作者:『金髪おっぱいさん』と入力しようとしたら入力ミスで『金はおっぱ遺産』になってしまった。これも邪神の影響だろうか?
12月23日。
邪神は自分の陣地にようやくたどり着くことが出来た。
「・・・長かった。とてつもなく長かった」
邪神は幼馴染トリオにグラビアアイドル・コレクション。通称(通な人達に称されているの略)『グラこれ』をはやてにやらかした罰として目の前で焼かれてしまった。
彼は必死に抵抗した。
だが、邪神は自分に関する情報を漏らしすぎた。
WCCは自分が触れている物。もしくは連結された状態といった特殊な条件下でしか発動しない事を知らされてしまったがために、なのはの空中バインドで手足をロックされた状態で宙吊りにされ、目の前でグラこれを焼き払われた。
その時の邪神の必死な形相は今にも血の涙を噴きだしそうになるくらいに必死だった。それはその時身に着けていた袴を分解して全裸になりながらもなのはの施したバインドを振りほどこうとした。だが、現実は非情だった。
なんとなのははそれを予期していたのか邪神の全身を覆うようにバインドをかけていた。よく見れば金色と緑色のバインドも施されているところから見てフェイトとユーノも協力するように言われたのだろう。
WCCを取られたら何もできないのが現世邪神。田神裕は唯一自由に出来たのは自分のお宝が消し炭になっていくのを見届ける目だけだった。
なんて、ひどい事を。と、幼馴染トリオに目で訴えたが邪神母から『うちの子、なんかマザコンの気があるから・・・』と、欧米人の血が混ざっているハーフグラビアアイドルの写真集の滅却許可を貰っているらしい。
俺、マザコンじゃねえよっ!?
ただちょっと金ぱつおっぱ遺産が好きなだけだし!!
脳内変換されている日本語がちょっとおかしい事に気が付いた邪神であり、『・・・まさか。・・・いやいや』と思いながらも消し炭になってしまったお宝のショックで真っ白になっていた。
・・・そう、思わせていた。
「・・・くっくっくっ。やはり物をいうのは人脈。金や技術。力を持つ人間との交流よのう」
邪神はとある集団と待ち合わせをしていた。
場所は海鳴市の経営している図書館の地下に設置された部屋。そこは一般職員でも見逃しがちな部屋だが、大人五十人は入ることが出来る広々とした会議室。
邪神は懐から怪しげな懐中時計にも似た代物を取り出す。
それはギル・グレアムとシャマルの共同制作による『魔導師レーダー』。
カートリッジシステムという特殊な弾丸で一時的に魔導師をブーストすることが出来るらしいが、邪神はこれに管理局の魔道探査に使われた特殊レーダーを小型化したレーダーの動力とし、カートリッジを利用した物で非魔導師である裕にも使える。見た目は七つ集めればどんな願いでも叶えることが出来るボールを探すレーダーの形をしているのは裕の趣味である。
WCCのおかげでリーゼアリア・ロッテ。クロノの三人が欲しがるほどの精度のレーダーが出来上がった。
このレーダーと自分自身が身に着けている私服(バニングスさん提供)といつも持ち歩いている懐中時計にWCCで『隠密性アップ』の効果を付与している為、サポートに特化したシャマルか獣の嗅覚をもつアルフ。もしくはザフィーラでなければ裕の後をつけることが出来ない。
忍者並のステルス性能と戦艦クラスの索敵能力を持った邪神を追い詰めることが出来るのはほんの一握りだろう。
「・・・団長。お待ちしておりました」
「・・・うむ。待たせてすまなかったな。首尾はどうだ?」
薄暗い部屋にぽつぽつと小さな光が灯る。
その光は準備されたテーブルに等間隔で灯っていき、そこに座っている『イエーガーズ』の男子メンバーの殆どが座っていた。
その内の一人が裕が部屋に入ってくると同時に上座に位置するテーブル席をずらして着席を促した。
彼は裕が『闇の書』対策に追われている間にイエーガーズを率いてくれた副団長的存在だった。
「上々といったところです。十月下旬からこれまでにかけて女子達のご機嫌取り。掃除や体育用具のセッティング。更にはお弁当時間の時の席取りなど好感度を上げてきました」
「・・・ほほう。それはそれは。では、明日のクリスマス会に彼女達とのフォークダンスへの興味は」
「ええ。気づかれぬように聞き耳を立てた所、『最近の男子達も優しいし、踊ってもいいかな』と、女子同士で話しているところを何度か確認しています」
「ほうほう」
にやり。と、裕の口角が上がっていくと、話をしている少年のつられてあがっていく。
彼ら二人だけではない。ここに居る男子メンバー全員の口角が上がっているのだ。
「・・・諸君たちに問おう。我々はリア充か?」
「・・・否です」「俺達には大切な何かがいないから」
「それは何か?」
「・・・可愛い、恋人です!」
悲しみや苦しみ。そして嫉妬で涙をこぼす者達もいた。そんな彼等に邪神は言いきる。
「そうだ。俺達には彼女がいない。そして、今もなお我等が母校の海鳴のクリスマス会では彼女がいない我等にとっては『クリスマス会』ならぬ『苦しみます魔界』に変貌する!」
うわぁああああ~。とか、いやだぁあああああ~。とか、だ、団長がいるなら俺はそれで。とか、最後の言葉により邪神は二重の寒気を感じたが敢えて無視する。
「我等がそうなる理由はモテ男がいるからだっ。奴等が女の子達を乱獲するからだ!」
海鳴の街の男女は老若問わず美形が多い。だが、普通な顔のつくりをしている人間もいる。それを考えるとなのはといった幼馴染トリオはかなりの優良物件だと邪神は思った。
だけど、自分の趣味に寛容の無い女の子はちょっと・・・。
「だが、奴等は足りない。足りなさすぎるんだ!それを考慮すれば俺達にも希望は。いや、勝算はある!」
「そ、それは一体・・・」
「モテ男どもに足りないものは、それは~ 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ!
そしてェなによりもォ------- (異性を意識する)速さが足りない!!」
「「「!!?」」」
団長の。裕の心強い応援は続く。
「奴等は自然とモテてしまうが故に気が付かない。生まれ持った才能。素質だけで女にモテている奴など、女の子にモテたいと努力している我等がいずれは追い越すだろうなど夢にも思っていないだろう!だが、我等はどうだ!クリスマスという気持ちのリミッターが緩む頃を見計らって、地道に女の子達の好感度を上げ、更には準備やセッティングをするという細やかさを見せつけた。その姿に女の子達の心は少なからずときめいたはずだ!」
「・・・お、おお」
「モテ男どもには細工を施したくじで買い出しに行かせているがそれは男同士。もしくは女同士で組んでの事。奴等に付け入り隙などございませんしね」
「お、おおおおっ」
「汚れ仕事から細かい所まで進んで行った君等の所業を見て悪く思う奴等いないだろう。・・・みな、明日は聖戦前夜だが我等にとっては聖戦本番といってもいい。総員、全力で告白しろ。そして、共に歩もうではないか。リア充への道を!」
「「「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」」」
その場にいた全員が裕。そして、副団長の言葉。激励に呼応して声を上げた。
そんな彼等の様子に裕もまた声を上げて彼等に激励の言葉をかける。
「我等がリア充とは、誰よりも自分好みの女の子と仲良く放課後や休みの日にデートしたり勉強会を開いたりと自分が愛する者と共に過ごしてこそのリア充である!よって、本物のリア充とは友人と恋人が初めてそろってそう言える!」
「「「「「然り!然り!然り!」」」」」
「我等は同胞たちを見捨てない!手助けを行う!なぜならば、その者がリア充になればその相手から我等の未来のリア充相手が見つかる可能性があるからであり、リア充となった我等の同胞との友情もさらに固くなるからだ!」
「「「「「然り!然り!然り!」」」」」
「もう一度問おうっ。我等は何だ!」
「「「「「非モテ!非モテ!非モテ!」」」」」
「共に戦場へと向かう同胞はどうする!」
「「「「「援護!援護!援護!」」」」」
「勝ちをもぎ取った奴等は何をするっ」
「「「「「合コン!合コン!合コン!」」」」」
「顔だけでモテル奴はどうするっ」
「「「「潰せ!潰せ!潰せ!」」」」」
「女の子に囲まれて『いや~、困っちゃうなぁ~』て、ほざく奴を見つけたらっ」
「「「「「ガンホー!ガンホー!ガンホー!」」」」」
邪神の鼓舞によりテンションは最高潮に達した彼はそのままの勢いで話し合いを始めた。
いつ、どこで、誰が誰に告白してフォークダンスを踊るかとまとめていた。
そして、そのまとめを終えた彼等は明日に備えてたっぷりと睡眠を取ろう家路につく。
裕を先頭に背筋を伸ばし手先もピンと揃えて歩いて帰る彼等はまるでどこかの軍勢だと思わせた。と、図書館の司書さん達は語ったという。
「皆、明日は決戦だ。たっぷり寝て明日に備えろよ。以上、解散!」
「「「「「応!」」」」」
交差点で別れていく彼等はまるで長年戦い合った戦友の様だったと近くにいたサラリーマンのおっちゃんは語った。
作者:うちの邪神様は馬鹿をやらせると輝くなぁ