『普通科がスカウトされる1個の方法』 作:ゆるぁ
小鳥遊みこは普通科の2年生である。
特筆できるほどの熱意を持ち合わせてはおらず、この学校を選んだ理由も『お姉……姉がいるから』という他人任せ過ぎる理由から。
小鳥遊みこは"平凡な生徒"である。
少なくとも他人からはそう見られているし、本人とてそう思っている。
座学はそこそこ、運動もそこそこ……好きなダンスは人並み以上、それだけだ。
……小鳥遊みこは、"ダンス部"である。
ちなみに、部員は彼女1人だ。
理由は特にない、部活動とするほど熱意を持つ生徒が普通科には彼女しかいなかった、というだけのこと。
小鳥遊みこの姉は、アイドル科担当のトレーナーである。
彼女にとってその事実は予想外であった、何故アイドル科のみで働いているのか。
彼女は普通科の授業を受け持っていると思っていたと言うのに。
小鳥遊みこは、アイドル科のトレーニング室によく通っている。
その理由はとても簡単で、普通科に部活動をする為の場所がないからである。
人数がいるわけでも、友人と違い歴史がある部活というわけでもない、故に空き教室でないとダンス活動を行えないからだ。
そしてとある日、プロデューサーに出会ってしまった。
アイドル科の場所に普通科の生徒がいる、なんて考えは早々に考えつくものではない。
ましてや彼女は"普通"なのだ、少なくとも今は沢山いる普通科の人間でしかない。
これが有名な生徒であれば、普通科と言えど名前と顔は覚えられていた……かも、知れない。
……まあ、もはや手遅れである、と言う他ないのだが。
「……」
「これは転属届けです」
「えっ」
「あなたにその気があるのであれば、時間はかかりますし必ずできる、というわけではありませんが希望はあります」
「いや、あの」
「 小鳥遊さん、あらためて、あなたをプロデュースさせては貰えませんか?」
「っ……!?」
何故?
頭の中でその言葉がぐるぐると巡っている。
少なくともこの人は、普通科をアイドル科に"スカウト"しにプロデューサーになったわけではない筈だ。
「な、なんで」
「……」
「私より、他の人のところに行った方が有意義だと思いますけど……?」
私はアイドルを目指してこの学校に来たわけではない。
姉がいたから、親が許してくれたから、受験に成功したから、それだけである。
「それは 」
「こら、何してるんだお前達」
突如、聞き馴染みの深い声がトレーニング室に響く、この声は……。
「お姉ちゃん?」
「学校ではお姉ちゃんじゃなくてトレーナー、だよな?」
「あっ、ごめんなさいトレーナー!」
「素直でよろしい。……ほら、あっちで部活動を再開しろ」
「えっ、でも」
「このプロデューサーには私の方から話があるからな」
「……はーい、お姉……トレーナー!」
お姉ちゃん、あらためダンスのトレーナー。
部員数たった1人の部活であるダンス部の実質的な顧問だ。
と言っても、大体私は楽しく1人で踊ってるだけなんだけどね?
未来有望なアイドルの卵さん達と、趣味で踊ってるたった1人だ、お姉ちゃんの時間を割くべきがどちらかなんて明白なのである。
ちなみにダンストレーナーとは苗字違うヨ。