親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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31.想いに応える

 

 ――欲しいものを欲しいと口にし、行動するだけだ。その後の事は、その時に考えれば良い。

 

 親友としてユーリは唯一無二で、王女や立場だとか関係なく、ずっと一緒にいて欲しい。そう素直に認められれば、それがそのまま恋人としてのユーリにも当てはまる。

 

 ユーリ自身がオレにとって、一番大事で、好きで、深く心で(つな)がれる存在なんだ。

 

 結論付けると頭がスッキリした。わだかまりは無くなり、目の前の事に集中出来た。

 それだけじゃない、まるで鎖の拘束から解放されたように、師匠との修行であった重い枷を外した時のように、身体が軽く、力が湧き出してきた。

 

 ユーリを見ると、ブレイディに()されていたオレを心配そうに見ていた。

 心配させてすまん。だけどもう大丈夫だ、もう吹っ切れた。ここでブレイディに勝って、お前の気持ちに応えてみせる。自然とユーリと目が合い、ウィンクをした。心配するな、と想いを込めて。

 それを受けて嬉しそうに、恥ずかしそうに目を逸らすユーリはまた格別に可愛い。

 ああ闘志が湧いてきた!! やる気は十分。ユーリに格好良いところを見せないとな!!

 

「待たせたなブレイディ。ここからが本番だ」

 

「黙れ小僧。お前では話にならん」

 

「そう言わずにもうちょっと付き合ってくれよ。考えが変わるかも知れないぜ」

 

 そう言ってブレイディの懐に飛び込んで斬り上げた。

 ブレイディは油断していたのもあるのだろう、避けるのに間に合わず斬撃が入った。だが防御力が高いのか、まともなダメージは入ってないようだ。

 

「ほぉ、動きが見違えたぞ小僧……ヤマトと言ったか。少しは楽しませてみろ」

 

 こうして、戦いは再開された。

 

◇◆◇

 

「く……まさかこれほどとは。まるで別人ではないか」

 

 戦いはオレが優勢に進めていた。ブレイディの攻撃は全て躱し、弾き、的確に攻撃を当てていた。

 ブレイディの身体はボロボロになっていて、何事も無ければ順当にオレが勝って戦いは終わる。

 

「聖竜の血を引きし者との戦いで披露し、絶望させるつもりだったがまあ良い。遅かれ早かれ同じ事だ」

 

 ブレイディはそう言って気合を入れ、全身に青黒いオーラを張り巡らせた。

 

「俺の覚醒した姿を見せてやろう!! 邪竜覚醒 ”ダークサーヴァント”!!」

 

 ブレイディの全身を纏う青黒いオーラが漆黒の闇に染まり、膨らみ、それは弾けた。姿を現したブレイディは、それまでの魔族のものでは無い漆黒のオーラで出来た4本の角と爪、そして漆黒の竜の翼に加え、竜の尻尾へと変わっていた。

 それはまるで、ユーリが持つ聖竜の血の覚醒を黒く染めたような姿だった。

 

「偉大なる邪竜様から授かったこの力があれば、貴様らなど一捻りにしてくれる!!」

 

 ブレイディが吠えた。

 それを見たオレの心は躍っていた。こうでなくては、と。

 ボスの最終形態への変身、そしてそれがユーリが行う聖竜の血の覚醒と同じような姿だという事。それ自体も面白いが、それに合わせて真のラスボスがいる事への示唆。多分その邪竜とやらが女神の言う”魔族の長”と関係があるに違いない。

 つまり本来この戦いの主役はオレのような門外漢ではなく、そして勇者のフランでもない。聖竜の使徒と邪竜の使徒の戦いだったのだろう。

 

 再度戦いは再開され、応酬が始まった。

 力は増し、竜の翼で速度も上がり、竜の尻尾は破壊力があった。ブレイディは確かに強くなっていた。だが、それでも、オレには届いていなかった。

 

「クッ!! こんなはずでは……!!」

 

 一方的でなくなったとはいえ、優勢に戦いを進めているオレに対しブレイディはそうこぼした。

 底は見えた、戦いを必要以上に長引かせる気はない。オレの奥義で終わらせる。

 ただの奥義じゃない。ユーリの想いに応える奥義で。

 

「これで終わりだブレイディ!! この一刀で沈め!!」

 

 そう言い放ち、愛刀”討魔正宗”を上段に構える。

 

「想いを貫くこの一撃、想穿一閃(そうせんいっせん)悠里(ゆうり)”!!」

 

 オレは前世も含めて彼女もいなかったし、モテた事も無い。だから恋愛というものが良く分からない。だけど、ユーリを想う気持ちだけは誰にも負けない。不器用でも、この想いを貫き通すと決めた。

 そんなオレの想いが籠もった討魔正宗の一閃は、ブレイディの身体を貫いたのだった。

 

 オレはブレイディを倒した。だが、まだこいつには用がある。息のある内に聞かなければならない。

 倒れいているブレイディに近づき、尋ねた。

 

「ブレイディ、邪竜とは何者だ? お前が魔王じゃなかったのか?」

 

 問いに、ブレイディは不敵に笑って応えた。

 

「”魔王”とやらはお前ら人間どもが勝手に言い始めた事。我らはこの世を統べる邪竜様の駒に過ぎん。世界に散らばる魔族の軍団、俺はその第1軍団長ブレイディ様だ。……だが、俺を倒したところでもうじき邪竜様が復活なされる。そうなればこの世は我ら魔族が支配するだろう!! フハハハ!!」

 

 それだけ言うと、ブレイディは事切れた。

 

 魔族の軍団。軍団長。そして邪竜の復活。どれも聞いたことの無い話ばかりだ。

 だけど、統率された魔族軍の存在は人間の軍隊のように組織だっていた。軍団や軍団長のような組織があっても不思議ではないし、聖竜の存在があるなら邪竜という存在があってもおかしくはない。

 

 今思えば合点が行く話だ。そしてそれは、邪竜の復活が近い、という事もあながち嘘ではないと思わせる。

 だからこそ、オレは女神によって転生させられたのだろう。

 

 そういえば、人間と結婚し、聖竜王国を建国した聖竜はその後どうなったのだろうか。聖竜もまた、どこかで復活の時を待っているのだろうか。

 それとも……もうすでにこの世に存在しないのだろうか。

 

 オレは、嬉しそうに駆け寄ってくる、その聖竜の子孫であるユーリを見ながらそんな事を思った。

 

◇◆◇

 

「ヤマトッ!!」

「ユーリッ!!」

 

 討魔正宗を鞘に納め、両手を広げてユーリを待った。ユーリはオレの胸に勢いよく飛び込んできた。ユーリを受け止め、優しく抱き締める。

 少しの時間抱擁し、一度身体を離した。

 ユーリに言わなければならない。自分の気持ちを、ちゃんと。

 

「ユーリ。さっきはごめん。色々考えたら、やっぱりオレはユーリと一緒にいたいと強く思ったんだ。それは王女だとか身分に関係無い。親友とか恋人も関係無い。――オレはユーリそのものが好きで、それが根底にあるからこそ、親友としても、恋人としても大好きだって、それがユーリの言葉で気付かされたんだ。オレにとってユーリは、もう無くてはならない存在になってしまっていた。……だからユーリ、ずっとオレの側にいて欲しい。オレはお前の全てが欲しいんだ!!」

 

 言った。言い切った。

 嘘偽りない、想い、真の心からの言葉。

 言葉を間違えないで伝えられたかは分からないけど、きっと気持ちだけでも伝わったはずだ。

 

 対するユーリはそれを聞いて、にこりと微笑み返した。

 

「うん、私もそう。ヤマト自身があって、その上でこれまでのように親友に、そして恋人になりたい。それに、私はこの世界に転生したのは全部ヤマトのおかげ。だから良いよ。私の全部あげる。――でも、私もヤマトの全部を貰うからね」

 

「ああ、勿論だとも。あらためてユーリ、好きだ、愛してる」

 

「うん、私も。嬉しい。本当に、凄く嬉しい」

 

 お互いの気持ちを確かめあった後、ユーリはオレを見上げ、目を閉じた。

 いくらオレでもそこまで鈍感じゃない。分かってる。これはキスを求めているんだ。分かっているさ。

 

 初めての事に緊張しながらも、唇を重ねた。

 辿々しくも初々しい初めての口づけは、ユーリの唇の柔らかさと瑞々しさでまるで甘い果実を口にしているようでオレを夢中にさせた。

 師匠が言うには凄く下手だった。と言われたけど、これから何度もして、上手くなってみせるさ。

 ただその時のオレはユーリとの初めてのキスの事で頭の中が一杯で上手いとか下手とかそんな事を考える余裕すらなかった。

 

◇◆◇

 

 どちらともなく惜しむように唇を離し、そして、もう一度抱き合った。心が満たされる、身体の芯から奮い立つように力がどんどんと湧いてくる。これが好きな人と心が繋がるという事か。

 そんな事を思っていると、遠巻きに静かに様子を伺っていた師匠とフランが騒ぎ出した。何事かと身体を離して見ると、自分の身体が白く輝くオーラに包まれていた。

 

「これは……聖竜のオーラ……」

 

 ユーリがぽつりと呟いた。

 確かにこのオーラは見覚えがある。ユーリが血の覚醒時に出ている聖竜の白銀のオーラにそっくりだ。もしかして、今もこの身体の奥底から力が湧いて出てくるような感覚はこのオーラのおかげだろうか。

 

「これは多分、聖竜の加護をヤマトが得たという事でしょう。私のように覚醒までは出来ませんが、更にヤマトが強くなったという事ですね」

 

 ユーリが何か考え事をした後、そう言った。

 

「まあでも良かったね、ユーリ」

 

「はい、フランのおかげです。色々とありがとうございました。フランがいなかったら、多分今でも気持ちに気付けなかったと思います」

 

 ユーリはフランとおしゃべりを始めた。

 

「やぁ~~っと、くっついたか!! 遅すぎなんだよ。見てるこっちはイライラしっぱなしだったぞ」

 

 師匠に背中をバン!と叩かれた。

 

「そうは言いますが、相手は王女だし、親友なんですよ!?」

 

「何言ってんだ。王女だろうと、親友だろうと、好きになった女を何もせずに見送るつもりだったのか!? 俺はそんな情けない男に育てた覚えはない」

 

 ちらりとフランを見る。確かに説得力がある。相手が勇者でも、年が離れていようとも関係ない。

 全く、師匠には敵う気がしない。

 

「まあだが、よくやった。ちゃんと言えたのは偉いぞ!! ――ユーリに先に言われたのは大きな減点だがな」

 

 確かに、ユーリに先に言われてやっと、そう思うと情けない。ユーリの方こそ自分が王女という立場がありながらだから、オレより思い切りが必要なはずだ。それに比べてオレは、ここまでお膳立てされてやっと、なのだから。

 

「だがこれからが本当に大変だぞ。お前は一般市民で、ユーリは王女だからな」

 

 そうだ。ユーリが王女なのは厳然たる事実、普通に考えたらオレと恋人同士なんてありえない。

 

「それについては考えがあります。私にお任せください」

 

 師匠の言葉を聞いたユーリはオレたちに対し、自身満々に言い放った。

 どうするのかと師匠が問い質したが、ユーリは「その時になれば分かります」としか答えなかった。

 

「そんな事より、魔王を倒したのですから私たちは胸を張って王都へ凱旋しましょう」

 

 その言葉で、オレたちは魔王を倒した証となりそうなものを回収し、魔王城を出た。

 こうして、魔王討伐の旅の目的は達成した。

 

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