親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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4.親友との再会と始まり

 

 オレと師匠はまた控室へ通され、ユーリ王女を待っていた。

 

「それにしても師匠、良かったんですか? 折角国王が男爵位まで用意してくれるって言ってたのに」

 

「良いんだよ、俺はもう王国に仕える気は無いし、貴族なんかまっぴらごめんだ。 ……なんだマット、まさかお前……ユーリ王女がいるから俺が邪魔とか言うんじゃねえだろうな」

 

「そんなわけ無いじゃないですか! 師匠が付いてきてくれるって聞いて嬉しかったんですから」

 

「ほんとかねぇ? ま、そういう事にしといてやるよ。そもそも相談も無しに魔族の長を討伐するなんて言い出しやがって、そういうのは事前に言っとけよ。――ったく、心優しいお師匠様に感謝するように」

 

「ええ、ありがとうございます、師匠。 相談もしてないのに付き合っていただけて本当に感謝してます」

 

 そんなやりとりをしていると、コンコンと扉を叩く音がした。

 

「マット様、クリストファー様、ユーリです」

 

 ユーリ王女……いや、悠里(ゆうり)が来たようだ。

 控室の扉を開けて入ってくるユーリ、その姿は薄手の革鎧と綺羅びやかな服が合わさったような、見た目重視で戦闘に向いてなさそうな格好だった。

 そしてその腰と背中には、聖竜王国の紋章が入った剣と丸い盾があった。

 

「ユーリ王女……申し訳ありません、うちのバカ弟子が勝手にあんな事言ってしまって。でも本当に良かったのですか? ユーリ王女が想像するより厳しい旅になると思いますが」

 

 師匠がユーリを心配して言ってくれた。

 でも多分、ユーリ王女が悠里なら、女神の言っていたとおりなら、きっと大丈夫だ。

 

「大丈夫ですクリストファー様。これでも王族ですから、小さい頃から鍛錬を欠かさずやってましたし、今では王国騎士なら勝てる程度には剣術を嗜んでますから。それに聖魔法は得意中の大得意なんです。きっとお役に立ってみせます」

 

「そういえば王族は皆様そうでしたね……。それにしても王国騎士を相手に勝てるなんて、相当なお強さです。もしかしたら3人兄弟で一番強かったりするんじゃないですか。 あ、あと、私の事はクリスと呼んでください」

 

「なるほど分かりました。それではクリス、これからよろしくお願いしますね。私の事もユーリと呼んで下さい。 それと、これから一緒に旅をするのです、余り(かしこ)まらずお話しください」

 

「ユーリ王女がそうおっしゃるでのあれば……。 分かったよユーリ、これからよろしく」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 2人は握手を交わした。

 オレはそれが終わるのを待ってユーリ王女に声を掛けた。

 

「ユーリ王女――」

 

「クリス、申し訳ありませんが、マット様と大事なお話がありますので少しだけ席を外して頂けますか?」

 

「……そういう事なら、席を外すとしましょう」

 

 師匠はそう言って、部屋を出ていく間際にオレにウィンクをしていった。

 いや、そういうのじゃないから!!

 

◇◆◇

 

 謁見前に控室に迎えに来た時の言動を見る限り、多分ユーリ王女は前世の親友、神月悠里(かみつき ゆうり)なんだと思う。オレをヤマトと呼ぶなんて、それしか考えれない。

 女神が言っていた優勝すれば自ずと親友に会える、というのもこの事だと思う。

 

 でももし、万が一違ったら、それは大変な事になる。だから、ここでちゃんと確認しておかなければ。

 

「あの、いきなり変な事をお聞きしますが……ユーリ王女……君は、神月悠里が転生した姿なのか?」

 

 そう恐る恐る尋ねると、ユーリ王女は微笑んで応えた。

 

「 ……ええ。私の前世は源道 大和(げんどう やまと)の親友、神月悠里です。そして転生して、今、ここにいます」

 

 源道大和、オレの前世の名前だ。もうこれは間違いない。ユーリ王女は悠里の転生した姿だ。

 

「ほ、本当にユーリなんだね、本当に……本当なんだね」

 

「本当に本当。ヤマト、ありがとう。会いたかった」

 

 全く似ても似つかないはずのユーリ王女の姿に、悠里の姿が重なって見えた。

 オレは気付いたら両手を広げ、ユーリをハグしようとしていた。

 するとユーリも、オレの胸に飛び込んできた。

 

「ユーリ、会いたかった。 ずっと、ずっと会いたかった」

 

「私もだよ、ヤマト、さっきはちょっと感情が抑えられなくなったけど、それくらい嬉しかった」

 

 女の子になったユーリの身体は小さく、あの時と比べるまでもなく別人だ。

 だけど、オレにはこの女の子がユーリだと心から思えた。

 

「――そうだ! ユーリ、覚えてるか? オレ、約束守ったぞ。あの後も頑張って、約束した高校に受かったんだ!」

 

「ああヤマト。お前ならきっと出来るって言っただろ、なんたってヤマトの事は私が一番良く知ってる、お前が本気を出したら、私でも敵わないよ」

 

「だけど、ユーリがいない高校生活は何も感じられなかったよ。凄く虚しかった。やっぱりオレにはユーリが必要なんだって、何度思った事か」

 

「私も入院中、ヤマトが面会にきてくれて、一緒にいて、話を聞く事だけが私の助けになって、生きる楽しみだった。ヤマト、あの時は最後までありがとう。……それに、こっちの世界に生まれ変わらせてもらって、またヤマトに会えて、本当に嬉しいんだ。 女神様にこちらで生まれ変わらせてもらう時、私は決めた。今度はヤマトを助ける番だって」

 

 オレの存在がユーリにとって助けになっていたと言われ、オレの心のつかえがスッと取れたような気がした。

 面会に行くことがユーリの負担となり、病気の進行を早めただけなんじゃないかと、ずっと思っていたからだ。

 

「ヤマト、私は生まれ変わって女の子になっちゃったけど、これからも前と同じように親友でいて欲しい」

 

 ユーリがどんな姿でも構うものか、それこそ魔族だって構いやしない。

 ユーリはオレの親友だ。それは永遠に変わらない。

 

「オレだって前とは違う、だけどユーリは親友だ。これまでも、これからもそれは変わらないよ」

 

 そうして、オレたちはソファーに座り、前世の事、この世での今までの事を話し合った。

 ユーリが伝令巫女だった事も知らされて驚いた、言われてみれば声が一緒だ。最初の出会いから国王との謁見なんかがあって、そこに気付く余裕が無かった。

 

 そして、女神とユーリの繋がりが深い事を知らされた。

 ユーリの魂はそもそも存在が消えていて、それがオレの強い想いと、ユーリのオレへの強い想いがあり、そこに女神の力があってやっとユーリの魂が復活出来た。

 そういう意味で現世において、オレよりユーリのほうが女神と繋がりが強く、だから女神と交信が可能。という事だった。

 

◇◆◇

 

 しばらく2人で話していると、控室の扉がノックされた。

 

 !!

 しまった!! 夢中になってすっかり忘れてた!! 師匠を部屋から追い出したままだった!!

 同様にユーリも忘れていたのか、オレと顔を見合わせ。お互いに苦笑した。

 

「師匠! すみませんでした!」

 

 慌てて扉を開けると、師匠に頭をはたかれた。

 

「マットお前……ユーリとイチャイチャしてて俺の事を忘れてただろ。 明日の鍛錬が楽しみだなあ?」

 

「イ、イチャイチャなんかしてませんよ!! ただ、色々話してただけで……」

 

「それをイチャイチャというんだ。で? どんな話をしてたんだ?ん~?」

 

 う、言えない。前世の話なんて言えるわけがない。

 それに今までの事も、ユーリが女神と交信出来て、オレとずっとやりとりしてたなんて、言えるわけがない。

 

「そ、それは……」

 

「クリス! 私がヤマトから色々とお話を聞いていたのです。ここまでどのようにして来たのか。どうやってそこまで強くなったのか、そんな話を沢山聞いていました。 それにクリスを呼ばなかったのは私の責任でもあります。 責めるなら私も同罪です」

 

「……ユーリに言われちゃ何も言えねえよ。良かったなマット。――それにしてもユーリ、さっきもそうだったが、なんで”マット”じゃなくて”ヤマト”なんだ?」

 

 ユーリはしまった。という表情を一瞬だけした後、こう返した。

 

「えーと……そう! マット・アンス・ヤシン、頭文字をとってヤマトです。これから私はマットの事をヤマトと呼ばせていただきます。そのほうが特別感がありますので」

 

 うーん、苦しい。それに何だ特別感て。

 

「なんだいそりゃ。 ……まあ別に良いけど、マットは良いのか?」

 

「あ、うん。オレも特別感あるから嬉しい……かな」

 

 乗っかるしかないでしょ。合わせるしかないでしょう。たとえ苦しかろうとも。

 親友のためだ。

 

 そんなやりとりの後、オレたち3人はやっと王城を出た。

 ユーリは兵士や騎士、使用人たちに時間を掛けて別れの挨拶をしていた。その様子を見る限り、ユーリは城の人たちに敬愛されてたんだなあと実感させられた。

 まあ、これだけ可愛くて、兵士や騎士と一緒に鍛錬していたと聞けば、そりゃあ人気もあるだろう。

 

 ――親友に可愛いと思うの、セーフだろうか。

 まあセーフだよな、男の時も格好良いと思ってたんだし。

 

 それにどれだけ可愛くても、あれはユーリだ、親友のユーリなんだ。

 やっとユーリに再会出来たし、ここからがオレの旅は本当の始まりだ。

 

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