リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第三十五話 私は何でも知っている邪神様

 さて、邪神であることをばらして一時間後。

 俺と榊原君。はやてとヴィータとシャマルさんは管理外世界の荒野に降り立っている。

 どうでもいいことだが『V』の着ぐるみを着たままで、荒野の世界に転移した俺はその世界につくなり、WCCで簡単な大型二輪のバイクを作り出して、走り出した。

 ぶるぅわあああああっ!

 まるで俺の為に準備されたような世界をみて走り出さなければ華麗なる『V』様に申し訳が立たない!

 十五でもないのに走り出すなとはやてに怒られたが『V』様の威光を知る人なら走り出さずにはいられなかったんだと説明したかったが、それを鋭い目つきのヴィータとシャマルさんに止められる。

 

 「で、お前達は何をどこまで知っているんだよ」

 

 「いや、それは榊原君に言ってよ。俺だって彼から聞いたんだってば・・・」

 

 彼の話を聞くとはやての下半身麻痺は『闇の書』という物が原因。

 もとは『夜天の書』という物だったのだが、転生機能で何度も転生している間にバグが生じて、その影響ではやては下半身麻痺。更にはこのままだと麻痺が進行して今年のクリスマスには死んでしまうとのこと。

 

 「そんな事を言われても信用できるか!」

 

 榊原君曰く、ヴィータとシャマルさん。更にはここには居ない女性と男性の二人がいるらしい。

 

 「まあ、そういきり立つな。そうならないように話を持ちかけたんだから…」

 

 「そんなふざけた格好して言われても説得力ないで」

 

 「ならば、ウェイクアップ!」

 

 『V』の着ぐるみにWCCを使って見かけが普通の服を作り出す。

 加工された着ぐるみはTシャツとジーパンになって目の前に落ちる。

 はやて達の前に全裸の邪神様が降臨した。

 

 「なに全裸になってるんやー!!?」

 

 「な、な、なっ、なぁあああっ」

 

 「・・・あらあら」

 

 装備中(装着中)の物にWCCをかけたら強制解除されるという事を忘れていた裕だが、お約束を果たしたと言わんばかりに満足顔をしながら加工した服を着直す。

 その事を説明したら、顔を赤くしたヴィータとはやてに予め言えとか。下に何かをつけていろとか言われた。

 ごもっともです。

 

 「俺の力はそういう仕様なんだよ。それにいきなりに近い状態で、他の着替えが見当たらないこの世界に連れてこられたんだから仕方ないでしょ」

 

 「それでも乙女の前で全裸になるなんてどういう了見や?!」

 

 だったら着替えを取りに行かせてくださいよ。

 いや、準備しなかった俺も悪いんだけどね。

 まったく『V』様を知ればきっとはやてだって同じ格好したくなるだろうに・・・。全裸の方じゃないよ。そういえば、『V』様も基本全裸だよな。

 

 気を取り直して・・・。

 

 榊原君と共にこちらに敵意はない事を伝えたがヴィータとシャマルさんには届かない。

 それじゃあ、力づくでも分からせるとラゼンガンの形をしたバリアジャケット展開させる榊原君。

 女の子を追いかけるのはやめた彼だが、その分、戦闘意識に持っていかれてませんかね?

 ラゼンガンのバリアジャケットを纏う榊原君に呼応するように赤ゴシックドレスのヴィータにドラクエの僧侶の服に似たドレスを纏う三人。

 

 「まあまあ、両者落ち着いて」

 

 「せや、三人とも落ち着いて」

 

 俺とはやてで三人を止めようとしたが、三人はヒートアップ。

 

 「てめえ等、このままだとはやてが闇の書の呪いで死ぬんだぞ!」

 

 「うるせえっ!いきなり出てきてあたし等に変な事言うんじゃねえ!」

 

 「たとえ、闇の書の呪いがはやてちゃんを蝕んでいるとしても完成させればいいだけです!」

 

 「完成したと同時にはやてが取り込まれてやばいって言っているだろう!」

 

 片方はドリルを全身から生やし、ヴィータもゲートボールのスティックをブンブン振り回し、シャマルさんが必殺仕事人のような糸を伸ばしている。

 話題の人。はやてを置き去りにしてどんどんヒートアップしている。

 

 「ああ、二人ともいうことを聞いてくれない。どうしたらいいんや・・・」

 

 「・・・よし、俺にいい考えがある」

 

 「期待できそうにないな」

 

 酷いっ。

 見てろよ、はやて。

 これが邪神式ネゴシエーションだ!

 

 「まあ、待て」

 

 「なんだよ!そっちから売ってきた喧嘩だ!今更やらないなんて言わせねえぞ!」

 

 「『闇の書』の事とはやてちゃんの事をあなた達はあまりにも知りすぎているの。悪いけど、抵抗しないでくれる」

 

 榊原君とヴィータ、シャマルさんの間に割って入る俺。

 いまさらバトルを止められない。そう思っているんだろう。

 だが、甘い。

 俺は邪神様だぜ?

 

 「確かに俺達はそっちの事を少しは知っている。だけど、そっちは知らないだろう?だから少し教えてやる。一ツ星神器、鉄(くろがね)!」

 

 WCCで自分のすぐ隣に巨大な岩の大砲を作り出す。

 と、同時に大砲から岩の砲弾が飛び出し、百メートル先に着弾すると轟音と共に地面が抉れた。

 

 「なっ?!」

 

 「更に二ツ星神器、威風堂々(フード)!」

 

 WCCを使い、更にカスタマイズを行う。

 荒野と言う地形上、材料になる土や岩は山ほど(荒野だけど)ある。

 巨大な腕が地面から何本も伸びてはやて達と榊原君を含めて俺を隔てる壁になる。

 

 「三ツ星神器、快刀乱麻(ランマ)!」

 

 鉄を表した大砲の傍に十メートルを超える巨大な岩の剣が生えるように出現し、地面に振り降ろされると、その地面はまるで豆腐のように切れてしまった。

 

 「な、詠唱も術式も展開しないでこれだけの巨大な剣を一瞬で?!」

 

 「四ツ星神器、唯我独尊(マッシュ)!」

 

 「ぬうわぁああっ?!箱?!魚?!」

 

 キューブ状の巨大なトラバサミが地面から飛び出す光景にはやては思わず傍にいたシャマルに抱きつく。

 

「五ツ星神器、百鬼夜行(ピック)!」

 

 大砲の反対側に巨大な柱が水平線に向かって伸びる。

 あれをぶつけられたらバリアジャケットをつけていたとしても大ダメージは確定だと榊原は冷や汗を流す。

 

「六ツ星神器、電光石火(ライカ)!」

 

 本来なら靴の部分がローラーシューズのようになって、地面を高速移動できるのだが、今つけているのは普段着(元『V』様着ぐるみ)なのでそこまでの効果をつけることが出来ない。

 その為にWCCでの地形交換に瞬間移動。シフト―ムーブを披露する裕。

 

「七ツ星神器、旅人(ガリバー)!」

 

 はやてとシャマル、ヴィータを囲うように壁が三枚せり上がってくる。と、同時に天井部分が生成され、丁度日傘のようになる。

捕獲用であるガリバーだが、敢えて今まで出してきた建造物を見せるように全面部分だけは空いている状態だ。

 シャマルとヴィータは慌てて自分達を囲うように魔法でバリアを張る。

 

「八ツ星神器、波花(なみはな)!」

 

見た目が岩であるのに反して、滑らかにそれでいてしなやかな巨大な鞭がしなりを上げて大地を打ちつける。

その振動は障壁越しのヴィータとシャマルに危機感を感じさせた。

 こいつと敵対したやばいと感じさせ

 

「九ツ星神器、豊満谷間(ビッグボイン)!」

 

 裕の着ている服の一部が大きく膨らむ。

 それはまるでグラビアイドルも裸足で逃げ出すほどの大きな谷間が出来上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少しの間だが世界から音が消えた。

 そう思えるほどに間があいた。

 

 

 

 

 

 

「十ツ星神器、魔王(まおう)!」

 

 裕の後ろから頭はヤギ、体は巨人、下半身は獅子といった怪物の彫像が現れる。

 それは見るもの全てを怯えさせる物だったが、裕の姿。豊満谷間(ビッグボイン)の姿が前にあるので何とも言えない雰囲気があった。

 

 そして、声高らかに邪神は、叫ぶ。

 

 「さて、この中で仲間外れはどぉおれ?」

 

 「「「「                   」」」」

 

 邪神を除く、全員から表情が消えた。

 それに反して、揺れて動く裕の胸元。

 

 「・・・ビッグボイン」

 

 「正解ー!流石は鉄槌の騎士!今回は我々の完敗のようだ!榊原君、素直に負けを認めよう!」

 

 無表情、無感情のままヴィータが裕の胸元に指をさす。

 と、裕は満面の笑みを浮かべて答えたヴィータを手放しでほめたたえる。

 心なしか、今まで出てきた巨大兵器たちも嬉しそうだ。

 

 「・・・いや、もう。・・・なんなの、お前」

 

 それは邪神を除く誰もがそう思っていただろう。

 だが、それが邪神の狙いだった。

 相手の闘志を砕き、交渉に持ち込む。

 現にヴィータは掲げていたハンマーを下ろしている。

 なんだかグダグダになってきた空気の中、とりあえずそれらに詳しい人の所に招待するからついてきて。

 

 要約すると、

 

 「友人の邪神もどきがジュエルシード。魔力の塊で生きながらえているから蒐集しないでよ」

 

 それが言いたいがために、邪神様はこんな茶番をしてきたのであった。

 


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