リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第六十四話 綺麗な邪神様

 

 王ちゃまがテスタロッサ邸で蒐集を終えてさて、これからバニングス邸に向かおうとした時にいろいろ聞かせてもらった。

 どうやら砕け得ぬ闇の魔力(笑)が俺の分身を作り出しているそうだがその分身にWCCは使えないとの事。そりゃあ、WCC自体が神の力だからそう簡単に複製が出来ても困る。

 次に分身は俺だけじゃなくて王ちゃまみたいにはやての分身(設定)の様に容姿は似ていても性格や特性が違っている奴もいるらしい。つまり・・・。

 

 『持ってくれよ私の体ぁああああっ!ディバインバスター、カートリッジ四発だぁあああああっ!』と言う鋼鉄さんみたいななのはちゃん。

 『お姉様、あれを使うわ』『ええよくってよ』と言いながらテスタロッサ姉妹による超稲妻蹴りとか。

 『私は人間を辞めたぞぉおおおお!じゃしぃいいいいんんっ!』とか。

 『風穴開けるアルよ!』と言うツインテールな中華娘とか。

 

 みたいな幼馴染達に会えるという訳か・・・。いや、さらに欲を言うのなら、

 

 『いくぞ!アースラぁあああ!』とか言いながら榊原君が有無を言わさない怒涛合体(もちろん無許可)を見せたりとか。

 『小学生は最高だぜ』という白崎に『激しく同意なんだお』とかいう王城。

 『はーはっはっは!』とか言いながら隕石の上に仁王立ちするユーノ君に『魔王剣疾風の如く!』とかいって対抗する恭也さん。他にもいろいろなみんなが見れるという訳か。

 

 「オラわっくわくしてきたぞ」

 

 「自分や知人の分身がいるというきいてそう言えるお主も大概よな。もしかしたら見たくない自分や見られたら恥ずかしい自分がいるかもしれないというのに・・・」

 

 つまり俺より愉快な俺がいるという訳か。それはそれで。

 

 「駄目だコイツ。早くどうにかしないと。せめて、これから会う邪神の分身はまとめであってほしいものだ」

 

 まともな俺ねぇ・・・。

 

 

 

 『初めまして。僕は田神裕。小学三年生です』

 『WCCという不思議な力を持っていますが皆さんと仲良くやっていければ嬉しいです』

 『触手?エロ?あはは、嫌だなぁ、そんな恥ずかしい事言わないでくださいよ』

 

 

 

・・・誰、これ?これ、俺?

 

 「急ぐぞ王ちゃま。これ以上俺の分身が迷惑をかける前に駆逐してやる」

 

 俺が今まで積み上げてきたイメージ(三枚目)が消えるその前に。

 

 「お、おういきなりやる気になってくれたの嬉しいが何を考えたのだ、いきなり真面目な顔になりおってからに。あと、我の名前は」

 

 「急ぐぞ王ちゃま俺に捕まれ」

 

 「ちょ」

 

 段ボール兵士ごっこをもう少ししていたかったがもうその余裕はない。田神邸とテスタロッサ研究所。月村邸とバニングス邸は邪神の手によって地下ケーブルで繋がっている。勿論WCCで加工した物で最初は無許可(面白そうだから)でやろうと思ったがお母様に止められたのでちゃんと許可は貰っている。このケーブル伝いでこの四か所は一つのアイテムとしてWCCでシフトムーブが可能。

 王ちゃまは何か言おうとしたが構っていられない。即座にテスタロッサ研究所の床とバニングス邸の玄関近くの床を入れ替える。

 WCCで発生した光が王ちゃまと俺を包み、その光が消えると同時に風景も入れ替わる。そこは何度か行き来したバニングス邸の玄関だった。いきなり現れた俺の姿に驚いたバニングス邸に務めているメイドさん達だったが執事長の鮫島さんがすぐ近くにいたのでそんな騒ぎにはならなかった。が、

 

 「今まで申し訳ございませんでした田神様」

 

 「なんで謝るんですか?」

 

 「いえ、人知れずにお嬢様の為に翻弄してくれたのにお嬢様があのようなふるまいをしてしまい大変申し訳ございません」

 

 「いや、本当に辞めてください。何がどうしてどうなってるんですか?」

 

 「お嬢様を地べたに這わせて、その上に乗って体で分からせてくれたことに多くの感謝を。お嬢様も上に乗られてようやくありがとうございますと泣きながら感謝しています」

 

 「鮫島さん従者ですよね?!アリサの従者がそんな事に感謝しちゃいけないんじゃないかな?!」

 

 分身の俺何をした?!

 

 「いえ、そんな事裕様が今までしてきてくれたことに比べれば微々たることです」

 

 「全然微々じゃないですよ!?」

 

 むしろアリサのトラウマになっちゃうんじゃないかな?俺の分身何をしやがった!?

 

 「むしろトラウマになるくらいじゃないとお嬢様も反省しないかと」

 

 「王ちゃま俺、言葉に出したっけ?」

 

 「いや、出していないと思うが」

 

 「執事ですから」

 

 執事凄い。

 とにかく鮫島さん曰くアリサの部屋で俺の分身はアリサを押し倒して泣かせた挙句無理矢理ありがとうと言わせている外道の俺(分身)をとっちめる為にも急行することにする。

 

 

 

 

 

 「大体だな、人が好意でやっているのをお礼をいうのが恥ずかしいから手を上げるってのはどうなの?」

 

 「・・・はい。ごめんなさい」

 

 「大体、本体の俺。ふざけるなと言わんけどちゃんと公私混同しないようにしろ。だからこんな状況になるんだぞ」

 

 「・・・はい、ごめんなさい」

 

 「お嬢様だからそうなの。それとも相手が俺だからそうするの。いい加減にしてくれよ。こっちはそっちにあまりプレッシャーをかけないようにおどけているんだぞ。大体本体の俺もWCCで加工した金の時計を外すと思いだしプレッシャーで吐きまくるくせに」

 

 「ちょ、それは」

 

 「お前は黙ってろ。俺、というかお前がそこまで頑張っているのを隠そうとするのはこいつ等が好きなのはわかるがこのままだと自分がブッ潰れるだろう。馬鹿なの。少しくらい甘えるという言葉を知れ」

 

 「・・・はい、ごめんなさい」

 

 バニングス邸に現れたのは理論武装やさぐれバージョンの俺(裕H)だった。

 裕Hがバニングスさんと一緒にロビーでゆっくりしていたところにアリサが乱入いつものおしゃべりから何故か口論になりアリサが裕Hにアイアンクローをかまそうとしたところに高町道場で鍛えた護身術で撃退。組み伏せたまま今まで俺が頑張ってきた功績とそれに対しての評価を改めるように論破していく。それはまるで管理局の暗部に脅迫をかけていた自分の様だった。

 そんな風に物理的にも論理的にも打ちのめされていくアリサはついには泣きだしたが裕Hの言葉のナイフはブッサブサ刺さる。それを見ているだけでは可哀相に見えてきたのでやめるように言おうとすると日頃の自分を改めろとかアリサ達に甘すぎだと説教を喰らいアリサと一緒に土下座するように裕Hに謝り続ける。

 裕Hの説教が終わると同時に王ちゃまが蒐集して裕Hが退場する。その後、アリサを慰めるのに時間がかかった。

 大丈夫だから、俺まだ大丈夫だから。今までの様に照れ隠しのボディーブロウを売ってください。そんなアリサ見たくないです。元気のないアリサが俺大好きだから。さあ、撃つがいい世界を狙える右をっ、ギブミーボディーブロー!王様そんな汚いものを見る目で俺を見ないで!ビクンビクン、悔しい、DAKARA感じちゃう!俺は元気なアリサが大好きぃいいいいいっ!

 

 「夜に変な事を大声で言うなぁあああっ!」

 

 アリサの張り手が俺の顔面に襲い掛かる。ありがとうございます!でも、どうにか持ち直してくれたあんなに女の子を泣かせるのがきついとは思わなかった。バニングスさんと鮫島さんは月村邸に向かおうとする俺を見て何やらニヤニヤしていたけど何でだろうね。アリサが照れているところが可愛いからでしょうかね。ツンデレの魅力は照れている部分にもある。では俺もニヤニヤとアリサを見つめる。張り手の二発目を貰った。ありがとうございます!さて、月村邸に行こうか王ちゃま。

 

 「そ、その私もあんたの事」

 

 「じゃあ、お邪魔しました~」

 

 アリサが何か言いかけたけど綺麗な邪神様(裕真面目バージョン)や裕H(やさぐれ)みたいなやつがすずかちゃんやなのはちゃんの所にいるといろいろやばいから早くこの件は収めないといけない。アリサが何か言いかけていたけどちゃっちゃと行くとしよう。

 

 「す、・・・」

 

 

 

 後日、お嬢様から理不尽なベアハッグに襲われる邪神だった。

 

 

 

 「でさ、俺頑張ったんだよ。だから撫でて」

 

 「うんうん。裕君頑張ったよね」

 

 「そうでしょそうでしょ。にゃんこ達よ。もう少しだけお前達のご主人様のナデナデを受けさせてくれ。結構俺も一杯一杯なんだよ」

 

 「うんうん。なんか裕君って猫みたいだよね。普段は誰にも甘えないで頑張っちゃう。なんだかアリサちゃんにも似ているね」

 

 「そうなんだよ~、だからもっと~」

 

 「はいはい、今日の裕君は甘えん坊さんですね~」

 

 「そいつは偽物だぁあああああ!」

 

 月村邸に移動した俺達はファリンさんの案内ですずかちゃんの部屋まで案内された俺は思わず裕Iを突き飛ばした。

 何この甘えん坊な俺!あああああもう、羨ましい!じゃなくて口惜しい!何嬉しそうな顔をしているのすずかちゃんまで問答無用で王ちゃまに回収させる。

 

 「ああ~、甘えん坊な裕君が消えちゃった~」

 

 「すずかちゃん君も何かゆるゆるになっていないか?」

 

 ああもう、ちょっと覗いて様子を見ようと思ったらソファーに座っていたすずかちゃんのお腹に頭を擦りつけている裕Iがいて猫なで声ですずかちゃんに甘えていた。俺を叩き落とした俺。どうやらこの裕Iは構ってちゃんみたいのようだ。さっさと蒐集した王ちゃまはGJ。あ~も~、本当に俺のイメージを崩すような俺の分身がまだいるんだろう。忍さんやすずかちゃんに簡単に説明して次は高町邸に向かうことすると、すずかちゃんがやってきて俺を優しく抱きしめながら頭を撫でてくれた。

 

 「裕君~、無理しないようにね~」

 

 「そんな優しい目で俺を撫でてくれるなんて・・・。癖になったらどうしてくれるっ」

 

 「ずっと撫でてあげるよ」

 

 ・・・ふらっ。

 は!思わずその包容力に抱きつきそうになったがまだ闇の魔力(笑)で出来ている俺の分身があっちこっちで暗躍している。少なくても高町家でも起こっている。さあ、急いでサルベージ。ああ、これから向かう高町邸にはいったいどんな俺がいるのであろうかシフトムーブを行う。ああ、まだすずかちゃんが優しい目でこっち見る。こっち見るな恥ずかしい。

 

 「じゃ、じゃあ、またな」

 

 「うん。またね」

 

 邪神見送る少女の瞳は何処までも優しかった。

 しかし、邪神の知らない所で闇の書の欠片たちがあちこちで行動をし始めた事に彼はまだ知る由は無かった。

 


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