「やめろ!!やめろ!!離してくれ!!離してくれ!!」
兵藤一誠は軽く錯乱していた。無理はない、命の恩人である部長であり自分の王に恩返しするように、悪魔の仕事が良く分からなくても一生懸命自分の出来ることを行っていた。悪いはぐれ悪魔から大切なこの町を守るために弱いながらも、自分の出来ることを行っていた。
だが、今日は自分の無力さを知った。はぐれ悪魔が先日引き起こした高校生殺人捕食事件、その現場で遭遇した化物 ターボババアの圧倒的な力に何も出来ず、危うく喰われかけて…結果的に宿していた神器にドラゴンの魂が宿っていたお陰か、呪われずにすんだがタマタマとイチモツを奪われてしまった。
「兵藤くん!!兵藤くん!!もう大丈夫だから!!もうあの化物は居ないよ!!」
「君、しっかりしろ!!ここはもう安全だ!!」
誰かに肩を揺さぶられて、兵藤は正気に戻る。目の前には自分自身を心配する木場、自分の肩を揺すぶり正気に戻してくれた青年…ジョー、2人の後ろでは様子を伺うアドルフ、フランソワーズ、朱乃の姿があった。
「知らない人!?木場…ここは…」
周りを見ますと、そこには鳥居があり、どうやら神社の境内の手前のようだ。どうして神社の中ではなく、手前なのかと言うと、悪魔は神社の敷地に入ってしまうとダメージを受けてしまうためだ。フランソワーズの透視能力は分厚い壁を透視出来るだけでなく、その気に成れば敵サイボーグの中身や人間の人工関節やペースメーカーも見れる。そのお陰か、兵藤と木場の体内にあった悪魔の駒と呼ばれる異物を確認し、2人が元人間の悪魔であると判断できたのだ。
「ここは駒王神社。私の家よ」
「駒王神社…あっ!!夏祭りや秋祭りのとき、初詣のときに松田と元浜と一緒に良く行ってた駒王神社!!」
朱乃の言葉を受けて、兵藤はなんとか立ち上がる。ターボババアという絶望的な恐怖を前にしたこともあり、足が竦むが…そこは男、なんとか立つ。
「えーと…貴方達は?見ない人ですよね?」
「ああ、普段は世界中をあっちこっちしてるからな。日本じゃ、お隣の神越市に主に居るな。
俺はアドルフ・ヘミングウェイ。しがない機械工学とサイバネティクスの博士だ。
こっちの青年は島村ジョー、女の子はフランソワーズ・アルヌール、俺の息子と娘みたいなもんだ」
兵藤が錯乱している間に、木場はアドルフ達と簡単に自己紹介をしたのだろう。
「島村ジョーだよ、君とお友達は危ないところだったね」
「フランソワーズよ。私が君達のピンチを知って、ジョーに走ってもらったの。本当に…危ないところだったわ」
ジョーとフランソワーズから簡単に状況を教えてもらった兵藤。そこで兵藤ははっと気付く、先程までトンネルに居た筈なのに、どうして神社に居るのだろうか?スマホで時間を確認すると、時間はターボババアに襲われてからそんなに経っていない。トンネルから神社までは歩きで40分ほどはかかり、走っても無理だ。
「時間が…あまり経っていない!?もしかして…魔法での転移!?」
「いや。走った」
アドルフが親指でジョーを指差して言った。そう、ジョーを含めて00メンバーのサイボーグは瞬間移動なんて出来ない、出来るのは唯一イワンだけである。
ではどうしたのか?ジョーが加速装置を使い、音より速く走っただけである。
「へ?」
「兵藤くん…恐ろしいことに嘘じゃないよ。島村くんは僕達を担いで……音より速く走ったんだ。気が付けば、僕と君は島村くんに担がれて、ここに居たんだよ」
そう、サイボーグに魔法なんて使えるわけがない!!00メンバーは将来的な量産を意識されており、どこでも手に入る特別な素質無しの人間を過激派グリゴリの皆さんが拐ってきた人材。だからこそ、魔法なんて摩訶不思議な力は使えない。使えるのはファンタジー真っ青の科学がもたらした能力である。
「まさか…神器!?」
「いや…僕は神器はないんだ」
神器はない、魔法でもない。木場も兵藤も混乱しそうだが、奥からバラキエルが現れて、ゴホンと咳払いを行う。彼の手には「簡易許可証」と書かれたお札のような物が握られていた。
「君達、この町の悪魔だね。話の続きは中でしよう、朱乃…すまないがアドルフくん達のお菓子を買ってきてくれ」
「はい」
バラキエルは朱乃にお金を手渡し、兵藤と木場に「簡易許可証」と書かれたお札を手渡す。この簡易許可証があると、悪魔でも鳥居を潜って境内に入ることが出来るのだ。簡易許可証なので、期限は1日限りである。
「ふむ…はぐれ悪魔が起こした殺人捕食事件の調査か。被害者は女子高生と」
「大人はどうした?まさか…子供だけで治安を守ろうとしてるのか?」
フランソワーズがキッチンを借りて紅茶を人数分いれてくれている間、居間でアドルフとジョー、そして兵藤と木場が向かい合うように座っており、横でバラキエルが座っている。
「はい。そうです…」
「そうか。とりあえず、君達が遭遇した妖怪について話そう。あれはターボババアと呼ばれる、嘗て乳母捨て山に捨てられた老婆の怨念が怪異化した近代妖怪だ」
「「ターボババア…」」
トンネルで遭遇した化物…ターボババアの正体を知り、ごくりと喉を鳴らす2人の悪魔。
「てか、神主さん…裏側のこと知ってるなら、どうして対象しないんですか?」
「あっ!!確かに!!」
木場と兵藤の疑問ももっともだろう。どうしてターボババアを野晒しにしているのだろうか?それほどに強く、危険な妖怪なら霊媒師が集まって倒してる筈である。
「ああ、当初はする予定だった。おじさんはこう見えて、結構腕が立つんだ*1。腕の立つ、死人の魂から派生した妖怪に特効を持つ霊媒師と共に、ターボババアの所に向かった。だが…ターボババアは様々な土地の地縛霊と融合していて祓える状態ではなかった」
そう、ターボババアはただでさえ強力な妖怪だ。しかも、様々な土地の地縛霊と融合しており、その力は以前とは比べ物にならない。
「ターボババアは日本各地を転々としていてね。現れる場所は…年頃の少女が無惨な死を遂げた場所だ。恐らくだが、乱暴され殺された少女達の魂を慰めて各地を回ってるのだろう。そして、やがて地縛霊となった少女達がターボババアに力を貸す。
ターボババアは此方から刺激しない限り、人間には危害を加えない。だから監視だけに留めていた」
「「なるほど…」」
そしてバラキエルは指を1つ立てる。
「君達も悪魔なら知っておいてほしい。君達の主人は良い人かも知れない、だが…人を奴隷のように使う悪魔も居るんだ。過去の事件に、眷属入りを拒んだ少女がレイプされて無理やり連れ拐われ、強引に眷属にされて、姓奴隷のように使われて捨てられてはぐれ扱いにされ、賞金首にされて殺された事件もある。
そして今回ははぐれ悪魔に喰い殺された少女を慰めるように、ターボババアは駒王にやってきた」
「もしかして……ターボババアは悪い貴族や狂暴なはぐれ悪魔と同じだと、僕らのことを思ってます?」
恐らくだが…バラキエルはそう木場の言葉に対して返事した。
確かに木場と兵藤の主人は2人を奴隷扱いしていない。しかし、世の中には自分の眷属を奴隷のように使い潰す悪い貴族悪魔も居るのだ。当然、それはターボババアが慰めて回った少女達の加害者も含まれている。
そして知らずにとは言え、ターボババアの領域に足を踏み入れ、刺激してしまった2人。運が悪いことに、2人は悪魔であり、ターボババアからすればはぐれ悪魔や悪い貴族悪魔との違いなんぞ知らないので、2人はターボババアにロックオンされてしまったのだ。
「間違いなく、そうだろう」
兵藤と木場、大ピンチ!!もしかしたら、イチモツだけではなく命まで取られてしまうかも知れない。一度死んで悪魔となったので、次は二度目の死である。
「はっ!?まって……俺のチンチンとタマタマ…どうなるんだ!?」
「「チンチン?」」
しかし、兵藤はターボババアの手でタマタマとイチモツを奪われた状態なのだ。だが…兵藤は呪われておらず、イチモツを取り戻すにはターボババアを倒すか、撃退するしかない。
「今、娘さんとフランソワーズちゃん居ないよな?…こうなっちまったんだよ!!」
兵藤は立ち上がり、半泣きでズボンとパンツを下ろす。そこにはある筈の竿とタマタマ2つが綺麗さっぱり無かったのだ。
「綺麗さっぱり無くなったな。お前、実はニューハーフじゃないよな?」
「違うわ!!ちゃんとした竿あるわ!!」
「つまようじの間違いだろ?」
「あるよ!!せめて、割り箸にしてくれ!!」
バラキエルが大真面目な話をしていたこともあり、なかなか話せなかったアドルフが少し悪巫山戯をいれて、兵藤をからかう。
「ううう……これじゃあ……部長と恋人になったあと、エッチできねぇぇ!!」
ターボババアに魂を狙われ続け、更に玉なし竿なしなので男の尊厳も喪ったまま。このまま宦官として過ごすことになりかねないのだ。
「ターボババアを撃退出来るかもしれないよ」
「ジョー?」
だが…そんな兵藤を可哀想と思ったのだろう。ジョーが救いの手を差し出す。
「マジで!?」
「うん。だけど、君のアソコが戻る保証はない」
「本当に…お前はお人好し過ぎるぞ、ジョー。」
その日の夜。
「あの~神主さん?アドルフ博士?何ですか?この服、ヒリヒリするんですけど」
「「悪霊相手の防弾チョッキ」」
兵藤はバラキエルから手渡された祭り衣装を装備させられていた。兵藤が悪魔のためか、ヒリヒリと痒みが出る。
「あのイケメン…木場から聞いたが、お前…裏側に関わるようになって3日目だっけ?今のままじゃ、ターボババアの攻撃でワンパンだ。だから、それを着ろ。一撃で肉片にはならない筈だ。
例えるなら、幼稚園児が最盛期のマイクタイソンに挑むようなもんだ。勿論、お前が幼稚園児な?」
兵藤は裏側に関わるようになって僅か3日。何でも3日前、レイナーレと名乗る堕天使に殺され、そのあとに主人に助けられて悪魔になったそうだ。
「3日前と言うと…私が出張で居ないときか。すまない、私が居れば…」
しかも、その日は運悪く、バラキエルが出張で駒王に居なかったときであり、バラキエルは兵藤を助けることが出来なかった。
「頭下げないでくださいよ神主さん!!てか、めちゃめちゃ痒いんですけど…いつまでも着てれば良いんですか!?」
「「逃げ切るまで」」
(しかし、レイナーレって堕天使が兵藤を殺した?くそ親父は神器持ちの暗殺や人体実験はしないって、4年前に宣言した。だとすると、身勝手な奴らか…サタナエル一派の生き残りだな)
そう、グリゴリは4年前に神器持ちの暗殺と人体実験をやめることを宣言したのだ。アザゼルとしても、息子と00メンバーを敵に回すことはしたくないのである。そのお陰で、随分と他の三大勢力からは嘗められているが、気にしてはいけない。
「博士。00メンバー各員、配置につき準備が出来ました」
すると、そこに能力をオンにしたフランソワーズが現れた。だが…昼間に見せた私服ではなく、赤い戦闘防護服に身を包み…黄色のマフラーが靡いていた。
「良し。手はず通りだ。003、目標は動いていないな?」
「はい。それと、廃教会に不審な動きが有ります。武装した人間が30、堕天使が4人。どうします?アザゼル総督はこの存在を認知してなかったようです」
「予定変更。0013を向かわせて、無力化させろ。邪魔されたら面倒だ。
他のメンバーは予定どおりに作戦を進ませろ」
「ラジャー。皆、聞こえたわね?0013は廃教会の鎮圧、他のメンバーは予定どおりに行くわ!」
00メンバーは頭の中に専用無線機がついており、少し離れていても問題なく会話できる。
「兵藤。これつけとけ、ジョー…009達と会話できる」
兵藤はアドルフからインカムを手渡され、耳につける。
『お前が今回の護衛対象だな?俺は002、空は任せておけ』
『004だ。宜しくな』
『005だ』
『006アルよ~無事に生き延びたら、美味しい中華料理を作ってあげるアル!!』
『我輩は007だ!撹乱や諜報なら任せてくれ』
『僕は008!今回は001の護衛で動けないけど、無事に逃げろよ!』
『やあ、兵藤一誠。001だ。僕の所までターボババアを連れてきてくれ、一撃で倒すよ』
『此方、0013。廃教会の鎮圧が終わったら、直ぐに手伝うよ』
『やあ、改めて009だ。兵藤くん、君はターボババアを全力で煽るんだ。僕達がなんとかする』
「頼もしい俺の家族だ。何が起きても助けてやる、だから…根性出して行ってこい!!」
そしてイチモツとタマタマと魂をかけた鬼ごっこが始まる。
レイナーレさん達、ボコボコにされます(笑)
次回…玉なしVS最速ババア!!ファイ!!
一番好きな原作00メンバーは?
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