親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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13.勇者フラン

 

 ユーリと一緒に食堂に入って注文をして待っていた。

 

 ふと隣の席をみたら、多分オレたちより少し年上の綺麗な……いや綺麗と言うより快活さが勝る青髪ショートカットの女性が一人、沢山の料理をテーブルに並べ、リスのように頬張り、夢中で食事をしていた。

 なんとも気持ちの良い食べっぷりで、オレたちも届いた料理を美味しく食べる事が出来た。

 

「師匠が待ってるし、行こうか」

 

「そうだね」

 

 食事が終わったオレたちが席を立つのと同時に、隣で食事をしていた女性も、その細い身体の何処にあんなに入るのかというような量を全て平らげ、最後の水を飲み干して席を立った。

 

「美味しかった~、やっぱり街の料理は最高だね!」

 

 そんな独り言と共に、オレたちの前で会計を済ませ……おや? 何か騒いでる。

 

「あれ!? 無い!? 無い!! お金が入った財布が無くなってる!!、ボクの全財産が~~~!!!」

 

「ちょっとお客さん!!あんだけ食べておいてお金が無いは通じないからね!! きっちり払って貰うよ!!」

 

「そ、そんな事言ってもボクも困ってるんです!!」

 

「ウチも払ってもらわないと困るんだけどね!!」

 

 辺りがザワザワとし始める。

 オレも目の前でこんな騒ぎに巻き込まれるのは嫌なんだけど。

 

 どうしたもんかと成り行きを見守っていると、ユーリがくいくいと服を引っ張った。

 

「助けてやったら?」

 

「そうは言うけどな……」

 

 オレと師匠だけなら、割り込んで自分たちの分の金を払ってさっさとおさらばするところだ。

 余計な事には首をツッコまないのが正解だ。本当なら。

 しかし、まあ、ユーリがそういうなら、助けてやるか。

 

「――しゃーねえ、早く師匠のとこに戻りたいしな」

 

 そう応えると、ユーリはうんうんと銀の髪を揺らして頷いた。

 

 という事で、今だ騒いでいる2人に向けて言った。

 

「この人の分も纏めて払います。オレたちの分と合わせていくらですか?」

 

「お、そうかい?払ってくれるなら文句はねえよ。あんたもこの人に感謝するんだな」

 

「え。なんで……ぜんぜん知らない人なのに……」

 

 纏めて食事代を払う。

 ……この女の人、やっぱりめちゃめちゃ食ってる……。心の中でため息を吐いた。

 そして3人で店の外に出た。

 

◇◆◇

 

「あ、あの! ありがとうございます!!ボク、食い逃げなんてする気は無くて、ちゃんとお金を払うつもりだったんです。なのに、お金が入った財布がいつの間にか無くなってて……ッ!!」

 

「まあちょっと移動しならが話しましょうか。オレたち行くとこあるんで」

 

 そう言って、3人並んで歩き始めた。

 

「私はユーリと申します。こちらはヤマト」

 

「感謝はユーリにして下さいよ。オレは助けるつもり無かったんで」

 

「ユーリ、本当にありがとうございます。ボクはフランシスといいます。オーマルク村から出てきました。それで、ヤマトとユーリはこれから何処へ行くんですか?」

 

「冒険者ギルド、オレの師匠が待ってるんでね」

 

 そう応えると、フランシスは驚いたように反応した。

 

「え!?冒険者ギルド!? ボクも行きたかったんだけど、こんな大きな街は初めてだったから迷っちゃって、それに美味しそうなものが沢山あって、今日は諦めてたんだ。 ……あの、ついて行っても良い?」

 

「良いですよ。 このボビーネイトの街は大きな街ですから、迷うのもしょうがないです。フランシスもさぞかしビックリしたんじゃないですか?」

 

「あ、ボクの事はフランと呼んで、村のみんなはそう呼んでいたからね」

 

 こんな感じで、殆どがユーリとフランでおしゃべりをしていて、オレはあまり参加しなかった。こういう時、本当にユーリは面倒見が良いなと思う。

 そしてフランとユーリが雑談をしている時、ふと気になって話題を振った。

 

「そういえば、フランは一人で、何しに街まで出てきたんだ?」

 

「1年くらい前に勇者として覚醒して、それから色々と修行して、それでもう十分強くなったから魔王を倒そうと村を出たんだ。それでいくつかの村や街を回ってきて、ここ、ボビーネイトの街に着いたってわけ」

 

◇◆◇

 

 ――ん????

 

 あれ?? 今、勇者って言った??

 

 思わず立ち止まり、フランを見る。

 ユーリも同様に立ち止まり、フランを見ていた。

 

「今、勇者って言った?」

 

「うん。こう見えてもボクはすっごく強いんだよ?」

 

 お世辞にも大きいとは言えない控えめな胸を張り得意げに応えるフラン。

 そう言えば冒険者ギルドで「若い美人の女一人」と予想してる人がいた、あの人の予想が見事に的中してる。

 と、そうじゃなくて!

 

「丁度良かった!! オレたち勇者を探してて。今日ギルドに来るって聞いてたからギルドで待ってたんだ!」

 

「あ~、そうなんだ。ごめんね、食べ物に釣られてギルドにたどり着けなくて」

 

「いや良いんだ。そんな事より頼みがあって」

 

「何? 二人にはお世話になっちゃったからね、なんでも聞くよ」

 

「――オレと勝負して下さい。 そして、オレが勝ったら、仲間になってもらう!」

 

「――えッ!?」

 

 フランは驚いて声を上げた。

 そりゃそうだ。突然勝負を、それも単なる手合わせじゃなく、負けたら仲間になるという条件まで付いた真剣勝負を挑まれるなんて、思っても見なかったはずだ。

 フランは顎に手を当て、考えていた。

 

「……仲間にして欲しい……の聞き間違いかな? ……まあそもそもボクが負けるわけないんだけど。 ……いいかいヤマト、この街に来るまでにも勇者の仲間にして欲しいと言って勝負を挑んできた冒険者は結構いてね、何度も手合わせしてるんだ。だけど全然だめ、BやAランク冒険者程度じゃ全く相手にならないし、ボクもそんな弱い人を仲間にするつもりはない。 だからヤマト、勝負を挑もうなんて考えないほうが良い。ね、他のお願いなら聞いてあげられるよ」

 

 よっぽど自信があるのだろう。フランはいかに自分が強いか、そして仲間がいない理由を語ってくれた。口ぶりからするとSランクの強さはありそうで、つまり、最低でもハズレ勇者ではないという事だ。

 そしてこれはきっと恩人であるオレたちへの、親切心から来る忠告だろう。

 だけどそんな事で引くオレじゃない。それにもし、オレより強いというなら、それこそ望むところだ。

 

「聞き間違いじゃあない。フラン、君が負けたらオレの仲間になってもらう。まあ、オレが勝つけど」

 

 はっきりと言い放った。

 それを聞いたフランは、一度眉をひくつかせた後に呆れた風に腕を組んだ。

 

「ん~、手合わせならいくらでもしてあげるけど……真剣勝負かあ。でもなんでも聞くって言っちゃったからなあ……。 うーん、ま、いっか。良いよ! 勝負を受けてあげる! そんでその生意気な態度を改めさせてあげる」

 

 フランはニヤリとして目を細めた。微笑んでいるのだろうか。

 ただその表情の裏には、確かな自信と勇者を舐めているオレを懲らしめてやろうという感情が見え隠れしていた。

 

「それでは冒険者ギルドへ向かいましょう。 クリスも待っていますし、ギルドの試験場なら誰にも迷惑がかからないので丁度良い場所だと思います」

 

 黙って成り行きを見守っていたユーリが口を開いた。

 確かに辺りはもう暗く、こんな街中で戦っていたら衛兵がすっ飛んでくるだろう。

 それにしても、戦いになる事など想定していなかったはずなのに、ギルドへ戻る事と勝負の両方を上手く進める提案だった。流石ユーリだ、と心の中で褒め称えた。

 

「そうだな、まずは師匠のとこに戻るか。腹を空かせて待ってるだろうし」

 

「きっと驚きますよ、勇者を連れてきた、なんて言ったら」

 

「師匠はすぐ顔に出るからなあ、驚く顔が楽しみだ」

 

 ユーリと2人、いつもの様に、いや、一応フランの前なのでユーリは丁寧に会話していると、フランが疑問を呈した。

 

「ねえ、ユーリはヤマトがこんな事言っててもなんとも思わないの?だって無謀にも勇者に闘いを挑んだんだよ?」

 

 それを聞いたユーリは人差し指を顎に当てて首を傾げ、ん〜、と考える仕草をした。

 そしてそのまま立てた人差し指を顎から外し、顔の前に立てて応えた。

 

「ええ、勇者を仲間にする話はしてましたし、それに、ヤマトが負けるはずはないですから。 ね」

 

 そういって、オレに微笑みを向けた。

「…… へえ、ユーリは随分とヤマトを信頼してるんだね」

 

「はい、ヤマトは親友ですから」

 

「親友? 付き合ってるんじゃないの?」

 

「違いますよ」

 

 フランの問いにユーリはあっさりと応えた。

 慌てた様子もなく、言い淀みもせず、普通に。

 

 それは端から見れば全くの脈無し、そう見えたに違いない。

 だが、この時のオレとユーリには恋愛感情は全くといって良いほど自覚がなく、その返答にオレも違和感なんかの感情は持たなかった。

 

「へぇ……」

 

 フランはそれだけ呟き、沈黙していた。

 

◇◆◇

 

 冒険者ギルドに戻ると、師匠は椅子に腰掛けあご肘を突き、ぼんやりしていた。

 どうやらオレたちの気配にも気付いていないようだ。

 

「師匠、お待たせしました」

 

「お。もっとゆっくりしてても良かったんだぞ……っておや、どちら様だい?」

 

 師匠が振り返りざま、フランの存在に気付いた。

 

「あ、フランと申します。フランと呼んで下さい」

 

 フランは丁寧にお辞儀をした。

 師匠を保護者だと思ってるんだろうか。……まあ間違ってないけど。

 

「こっちは勇者のフラン。この後勝負して仲間になってもらう」

 

「は?」

 

「ちょっと。まだ仲間になるって決まったわけじゃないでしょ。 それに本当にボクに勝てると思ってるの?」

 

「フランには悪いけど、間違いなく勝てる。 約束忘れんなよ!」

 

 フランとオレの間にバチバチと火花が散る。

 いい感じにフランもやる気になってきてるんじゃないだろうか。

 

「いやいやちょっと待てお前ら。ちゃんと整理して説明しろ」

 

 どうやら説明を省きすぎたらしい。というわけで、あらためて食堂での出来事から順を追って分かりやすく説明した。ユーリが。

 

「――というわけでこの後試験場でヤマトとフランが勝負します」

 

「なるほどな。 ……だが、ヤマトお前、勇者を仲間にするって言ったって――」

 

「そうですよ、お師匠さんも言って下さい。勝てるわけないじゃ――」

 

「――弱かったらどうするんだ」

 

「ーーーーッッ!!!!」

 

 フランは言葉を失ってるがそれは良いとして。

 流石師匠だ、心配するところはそこだよなあ。

 

「話を聞く限りじゃ強そうですよ、Sランクは間違いなくあります。それにもし弱くてもその時は仲間にしなければ良いだけです」

 

「お前……いい性格してるな。親の顔を見てみたいよ」

 

「お褒めに預かり光栄です。ユーリ、鏡で親代わりの顔を見せてあげて」

 

「いや褒めてねえから、ユーリも鏡を出さなくていい。……ったく。 となると飯食ってる場合じゃねえな。フラン、まだここのギルド登録は終わってないんだろ?それだけ済ませてきたらヤろうか。……フラン。フラン?」

 

 師匠は言葉を失い呆然としているフランに受付を済ます様に促した。

 

「……あ!……それじゃ受付済ましてきます。 ……何なのこの師弟……こんな扱い初めてだよ……」

 

 と、もう反論する気も失せたのだろうか、フランはぶつぶつ言いながら大人しく受付へ歩いて行った。

 

 この時間の冒険者ギルドは人影が少ない。

 ギルドでの食事は魔法で作り出した水程度しかない。

 あくまで冒険者ギルドであって、机や椅子があっても、その待合所、受付のフロア、というわけだ。

 なので、夜ともなると冒険者が食堂や酒場に行ってしまうので、やっとお目当ての勇者が来たというのに、騒ぎにはならなかった。

 

 フランは受付でこの街での登録を済ませ、オレは試験場を使う手続きをした。

 これでやっと勇者と戦えるというもの。

 

 願わくば、フランがオレの期待を超える強さである事だ。

 

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