親友を転生させたら竜の王女でTSヒロインになってた件   作:エイジアモン

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7.王女の着替え

 

 ユーリは選ばれなかった方の服を魔法袋に納めて振り返った。

 

「それじゃあ着替える」

 

「ん、じゃあ外で待ってるから。終わったら声掛けて」

 

 と席を外すために立ち上がるとユーリがオレの腕を掴んで引き止めた。

 

「着替え中に何かあったらどうするんだよ? 何のために同じ部屋にしたと思う? 此処にいなきゃ駄目だろ」

 

 とんでもない事を言いだしたよこの王女様は。

 

「いや、そういうわけにもいかないだろ。大体オレに裸を見られても平気なのかよ」

 

「着替えるだけだけど……。 それに服はいつも使用人に着させてもらってるし、裸なら使用人に毎日見られてるから気にするな」

 

 毎日見られてるってのは……アレか?着替えやら風呂やらはメイドが脱がしたり着せたりするやつか?

 それで見られ慣れてるから羞恥心が薄いという事なのか?

 ……ん?という事はまさか。

 

「じゃあ男にも見られ慣れてるのか?」

 

「え。いや、流石にそういう事をやらせるのは女性だけだよ。 そもそも今も着替えるだけだから下着姿になる程度なんだけど。 ――まさか~? ヤマトお前……男に見られてたのが気になるのか?」

 

 そう言って、ニマニマとオレを見ている。

 

「ち、違うって!! ほら!あっち向いてるから早く着替えろよ!」

 

 扉の前に移動し、扉を向いて仁王立ちした。

 ユーリはただ親友だから一緒の部屋になりたい、という程度だとオレは思っていて、その考えが抜けていた。

 まあ、だからこそ一緒の部屋という事なんだろうけど……そういう心構えはしてなかったからなあ。

 

 ――それに、幸い他の男に裸は見られてないらしく、なんだかホッとしたような、安心したような……。

 いやなんで安心するんだよ。何が幸いなんだ。

 あーもう、わけわかんねぇ。

 

 なんとなく釈然としないが、万が一に備えて扉の外、そして背後にある窓の外など周囲の気配や音に神経を張り、警戒する。

 

「それじゃ脱ぐぞ~」

 

 一々言わなくていいから!!

 

 ――そして問題が発生した。周りの気配や音に集中しているから必然とユーリの衣擦れの音なんかがハッキリと聞こえる。

 ボタンを外す音、絹が擦れる音、そして吐息、オレの頭の中にはそのイメージが浮かんでいた。

 駄目だ駄目だ!! 外の音に集中しろ!!

 頭をブンブンと振り、雑念を飛ばし、後ろのユーリでなく、外の音に注意を払い直す。

 だけど、まだまだ未熟なオレは妄想のユーリの姿が脳裏から離れず、まるで拷問のようにオレを苦しめた。

 

「おーい、終わったからこっち向いていいぞ~」

 

 ……ホッ、どうやら着替え終わったようだ。

 ハッキリいってまともに集中できなかった。だけど、やっとこの拷問のような時間が終わったようだ。

 一言文句を言ってやろうとユーリに振り向いた。

 

「おい! ユーリ――――ッッ!!??」

 

 振り向くとそこには下着姿のユーリが立っていた。

 

「バッ!! バカ!!ユーリ!! 終わってないじゃん!!」

 

 慌ててユーリに背を向け、顔を覆った。

 なんで下着姿なんだよ!!着替えはどうした着替えは!!

 

「どうしたんだヤマト? 急にそっぽ向いちゃって」

 

 ユーリは横から覗き込んできた。

 ちらと見るとやっぱり下着姿だ。

 

「いいから早く服を着ろって!!」

 

「だからさっき言っただろ。服は着させてもらってるって。ほら、ヤマトが着させてよ」

 

 そう言って、ユーリから顔を背けるオレに服を押し付けてきた。

 

「確かにそう言っていたけど! でも、服くらい1人で着られるだろ!?」

 

「ほらほら、早くして。下着姿のままじゃ風邪ひいちゃうよ。ほらほら~」

 

 オレの背後から、首がぐらんぐらんとするほど両肩を掴んで揺らし、急かすようにのたまうユーリ。

 

「早くしないと大声出すけどいーの? クリスが来てこの状態を見たら大変な事になるだろ〜な〜」

 

 こ、こいつ……。オレを脅迫するつもりか……。

 

「わ、分かったよ! 着せるからちょっと離れて! あっち向いて待ってて!」

 

 この状態で師匠を呼ばれたら大変な事に、下手すれば殺されるのでは?

 とにかく、そんな事態だけは避けなければ。服を着せるくらいなんだ。相手はユーリだぞ、平気平気……多分。

 

 深呼吸を繰り返し、激しい鼓動を落ち着かせる。

 気合いを入れて振り返ると、ユーリが部屋の中央で背中を向けて立っていた。

 

 背中まである初雪のように輝く綺麗な銀の髪に、白く染みひとつ無い陶器のようなすべすべとした小さな背中、大きな胸を優しく包む白いブラに、尻を覆うこちらも白のショーツ、そして細くクビれた腰に装着された銀糸装飾のガーターベルトが、しなやかな足に纏う白のストッキングを留めている。

 全てがシルクで、そして全身が白銀に染まっていた。

 

 均整の取れた肢体に組み合わされた高級な質感とあしらいはユーリの美しさを引き立て、あまりの綺麗さにオレは目を奪われ、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「ねえまだー?」

 

 ユーリは平然とそんな事を言う。

 こっちは平常心を保つだけでも大変だってのに。

 

「わ、分かってるって」

 

 服を手に取り、広げる。

 あれ?これって、どうやって着せるんだろう。

 

「オレ、女性服の着せ方分かんないだけど……」

 

「んもー、しょうがないなあ。私が教えてあげるよ」

 

 そうやって、教えて貰いながらユーリに服を着せていった。

 極力、出来るだけユーリの肌を見ないように努力していたのだけど、それは無理だと諦め、途中からは自分の理性を総動員して、暴走しないようにしていた。

 

「お疲れ様ヤマト。んー。40点。ギリギリ赤点回避かな?でも私に教えて貰いながらだからやっぱり赤点だな」

 

「やっと終わった……なんで普通の服っぽいのにこんな面倒な作りなんだ」

 

 やっとユーリに服を着せ終わり、またしても拷問のような耐え忍ぶ時間が終わった。

 下着姿を至近距離で見られたというのにユーリは平然としていて、オレの着付けに採点なんかしていて余裕そうだ。

 

 ユーリはオレに見られた事は気にならないのだろうか。

 親友だから? オレだって親友だと思うけど、それでもユーリの身体は女の子で、それを見せつけられると気になってしまう。男の(さが)として。

 それとも、オレを男として見ていないのか。

 

 ――自分で思っといてなんだけど、男として見られるのも、見られないのもなんか違うと感じる。じゃあどう見られたいのか、それは分からない。……面倒臭いやつだな、オレは。

 

 まあ、使用人に身体を見られ慣れていて、下着姿程度たいした事じゃないと思ってる可能性もあるか……。

 

「そりゃあ、身体を細く見せたり強調させたりとか見栄えを良くするための仕組みがあるからね。普通の服とは違うのだよ、普通の服とは」

 

 ふふん、と何故か自慢げに言う。1人では着れない癖に。

 まあでも、そういうものか、美しく見せる仕組みってやつか、そりゃあ大変そうだ。

 でも、下着姿を見る限り、そんな事しなくてもユーリは綺麗だと思った。

 

◇◆◇

 

 そんな事をしていたら結構時間が経っていて、晩飯の時間が近づいていた。

 

「さて、そろそろ晩飯だ、師匠に声かけて行こうか」

 

「あ、もうそんな時間? 楽しくて時間を忘れてた」

 

 ユーリはそう言って微笑んだ。うん、極上だ。

 それに、楽しくて……か。

 

「オレはめっちゃ大変だったけどな」

 

「そんな事言って、本当は嬉しかっただろ?素直になれよ〜」

 

 ユーリがオレに飛びついてきた。

 

「ちょ! 近い! つうかくっつくなよ!!」

 

「え〜、前からこんなもんだろ〜」

 

 そうだよ。ユーリは前世でも距離が近かったんだ。

 部活中に点を決めてハグは当たり前で、普段から肩に乗っかってきたり、首に腕を回してきたり、オレの頭に顎を乗せてきたり、グリグリ〜と言って頭を擦り付けてきたりもして、猫かよと何度も思ったものだ。

 ただ、当時と違って、今はユーリの方が小さく、オレの方が背が高くて身体も大きいという違いはあるけど。

 

「良いから師匠のとこ行くぞ」

 

「おっけ〜おっけ〜」

 

 ユーリは段々と、前世のような雰囲気に戻りつつあって、それは昔のユーリが戻ってきたように感じられてとても嬉しい事だった。

 多分オレは、この先ユーリらしさを見る度に何度でも嬉しく感じると思う。

 だってオレはユーリが大好きだったんだ、それは当然、友達として、親友として、だ。

 

「ん、何? ジロジロ見て」

 

「いや、なんでもない」

 

「まあ私は魅力的だからなあ、分かるよ」

 

「言ってろ」

 

 そんな事を言いつつ、オレの頬は緩んでいた。

 

◇◆◇

 

 師匠と合流し、食堂へ移動した。

 

「ユーリの口には合わないかも知れないが、慣れて貰わないとな」

 

「そうですね。ヤマトからは旅の間の食事は干し肉なんかの乾物が多いと聞きましたし、こういう場所での食事にも慣れないといけませんね」

 

 師匠とユーリの会話だ。

 ユーリはオレとの会話でのみ昔の様な言葉と会話で、それ以外の人とはやはり、少し距離を空けて丁寧な言葉使いだ。

 ただ、本人が言うには、これが砕けすぎず、固くなりすぎずで丁度良い塩梅なのだとか。

 

「ところで、ユーリは大丈夫だったか?マットに何かされてないか?」

 

 師匠は心配そうにユーリに尋ねる。

 もっと弟子を信用して欲しい。仮にも5年、もうすぐ6年も一緒にいるというのに

 

「大丈夫です、ヤマトはクリスが心配するような事はしません。それに信じてますから」

 

「随分と信頼してるようだが……一応確認しても良いか? ユーリとヤマ……ああ、ユーリのがうつっちまった、まあ良いや。ユーリとヤマトは今日が初対面なんだよな?」

 

 師匠の言う事はもっともで、それが普通の疑問だろう。

 仮にも王女が、初めて会った、それも異性に対して同じ部屋に泊まる事を主張するなんて、しかも全幅の信頼を寄せていて、仲が良さそうに見える。

 これは疑問を持っても不思議ではない。

 そしてこの疑問に、ユーリはなんて応えるのだろう。

 

「簡単な事です」

 

 ユーリは事もなげに人差し指を立て、説明し出した。

 

「私は昨日、武闘大会を観戦した時に、ヤマトの事が一目で気に入ってしまったんです。それで王都の控室でも、宿でもずっと話をしていました。私たちはもう親友です。そして親友としてヤマトの事が大好きなんです。それも一番に」

 

「大好きな……親友、ね」

 

 ”大好き”と聞こえた時は不覚にもドキッとした。親友と言ってはいたけど。

 

「で、ヤマトはどう思ってるんだ?ユーリはこう言ってるけど」

 

 と師匠がオレに振る。

 

「ええ、ユーリは親友ですよ、オレにとって、大事な、大事な親友です」

 

 そう応えると、ユーリはうんうんと嬉しそうに頷いていた。

 

「……まあそうだな。ヤマトには同世代の友達がいなかったし、そういう意味ではお互い丁度良かったんだろう。 良かったな、ヤマト」

 

 師匠は勝手に1人で納得し、オレの頭を掴んでグリグリと撫で回した。

 止めろって! と手を払いのけると、師匠はハッハッハ! と笑って少し嬉しそうだった。

 師匠は師匠で、オレに同世代の友達がいない事を気にかけていてくれたんだと思う。

 

 それから食堂での晩飯を終え、銭湯へと向かう事に。

 師匠とオレの二人の時は頻繁には入ってなかったのだけど、これからは入れるタイミングで毎日入る事にするそうだ。

 ユーリは別に1日くらいなら大丈夫だと言っていたが、そういうわけにもいかない、と師匠は譲らなかった。

 これからは入りたくても入れないんだから、と師匠はユーリを説得した。

 

 そして、王都で一番大きい銭湯へと向かうのだった。

 

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