新宿警察署に着いた俺達は面会室へと入った。中に入るとアクリル板越しに穏やかなそうなお姉さんがいた。ゆるふわなウェーブがかかった髪にそこそこ大きな胸。誰だろうか。
「アリア、その方々は?」
「ママ、紹介するわ。キンジと平一よ」
「まぁ…いつも娘がお世話になっております。私アリアの母の神崎かなえと言います」
え?アリアのお母さん!?嘘!めっちゃ美人じゃん!高校生の娘持ってる人に見えんぞ…
「初めましてお母様、アリアさんとはよき学友をさせております、わたくしは銭形平一と申します」
「おい平一……なんかキャラ普段と違うくないか?」
キンジうるさい。カッコぐらいつけさせろや。
「ふふっアリアも楽しそうな友達が出来たのね」
「…ママ、面会時間が少ないからよく聞いて。二人は武偵殺しの被害者なの。さらに最近発生したバスジャックと奴はここ最近尻尾を出してきたわ。その隙を見てあたしが武偵殺しを捕まえたら懲役864年から742年まで減刑されるわ」
かなえさんの懲役の長さにビックリした。死刑が廃止されている現在、100年以上の刑期がかけられてるということはかなりの極悪犯罪じゃないと降りない。しかし、かなえさんがそんな人には見えない。
というより、もしかしたらかなえさんが武偵殺しの容疑者なのか?
「そして、ママをこんな目にあわせたイ・ウーの連中を全員ここにぶち込んであげるわ!だからもう少し耐えて!」
イーウー…?なんの話だ?
「……気持ちは嬉しいけど、イ・ウーに挑む前にアリアはパートナーを見つけたの?」
「っ…それはまだだけど…」
アリアの言葉が詰まってから少し重たい空気になった。こういう時は場を和ませた方がいいんだろう。
「お母様!わたくしが神崎さんのパートナーであります!」
「平一は違うわよ!」
「じゃあ誰だよ!」
「それは……」
「キンジか?」
「ちょ、ちょっと!確かにキンジはドレイだけどパートナーとは…少し違うの!」
「アリア、俺はお前のドレイとは違うぞ」
「へぇ…その割にはお二人さん仲良いじゃん。だってスマホのストラップ猫でお揃いじゃん。もしかしてドレイ以上、いやパートナー、まさかカップルか?」
「「それは違う!」」
なんでハモるんだよ。お前ら仲良すぎだろ。
そんな様子を見てかなえさんはフフッっと笑った。その笑顔はなんだか安心しているような感じだった。
「……平一くんってもしかして銭形管理官の弟さん?」
「お母様は姉さ…姉上をご存知なんですか?」
「姉上と呼ぶのはやめて欲しいな…」
聞き慣れたその声にギョッとした。アクリル板越し、扉に立っていた警官が帽子を取るとそこには姉さんがいた。
「姉さん!なんでいるんだよ!」
「武偵殺しは担当だからね……前言わなかったっけ?」
そういえばそんなことを言ってたな…
「平一が考えてる通り神崎かなえさんは武偵殺しの被疑者だよ。だけど私はそう思わない。神崎かなえさんは無罪だ。だからこそこちらで出来る範囲配慮はしてるし取り調べは私自らで担当してる」
なるほどね。姉さんもかなえさんの無罪だと考えているのか。
「銭形管理官はあたしに色々情報提供を受けてるし、あたしからも情報を渡したりしてるわ。武偵殺し、いやママの事件でまともに取り合ってくれるのは銭形管理官しかいないから」
「だからバスジャックの時姉さんのことを知ってたのか。姉さん武偵に事件捜査させすぎじゃない?」
「まぁ警察も色々面倒ごとやしがらみが多いからね…デカい組織だから私個人でも出来ることが制限されやすいし、他にも事件はあるから色々手が回らない部分がある」
まぁ確かに最近姉さん忙しすぎて家に帰らないって母さんがよく愚痴るもんな。
「…平一やキンジくんに説明すると神崎かなえさんは数多くの事件で罪を被ってる。とある組織のせいでね。神崎さんはその事件を追ってるんだ。私はそのサポートをしている。だけど私も立場があるからあまり一個の事件には手はかけれない。それで以前平一に武偵殺しの捜査に協力して欲しいって依頼したんだ」
「だけど奴は活発に動き出してるのよ。キンジに前話した通り時間がないのよ。ママはもう2審で有罪判決が出てる。このまま最高裁で確定すれば……だからこそあたしはママを助けたいのよ!」
アリアが追ってる事件は武偵殺しだけではないのか…こんな小さな体で巨悪と戦ってる…そしてパートナーを見つけようとしてるのはそのためか…俺が理子に話した推理は半分間違いって話か…
俺はキンジを見た。キンジは思い悩んでいる顔をしている。俺と同じことを考えてるだろうな。いや、距離が近い分アリアの事を考えているのか。
そんな風に段々と空気が沈んできた時、姉さんがパンって手を叩いた。
「湿っぽい話は終わり!ここからは親子水入らずの会話ってことにしようか」
「え?面会時間が短いはずじゃ…」
「あー……まぁこっちでやっとくよ。管理官権限なら面会時間はのばせるから。というわけで平一とキンジくんは席を外してもらうよ。君、彼らを出口までエスコート頼んだよ」
後ろに気配を感じて振り返ってみるとそこには警官が一名いた。いつの間にいたんだ。
「了解しました。では平一さん、遠山さんこちらへどうぞ」
俺とキンジは警官に連れられて出口へと向かった。
俺とキンジは車の中でアリアを待った。
「なぁ平一、俺アリアを誤解してたかも知れないな…」
「アリアは不器用な人間だからなぁ……まぁあの物言いなら誰でも誤解するさ」
「実はさ……バスジャックの後アリアと会って喧嘩したんだ。ここ来る前に謝ったのはそれが理由だ。アリアも大切な家族が大変な思いしてるからあんなに切羽詰まった感じになってるんだろうな…そんな中で俺はおざなりにしたり、鬱陶しく感じてたんだ…アリアに申し訳なく思ってる」
「おいおいしみったれたこと言うなよ……だとしたらキンジの出来る範囲でアリアを助けようぜ?今はお前がアリアのド・レ・イだもんなぁ。モテる男は辛いねぇ」
違うとキンジに小突かれた。
「よし、じゃあキンジの口から言おうぜ?俺はお前の力になりたいってさ。協力しようとかまぁそんな感じのことを言えばいいんだよ」
「……そうだな…アリアとはパートナー解除と病院で言われたけど…帰ったら言うか」
「アリア女子寮に帰るからまぁ車で話しなよ。俺は運転に集中する」
「いや、アリアはうちの部屋くるぞ?だから帰ってから言う」
俺はへ?ってなった。
「お前最近帰ってこなかったりしてるから知らないだろうが…アリアはうちの部屋で住んでるんだよ。まぁアリアもたまに帰ってこない日はあるが…」
「マジかよAVとか見れねえじゃねえか。女子寮に返しなさい!」
「猫じゃねえんだぞ…そんなん言うなら平一がやれよ…」
「やだよ勝てないもん。キンジならワンチャンイケるだろ。俺部屋でAVとか見てえよ」
「俺も無理だよ!てか俺の部屋でそんなもん見るな!」
「何がダメなんだよ!」
「ダメなもんはダメだ!」
「いいだろ!モテない俺は女優さんの裸しか見れないんだから!というスマホで見るからお前のヒステリアモードには配慮はしてるぞ!」
「いいからそんなもん見るな!アリアに見られたら部屋荒らされるぞ!」
「うるさい!エッチなもんぐらい見せろ!童貞の俺の楽しみ奪うな!」
「あんた達なんの話をしてるの?」
俺とキンジはいつの間に車に乗ってたアリアを見て「あっ」ってなった。
書くのが楽しくなってきたので2回連続で投稿しました。
そのせいで一話一話が長くなる…