『普通科がスカウトされる1個の方法』   作:ゆるぁ

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見惚れて憧れず

 プロデューサーさんに、スカウトを保留にされた翌日、私達はライプを見に来ていた。

 

 目の前のステージで、女の子達が踊ってる。

 その様に目を惹かれない……なんてことはなく、とてもじゃないが私には目を離せるものじゃない。

 

 

「わぁ……」

 

 

 キラキラだなぁ、アイドルって。

 歌って踊るなんてすっごく大変だろうな、沢山努力したんだろうなぁ。

 なのに、観客(わたしたち)の前ではそんな感情をおくびにも出してないんだもん、そりゃあ綺麗だ。

 

 

「……すごいなぁ」

 

 


 

 

 ライブが一通り終わった。

 今は、プロデューサーさんと共に外のベンチに座っている。

 

 

「涼しい〜……」

 

「大丈夫ですか? 何か飲み物でも……」

 

「あ、いえそれほどでもないので。お気遣いありがとうございます」

 

 

 アイドル達に魅了されたであろう観客の熱意(おもい)があっちぃねぇ、ってだけだから。

 あんまり汗もかいてないし、水分補給はちゃんとしてるのだ。

 

 

「どうでしたか、アイドルは」

 

「え? んー……凄かったです」

 

「初めてなのに、ライブにどうしようもないくらい引き込まれちゃいました、あはは」

 

「それは良かった」

 

 

 アレを目指してるんだよね、アイドル科。

 ……すごいとしか言いようがないと思う。

 

 

「……気持ちの方は、どうですか? アイドルへの憧れは」

 

「え、いや全く」

 

「えっ」

 

「確かに見惚れちゃいましたけど。……それだけです」

 

 

 アレを観てアイドルになりたいと思うか。

 なるほど確かにそれはそう、なんだけど。

 

 

「キラキラしてる、それに見惚れる。……それ以上は、特に何も」

 

「そうですか」

 

「えと、ごめんなさい? せっかくすごいものを見せてもらったのに」

 

「……いえ、アイドルをすごいと思ってもらえただけでも今日は収穫があります」

 

 

 収穫て。

 ……なんでそこまで私を買ってくれてるのかなー?

 

 

「ねぇ、プロデュ   

 

「そろそろ寮に戻りましょう」

 

「あ、はい」

 

「あまり遅いと、私がトレーナーに怒られてしまいますので」

 

「あはは、色々とすみません」

 

「いえ、私がやりたくてやっていることですので」

 

 

 ……ほんと、わからない人だなぁ。

 

 


 

 

「えっ、スカウトされたの?」

 

 

 お昼休み。

 友人から嘘だと言わんばかりに聞き返されている。

 相変わらず声がいいね。

 

 

「なんでこんなとこで嘘つかなきゃなんないのさー」

 

「それはそうなんだけど……なんでみこ?」

 

「それもそう!」

 

 

 私がいっちばん不思議に思ってるからね、それ。

 

 

「みこが一番不思議に思ってそう……って顔してる?」

 

「流石優ちゃん大当たりっ!」

 

「みこがわかりやすいだけだと思うよ」

 

 

 真城優ちゃんは放送部で、しかもたった1人の部員である、つまり私とおんなじってこと。

 アイドル科が有名過ぎて部活動はそこそこ、って感じなんだけど、放送部は由緒正しい部活らしい、私と違って。

 

 

「私じゃなくて優ちゃんならまだ納得したんだけどな〜」

 

「しないでよ。面倒だから」

 

「声綺麗だし、優ちゃんならアイドル絶対できるじゃん?」

 

「……それを言うなら、みこだってダンス上手いんだしアイドルできるよ」

 

「あー……でも、優ちゃんは会長のお墨付きだし」

 

「買い被られて押し付けられちゃったしだけだよ」

 

 

 そう、何を隠そうこの友人。

 会長自ら放送部部長に指名したという、地味にすごい経歴を持ってるんだよね。

 まぁついこの前の話なんだけど。

 

 

「にしても、今年に入ってから驚くことばっかりだなぁ、優ちゃんは放送部になるし」

 

「みこはなんかスカウトされちゃってる、し?」

 

「そ。さすが優ちゃん」

 

 

 普通の普通科2年2人から、部員1名の部活部長2人(アイドル科とも地味に繋がり有)とかいう異質な組み合わせになっちゃった。

 

 

「……どうなっても、みこと私は、みこと私でしょ」

 

「えへへ、ありがと〜」

 

「どういたしまして。……で実際どうなの?」

 

「へ?」

 

「スカウト、受けるか受けないか」

 

 

 まぁそこだよねぇ、色々大きいのは。

 

 

「今のとこ受けるつもりはないかなぁ、あんまり惹かれないしアイドル」

 

「……今のところ?」

 

「プロデューサー科の人に、色々興味が出るようにアプローチされてます?」

 

「なにそれ」

 

「私も知らなーい。でもお姉ちゃん公認だし、別に困るわけでもないし……で一応放課後にお話とかしてる」

 

「だから予定は未定かなぁ」

 

「……そうなんだ」

 

 

 うーん、我が友人ながらクールと言うかローテンションというか。

 平常運転だねぇ。

 

 

「みこもおんなじじゃん。……というか、もしアイドルやるなら、さ」

 

「?」

 

「……部活とか、学科とか。どうすんの?」

 

「あー……」

 

 

 転属届け、貰いかけてたし、多分アイドル科に移籍するのかな。

 

 

「アイドル科に行くんじゃない? 2年生に友達いないけど私」

 

「部活は……まぁ多分辞めることになる、かも?」

 

「……ふーん」

 

「興味なさそーだね優ちゃん。聞いたのそっちなのにさー」

 

「別に、聞いただけだからね」

 

 

 ぐむむむ。

 そこまで興味なさげだとちょっと悲しい、優ちゃんらしくて面白いけど。

 

 

「まぁ、なるようになるんじゃないかなぁ」

 

「そういうものなの?」

 

「流れに身を任せた結果が今じゃん」

 

「……まあ、それもそっか」

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