親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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27.ブカタンペイ

 

 イーガスミスの街を出て2ヶ月余り、いくつかの街や村に寄り道をしつつ魔王城の目前まで辿り着いた。

 今はオレたちを迎え撃つべく現れた上級魔族が率いる軍勢を殲滅するところだ。

 手に持つ愛刀”討魔正宗”を握り直し、最後に残った上級魔族を十字に切り裂いた。

 

「お疲れ様ですヤマト。魔王城の近くだけあって魔族の数も質も上がって来ましたね」

 

 後ろに控えていたユーリが丁寧にねぎらいの声を掛けてくれる。

 その隣には他の魔族を始末したばかりの師匠とフランが戻ってきていた。

 

「ああ、だけどこいつらは主力じゃない、同じ上級魔族でも前に現れた幹部魔族よりも遥かに弱かった」

 

「そうですね、となるとやっぱり……魔王城に乗り込んで直接魔王を叩くしかありませんね」

 

「元からそのつもりだし、問題無いよ。師匠たちは大丈夫ですか?」

 

 声を掛けると、師匠は親指を立てて応えた。

 

「まあ余裕だな。なあフラン」

 

「うん、全然平気、というか手応えが足りないくらいだよ。勇者として活躍する場所をくれ~、って感じ」

 

 こちらの被害はほぼ無いし、これなら万全の状態と言っていいだろう。

 

「それじゃ今から魔王城へ突入します。オレが先頭を行きますので、師匠は最後尾で警戒をお願いします」

 

 こうしてオレたちは魔王を討ち果たすべく、魔王城へと乗り込んだ。

 

◇◆◇

 

 待ち構えて遅い来る魔物や魔族をなぎ倒し、魔王の元へと順調に進んでいた。

 

 今の戦力を図るならば、オレ、ユーリ、フラン、師匠の順だろうか。あくまでオレの見立てで純粋な戦力では、だけど。

 

 一応フランを上に置いたけど師匠との差は殆どない。実際に戦うならば豊富な手練手管(てれんてくだ)で師匠の方が優勢だと思う。だけど勇者としての底力も侮れないし、どちらが勝ってもおかしくないだろう。

 それにそれぞれ一人一人単独で戦うよりもペアで戦う事が増えていて、今やコンビプレイなら上級魔族も余裕で倒せるほどになっている。

 というか息が合いすぎだろあの2人、普段からいつも一緒だし……ってオレもユーリと一緒だから人の事は言えないけど。

 

 そしてユーリは2人より更に成長していた。

 師匠やフランより頭1つ2つほど抜けていて、もう単独ではユーリに勝てないだろう。

 魔王城にいる上級魔族なら単独でも倒せるくらいには強く、今ではオレの背中を安心して任せられるようになっている。

 その成長ぶりには驚かされる。聖竜の血の覚醒と、何よりユーリの努力の賜物だ。

 

 オレはユーリの更に上の強さだけど。これは仕方ない、オレだって努力してるし、女神の成長チートのおかげだから。

 

 ――そういえばユーリがここ暫く女神からの託宣が無いと言っていた、今は魔王を倒すという目標が目の前にあるから良いけど、倒した後どうすればよいのか分からないそうだ。魔族の長とやらはいつ現れるのだろうか? そろそろ次の道しるべが欲しいところだ。

 

◇◆◇

 

 広間に出るとその奥には強力な魔族の気配を感じる。

 相手にしようとしたら、師匠に手で制止された。

 

「ここは俺たちに任せろ。あの雰囲気は多分魔王幹部クラスだろう。幹部1体くらいは俺たちで倒してみせないと師匠として立つ瀬がないだろ?」

 

「そうそう、このまま終わったら勇者の名がすたるよ。ボクたちにもお手柄分けて貰うからね」

 

 そう言って前に出る師匠とフラン。

 正直言うと、2人にとっては厳しい戦いになるだろう。だけど2人で一緒に戦うなら、勝てる可能性はある。……と思う。

 それに2人の言う通りだ、ここでオレが倒してしまったらこの先に残るもう1体の幹部と魔王もオレが戦う流れになり、もう出番は無くなるだろう。

 だから、ここは師匠とフランに任せようと思う。

 

「……分かりました。2人にお任せします」

 

「おう、師匠を信じろ」

「勇者を信じなさいって」

 

「お願いします。お二人共」

 

 ユーリは祈るように2人の背中を見送った。

 

◇◆◇

 

 師匠とフランは、魔王幹部「ブカタンペイ」と戦い始めた。

 何故名前を知ってるのかというと、律儀にも相手が名乗ったからだ。やはり3柱の1つ、という事だった。

 そして相手が名乗った事により、師匠もフランも名乗りをあげた。

 

 フランが勇者という事で、ブカタンペイは喜びの声を発した。

 倒す事で自分の手柄と、そしてブレイディ様もお喜びになる、とかなんとか。

 

 ユーリと一緒に戦いを眺めているが、2対1でも今のところは互角だ。

 一進一退の攻防、どちらも奥の手を隠し、様子を見ているような状況。

 

 そしてオレはというと、2人の戦いも気もそぞろに、ユーリの事が気になっていた。

 

◇◆◇

 

 隣で戦いを見守るユーリをちらりと盗み見るように覗くと、ユーリはまっすぐに2人の戦いを見つめていた。

 

 勝負を見つめる透き通る碧い瞳、一見すると儚げにも見える初雪のような白い肌に、整った顔立ち、何ヶ月もの旅でも損なわない長く艶のある美しい銀色の髪、王女としての気品を感じさせる佇まい。

 見れば見るほどに美しく、可憐で、至高の美少女。

 ――それに加えて、オレの前でだけは気さくな親友。

 

 オレの中で、ユーリの存在は変わりつつあった。

 親友なのに、親友とは違う何かへと。

 

 あの日、キスしてしまってから、オレもユーリも、変化が始まったと思う。

 

 街中で歩く時にユーリが手を繋いでくるようになった。オレが「なんで手を繋ぐんだ?」と尋ねると「男と女なんだから別に不自然じゃないだろ。王女の私に何かあったら責任とれるのか?」と半ば脅すような事を言ってきて、お前は自分で守れるだろ、と思いつつも仕方なく手を繋ぐ事になっている。

 

 ――ごめん、嘘だ。仕方なくなんかじゃなかった。

 それどころか、いつしか手を繋ぐ事が楽しみになっているオレがいた。それに手を繋ぐ事で気分が高揚している気がする。

 でもこれは女性と付き合った事がないからだ、免疫が無いからだ、きっとそうだ。

 勘違いするな。相手は女性だけど、その前に親友なんだから。

 

 他にも二人きりになると、自分が女である事をアピールするかのように、胸の谷間が見える薄手の服を着たり、腕や太ももを露出し、ミニスカートかと思わせるような裾の短い服を着たりして、その上しなをつくって色気を感じさせ目のやり場に困る事も多々だ。

 

 そして外にいる時にはそんな素振りは微塵も見せず、あくまでオレと二人きりの時だけそんな事をするので、外向きの清楚風な格好と喋りと、オレ向けの妖艶な格好と仕草を持ち、そのギャップで余計に、嫌でも意識してしまう。

 親友として、その……本当に困る、困っているんだ。

 

 このままだと、オレはユーリを親友として見る事が難しくなってしまう。

 現に今だって目を奪われている。師匠と友達が命を賭けて戦っているというのに。

 

 相手はユーリ、唯一無二の親友だ。大切な、失いたくない親友だ。

 ああ、なのに、親友でなければ良いのにと思う事が増えた。

 親友でさえなければ、こんなに苦しまなくて、もっと気楽に好きになれたのに。

 

「ん?なんだ?」

 

 視線に気付いたユーリがオレの方に振り向き、尋ねてきた。

 言えるわけない、お前に見惚(みと)れていた、なんて。

 

「ああ、いや、なんでもない。ユーリの調子はどうかな、と思って」

 

 慌てて視線を師匠たちに戻し、咄嗟に思いついた適当な事を言う。

 

「うん、余裕だよ。かなり調子良い。あとちょっとで何か掴めそうな感じがするんだよなあ……。 あ、次に幹部魔族が出てきたら私1人でやるからな」

 

 今のユーリならいけると思う。多少の苦戦があっても、それを超える事だろう。

 

「良いよ、今のユーリなら大丈夫だと思うし」

 

「本当に!? いやー、ヤマトに太鼓判を押してもらえると嬉しいなあ。やる気でてきたぞ〜」

 

 こんなやりとりをしていると安心できる。いつもの親友のように戻れた、と。 だがしかし、ユーリの次の行動でそんな安心も吹き飛んだ。ユーリは嬉しそうにオレの腕に自分の腕を絡ませてきた。

 なんでそうなる!?

 

 ユーリの無意識か意識的か分からないそんな行動に、心臓が大きく跳ね上がる。

 腕を絡ませるな! 胸を押し付けるな! 頭を預けないでくれ!

 

 オレの心の秤が、親友というパラメータから大きく離れていく。

 せっかく親友に戻れたというのに、またしても好意を持つ女性になってしまう。

 

 しかしだからといって、ユーリを振り解く事は出来ない。

 だってそうじゃないか。自分に懐いてくる好きな女性を突き放す事の出来る男が世の中のどこにいるというのだ。

 少なくとも、オレには無理だ。

 

「おいユーリ、戦いの最中だぞ」

 

 今のオレに出来るのは、これくらいだ。軽く注意を促し、ユーリから離れてもらう事だ。

 

「え〜、別に良いだろこれくらい。 ちゃんと見てるんだし」

 

 それに対しユーリの返しは拒否だった。

 はい。もう何も言えません。されるがままです。

 嬉しい感情と困る感情が混ぜこぜになって、嫌とは全く思えず、もう本当にダメなやつだオレは。

 

◇◆◇

 

 そんなオレとユーリが戯れているのを他所(よそ)に、師匠とフラン、そしてブカタンペイの戦いは佳境を迎えていた。

 

 一進一退の様子見をする攻防から一転、お互いの力量を測り終え、殺意の籠った技の応酬へと変わった。

 単純な1対1であればブカタンペイが圧倒的に優位、だけど2人の弱点を補い合う巧みなコンビネーションで、魔王幹部を相手に優位に進めていた。

 

 形成不利を悟ったブカタンペイは、形態変化での強化を行った。

 身体は一回り大きくなり、強さも一回り大きくなったように感じる。そして見た目も大きく変化し、人型から異形とも言える姿へと変化した。

 それはまるで山のような姿。足が無くなりタコのように無数の触手で支えて動き、動作は鈍く、しかし力強さは大きく変化し、身体も頑丈さを増した。

 

「魔族もやっぱり真の姿ってのは魔物と大差ないな!」

 

「でもこっちの攻撃がまるで通らないよ!? ボクのビームスピアも弾かれちゃうし!」

 

 ブカタンペイの余りに頑丈な身体は、師匠やフランの攻撃を一切通さなかった。

 相当な威力のある攻撃でもないと、傷つける事すら不可能かも知れない。

 

「アレを使う時だ! やるぞ! フラン!」

 

「うん! アレだね!行くよ! クリス!」

 

 何か奥の手があるのか、師匠とフランは合図を送った後、ブカタンペイから距離を取った。

 フランが自らの武器「マルチプルアーム」に力を送り込み、ビームスピアが大きな光の矢のような形に変化した。

 そして、ドリュースパイラルの構えをしている師匠の手にそれを持たせ、師匠はそのまま間を置かずに力強く射出した。

 

「「シューティングスター・ブレイブッッ!!」」

 

 矢のように放たれた光の矢は、高速にキリモミ回転して沢山の光の尾を引きながら真っ直ぐ突き進み、流星(シューティングスター)がブカタンペイを貫いた。そこから全身に光が広がり、その身体は崩壊した。

 

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