親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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18.再び、同じ部屋で

 

 オレと師匠は昼食を摂り、ギルドに顔を出していた。

 新しい武器が出来上がるまでの間、この街に滞在するので依頼をこなす余裕があるのと、強そうな人がいないか探すためだ。

 

「――ま、そうそう強いやつがいるわけねえか」

 

「そもそも前みたいに勇者がいた事自体が奇跡みたいなもんですからね……」

 

 そんなやりとりを交わしていた。

 依頼に関しては、鍛治の街という事もあり冒険者が多いのか、Bランクの依頼の消化率も高く、お昼過ぎにギルドに来たのではCランク以下の依頼しか残っていなかった。

 

「個人レベルの依頼を受けてもなあ。……鍛錬でもするか」

 

「良いですね、地下試験場を借りれるか聞いてきます」

 

 というわけで、地下試験場で久しぶりの師匠とのマンツーマンで鍛錬を行った。

 

「やっぱヤマトとの手合わせは本気で行けるから歯応えがあるな。お前もハンデ付きならそれなりの強度でやれて良いだろ?」

 

「そうですね、師匠との手合わせは楽しいですよ」

 

 鍛錬の最後は手合わせをする事にしている。

 疲労している状態で、出来る限り本気でやれる環境を作り出す事で更なる成長が出来る。という師匠の考えだ。

 そして師匠もオレも戦うたびにその効果を実感していた。

 

◇◆◇

 

 夕方近く、鍛錬が終わってギルドで休憩していると、ユーリとフランが戻ってきた。

 

 二人は、別れる前とは雰囲気が変わっていた。

 何と言えばいいか分からないけど、2人の雰囲気が良くなったように感じる。

 良い事でもあったのだろうか。

 

「ユーリ、フラン、お帰り」

 

「おう、……どうやらケリは着いたみたいだな」

 

「はい」

「まあね」

 

「……ケリ?」

 

「ボクが心配するのはこういうところなんだよね」

 

 なんのこっちゃ。

 3人の交わした言葉の意味が分からなかった。それになんとなくフランにもダメ出しされてるような気もするし。

 まあでも、ケリが着いたのなら、それは良かったんだろう、多分。

 

 そのまま、フランが師匠の隣に座り、ユーリがオレの隣に座った。

 ユーリが座る時、ふわりとユーリの香りに気付いた。そういえばユーリが隣にいるのは久しぶりのような気がした。最近はずっとフランが隣に座っていたからだ。

 

「……それで、どうでした?……剣は、治りそう、ですか?」

 

 ユーリがたどたどしく聞いてきた。

 ふとユーリを見ると、ユーリのオレを見る目が今までと違う輝きを持っている気がした。

 

「ああ、治してもらえる事になったよ。だけどショーン、あ、鍛治師の人が言うには振るえばまた同じ事が起きると言われたよ」

 

「それって、ヤマトが凄すぎて剣の方が保たないって事?」

 

 フランが聞いてきた。

 

「そういう事、だから新しい剣を打って貰う事になった。師匠が手を回してくれていて、より良い素材で、出来るまで1週間はかかるみたい」

 

「では最低でも出来上がるまではこの街に滞在するんですね」

 

「そうなるな」

 

「なるほどなるほど……」

 

 ユーリが小声でボソリと呟いた。

 

「何が?」

 

「いえいえ!何でもありません」

 

 問いかけると、ユーリは慌てて応えた。

 この感じ、何か企んでいるのか……?

 

◇◆◇

 

 その日はそのまま晩飯を終え、銭湯に行った。

 そして宿へ。

 

 さて前と同じ様に男女で部屋を分かれるか、と思っていたところ、フランが師匠に話しかけていた。

 

「お前さん、本当に良いのか?俺は構わねえが……」

 

「大丈夫大丈夫! こう見えても切り替えは早いからね。詳しい話は部屋でするから!」

 

「まあ良いけどよ……」

 

「お先、ユーリ!」

 

 フランはそう言って師匠の腕を取り、ユーリに手を振って階段を登って行った。

 そして師匠はというと、こちらもユーリにウィンクをしてフランに連れられて行った。

 あれ?宿では男と女で分かれるんじゃなかったっけ?

 

「ユーリ、 フランと一緒じゃないの?」

 

「え、ええと……。その……私と一緒じゃ、嫌?」

 

 恥ずかしそうに、上目遣いにオレを見るユーリ。

 儚げな、物憂げなその瞳にドキリとさせられる。

 

「いやそんな事は無いけど! ……だってほら、フランのやつ、前の時はあんなに反対してたのに」

 

「でもほら……もう二人で上がってったし、私たちも行こうよ」

 

 どうやらいつの間にか、またユーリと一緒の部屋で寝る事になったようだ。

 師匠もフランも、前はあれだけ言っていたのに一体どういう心境の変化なんだ、オレだけが振り回されている気がする。

 

「……そうだな。行こうか」

 

「……うん、ほら」

 

 ユーリがオレの腕を取り、胸元に引き寄せた。

 柔らかい感触が……じゃなくて、いつもと違う距離感というか……腕を取って引き寄せるなんて、からかう時くらいしかしてなかったのに。やっぱりなんかおかしくないか?

 だけどそんな事は気付いていないのか気にしてないのか、ユーリは恥ずかしそうに笑みを浮かべて、オレを引っ張っていた。

 

 ――ま、ユーリが嬉しそうだし、気にしなくても良いか。

 

 オレはユーリに引っ張られながら、部屋へと入った。

 

◇◆◇

 

「また、一緒の部屋になれたね」

 

「ああ、確かにそうだけど、一体どういう事なのか――」

 

「ま、まあまあ、良いじゃん理由なんて、……とにかく私は嬉しいんだからそれで。……まさかヤマトは嬉しくないとか?」

 

「いや、嬉しいけど……」

 

「それなら何も問題ないだろ。……ね?」

 

「……そうだな」

 

 押し切られてしまった。

 なんか変だぞ今日のユーリ、やっぱりいつもと違う。本当にどうしたんだ。

 

 ユーリはそのまま深呼吸を繰り返し、何事か気合を入れていた。

 何してんだこいつは。

 

 そんな事を思いながらベッドに腰掛けると、ユーリが服を脱ぎ始めるので、慌てて後ろを向いた。

 

「おい! 寝間着に着替えるの早くないか!?」

 

「え?良いじゃん、もう後は寝るだけなんだし」

 

「そうだけど、早いだろ! もう寝るのか!?」

 

 そうだ、いつもなら寝る直前で着替えていたはずだ。もう寝るのか?

 

「よし、着替え終わったぞ」

 

 もしかして、こんなに早く寝間着に着替えるなんて、疲れていて早く休みたいのかも知れない。

 もし疲れてるなら、そう言ってくれれば良いのに。

 

「もしかして疲れてるのか? そうなら、早く寝ようか」

 

「え!?あ、大丈夫大丈夫、全然疲れてないから、それにまだまだ寝る気もないし。ただもう部屋から出たくなくて着替えただけだから!」

 

 ふ~む。

 疲れてない、部屋から出る気ない、なんかいつもと違う……これは……。

 

 はは~ん。分かったぞ。

 ユーリのやつ、久しぶりにオレと一緒の部屋なもんだからテンション上がってるんだ。

 それでなんかソワソワウキウキしてるんだな。

 なるほど、色々と合点がいったぞ。

 

 まあオレもユーリと一緒なのは嬉しいし。少しテンションが上がってる。

 よし、ここは一つ、優しくしてやろうじゃないか。

 

「なんだ疲れてないのか? 疲れてるようならお願いでも聞いてやろうと思ってたのにな~、疲れてないならいらないか~、残念だな~」

 

 わざとらしく言ってやると、ユーリは慌てた。

 

「え!?お願いって何でも!? ちょっとまって……いや待て! ……あ~、うん。今身体の調子を確認したんだけど、やっぱなんとなく疲れてる気がするな~、うん。あ~疲れてるな~」

 

 面白いくらい乗ってきて、思わず吹き出しそうになる。

 

「なんだやっぱり疲れてるのか、よしよし、お願い聞いてやるから(ちこ)う寄れ」

 

 そう言って手招きすると、寝間着姿のユーリはいそいそとオレの隣に座った。

 

「疲れを癒やす系のお願いを聞いてやろう。ただし……肌に直接触れるのはダメだ。オレが我慢できなくなったら困るからな。前にも言ったが、ユーリは自分が女だという自覚をオレ相手にも持って欲しい」

 

「え~~、なんだよそれ~~、せっかくマッサージでもして貰おうと思ったのにさ~」

 

 ユーリがぶ~たれる。

 だけどこれはしょうがない。頭では分かっていても、ユーリの身体は女なんだ。しかもとびきりの美少女。触れさえしなければなんとかなるけど、直接触れた日には、何がどうなるか分かったものじゃない。

 

「マッサージなんかもってのほかだ!却下だ!」

 

「ちぇ~。 ――じゃあしょうがない、それじゃあヤマト、動くなよ~」

 

「ん? 何する気だ」

 

「いいから! そのままそのまま……」

 

 ユーリの言うがまま、オレは動かず様子を見ていた。

 するとユーリは、オレの膝枕の上に横になった。

 正確には、オレの太ももとズボンを枕代わりにして、仰向けに寝転んだ。

 

「これで今日のところは我慢してやる。次はもっとサービスしろよ」

 

「いやいや……え? ユーリさん? そこはちょっと……」

 

「だって肌にも直接触れてないし、問題ないだろ?」

 

 ユーリはそう言って、ウィンクをした。

 

 やられた。

 だけど男の膝枕とか、ゴツゴツしてて寝心地が良くないんじゃないか?

 ……いや、まあ、本人が満足ならそれで良いけど。

 

 ユーリは静かに目を閉じていた。

 しかし暫くして目を開けた。

 やはり寝づらいのだろうと思っていたら、違うようだ。

 

「物足りない、サービスが足りない。疲れを癒そうという気が感じられないなあ」

 

「いやそんな事言っても、何も出来ないだろ」

 

「いやいや、あるでしょ。ほら、私の頭とか、ほら、撫でてよ」

 

 そう言って、ユーリは目を閉じた。

 う、うん。まあそれくらいならやるけどさ。

 

 オレは、ユーリの頭を優しく撫で始めた。

 ユーリの銀の髪は、細く、柔らかく、艶があり、光を放っているような気さえした。

 撫でているこちらも、心地良い感触にずっと撫でていたいと思えるほどだ。

 

「あ~、良いね。でもまだ足りない。ほらもっと心を込めて。優しく、丁寧に、な」

 

「はいはい、王女様」

 

「うむ、苦しゅうない」

 

 優しく、丁寧に、心を込めて。

 すると、眼下の美少女は満足そうに目をつむりながら微笑んだ。

 どうやらこれで良いらしい。

 

◇◆◇

 

 暫く撫でていたら、ユーリは寝息を立て始めた。

 これでますます動けなくなったぞ。

 さてどうしたものかと撫でる手を止めて考えていると

 

「……やまと……」

 

 小さな声でオレの名前を呼んだので慌てて撫でる事を再開した。

 

「!? 撫でてる、撫でてるぞ~、……ってなんだ、寝言か……」

 

 どうやらユーリの寝言だったらしく、そのまま寝息を立てていた。

 その時、オレはユーリの寝顔を正面からしっかりと見てしまった。

 

 思わずゴクリと唾を飲む。

 相変わらず、いや、更に綺麗になったように感じる。

 ユーリと知らなければ、この美少女の唇をそのまま奪ってしまいたい衝動に駆られた事だろう。

 

 いかんいかん!

 ユーリめ、親友の癖にオレを惑わせやがって。

 こりゃ、ちょっとくらい悪戯したって良いだろう。うん。親友だしな。

 

 オレの膝で気持ち良さそうに寝ているユーリの唇をそっと撫でた。しっとりとして柔らかく、先程の衝動がむくりと起こりそうになる。

 って違う!まだ惑わされている!頭を振り、オレは正気に戻った。

 

 あらためて、寝ているユーリのほっぺたを軽く(つま)んだ。

 柔らかくすべすべとした手触りに、マシュマロのような弾力に加え、手を離すとプリンのようにぷるんと元に戻る。

 両のほっぺたを摘んで離してを繰り返して遊んでいると、ユーリが目を覚ました。

 

「なに~?なんなの~?」

 

 慌てて取り繕うように頭を撫でる。

 

「ヤマト何して……! ――なんか変な事してないだろうな!?」

 

「いや!? 何もしてないけど?」

 

「なんかほっぺた痛いんだけど?起きた時引っ張ってたよね?」

 

「……すみませんでした」

 

「触るのは良いけどさあ、痛いのは止めろよな~」

 

 触るのは良いのかよ。と思ったけど、余計な事は言わないでおこう。

 

「ごめんごめん、余りにも気持ち良さそうに寝てたから、ちょっといたずらしたくなっちゃって、つい」

 

「そういう事ならしょうが無いな。うむ、次から気をつけてよ。んじゃおやすみ~」

 

 いやおやすみじゃねえし!!

 ユーリはそのまま仰向けから横向きになり、目を閉じた。

 こいつ本当にそのまま寝る気じゃないだろうな。

 

「ほらほら、撫でて撫でて」

 

 まったく……。

 さっきよりも撫でる面積の広がった頭頂部から後頭部を優しく撫でる。

 触り心地の良い髪を撫でていると、ユーリは言った。

 

「撫でられるの、好きだな」

 

「そうか……」

 

「あ! ヤマトに撫でられるのが! だからな!誰でもいいわけじゃないから!」

 

「うんうん。分かった分かった」

 

 何を慌てているんだユーリは。

 ……だけどなんか分かるな。オレも父さんや母さん、それに師匠に頭を撫でられるのは嫌いじゃない。

 子供っぽく扱われて撫でられるのは嫌だけど、そうじゃない時は安心するんだ。

 だからまあ、オレも……。

 

「好きだ」

 

 ポツリと呟いた。

 

「え!? ええ!?!?」

 

 ユーリはパッチリと目を開いた。

 

「師匠に撫でられると安心する」

 

「え!? ――ああ、うん!! そう! 撫でられるのが、ね!!うん。分かってた!!知ってた!!」

 

 ユーリは慌てふためき身体を起こして変な動きをしていた。何をやってるんだこいつは。

 

「あ~もう!! 完全に目が覚めた!寝るのは止めて、話でもしよう!」

 

「別に良いけど。そうだな、なんかすげー久しぶりな気がするもんな」

 

「だな~」

 

 こうして、オレとユーリはベッドに腰掛け隣り合って、日が変わるまでおしゃべりした。

 

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