親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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21.ファルカンタ討伐

 

 聖龍の血に覚醒したユーリと3本柱のファルカンタの戦いは、どちらも譲らず続いている。

 その戦いはオレたちだけじゃなく、中級魔族や魔物たちも同じように見守っていた。

 

「おいフラン、話に聞いていたより強いんじゃないか?ユーリは」

 

「あ、クリス。まさかここまでとはねー、本当、勇者より強い人が多すぎじゃない?自信なくなるなぁ」

 

「だけどこの戦いは正面からの力のぶつかり合いだ、師匠なら多分ユーリにも勝てそうな気がするけど」

 

「おいおい、それじゃまるで俺が卑怯な方法を使って戦うみたいな言い方じゃないか、酷い弟子もいたもんだなあ」

 

「あ、いやそういう意味では……」

 

「じゃあどういう意味なんだよお前は~」

 

 師匠に頭を抱え込まれ、脳天を拳でグリグリとされる。

 戦いの真っ最中だというのに、こんな事で良いのだろうかとは思うが。

 

「でも不味いね、少しずつだけどユーリが押され始めてる」

 

◇◆◇

 

 ユーリの動きには最初の頃のキレが無くなり、守勢に回る事が増えているような気がする。

 あの覚醒状態は普段より多くの体力を消耗するのだろうか。

 

「くぅッッ!!」

 

 ファルカンタの一撃を辛うじて防いだユーリは、体勢を崩した。

 隙を見せたユーリに、続けざまに攻撃を仕掛け続け、ユーリは防戦一方となったが、なんとか攻撃をしのいだユーリは、流れを取り戻すように一撃を振るい距離を取った。

 

「しょせんは人間、聖竜の力を長く使い続けて身体がもつはずもないのだ。さあ、そろそろ終わりにするか」

 

「確かに、このまま戦い続けても状況は良くならないでしょう。それならば、この一撃に全てを賭けます!!」

 

「ほう、まだ奥の手があるというのか、面白い。受けて立とう」

 

 ファルカンタは殊勝にも、ユーリの技をあえて受けるように手を広げた、魔族の癖にそこまでの自信と誇りを持つというのか。上級魔族ともなるとそういう者もいるのか。

 ユーリは静かに剣を構え直した。

 

「と、言うとでも思ったのか!!!! 油断したな、バカめ!!!!」

 

 ファルカンタは一気にユーリへと間合いを詰めた。

 なんて卑怯な、いや、魔族を信用する事が間違いなのだ。騙された方が悪い。確かにそうなのだけど。

 いや、そんな事より――

 

「ユーリッ!!」

「奥義!! 天竜聖煌断(てんりゅうせいこうだん)ッッ!!!!」

 

 オレが叫ぶと同時に、ユーリが技を発動させた。

 

 ユーリの持つ剣が光を放ち、その光は大きな剣の形となり、ユーリの背後には大きな光の竜、聖竜の姿が現れた。素早くファルカンタに剣を振り下ろすと光の剣は竜の咆哮のようなものを発しながらファルカンタを両断した。

 

「なん……だと……」

 

 ファルカンタは一言だけ発すると、その身体は浄化の炎に包まれた。

 

「魔族の言葉など私は信用しません。油断ではなく、技を放つために集中しただけです。……でも、あなたのお陰で、私はヤマトに自分の価値を証明出来ました。それには感謝を述べましょう」

 

 そう言うと、白銀の角、光の翼と爪が消えて、ユーリは全てを消耗しきったように、全身から力が抜けたかのように身体が傾いた。

 

◇◆◇

 

 倒れるより早く、自然に身体が動いていた、ユーリの元へ、誰よりも先に。

 ユーリが倒れてしまうより早くユーリを支え、そのままお姫様抱っこで抱えた。

 

「ユーリ!!」

 

 そう呼びかけると、ユーリは閉じていた目を開けて、オレを見上げた。

 

「あ……ヤマト……。どうだった?」

 

「ああ凄かった。ユーリ!!オレは感動した!!まさか、あんな力と技を持っていたなんて!!」

 

「うん。でもね……あれは体力全部使うから、あんまり使いたくなかったんだよね」

 

「でもその分強かった、本当に凄い技だった!!」

 

「へへ、凄かっただろ。……もっと褒めろ」

 

「おう!!よくやったユーリ!!凄いぞユーリ!!強いぞユーリ!!流石オレの親友だ!!」

 

「なんだそれ……もっと良い言葉のチョイスはないのかよ……でもありがとう。これでヤマトの隣に立てるかな?」

 

「何言ってんだ!!オレの隣はずっとユーリがいるだろう!?」

 

 そうだよ、オレとユーリは前世から続く、大親友なんだから。ずっと隣にいて貰わないとオレだって困る!

 

「あ~~、そういう意味じゃないんだけど……。だけど、まあ、今はそれで良いや。――ヤマト、大好きだよ」

 

「ああ、オレも大好きだ。親愛なるユーリよ、オレたちは最高の親友だ!!」

 

「…………そうだな、最高の親友だな。――もう今はそれで良いから、もう少し、このままでいさせてくれ、ヤマト」

 

 そう言って、オレに抱えられたユーリはオレの首に腕を回し、抱きついてきた。

 戦いの後だけあって、ユーリの香りがオレを包む。オレの本能に訴えかけるその香りに頭がクラクラする。

 正直、どうにかなりそうで、抱える手を離して距離を置くか、もっと、ぎゅっと力強く抱きしめてしまいたい衝動に駆られる。

 だけど今は我慢して、やりたいようにさせてやろうと思う。だってあれだけの戦いの後だ、ご褒美くらい必要じゃないか。こんな事がご褒美になるとは思えないけど、それでもユーリの望む事なんだから。

 

「よし! 残りはこっちで始末しとくから、ユーリの面倒は任せたぞ!!」

 

「ユーリに優しくね!!」

 

 そう言って、師匠とフランは残る中級魔族と魔物の殲滅を開始した。

 オレとしても、ユーリをお姫様抱っこしたまま戦うのは難しいのでありがたくはあるのだけど。

 

 ……あれ?もしかして、オレってこの戦いで殆ど何もしてないのでは?

 

◇◆◇

 

 師匠とフランはコンビプレイで順調に魔族と魔物の数を減らしていた。

 

 フランがマルチプルアームで先制、牽制をしたところに師匠が痛撃を加える形で、師匠の攻撃を核にフランが様々な種類の武器を使いこなし、見事にサポートをしていた。

 長年コンビを組んでいるかのように息がピッタリで、即席とは思えないほどのコンビネーションで次々と魔族を倒している。

 

 ユーリはというと、相変わらずお姫様抱っこされつつ、オレの首に抱きついている。

 そしてオレは、ユーリを抱えて二人の戦いを眺めていた。

 

 そこへ、1人の男がオレたちに近づいていた。

 

「おいユーリ。そろそろ降りろ」

 

「え~嫌だ~。もう体力無~い。暫くこのままで~」

 

「我が儘言ってる場合か。 ルークが来てるんだよ」

 

「え!? ちょっと!? そういうのは早く言えよ!!」

 

 慌ててオレから離れ、降りたユーリは身なりを整えた。

 もうその顔は王女モードだ。……まあ、オレに抱きついてたのはしっかり見られてるから今更感あるけど。

 

 その男、黄昏の狼リーダー、ルークは多少の戸惑いを見せながらもユーリの前で膝をついた。

 

「ユーリ王女、素晴らしい戦いを拝見させていただきました。上級魔族に勝利した事、おめでとうございます。あれが我々の想像も出来ないレベルの戦いなのですね。感服しました」

 

「いいえ、私はまだまだです。しかし、無事に上級魔族を討伐出来た事は素直に喜ばしい事です、これでイーガスミスの街も守れました」

 

 何事も見なかったように振る舞うルークに、同じく何事も無かったように振る舞うユーリ。

 かと言って、ルークはユーリに対し、オレやフラン、師匠のようには振る舞えないし、ユーリだってそれは同じだ。

 距離感というのはそういうものなのだから。

 

「はい、その事ですが、ユーリ様が上級魔族を討伐した事を確認しましてすぐ、ジャックとエリーにグ軍勢討伐の報を知らせに、街へ急ぎ向かってもらいました。早ければ明日中には報告が届く事でしょう」

 

 あの状況で伝令役を選び、急ぎ向かわせたのは流石ベテラン冒険者の仕事だ。ルークたちもしっかり自分たちの役目を果たしているようだ。

 

「流石は黄昏の狼ですね、迅速な対応、お見事です」

 

「勿体ないお言葉です。私たちは私たちの仕事をしたまでです」

 

「それでは、クリスやフランの仕事が終わり次第、街へと戻る事としましょう」

 

「はい。……それにしても、相手は中級魔族ですよね? 優勢に進めているお二人も流石ですね」

 

 言われてみれば確かに、中級魔族ですら最低でも弱いほうのSランクなわけで、AやBランクの彼らからすればその相手など考えたくもないはずだ。

 それを二人がかりとはいえ、順調に殲滅している様は、中々お目にかかれない光景だろう。

 

 そんなわけで、無事に魔族の討伐を完了させたオレたちは、残った3人の黄昏の狼と一緒に街へと帰還するのだった。

 

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