かなえさんとの面会から数日経った。
アリアとはうまく仲直り出来たキンジ。しかしアリアはロンドン武偵局から呼び出されたということで帰らなければならなくなったらしい。
せっかく仲良く出来た矢先に別れとはまぁ寂しいもんだ。しかも今日発というのが急すぎる。
そのせいで学生寮の俺の部屋はなんかしみったれた空気になってる。まぁ最近台風が近づいている影響で雨がよく降ってるというのもあるかもしれないが…
車の中でそんなことを考えているとクラブ・エステートに着いた。
呼び出してきた理子は外に置いている改造ベスパを見る限り中にもういるみたいだな。
クラブの中に入ると武偵高の生徒が何名か座って食事をしている。ここは個室でも食事ができるレストランみたいなもんだからな。武偵は会合によくここを使ったりする。前のメイドカフェはごめんだからここを俺が指名した。
「あっいっくん!こっちこっち!」
理子が手招きをしており、さらに手を繋いだ。そこへ案内されるように進むとそこは個室になっていた。
「おいおい…男女が個室ってのはな…無防備すぎやしないか?」
「えー?呼び出した理子の奢りだしいいじゃん!そ・れ・に」
理子は俺の隣に体をくっつけるように密着した。
「今いっくんはギャルゲーでいうルート確定状態なんだよ?ほら、あーん」
口元にケーキが運ばれたので口に入れた。女の子からあーんされるのは嬉しいが…理子がファーストねぇ…まぁ悪くないからいいが
さらに理子は腕に抱きつき胸を俺の右腕に当ててきた。
やばいやばい…胸が熱くなってきたわ…
「あ、あ、あ、り、り、理子さん、いや理子、あ、当たってるから離れて…」
「当ててるんだよ?」耳元に近づいて理子は言う。さらに耳を噛んできて俺は情けない声を出してしまった。
「可愛いなぁいっくん…理子食べちゃいたい…」
理子の顔がめちゃくちゃ近い。めちゃくちゃいい匂いがする。あ、耳舐められて……やばい、やばい。
俺は心臓の鼓動を抑えようとするが、抑えられない。てかめちゃくちゃ胸がドキドキしているのが聞こえてくる。
俺は今ある理性でなんとか声をあげた。
「こ、こんなこと、するために、理子は呼んだんじゃないんだろ?なぁ…」
すると理子はクスクスと笑い、俺をそのままソファへ押し倒した。
「武偵殺し……アリアが追っている事件で気になるもの見つけたんだぁ…」
理子が自分の胸元に手を入れて、そこから一枚の紙が出てきた。
「今から1年前かな…浦賀沖で豪華客船が爆破により沈没したんだ…これ、実は事故で処理されてるけど武偵殺しの仕業って可能性があるんだ。被害者は武偵である…キーくんのお兄さんなんだぁ…」
そこでハッとした。去年、キンジはその事故でお兄さんを失った。その際に客船の会社は責任問題をお兄さんである遠山金一さんになすりつけたんだ。
会社がスポンサーとして出資してたマスメディアもそれに乗っかりお兄さんとキンジを大バッシングした。それのせいでキンジは武偵をやめるのを選択してしまったんだ。
そんな事を思い出したがよく考えて欲しい。1年前豪華客船を乗っ取った。なのに何故今自転車ジャックからバスジャックを?規模を小さくした理由はなんだ?
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「うーんと…アリアにキーくん、そしていっくんだね…この3人は全ての事件に絡んでるねぇ」
「…アリアか。アリアは自転車ジャックの時も。そしてバスジャックの時もいた。さらに一番に反応してた。前に話してたアリアが対応してる事件って武偵殺しってことか」
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そうか……アリアだ……アリアをターゲットにしたのか!アリアはお母さんに罪を被せた武偵殺しを追っている、なら小規模な事件を起こして誘い込み、そこからさらにバスジャックを起こした。そこでアリアを仕留めてもよかったがあくまで狙いはアリア一人だったが俺やキンジがいた。だからバスジャックではアリアをやらなかった…。
だけど今は……アリアは飛行機に乗っている。つまりアリア一人になった……
つまり…今アリアが危ないのか!?
「武偵殺しの狙いはアリアってことか…」
「……フフフッ…いっくんいい顔してるね…理子ゾクゾクしちゃうよ…」
理子の顔が間近にある。吐息が聞こえてくる距離だ。
「ねぇいっくん…今は理子とイイコト、しよ?いいんだよ?いっくんが好きなようにしても…理子知ってるんだぁ…いっくん胸フェチなの…理子を好きにして…」
普段の俺なら簡単に手を出しそうだが、今は違う!俺は上半身を起こして理子をお姫様抱っこした。
「理子、情報提供ありがとうな。やることができたから続きは…また今度な!」
理子をソファに座らして個室を出て車に急いで戻った。
首都高で羽田に大急ぎで向かう。その間に俺はキンジに電話した。
「キンジ!落ち着いて聞いてくれ!今アリアが武偵殺しに狙われてるんだ!」
『な、それどういう意味なんだよ!』
「説明している暇はない!今は人が必要なんだ!キンジも羽田空港へ向かえ!」
キンジは驚いた様子だったが羽田に向かうと言って電話を切った。姉さんへも連絡は済んで羽田から出るアリアの飛行機を止めることにしたらしい。警官が今向かってるため安心だが…念の為俺も向かうことにした。今この事を一番最初に知ったのは俺だからな。
空港の駐車場に車を停めて、ロビーを走ってアリアが乗る飛行機、7時発の飛行機を見つけ出した。搭乗員口は武偵徽章を見せて通過して目的の飛行機に入るとCAさんがいた。
「お、お客様!?一体何事ですか!?」
「武偵だ!管制塔から話があったと思うが今この飛行機に凶悪犯が乗ってると聞いた。この飛行機を調べさせてもらうぞ!」
「た、確かに管制塔から聞きましたが凶悪犯ですかぁ!?」
CAさんはかなりテンパってる。無理もないな。
「今から乗客を調べさせてもらおうか。客室はどちらですかい?」
「……ではご案内しますね」
CAさんがそういうと落ち着きを払った声で話し出した。さっきとテンションが違うな。
次の瞬間CAさんはスプレーのようなものを取り出して俺に噴射してきた。
「ぐ!な、何、をぉぉ…」
俺は力無くその場に倒れた。瞼が閉じていく中
「それでは…銭形平一様専用の客室へご案内しますね…目的地は…あの世でやがります…」
CAさんのそんな声が聞こえてくる中、俺の意識は無くなった。
目が覚めると、辺りにはダンボールや木箱があった。箱にはアルコールやワインを表す記号や食べ物のロゴが書かれている。さらにグラスが積まれたケースもある。
「ここは…どこだ?」
立ちあがろうとしたがロープで手足を固定されて動けない。
「ボンジュール、ムッシュ銭形。ご機嫌いかが?」
「な、り、理子!?」
声のする方へ体を向けると理子がいた。
「何のつもりだ!冗談なら度が過ぎてるぞ!」
「アッハッハ!冗談?そんなふうに見えるとは滑稽だな!」
理子の口調がおかしい。普段の理子じゃない!
「にしても綺麗に引っかかるんだねぇ。ここまで上手くいくとは思わなかったよ。あたしでもびっくりしてるよ。流石は銭形幸一の息子だ。間抜けなところもそっくりだ」
「何の話だ!なぜ父さんを知っている!」
「そりゃそうだ。お父様の永遠のライバルだからねぇ」
理子のお父さんの…ライバル…?まさか!
「お父様ってのは…ルパン3世か!と言うことは!」
「そう……理子の名前は理子・峰・ルパン4世。それが理子の本名さ」
ルパンに娘がいたのか!しかもそれがよりによって理子だとは…
「お前がルパン4世か…父親同様汚らしい犯罪者ってのはな…滑稽なのはうぐぅわぁ!」
理子は思いっきり俺の腹にローキックをかましてきた。そのせいで少し咳き込んだ。
「口を慎め!貴様にお父様の何がわかる!私の名前をルパン4世と呼ぶな!」
さらにもう1発顔を蹴られた。そのせいで口を切って血が出た。
「……俺の父さんはルパンに殺された。次はなんだ?娘であるお前が俺を殺すのか?」
「正解だよ。理子はお前、そしてひいお爺様であるアルセーヌ・ルパンの仇敵であるオルメスの孫アリアを殺してやるんだ。そうすることで理子は理子になれるんだ…」
「理子が理子になる…?まるで意味がわからんな…」
「……お母様はアタシに理子と可愛らしい名前を与えてくださった。だけど使用人はみんな4世様、4世様って言ってた…」
「それがどうした?」
「どうした……?ふざけるなよ!4世4世と理子を数字で呼びやがって!あたしは数字か!違う!理子だ!私は峰理子だ!ルパン4世じゃない!どいつもこいつもよォ!」
急に怒り出した理子は俺を何回も蹴り上げた。痛みで気を失いそうになったが俺はなんとか意識を保った。
「私は超えなければならない!ひいお爺様やお父様を!でなければずっと『ルパン4世』のままで理子は理子でなくなるんだ!だからこそアリア、お前をターゲットにした!お前らを殺すためにイ・ウーに入って力を得たッ!」
こいつ…狂ってる!いや、何かが歪んでる!このままだとマジで殺される!
何とかして今この状況を抜け出すか?いや動きが取れないし今変な動きをしたら間違いなく殺される!ならどうする!考えろ!平一よ!考えろ!
「……つまりここで俺を殺すんだな」
「そうだよ。死にゆく前に何か一つ願いでも叶えてやろうか?」
よし、時間を稼げるぞ。話してる間に対策を考えるんだ!
「じゃあ最後に教えてくれ。理子が武偵殺しの犯人か?」
「ハッ。そんなチンケなもんじゃない。武偵殺しはプロローグに過ぎない。お前とオルメス4世を殺す舞台装置さ」
「どういうことだ?」
「クラブ・エステートで話した通り遠山金一は去年武偵殺しによって姿を消した。その前に実は2件別の事件に遭ったんだ。遠山金一を標的としてバイクジャック、そしてカージャックをして最後にシージャック。ここで仕留めたんだ」
「なるほど。つまり今回も似たように自転車、バス、次は飛行機と規模をデカくしたんだな。アリアを釣るために」
「その通りだ。さらにお前もな。覚えているか?最初に電話したのを」
「あぁ。エミリーオブライエン。聞きたくもない名前を話してたな」
「そこでお前も事件に巻き込ませた。その結果お前も武偵殺しの事件を追うようになった。さらにお前がオルメスと遠山キンジの間に入り仲を取り持つようになった。オルメス、アリアにはパートナーが必要だからな。お前はアタシの想像以上に働いてくれたよ」
「だとすれば、理子が俺とパートナーを組んだのは自分の計画がうまくいってるか確認するためか。上手くいかなかったら俺を操るために。情報交換なんか全くの出鱈目ってわけか」
「正解だよ。全ては私の手のひらで動いてただけに過ぎない。さぁ話は終わりだ」
話はここまでのようだ。ならば俺は今閃いた策を出す時だ。
「残念だな。俺を殺す前に今ここにはキンジ、警察がじきにくる。飛行機は今警察の権限で止めた。飛ぶことはない。乗り込んできたキンジや姉さん含めた警察が俺を探しにここへくる。お前は逃げ場を失ったんだ。お縄につくんだな」
そうだ。今この飛行機に人が来ると言えば理子は対応するためにここから離れざるを得ない。その間に逃げればいいし見つけてくれるはずだ。
しかし、理子の反応は俺の予想とは全く違い笑ってた。
「アッハッハ!馬鹿だねぇ。イイコト教えてやるよ。覚えてるかい?理子が最初にビニールハウスで抱きついたの?」
あの時…乳が当たってたやつか…
「あれを何のためにしたと思う?理由は盗聴器をつけるためさ。お前のスマホにつけてるキーホルダーを盗聴器が入ったものにすり替えたんだ。お前らの会話は全て筒抜けさ。ここに遠山キンジが来るのも百の承知さ」
「それでも結果は変わらない!」
「実は機長や副操縦士は眠らせて空港内の別の場所に監禁してるよ。この飛行機は理子が動かそうと思えば動かせれる。つまり時間通りに飛ぶことは変わらないのさ!アッハッハ!」
なんてことだ………じゃあ俺はここで死ぬのか…
「あぁ…安心しな。お前はまだ死なないさ。まだ利用価値がある。飛行機が離陸してからオルメスとキンジを乗せてこの飛行機を爆破してやるのさ。喜びな、ここにはワインやビールなど酒類がある。スピリタスもその中にあってそれに火が出たら…お前の大っ嫌いな火に塗れて火達磨で死ぬのさ!特別にそういう風に調整した理子特製爆弾をここに仕掛けた。喜びな」
「な、あ、何!?」
「それまで短い余生をここでゆっくり過ごしておくんだな…そろそろ遠山キンジが来る。じゃあな……アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!」
理子の足音が遠ざかると同時に俺の血の気が引いていく気がしてきた。
理子の本名と誤字を修正しました。気づいていただいた方ありがとうございました。