リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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タイトルは邪神様の残機。もしくは抵抗値。


第六十七話 邪神様×3 → 邪神様×2 → 邪神様×1 → 邪神様×0

 シュテルんことシュテルの狡猾な罠により見慣れない廃ビルに閉じ込められた邪神。裕は辺りを見渡していた。見た所自分が下の袴しかつけていない(パンツも穿いていない)状態の自分に何が出来るかを模索していた。

 このビルに連れ込まれた時には王ちゃまの杖に金の懐中時計のアクセサリー上の袴までちゃんとつけていたんだ。逃げ出すチャンスもいくつかあったがそのチャンスはことごとくシュテルとレヴィによって阻まれ、阻まれるたびに一つずつ装備品を外されていったのだ。

 

 シュテルにバインドを解きますけどあの『緑色の土管の中』を通って逃げないでくださいね。逃げ出すたびに一つずつ装備品を剥ぎ取りますから。と、明らかに廃ビルの中にあるはずがない緑色の土管を指さして言われた俺は迷わず走り出して土管の中に入って行った。「どぅどぅどぅ」と言いながら。土管の奥にはキノコの形をしたチョコポッキーを齧りながら待ち構えていたレヴィの手により捕まった。

 

 レヴィに連行されて別の階層の部屋に移された俺はシュテルのバインドによって拘束された際に、もう一度言いますけどバインドを解いても決してこの部屋に通じる『扉』をくぐって行かないでくださいねと言われて、連れてこられた部屋の中を見渡すとボロボロな扉が二つに明らかに新品な『赤い扉』があった。どうせだから俺は赤い扉を通って逃げ出すことを選んだ。だが、シュテルの説明中に部屋を出て行ったレヴィが上から来るぞ気をつけろ。勿論捕まった。金の懐中時計を取られた。

 

 再三に渡る階層移動とシュテルの説明を受けた俺はたった一つしかない扉を見ながらシュテルのバインド拘束から逃れ、扉をくぐった。そこにはビニール袋に包まれ、『レヴィのとっておきのおやつ』とメモが添えられたペロペロキャンディーと、雀鳥のような大きな籠とひも付きの棒。その紐の先にはレヴィが涎を垂らしながらこちらの様子をうかがっている姿が見えた。本人は隠れているつもりなのだろうか曲がり角から顔を半分出した状態だった。これ以上狡猾な罠に引っかかるわけにもいかない。だが、ふと気が付いてしまった。キャンディーには『レヴィのとっておきのおやつ』と書かれていた。それがもし本当ならレヴィは『本当は嫌だけど邪神である俺を捉えるにはこれしかなった』と、思ったんじゃなかろうか。そんな自分の身を切る思いで配置した罠を回避していいのだろうか。今もなお涎と自分の『とっておき』を出してしまった悲しみで潤んだ瞳を裏切れるのか?ぬぅおおおおおおっ。耐えた。耐えきったぞ俺!俺は前振りに応えることを辞めるぞっ、ジョジョォオオオっ!

 

 くきゅう~。と、レヴィの顔が見えるところから子犬の鳴き声のような音とジワリと彼女の瞳が濡れるような音が聞こえた。気が付けば俺はペロペロキャンディーを手に持っていて罠にかかっていた。何が起こったが訳が分からねえ。超能力とか魔法とかWCCでなく何か本能的な(以下略)・・・。

 

 

 

 「さて、これ以上肉体的にしか剥ぐものがありませんね」

 

 肉体的な物を剥ぐことを考慮している時点で彼女に逆らわない方がいいと思う。というか、あの前振りを無視したらはがれていたのではないだろうか?そんな一抹の不安もさることながら邪神である自分をここまで翻弄する彼女の手腕にも冷や汗をかく。

 

 「こんな事をして、何が目的なんだ?」

 

 「私が欲しいのは貴方」

 

 ・・・やだ、凄く男前。

 相手はなのはちゃんみたいな美少女なのに乙女な反応をしちゃうじゃない。

 

 「というのは半分冗談で私達の狙いは『砕け得ぬ闇』の入手」

 

 冗談半分って半分は期待していいってことなのかっ。じゃなくてまたもやはやての妄想に付き合わされる分身体の皆さん。本当にもうお疲れ様です。レヴィという子は王ちゃまの杖を持って高町家へ飛んでいく。なんでも俺を預かっているというメッセージを届けに行くとか。デバイスの通信機能を使えばいいんでね?

 

 「『砕け得ぬ闇』とやらを入手するためにここまで大騒ぎするなんて、それを入手してこれから先どうするつもりなんだ」

 

 「聞いてくれればあなたもきっと理解しますよ。邪神を名乗る貴方ならね」

 

 そう言えば俺も「アイタタタ」な能力を持っていました。もしかしてこの茶番劇って本当に俺が原因じゃないの。シュテル曰く彼女達は闇の書暴走体がアルカンシェルで吹き飛ばされた時に発生したという設定の遊びをしているわけで、その起因は俺で・・・。あっ、やっべ。本当に俺の所為なんじゃないの?!

 

 「私達がこのような騒ぎを起こす理由。それは」

 

 「・・・それは?」

 

 無表情の顔つきから隠しきれない程面白そうな声色を発するシュテル。彼女の様に狡猾的な罠と実行力を持っている者がはやてのお遊びに付き合う理由は何なのであろうか。

 

 「悪戯って周りが大騒ぎすればするほど楽しくないですか?」

 

 「わかるっ」

 

 即答出来た俺はやっぱり邪神なんだと思う。だが、それならもう十分に騒いだろうに。これ以上は笑えない、自分のそっくりさん。というか裕B~Iぐらいだったか?肖像権の問題とかが特に問題視される。今まで自分が作り上げてきたイメージが崩壊する事がこんなにも恐ろしいなんて・・・。もうあれだよ。なのはちゃんが魔王様。フェイトが忠犬。すずかちゃんが月村からエロムラ。アリサが幽霊に。はやてが子狸ならぬ古狸。・・・なんでだろう、どれもこれもぴったりなイメージが?なんというか近い将来本当になりそうな、いやいや俺の周りにいる美少女達がそんなに変わるはずがないっ。はずがない!大事な事なので二回言いました。

 

 「ではお分かりですね。貴方の置かれている状況が」

 

 「・・・くっ」

 

 「もう一度だけ言います。こちらの用件が済むまでじっとしておいてください。でないと貴方の物を剥いじゃいますよ」

 

 くそっ、考えるだけでゾクゾク。じゃなかったぞくっとするような事を言いよる。だが、俺もただ捕まっていたわけではない。今まで数度捕まってきたが既にこのビルの内部事情はWCCで把握済み。空中でバインドされているが拘束が外され次第シフトムーブを行い逃げることが出来る。

 

 「次も逃げてしまった際には報復も考えております。まず服を脱がすのはもちろん。アレな行為も辞さないつもりです」

 

 ちなみに装備品は袴(下)のみ。残り一枚、リーチ。

 

 「あ、アレな行為って?」

 

 聞くのが恐ろしい。聞いてしまえば俺は戻れない気がするが聞かずにはいられない。常に最悪な状況を予測し行動しなければならない。集中力を要するWCCには必須と言ってもいい情報は可能な限り揃えなければならないのだから。

 

 「わかりませんか?一つ、この薄暗い部屋」

 

 ついっと彼女の指が俺の顎に触れる。

 

 「二つ。若い男女、二人きりの空間」

 

 彼女指は顎からへその方まで撫でる様に移動していく。その仕草は幼さしかない外見に似合わな過ぎる。

 

 「三つ」

 

 ごくりっ。何を・・・。

・・・するつもりだ?

 

 「カツドゥーン」

 

 「俺がやりましたぁあああああ!」

 

 って、なんだその『逃げてまた再び捕まりたくなるようなお仕置き』はぁああああああ!

 

 「さあ、バインドを解いてあげます。大人しく待っていてくださいね」

 

 まるで今まで一度も笑わなかった少女が生まれて初めて笑ったかのような笑顔で拘束を解くシュテル。

 俺は、俺はどうすればいい?彼女の言う通りここで待っていればいいのか?それとも彼女の意図を飲んで脱出して捕まればいいのか?どうすればいいんだ?!ていうか、捕まらなくてもいいじゃんっ。大人しく待っていなくても脱出しきればいいじゃんっ。

 

 そう考え浮いた邪神は扉を蹴破りながらその部屋を飛び出した。その際に扉に張り付けられていたメモを見てしまった。

 

 『取調室』

 

 その文字こそが邪神の脚から力を奪い去り、彼を膝から屈する魔法の言葉。邪神の後ろからゆっくりやって来たシュテルが優しく彼の肩に手を置く。

 

 「それじゃあ、行こうか?」

 

 「・・・はいっ。刑事さん」

 

 シュテルという匠の技(魔法)により邪神は完全に捕縛された。だが、邪神に悔いはない振られたボケに全て答えることが出来たのだから。

 

 

 

 

 

 「・・・まあ、本気で逃げようとしたら撃つだけだったんですけどね」

 

 彼女達のふりを無視し逃げなくて本当に良かった。

 

 

 

 レヴィが高町家にやってくるとなのははもちろんだが王ちゃまと美由紀の三人はベッドの中で夢の中へと旅立っていたので高町夫妻がレヴィから貰ったビデオメッセージを見ていた。

 

 『というわけで私達は魔力だけで出来ているので邪神の力を持つ彼に専用のデバイスを作ってもらおうと思い彼を攫いました魔力の確保もそうですが割と切羽詰まった状況なので、自前では少し心持たないので、デバイスの材料をこちらに譲渡してくれると幸いです。渡してくれないと私達という存在が消えかねませんので。ああ、邪神である彼にはあまり危害は加えませんので、ちょっと辱める程度の嫌がらせくらいに留めておきます。あと、分身体の中で私達が手の付けきれないほど凶悪なモノもいるのでお手数ですがそちらの駆除もよろしくお願いいたします』

 

 『皆はやくデバイスの材料を持ってきてくれ!俺が辱められる前に!』

 

 と、上半身しか移されていない状態だが見様によっては全裸にされているのではないかと思われる裕の姿に・・・。

 

 「裕君的には全裸は辱めに入らないのね」

 

 「そういう問題じゃないと思うぞ桃子」

 

 最後に付け加えるのなら地球の片隅でシュテルが言っていたその暴走体と熱血バトルしている榊原の姿に管理局は彼を大いに評価したという。

 




 榊原君『ぎぃがぁああっ、どぉりいるぅうっ、ブレクゥアアアアアアアアア!!!!』

 暴走体『ヴァアアアアアアアアア!!?』

 榊原君、一日に二度目(一度目はメダルコンビの片割れ、白崎)の大バトルである。

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