リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第四十話 ツキサセ、邪神様。

 リーゼアリアが裕達に捕まる少し前。

 我等が邪神はテスタロッサ研究所の一角で人生の春を謳歌していた。

 背中には金髪美人のシャマルの体温を、前には子狸少女な少女の体温のサンドイッチ状態。

美人の匂いと美少女の匂いにだらしなく鼻の下を伸ばしていた。

 そんな邪神の様子に面白くなさそうな顔をしたテスタロッサ母娘と榊原。八神一家が注意した。

 アリシアとプレシアの方はモニター越しにだが。

 

 「・・・ユウ。だらしない顔をしないでちゃんと闇の書の検索をする」

 

 「主はやてに妙な気を起こすなよ」

 

 「そんな!美女と美少女に挟まれるなんて機会、生まれて初めてなんですよ!今のうちに鼻の下を伸ばすのは当然の行動だと思うんですよ、フェイトさん!こんないい匂いっ、深呼吸の要領で吸い込みまくるよ」

 

 「鼻息荒いぞ、団長」

 

 裕に後ろから抱きしめられる形のはやてはいつもの裕のノリに少しだけ安心していた。

 今からやることが成功すれば『闇の書』の呪いを解くきっかけにもなるかもしれないからだ。逆に下手な手を打てば即暴走する可能性がある。

 だが、そんな不安などないと言わんばかりに愉快な空気を作り出そうとしている裕にほっとしているのも事実だった。

 

 『だからってそんなに鼻の下を伸ばさなくてもいいと思うんだよっ』

 

 「だったらいつ伸ばすの!」

 

 「「今でしょ!」」

 

 闇の書を抱えているはやてと共にサムスアップをする裕。

 その様子にやれやれと言った具合で裕とはやてを抱きしめているシャマルは闇の書に異常がないかを確認しながら指示を出す。

 

 「それじゃあ、裕君。闇の書と私のデバイスを接続してくれる?」

 

 「アイマム」

 

 ある程度、WCCで強化したアクセサリーの効果でデバイス知識を修得した裕は二度目になる『闇の書』にWCCで干渉を行うことにした。

 シャマルには『闇の書』の状態を常にチャックしてもらい異常があればすぐに中断する手はずになっている。

 闇の書に触れると同時に裕の目にはバグが生じている『闇の書』のステータスが見える。

 それを一個ずつ一個ずつ削除。正常なデータに更新。削除。更新。を繰り返していく。

 それが一時間ほど経った。

 

 「・・・シャマルさん。結構な量のバクを削除しているんだけどどんな感じですか?」

 

 「う~ん。こちらとしては変化ないわね・・・。はやてちゃん。足の麻痺はどう?」

 

 「うーん。なんというか靴下を脱いだ感じにすーすーする感じやな。だけど、何かすぐにしけっている感じがする」

 

 「水虫?けぴっ」

 

 「乙女に向かって水虫とか失礼やな裕君っ」

 

 裕の失礼な一言にはやては頭突きを入れる。

 はやてを後ろから抱きしめる形だった為顎を強く打ち、下を噛んだ裕はしばらくの間悶えていた。

 その時、

 

 くちゃあっ。

 

 何やらぬめっとしたモノが闇の書から零れた。

 

 「な、なんや。なんか、白くてぬめっとしたなんとなく生臭い液が零れてきたで?!」

 

 自分が持っていた部分が妙なぬめりを持った液体が零れてきたことに驚いたはやては思わず闇の書を放り投げる。

 シャマルが慌ててそれを解析すると、『魔力を持った生体部分』と判明した。

 裕のWCC画面にも同様にそれが表示されている。

 闇の書の表紙には本来、十字架を模した飾りが見えるのだが、放り投げられた闇の書の表紙にはぬとぬととしたスライムのような物がこびりついていた。

 

 「過去に『闇の書』が喰らった魔力かしら?裕君、ちょっとこれを引き抜いてくれない?」

 

 「そこで俺っすかー」

 

 シャマルにはいざという時の為に『闇の書』の強制停止をお願いしている。出来るだけ彼女の負担を減らすためにも裕がスライム状の何かを掴んで確かめなければならない。

 

 くちゃあっ。

 

 「ひいいいっ、気持ち悪い」

 

 WCCでは粘液に包まれている何かと表記されている。一応、触っても害がない物らしい。

 ただ掴んでも滑ってつかめないので思い切って粘液の奥にまで指を入れる。すると、指がどうにか入りそうな小さな穴を一つ発見した。

 とりあえずボウリングの玉を持つ要領でその穴に指を入れる。

 

 「シャマルさん。・・・これ、引っ張り上げますね」

 

 「ええ、お願い。それを引きずり出せば『闇の書』のバグが見つかるかもしれないし。・・・はやてちゃん。少しでも異変を感じたら言ってちょうだいね」

 

 「い、今のところ見た目で気持ち悪いと思っているだけで、おっけーや。皆も何かあったらよろしくな」

 

 はやての言葉にその場にいた守護騎士達。フェイトとアルフも頷く。

 モニター越しにだがプレシアとアリシアも頷くのが見えた。

 

 「安心してください。何かあれば闇の書と邪神もろとも滅して差し上げますから」

 

 「俺の安心要素は何処?」

 

 シグナムの発言に裕はスライムから手を引っ込めるところだった。

 

 「大丈夫。ユウは死なないよ。私が守るから」

 

 「笑えばいいのか?」

 

 何気にダメージフラグを建てているフェイトに裕は榊原にフェイトを抑えるように言っておく。

 それと、穴に指を入れてだがスライムに包まれている物体は妙にビクンビクンと動いているように感じる。

 

 「それじゃあ・・・。ヌクぞ」

 

 いやらしい意味じゃないぞ?

 

 裕は穴の奥まで指を入れて一気にそれを引き上げた。

 そして、そこから現れたスライムに包まれていた人間を引きずり出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・それが、僕なんだよね」

 

 「・・・な、な、な。なんじゃそりゃあああああああっ」

 

 十一年前に『闇の書』の暴走で『闇の書』に取り込まれ、アルカンシェルという戦艦クラスの砲撃で消し飛んだはずのクライド・ハラオウンの姿に、テスタロッサ研究所で絶叫するアリアだった。

 




 裕の入れた穴はクライドさんの穴。











 鼻のね


 NGシーン。

 バグを削除。新規更新。削除。新規更新。削除。新規更新。削除「あべしっ」。新規更新。

 邪神「ん?なんか聞こえたような気がする?」

 邪神様は劣化クライドを削除した。


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