいる。
やはりあの時の動揺は周りからも気づかれてたんだな…
俺は火が苦手なのだ。2年前、父さんが殺されたあの日を思い出すからだ。目の前で大切な人を失ったあの時周りは火事だったからな。
それ以来火に対しては苦手意識がある。ガスコンロやライターでもビビるぐらいだ。
武偵であれば火事などに見舞われたりする事件に巻き込まれる可能性はある。だがいまの今までそんなことはなかった。自分もそんな可能性はあるって考えた……だが、何か他人事みたいに、いや自分はそうならないと思い込んだ、否思っただけだったんだ。だから結果キンジやアリア、ましては武藤や不知火などのクラスメイトに危険な目をあわせた。
自分の無力さと無鉄砲なところに呆れてしまうな…そんなことを考えていると扉が開いた。
来たのは救護科の矢常呂先生が来た。
「こんにちわ。先生はカウンセラーでもあったんですね…」
「まぁ一応保健室の先生みたいなものだからね」
矢常呂先生と軽い雑談をした。最近はどうだの趣味はなんだのだ。
「最近UFOキャッチャーにハマってましてね。アームの強弱って店側で決めてるでしょ?それを承知でじゃあタグや引っかかる場所にアームをかけてやるんです。そしたら強弱関係なしにアームは景品を引っかける、んでそのままゲットです。それがハマると楽しいんですよ」
「あらそうなのね。私は最近ゲーセン行ってないからわからないのよね」
「先生も是非行きましょうよ。何なら僕と行きますか?」
「先生と生徒は不純交際じゃなくてもダーメ。大人を揶揄わないの」
矢常呂先生は武偵高にはいない優しい先生であるから話してて楽しい。他はあんまりよくないからな。
「さぁって…本題に入ろうかしら。貴方、トラウマを持ってるわよね」
矢常呂先生は本題を出してきた。やはりそうだと思ってたがいきなりだな。
「銭形さん、まぁ貴方のお姉さんから話を聞いたわ。昔事件に巻き込まれたって」
「……まさか俺がそれに対してトラウマを?先生俺はこないだのキンジの自転車ジャック事件では銃撃受けましたがちゃんと対応しましたよ?そんなことはないはずですよ」
嘘だ。だが何故か強がってしまう。
「ましては俺は武偵であります。この銭形平一銃弾だろうが槍だろうが大水だろうがへっちゃら。悪は許さぬ!の立場を明確に」
「へっちゃらの中に火はないのね」
うぐっとなった。図星を突かれた。俺が口を噤むと矢常呂先生から話し出した。
「……さっきよりも多弁になってる。自信のなさ、自分の弱さを見せないための防衛本能が見えるわね。貴方はトラウマ、というよりPTSDに近いものを感じるわ」
沈黙している俺に矢常呂先生はさらに続ける。
「ある話を教えてあげる。ネズミの実験でネズミには電流が流れる装置をつけたの。電流を流すタイミングは檻を噛んだりだとか、走り回ったりだとかの様々なタイミングで。もちろんネズミからしたら意味がわからないけど何か動けば電流が流れて痛いだけ。それをずっとやってたらネズミはどうなったと思う?」
「……さぁ、わかりませんね」
「激しく動き回るのよ。自傷、死ぬためにね。それでも電流を流し続けたら次第にうごかなくなったの。動かなければ何もされない、いや何もしたくないって気持ちになって。餌も食べずにそのまま餓死するの」
「何ですか、つまり僕はネズミってことですか?」
「そうね。貴方はトラウマ…まぁ何かしらの事件の記憶がフラッシュバックするトリガーがあるってのは理解してる。でも、それに対しては苦手意識が働くし嫌な思いをしたくないから触れないし考えるのをやめる。その結果バスジャック事件の時みたいな場面を目の当たりにすると体が震えてきたり、硬直したりする。一種の防御反応ってところかしら」
痛いところをヅカヅカと言ってくるな。イラっとした俺は立ち上がった。
「な、そんなことはないですよ!だいたい俺は…」
「じゃあ貴方のあった事件、今ここで話せる?」
「っ……!?」
話したくない、いや話せなくなった。頭では言いたいことはわかるが声にならないのだ。あの時からずっとそうだ。
「……どうしたらいいんですか?」
「まぁ心理的負担を減らすために事件を話す、全部とは言わないけど少しずつするのが効果的かしらね…ただ今の反応を見たらそれは難しそうね…」
矢常呂先生の言葉に俺は何も言えずただ座り込むことしかできなかった。
次の日、俺は理子と合流した。目的は情報交換のためだ。
ただ、何故
「「「「おかえりなさいませ!ご主人様!」」」」
何故メイドカフェなんだ。しかも店内のメイドは理子を知ってるみたいだし。
共感性羞恥が走るような長ったらしいメニューで注文しなきゃならんし、料理来て萌え萌えキュンやらされるわで恥ずかしくなりそうだ。
「もっと普通の店でやらんかね。こういうの」
「理子の奢りだよ?ダメ?」
「奢りはダメだ。男が出すのが鉄板だろ?」
「ホント!?じゃあチェキとかライブ頼んじゃおうかな〜」
調子に乗るなと軽く釘を刺したところで本題に入ったが、どちらもあまり収穫がないという感じだ。俺は今までの近況を話しただけだし。
「バスジャック事件、理子も捜査したんだけど収穫がないんだよねぇ」
「なるほど。痕跡すらないと。やはり犯人は手慣れてんな」
「“武偵殺し”だからかな…」
俺はそのワードに反応した。
「あれは捕まったはずだが?」
「表ではね。だけど犯人は別にいる説があるんだよ?キーくんの自転車ジャックとかまさにそうだから」
「探偵科ではその見解か?」
「探偵科っていうより理子の勘かな」
その言葉を聞いた俺は本来なら見せてはダメな代物だが、俺は以前姉さんから貰った武偵殺しの証拠である分析表を出した。
「実を話すと警察も一部はそう見ている。これはとある筋で得たものだが、これと自転車ジャックの分析表、両者のグラフを重ねると見事に一致するんだ。使用爆弾はC4爆弾と見ている」
「おおー!つまりいっくんはこれを見て武偵殺しの仕業と!名探偵いっくんの推理が光るねー!」
「いや、それどころか乗り物を乗っ取り相手を誘導するって手段もだ。バスジャックも乗客の一人の携帯から予告のようなものが来たと聞いた。減速したら爆破するってな。つまり自転車ジャックもバスジャックも犯人は武偵殺しと同一犯となるのが俺の見立てだ」
「なるほどねぇ。でも不自然なのはなんで自転車の次はバスなの?」
そこまではわからないんだよなぁ。だがそんなことを素直に言うと些かプライドが許さないためノリで言うことにした。
「ここからは推測だが…敢えて犯人は一人を狙ってるんじゃないかと思ってる。今までの事件の関係者のうちの誰かをな。武偵殺しを追わせて深入りしたところを一気に」
「ドッカーン!って感じだね!真実はいつも一つ!名探偵いっくんの推理は冴えてるねぇ。じゃあ武偵殺しが狙ってるのは誰なの?」
「あー……そこまではわからない。ただ今まで全部の事件に関わった誰かがターゲットだろうな」
「うーんと…アリアにキーくん、そしていっくんだね…この3人は全ての事件に絡んでるねぇ」
その時俺はあることを閃いた。
「…アリアか。アリアは自転車ジャックの時も。そしてバスジャックの時もいた。さらに一番に反応してた。前に話してたアリアが対応してる事件って武偵殺しってことか」
「そしてアリア単独じゃ無理だからキーくんをパートナーにしたいってことかな?いっくん強襲科より探偵科が向いてるんじゃない?来て理子と一緒に探偵やる?理子がホームズでいっくんがワトソンくんって」
理子が気になってたアリアが追ってる事件が武偵殺しだという答えが出た。
「理子は以前アリアの追ってる事件が気になってるって話してたから今回パートナーを組んだが…答えは出たようだな。これにてかいけ」
「解決じゃないかなぁ。理子、武偵殺しが気になってきてるし。ねぇねぇいっくん!これからは武偵殺しを追うようにしない?もちろん調査費用は理子持ちにするからさ!理子が持ってる情報も合わせて!いっくんのその頭脳を生かそうよ!」
悪くない提案だな。俺も姉さんから武偵殺しの情報を集めるように言われてるし。
俺はコーヒーを飲んでから二つ返事で返した。
理子と別れてから俺は車で学生寮へ帰っていた。愛車であるクラウンは元はパトカーだったものを一般車のように塗装してサイレンを外したもので中身は据え置きである。お陰で小回りが聞きやすいしスピードもよく出るいい車だ。
武偵は運転免許が特別に発行されるから16歳から車に乗ることは出来るのだ。
街中をドライブがてら走ってたら見慣れたピンク髪の女の子、アリアを見かけた。白いワンピースを身に纏っていて美容院から出たところだ。
俺はアリアの近くまで来てクラクションを鳴らした。アリアは一瞬驚いたが窓を開けて俺だと気づいた。
「よおアリア。どこかにお出かけかい?」
「あら平一じゃない。アンタこそどこに行ってたの?」
「まぁ…ちょっと友達と会ってな。ところでキンジは?」
アリアは罰が悪そうな顔をして話し出した。どうも武偵病院で喧嘩したらしい。んで「アンタが武偵を辞める理由なんか大したことない!」って言ったら怒ったとのことだ。そこからパートナー解消したらしい。
「まぁ…キンジに対してそれはよくないんじゃない?」
「あたしは…そんなつもりで言ったつもりなかったのよ…ただ、キンジが怒ったのは悪いって考えてる…」
「とりあえず次キンジに会ったら何やるかわかってる?」
アリアは何すればいいのって聞き出してきた。まぁ前から思ってたが人付き合い上手くないんだろうなぁ。
「ごめんなさいすればいいんだよ。謝ればあいつも許してくれるんじゃないかな?まぁ俺から言えるのはここまでだ」
そこから別れようとした際にアリアは
「待って。アンタも一緒に行った方がいいわね。武偵殺しに巻き込まれてるアンタも会う必要があるわ。そこでこそこそしているキンジもね!」
そういうと物影からキンジが出てきた。お前尾けてたんかよ…
「とりあえず…みんな乗るか。アリア、どこに行けばいい?」
「新宿警察署まで。頼むわ」
警察署?なんかよくわからないけどまぁ行くか。
キンジとアリアを後部座席に乗せることにした。助手席は敢えて座らせず二人隣り合って話した方が話しやすいだろうし。
走行中は少し沈黙が走ったがアリアから話し出した。
「キンジ……昨日はごめんなさい…あたしあんな無神経なこと言って…」
「いや、俺も悪かったな…それにバスジャックの時はアリアの言うとおりにしておけば、アリアは怪我せずに済んだのに…俺のせいだ。ごめんな…」
俺のせい。その言葉にチクリと反応した。キンジのせいじゃない、悪いのはあの時俺がちゃんと動いていたらアリアもキンジも、クラスのみんなも危険な目にあわせなかったはずなのに……
アリアとキンジはちゃんとお互い謝れたのに、俺は一体どうしてその台詞が言えないんだ…
「ちょっと平一!止まって!」
アリアの声でハッとした俺はブレーキをかけた。信号が赤になってるのを気づいてなく、急ブレーキになってしまった。
「悪いな…ちょっと…」
「平一、珍しいな。お前運転上手いはずなのに…」
「……キンジ、ごめん。疲れてるみたいだな…」
笑って誤魔化したがどうも自分でうまく笑っているかわからない状態になった。
そんなこんなで目的地である新宿警察署に着いた。
タイトルはルパンから取ったりしてるがみんな似たようなタイトルしかないから作るのが難しいですね