本日で三回目になるジュエルシードをサルベージすることになった俺達は港町の一角で今回のサルベージの打ち合わせをしていた。
以前と違うのはなのはちゃんとユーノ君。そして、アリサがついて来た。
すずかちゃんは俺の協力者兼出資者の妹兼ダイバー。
なのはちゃんはジュエルシードを回収しに行くと聞いてついて来た。
そんな二人について来たアリサ。寂しかったんか?
「で、あんた達。こんな海に来て何しようとしていたの?」
いざ、出港。というタイミングで現れたアリサは俺に食ってかかる。
なのはちゃんは意外と頑固だし、すずかちゃんは質問を煙に巻く。俺、ちょろい。
うん、自分でもこの意志の弱さをどうにかしたいとは思っています。
「ダブルデート!」
「「「・・・・・・・・・」」」
「あ、はい。嘘です。宝探しです。だから真顔で見つめないでください。ゾクゾクします」
自分調子のっていました。
「で、本当の事を言いなさい」
「いや、だから宝探しだって」
「ふざけないで!」
「いや、ふざけてないって。ほれ、これ」
俺は怒鳴るアリサにジュエルシードを見せるが事情が分からない彼女にとって石ころを見せつけられているにすぎない。
「何なのよ、それ!」
「何なのよ、それ!と聞かれたら、答えてやるのが世の情「言わせるかぁあ!」けぼぉ?!」
なんなのっ、鼻フックの次はボディーブロウとか。肉体言語がセレブの中で流行ってるの?!せめて最初の一節くらい言わせてよ!
アリサの拳が引き抜かれると同時に非難じみた目線を浴びせようとしたが、アリサの顔を再び見ると涙目のアリサが見えた。
「…なんなの。みんなして私だけをのけ者にして!教えなさい!教えなさいよぉ…」
最後の言葉尻は涙声になって消えそうになるくらいに弱々しい声だった。
このまましらばっくれるとアリサはこれから先ずっと話しかけても返してきそうにないかもしれない。
なのはちゃんとユーノには魔法の存在は秘密にするように言われた。
すずかちゃんと忍さんからも『夜の一族』の事は秘密にされている。
だから、喋れるのは自分の事。邪神の事だけだ。
「…アリサ」
「…何よ」
「じっとしてろよ」
「…え?」
WCCの光が裕とアリサを包み込む。
その光が収まると、海鳴の街が一望できる空の上に二人はいた。
正確には透明な灯台を作り上げて、そう見えるようにしただけなのだが、裕以外の人間が見れば二人がいきなり空に浮かび上がっているようにも見えるだろう。
「え、え、えええええ?!」
「一応、これ秘密兵器だったんだけどなぁ」
一応見えないだけであってちゃんと地上に続く階段も落ちないように手すりも完備されている。窓だって開いてはいるが、人が間違って落ちないように格子もつけている。
これを使って敵の攻撃を防御したり、見えない巨人のパンチをお見舞いする『見えないシリーズ』。
いくらフェイトでも、これを一見で見抜くという事はないだろう。
そして、『見えないシリーズ』のもう一つの利点。それは、
「下から見たらアリサのパンツ丸見えだな!」
「アホかぁあああっ!」
いつものキレのいいツッコミ、ありがとうございますアリサさん。
空に浮いていると感じる異常事態にもかかわらず、俺のボケに突っ込みを入れるアリサは冷静さを取り戻しているだろう。
さて、地上に戻りますか。
一応、シフトムーブで地上に降りてから透明な灯台の元になった素材も元に戻す。
「あーあ、これであそこにいた俺達の写真を見られたらバニングスさんに情報操作してもらってもみ消してもらわないと…。いや、忍さんにお願いしようかな」
アリサにはさくっと俺の持つWCCの事をばらす。
その能力でジュエルシードと言う危険物があちこちに落ちているという情報をある人(フェイト)から教えてもらい、それの回収作業を行っている。
忍さんと恭也さんにはその協力をお願いしている最中ですずかちゃん。なのはちゃんにばれたと伝える。嘘は言っていない。
「…なんでよりにもよって私のパパが第一目撃者なのよ」
「バニングスさんじゃなかったら俺はお前と会わなかったかもしれないぞ?」
「ううぅ、納得いかない」
魔法の事。『夜の一族』の事は言っていない。というか、WCCの事だけでアリサはお腹いっぱいだろう。
「じゃあ、私と遊べなかったりするのって…」
「まあ、ジュエルシードが原因かな」
「…でも、なんで私が最後なのよ」
そこに文句を言われても困る。
と言う訳でボートに乗りこむ。俺、すずかちゃん、忍さん。メイドズ。恭也さん。そして、なのはちゃんにユーノ。アリサ。
「なんでアリサちゃんも乗っているの?」
「そのまま返すわ。回収作業って、ダイビングでしょう?運動音痴のあんたが乗っていたら危ないんじゃないの?私は一応経験有るから手伝おうと思っただけよ」
「いやいや、二人と一匹も降りろよ。すずかちゃんは二人よりも運動神経いいからいいとして、俺のWCCで強化したダイバースーツは五人分しかない」
「私の分もすぐ作りなさい。予備ぐらいあるでしょ」
のしのしと船に乗り込んだアリサは船に掛けていたダイバースーツをあさりながら自分に合うスーツを手に取る。
「これは私が着るから」
「それ、俺の」
「あんたはこれを着なさい」
「ショッキングピンクは勘弁してくれ」
「さっきの透明な灯台みたいにすればいいじゃない」
「つまり、透明なダイバースーツを着てなんちゃってストリートキングになれと」
「着たければ着ればいいじゃない」
嫌だよ。邪神にしか見えないスーツを着るのなんて。
「ふ、二人共置いてかないでぇえ、私も乗るぅう」
結局、七人と一匹で海に出ることになった。
ショッキングピンクは着ていない。
船の上でダイバースーツを着ることになるので必然と着替えイベントが始まる。
「…すずか、またおっぱい大きくなった」「えっ、そうなの?」「ちょ、そんなこと言わないでお姉ちゃん」「…すずか、あんたちょっとずるいわよ」「うわ、本当だ。私の胸より柔らかく感じる」「なのはちゃ、ちょ、くすぐったい」
と、女性陣が話している間の男性陣はというと…。
「恭也さん!離してください!幼馴染の成長をこの目で確かめないといけないんです!」
「いやいや、そんな事を言われて離す恋人で兄ではない。というか、なのは達に興味があるんだったら今までWCCで見ようと思えば見れたんじゃないのか?」
「このシチュエーションが大事なんですよ!」
「なんだ、その訳の分からん美学は?」
色々な騒ぎがあったもののジュエルシードを二個発見、回収に成功した。
そして、邪神が雷と共に現れた女性に攫われた。