リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第四話 邪神様がみている。

 裕視点

 

 なのはちゃんと仲良くなって一ヶ月くらい経ったある日。

 WCCを使いこなすために海鳴市にある港町の一角にある倉庫群。

 あまり人の出入りがないこの倉庫の片隅でうねうねと動く土人形(アスファルト製)を作っては壊し、作っては壊しの繰り返し。

 堅いアスファルトがうねうね動く光景は異様だ。触ってみたら堅い。なのにうねうね動く。これいかに。

 などと考えていたら隣の倉庫に車が止まる音が発生したので思わず物陰に隠れる。

 自分がいる倉庫ではなく隣の倉庫に入っていく音がする。なにやらカキンカキンと聴きなれない金属音が聞こえたのでこっそりと倉庫と倉庫の間に穴をあけて様子を覗うことにした。

 

 

 バニングス視点。

 

 宝石商との商談途中で強盗にあった私と取引先の店長は誘拐、拉致された。

 覆面を被った強盗集団。発音から中東系の人間か。

 私達をロープで縛り上げた後、戦利品である宝石や札束を地面にちりばめて歓喜していたが、突如地面が光り札束を残して宝石だけが消えていった。

 それを見た強盗達はあちこちを見て慌て始めるが、やがてその苛立ちをぶつける為に横たわった私達に蹴りを入れる。

 力が強かったのか取引先の宝石商が血を吐いた。

 私と宝石商はやめるように伝えたが相手は聞き入れず、蹴りを続ける。宝石商の方は痛みで気絶した。

 そんな時、再び私達のいる倉庫全体が光り始める。と、同時に幼い声が聞こえる。

 

 「…実行」

 

 ガコンガコンと妙な音がするとともに強盗達の足元の地面が無くなる。

 もちろん人は飛べないのでその穴の下に落ちていく。と、同時に更に声が響く。

 

 「落とし穴の上を格子状の天井に加工。実行。と」

 

 その声について地面が再び光ると同時に落とし穴の上に格子状の蓋がされ、光が収まる。

 それはまるで竪穴式の牢獄のようになっていた。

 

 「…なにが?」

 

 「…えーと、大丈夫ですか?て、外人?」

 

 倉庫の入り口から男の子がこちらの方を窺っていた。

 

 「きゃ、きゃん、ゆーすぴーくじゃぱん?」

 

 「いや、日本語で大丈夫だ」

 

 惜しい。ジャパンではなくジャパニーズだ。

 娘と同じくらいの男の子がポケットからおそらく最初の光と共に消えた宝石を取り出すと私達の前に置きながら私達の縛られたロープを解こうと私の後ろに回る。

 

 「これはあなたの宝石ですか?」

 

 「あ、ああ。たぶん。それより君みたいな子どもにこのロープはほどけな」

 

 「実行と」

 

 ぱらり、と光の粒子をこぼしながら落ちるロープ。

 不可思議な現象を起こしているだろう少年を目の前に私が呆気にとられていると少年は宝石商を縛っているロープに触れる。すると、そのロープも光りだし光が収まると同時に解ける。

 

 「あ、とー。この事は内緒にしてください。口止め料としてこれを」

 

 少年は困った顔をして私に地面が光った時と同じ光を放つルビーを渡す。

 持っているだけで痛みが引いて行き、蹴られた時に出血した頬の傷が熱を帯びてふさがっていくのが感じられる。

 

 「これは…一体?て、君は一体」

 

 「じゃあ、そういう訳で」

 

 少年は私の怪我が治っていくのを見守った少年は光に包まれて消えていった。

 

 

 

 裕視点

 

 倉庫での暴行事件から三日後。

 

 「やあ、田神裕君。君に助けてもらったバニングスだ」

 

 ダンディズムなジェントメン。バニングス氏が我が家の玄関先に訪れた。

 おちつけ。落ち着くんだ俺。

 こういう時こそ素数を数えるんだ。

 

 1、

 2、

 3、

 ダー!

 

 ちがう。これ素数じゃない。

 諦めんなよ!熱くなれよ!冷静になれよ!君は美しい!

 何が何だかさっぱりだ。

 今度のWCCで作るアクセサリーは鎮静効果があるものを作ろう。

 鎮静効果のあるパンツを!

 …駄目だ。

 俺の平凡な日々はもう戻らないかもしれない。

 

 


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