リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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別名:邪神様の休日


第三十三話 邪神様の笑ってはいけない24時!

 「最近、裕の付き合いが悪いと思うの」

 

 それは土曜のお昼にバニングス邸で開かれたお茶会だった。

 その言葉の主はバニングス令嬢のアリサ。

 彼女が座る椅子の前には綺麗にかたどられたテーブル。それを囲うように幼馴染のすずかとなのは。そして、テスタロッサ姉妹がいた。

 

 「そう、だね。裕君、最近は放課後になるとすぐどこかに行っちゃうし…。今日のお茶会にも参加しなかったし」

 

 それは単に邪神の神技の波動で動物に嫌われるという事情があっての事だが、バニングス氏(アリサの父)が時々お願いしてくるアクセサリー加工の仕事には欠かさず来る裕にすずかとアリサは不満だった。

 

 「私は朝稽古しているお兄ちゃん達に混ざっている裕君をたまに見るくらいなんだけど・・・」

 

 裕はJ・S事件以降、事件で負った怪我から復帰してからは殆ど欠かさず高町道場に通い詰めてスタミナと反射神経を鍛えている。

 なのはがたまにというのは単に彼女がお寝坊さんなだけだ。

 

 「私達の場合はご近所さんなのに夕方からちょっとの間しか遊べてないんだよ。こんなに可愛い妹がいるというのに」

 

 「・・・ま、まあまあ、アリシアも落ち着いて。でも、確かにここ最近ユウは何かに追われているみたいに忙しい気がするよね」

 

 ぷりぷりといった具合に頬を膨らませるアリシアをなだめるフェイト。

 彼女達の所に遊びに来る裕もブラックゲッターで模擬戦をしたり、今ではテスタロッサ研究所の警備をしているゲッターロボの性能をプレシアと話し合っているだけで、実際姉妹たちと言葉を交わすのは研究所の出入りをする時と模擬戦の時だけで基本的に遊んでいない。

 

 「・・・ここまで来ると私達って、避けられてない?」

 

 アリサの言葉に全員が暗い顔をする。

 大なり小なり裕の事を気に入っている少女達。メダルトリオ。今はコンビだが、あの二人のように自分達を避けているのだとしたら悲しくなってきた。

 

 「・・・明日、ユウの事をつけてみよう」

 

 アリシアの言葉に全員が顔を上げる。

 

 「森下さんから聞いたけど明日、ユウはイエーガーズの集会は午前中だけで午後からは何の予定も入っていない。だから、午後にユウが何をしているかを調べてみて、それで私達をどう思っているかを確かめてみよう」

 

 あわよくば裕が好きな物を調べ上げて彼の好意を上げるのもありだとアリシアは言った。

 かくして、第一回。邪神の素性調査隊が結成するのであった。

 

 

 

 邪神の朝は意外と早い。

 

 AM4:30

 肌色のメロンを象った枕から顔を上げる。と、同時に奇声を上げる。

 

 『キャッチマイハァアアアアアトッ!!』

 

 そのあと、『ぶるわぁあああ!ぶるわぁああああ!』と巻き舌の奇声を上げながら踊るロボットダンスを繰り広げる光景に知人ならず両親が見ても気が狂ったかと思わせるその光景が繰り広げられている裕の部屋はWCCで完全防音となっている為誰にも察知されることはない。

 ちなみにこの行動はいつお笑いの場が開かれてもいいように毎日踊っている邪神の日課である。次候補は『もげもげ』と両手の運動をするようなうねうねとした不思議な踊りである。

 こっそりと部屋の中に配備された監視魔法。フェイトのサーチャーが無ければ。

 

 その行動にアリシアとフェイトは口に含んでいた歯磨きと水を噴きだした。

 

 

 

 AM5:00

 朝食を取った邪神は高町兄こと高町恭也と共に公園の周りをジョギングする。

 それから30分ほど走った二人は軽く組み手を行い、家へと帰る。

 帰り際に、『お、おぼえてろよ~』と嘘泣きしながら帰った邪神は帰り道の途中にある橋の下に行き、そこにおかれていた『E・女人禁制』と書かれた段ボールの中にあったHな本をうひょひょひょ、と閲覧してから家に帰った、

 

 後にアクセルシューターの練習を兼ねたなのはさんの手によって滅却処分される段ボールだった。

 

 

 

 AM9:30

 イエーガーズ全員がさながらチアリーディングの高速で組体操をする。

 何故、高速で行うのか。ゆっくりでも難しいピラミッド。スクラム状態を上に重ねたエッフェル塔なるオリジナル技を繰り広げる彼等のチームワークは海鳴一のチームだろう。

 後に、橋の下にあった段ボールと言う名の秘蔵の宝箱が燃やされた後に滂沱の涙をこぼす羽目になるのはそれから二時間後の事である。

 

 

 

 PM0:00

 

 自分達の宝を失ったとお互いに抱きしめあいながらひとしきり泣いた彼等はお昼ご飯を食べる為に家へと帰る。

 その途中で出会った青いわんこに唸り声を上げられた邪神は更に気分を落す。

 彼は動物好きなのだ。それなのに嫌われる。そのことにとぼとぼ歩いていく彼だったが、途中で出会ったバニングス氏と会い、お昼ご飯を御馳走してもらうことになる。

 その中で宝(Hな本)を失ったことを教えてもらったバニングス氏は、邪神に新しい宝(グラビアアイドル写真集:全年齢指定)を授けた。

 

 後に、娘からそれを知らされたバニングス一家の夜は気まずいものとなった。

 

 

 

 PM5:00

 

 邪神だってお洒落には気をつかう。

 自分の部屋で『もてる男の10万と3000の法則』というあまりにも規則が多すぎるお洒落の本。それはまるで国語辞典やタ○ンページにも似たその本の大きさに読書家のすずかは興味を引かれた。

 その内の一つの項目に『清潔な服を着る』という物がある。

 それを見た邪神は押し入れから綺麗な服を取り出す。

 英語のアルファベットで『V』の字になった服。というか、着ぐるみを着込み、鏡の前に立つ。

 

 『びゅーちほー』

 

 ぶはうっ。と、噴きだすなのは達。

 サーチャー越しに見えた邪神のうっとりとした顔で発言した姿に我慢できずに噴きだしてしまう。

 そこから繰り広げられる朝にやったロボットダンスでお腹が痛くなる彼女達。

 それは2時間後に用意される晩御飯まで続くのであった。

 

 




 邪神「おたくの御嬢さん達。ストーカーしてるよ」

 保護者S「きつく言っておきます」

 お宝を奪った犯人を捜し出した邪神は自分がつけられていた事を知るのはそれから三日後の事である。


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