『普通科がスカウトされる1個の方法』   作:ゆるぁ

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困難な進展と軽快な後退

「プロデューサーさん遅い」

 

 

 文句を言える立場ではないけれど、意外と言うか、何と言うか。

 あっちにも目的はあるけど、一応丁重に扱って貰ってる側だし、うん。

 

 

「なまじ、すごく良い人だからなぁ」

 

 

 これでちょっと強引だったり、逆にさっぱり諦めてくれる人なら……と、思わなくはない。

 実態はすごく真面目できっちりしてる、凄腕そうなメガネの人でした。

 

 

「プロデューサー科ってあっち……だったっけ?」

 

 

 だからこそあの人が、指定して来た時間に遅れるなんてことは珍しい。

 付き合い短いけど、遅れるどころか早く来てそうなイメージはある。

 

 

「……行ってみよ」

 

 


 

 

「来なきゃ良かったかも」

 

 

 すごく気まずい、見られてないよね……?

 え、プロデューサー科ってこんなに大人しかいないの?

 てっきりプロデューサーさんぐらいの年齢層だと思ってたのに。

 

 

「……もしかしなくてもあの人って、すっごく優秀なんじゃ……」

 

 

 うわ、余計に私に構ってる理由わかんなくなって来た。

 

 

「あの人、多分1年……だよね?」

 

 

 これでもっと上の学年だったらどうしよう。

 ……今までと変わんないか、気まずいんだしどっちにせよ。

 

 

「んー……」

 

 

 チラチラと覗き見るタイプの不審者になりつつ、教室を巡って行く。

 どこにいるんだろ、プロデューサー科って待ち合わせ場所から一本道だしすれ違いはない筈。

 

 

「知ってるか? あの新人の噂」

 

「?」

 

 

 角の向こうで、誰か話してる。

 ……どうしよう、不審者だし目立つよね私。

 待つ?

 

 

「なんのこったよ」

 

「あいつ、普通科の子をスカウトしてるんだってさ」

 

 

 ん。

 これって。

 

 

「え、まじ?」

 

「ああ、昨日も放課後に誰かといるのをクラスの奴が見たらしい」

 

「もう1人の方はアイドル科の生徒一覧にはいなかったってさ」

 

 

 あの人と、私のことだ。

 

 

「そりゃまた、珍しいってかなぁ……」

 

「堅物で無愛想、でも優秀……だったんだが、まさか普通科から選ぶとはな」

 

「スカウト上手く行ってんの?」

 

「いいや。どうやらスカウトの為に色々とやってるらしい」

 

「なんとまぁ物好きな」

 

 

 ……まぁそうだよね?

 アレがプロデューサー科では普通とか言われ始めたらどんな顔したら良いのかわからないし。

 よかった、あの人が不思議なだけなんだ。

 

 

「優秀な奴ってのは、物の見方も優秀なのかねぇ」

 

「そうかもしれんし、酔狂なだけかもしれん」

 

「そいつとその子次第かぁ」

 

 

 今のとこ、やらないつもりなんだけどな。

 

 

「まあちょっと……少しだけ、惜しい気もする」

 

「ん? どういうこった」

 

「今年のアイドル科は粒揃い、というのはお前もわかってるだろ?」

 

「まぁ、プロデューサー科の端くれだし多少はな」

 

「自分の手でプロデュースしたい……というのは変わらんが」

 

「あの優秀な奴が、粒揃いの中から誰を選ぶのか……そして、どこまで行けるのか、ってのは正直あったんだよ」

 

「無論、その普通科に才能がないとは思わないんだが」

 

「あー……お前、捻くれてんなぁ」

 

「探究心があると言え」

 

「まぁ明らか俺たちよか要領良いのは確かだし、言われてみれば気になったかもな」

 

「もしかしたら、一番星(プリマステラ)のプロデューサーになっていたかもしれんぞ」

 

「うへぇ、優秀さだけならあり得そうだぁ」

 

 

 ……。

 うーん。

 

 


 

 

「あ、プロデューサーさん」

 

「すみません、遅くなりました」

 

「かなり待たせてしまいましたね」

 

 

 すみません、と繰り返し謝るプロデューサーさん。

 

 

「あー、いえ大丈夫ですよ? 私も私で今日は、その……ちょっと遅くなっちゃったので」

 

「……そうですか」

 

「はい、なので気にしないでください」

 

 

 不覚……っ! とか言いそうだよねこの人、見た目だけなら。

 

 

「と、それで今日は何をする予定だったんですか?」

 

「今日はトップアイドル……一番星(プリマステラ)について、色々と用意した資料を見て行こうと思っていたのですが」

 

「っ」

 

「……どうかされましたか?」

 

「いえ、特に何も」

 

 

 十王会長。

 すごいすごいとは言われてるのは知ってたんだけど、まさか一番すごいアイドルだったとはねー?

 

 

「会長と……」

 

「小鳥遊さん?」

 

「へ? あ、何ですか?」

 

「ぼーっとしてらしたので」

 

「……お疲れの様でしたら、また別の日にしますが」

 

「あーいや、ほんとに大丈夫なので、気にしないでください」

 

 

 なんか、モヤモヤするだけなので。

 ……なんだろう、これ。

 

 

「プロデューサーさん」

 

「なんですか?」

 

「どうして私を   

 

 

     ヒュオオッ!

 

 

   っ!?」

 

 

 ……えなんか通り過ぎて言った?

 さっきの突風って……え?

 すごい風だったけど。

 

 

「すごい風でしたね」

 

「そ、そうですね」

 

 

 ……なんか、何と言うか。

 会長、走ってた? いや一瞬しか見えなかったんだけど。

 気のせいかな。

 

 

「ところで、小鳥遊さん」

 

「はい?」

 

「先程は、何を……?」

 

「あ」

 

 

 タイミング悪く、遮られちゃったか。

 

 

()()()()()()()、今は、まだ」

 

「……そうですか」

 

「先程の遅刻と言い、気を使わせてしまいましたね」

 

「気にしてないのは本当ですよ?」

 

「ということは、遅れたことは嘘であると」

 

「あっ……いえそういうことじゃなくてですね?」

 

「ふっ……私のミスですので、気にしなくて大丈夫ですよ、みこさん」

 

 

 今この人笑ったよね。

 私のごまかしを笑ったよね?

 

 

「ふっ、じゃなくてですね……なんで笑うんですか」

 

「すみません、ころころと変わる表情が面白くて、つい」

 

「……そんなに面白い物でもないでしょうに、性格悪いですね、プロデューサーさん」

 

「自覚はしてます」

 

 

 ……ああ、もう。

 良い人で、優秀なのに、なんで私に目を付けたんだろう、この人は。




極月のアイドルさん達も皆可愛いですネ。
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