リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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A’s編
第三十四話 華麗なる邪神様!七色に輝くベリーメロン!


 「お代官様、これが約束のブツですぜ…」

 

 「ふっふっふっ。越後屋、お主も悪よのう…」

 

 車椅子からベッドの上にと薄幸度数を上げた少女はやてと怪しく笑う邪神が一人。

 先日、はやてと図書館で遊んだ時に精密検査を受けることを聞いた裕はお見舞いに大量のメロンを準備した。

 もちろん、子どもの裕が買うには高価すぎる果物。メロン。

それがリヤカーに敷き詰められるかのように入っていた。

 だが、そこはパトロンのバニングス氏に準備してもらった。人脈と言うのはこういう時にこそ役に立つ。特に金持ち。

 放課後になって、そのメロンをなのはの父。士郎が入院していた病院まで運ぶ。

 学校の制服も着替えて先日着ていた『V』の着ぐるみ。しかもWCCで『変声』の機能をつけたその着ぐるみからは巻き舌が妙に心地よいあの声が出るようになっていた。

 はやてが病院にやってくる前に『ぶるぅわあああ!』と『ベリィメロン!』の大合唱が病院で行われていた。

 彼女があずかり知らぬところで邪神は病院職員を持ってきたメロンで買収。もとい、入院中の子ども達が喜ぶという出し物という名のダンスを披露。

その結果が奇声の大合唱である。

 一緒に来てくれた榊原君はベッドの上から動けない子ども達に切り分けたメロンを配りに行ってくれている。

 その結果(?)もあってか、はやてにはあらかじめ準備していたとっておきのメロンをはやての前に置く。

 メロンにはハンカチで覆い隠した状態で。

 しかし、そのハンカチはまるで角張った物を覆い隠している様だった。

 

 「・・・なあ、はやて。あたしが知っているメロンはハンカチをかけただけで角張るような物じゃないんだけど」

 

 はやての付き添いで一緒にやってきた赤毛のおさげ少女。ヴィータはユウの奇抜な服装を気にしながらも裕の差し出してきたメロンなる物を怪しい目付きで見ていた。

 

 「食品衛生法と共にそんな幻想はぶち壊す」

 

 「いやいや衛生法は守ってぇな。日本人は食にうるさいんやから。それにうちの台所事情でそれはシャレにならへんわ」

 

 「はやてちゃん。どうして私を見ながら言うんですか?」

 

 それは一緒に来れなくなったピンクの髪をした女性と一緒に寝込んでいる青い狼が物語っている。

 家で寝込んでいる二人を思ってかヴィータは責めるような視線を肩まで伸ばした二十歳ぐらいの金髪女性。シャマルに向かってはやてとは違った視線で彼女を見ていた。

 

 「シグナムとザフィーラにそれ言っちゃ駄目だかんな。シャマル」

 

 「ちゃんと味見をしましたよ?!」

 

 「そこのお姉さんの料理そんなにまずいの」

 

 「まずいんやない。きついんや」

 

 「はやてちゃん?!」

 

 金髪美人さんは涙目だが、はやてとヴィータの視線の方が、彼女よりも説得力がある。

 しかし、怖いもの見たさに裕は関心を引かれる。

 のちにシャマルが持ってきた物体Xは殺人シェフ・ミユキの作り出した兵器と同等のレア度(殺傷力)のブツにより邪神が再び転生しかけたのは後の話である。

 

 「まあいいっ。これが俺の準備したベリーメロンだ!」

 

 裕がハンカチを取り払うと甘い匂いが香る『V』の形をしたメロンが姿を現した。

 

 「なんやねんこのメロン?!」

 

 「とある魔物が夢見たといわれるベリーメロンだ!」

 

 「どんな魔物だよ?」

 

 「こんなだ!」

 

 裕は両足を閉じて両手の指を閉じて空に勢いよく伸ばす。

 その姿勢はまさしく『V』。

 その後ろから見える廊下には入院中やお見舞いに来ていた子ども達が一緒に『V』の姿勢を取る。

 

 「いつの間にこの病院の子ども達を洗脳、じゃなくて統率したんですか?」

 

 「はやてと知り合ってからかな?」

 

 「一週間でこの完成度って一体・・・」

 

 ベリーメロン(歌・踊り。メロン本体の味)の魅力に取りつかれた彼等の動きはまさに一糸乱れない動きだった。

 呆れと驚きが混ざった顔をしていた八神はやての面々だったが、驚くにはまだ早い。

 

 「ちなみにこのメロンの後ろには俺の顔が彫られている」

 

 「気持ち悪っ!白目をむいていて気持ち悪っ!」

 

 「そして、更にそれを切ると・・・」

 

 進められるがままにそのメロンを輪切りにするシャマル。

 その切り口からは七色に光るメロンの果肉が現れた。それをみた三人(はやてはのけぞるだけだが)は思わずそのメロンから距離を取る。

 

 「「「気持ち悪っ!」」」

 

 「何が気持ち悪い!ただ果肉が七色のメロンなだけなのに!」

 

 「配色がアウトやろ!」

 

 金、黒、紫、白、ピンク、茶色、銀。

 と、虹色ではない七色に光る果肉を持つV字のメロン。

 もちろん、裕がWCCで加工した姿形だけ変形させたメロンだ。

 

 「メロンだってそんな事を言われるためにここまで育ったわけじゃないのに何て言い草だ!」

 

 もし、メロンに自分の意志が邪神に伝わるのならこう言うだろう。

 『こんな形にもなりたくなかったよ!』と。

 

 「香りはいいのに配色の所為で喰う気失くすな。これ・・・」

 

 確かにまるでかきまぜられた絵の具のような配色は確かに食欲を無くす。

 

 「んもう、わがまま。はいはい、元に戻せばいいんでしょ。戻せば」

 

 ヴィータの言葉を聞いて裕は再び切られたメロンにハンカチをかけてWCCを発動させる。

 その波動を感じ取ったのか、シャマルとヴィータは裕を見る目付きを鋭くする。

 

 「はい、これで元通り」

 

 「おお~、まるで魔法みたいやな」

 

 「魔法じゃなくて神技ね」

 

 はやてのさりげない言葉に素で返す裕。

 これでようやく本題に取り付ける。

 

 「神技?なんや、それ?」

 

 「魔法じゃない、不思議な力とでも言えばいいかな。俺の力は物体に干渉する魔法とでも考えてもらえばいいよ」

 

 「・・・へー、まるで魔法を知っているみたいな話だな」

 

 「いろいろ知っているよ~。知らない事が多いけど…。空を飛んだり、ビームを出したり、刃を作ったり、変形や合体をしたり」

 

 「最後のはよく知りませんが・・・」

 

 ヴィータは雰囲気が変わったことを察知したのか更に目付きを鋭くする。

 シャマルは裕が喋る言葉から彼がどれだけこちらに気づいているのか観察する。

 

 「あと・・・。壊れた呪いの本の影響ではやての足が悪くなっているとかかな?」

 

 「「っ!」」

 

 裕の一言でヴィータとシャマルははやてを守るように前に出る。

 自分の足が悪いのがある本の影響だと言う彼に少しの怯えと戸惑いを見せたはやては裕に尋ねた。

 

 「…裕君。君は一体、なんなんや?」

 

 その質問に裕は意地悪そうな笑顔でこう言った。

 

 「邪神だよ。ここんとこ、自分の秘密をあちこちに暴露している気がしてならない邪神様だ」

 

 




榊原君(ドリル)には邪神様の後ろで待機してもらっています。
うちの邪神様は何気に保険も用意しています。

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