リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第六十九話 とある真面目な管理局員の邪神様考察記録

私ことクライド・ハラオウンは現在とても困惑している。と言う訳でこれから念話を通して記録するつもりだ。何故ならば命の恩人の邪神。ユウ・タガミを救出する息子のクロノと共に救出に向かった。バックアップにリンディを控えさせている。まさか親子での共同作業が命の恩人を救う為の作戦とは皮肉な物だ。とは言っても自分がやることはクロノの補佐のような物だ。最前線に出られるほど自分の体力も魔力も回復しきっていないので後詰め、現場補佐官のような物だ。こんな異常事態だがそんな時だからだろうか、息子のクロノの成長を頼もしく感じている自分がいる。クロノには『冷静かつ慎重に行動する』ように言っておいた。

 親友のギルの使い魔。リーゼ姉妹からもそれを言われているから大丈夫と言いきった息子は何と頼もしい姿になった。だが、そんな感傷に浸かっている時ではない。相手は子どもとは言え口先一つで守護騎士だけでなく管理局を翻弄させた邪神を誘拐した輩だ。決して油断してはいけない。けっして突入する部屋の前に異様な存在感を出すバナナの皮なんて踏まない。

 そして、部屋に突入した部屋の中で苦しめられてい、る?邪神ことユウを救う事に成功した。その事に安堵した。危険性を帯びているユニークスキルを持つ存在とはいえクロノより幼い子どもだ。本当に大事に至らなくてよかったと安堵している。だからこそ私はこの言葉を呑みこんだ。

 

 『どうしてこいつはパンツをはいていなかったんだ?』

 

 この地球と言う世界ではパンツをつけるという習慣が無いのか?いや同じ地球出身のギルと局員時代に何度か泊まり込みで職務をこなしていた時にあいつは着替える際にパンツをはいていたはずだ。と言う事はニホンというこの国だけパンツを履くと言う習慣が無い。もしくはあの邪神が着けている着物のような服装の際にはパンツはつけない習慣があるのだろう。でなければ高町なのはや八神はやてといった少女達もパンツを履いていないということになる。それはいけない。特殊な趣味をした次元世界の犯罪者たちがこの事を知ったら一斉にこの地球に来てしまう。私は決して『地球にあるニホンという国で着物をつけている人はノーパン』という情報は外部には漏らさないと誓う。

 

 さて、邪神を救い彼を攫っただろう少女。シュテルは高町なのはと言う少女を元にして作られた闇の書の欠片と言うではないか。あまりにも突拍子の無い事だが彼女が言うには闇の書のデータと力の欠片が偶然に合わさった物だと考えて欲しいと言うではないか。確かに守護騎士といった魔法の力で出来た肉体を持つ存在があるから納得できる。だが、それ以上に恐ろしい事を言ってきた。彼女はこういったのだ。

 

 『私達はあなた達の情報。そして、邪神のデータ持っています』と、

 

 その言葉に危険を感じた守護騎士の将シグナムとリインフォースが止めようとするが、少し遅かった。彼女が次に出した行動。それは、邪神であるユウへの待遇についてである。

 シュテルが言うデータというものはこれまで守護騎士達が体験してきた記憶。それはユウが管理局と話し合いをしてきた直後までの事まで把握している物だった。そしてこういった。

 

 『貴方達の命の恩人に対してないがしろにする行為は見るに堪えません』

 

 ぐふぅっ。とシグナムとリインフォースは胸を押さえる。クロノも思い当るところがあるのか彼女達から視線を逸らす。それに続き彼女の言葉による攻撃は続く。『騎士。いえ、人とならばその御恩に報いるのが筋じゃないんですか?』とか『辱めにあった?精々体をくすぐられるといった物でしょう。長年苦しめられた呪いから解き放たれたんだからそれぐらいは享受すべきじゃないんですか』とか『ああ、騎士の体と言う存在は気高いんですね、一度助けられた恩ではそこまでと言う訳ですか』とか『ところで貴方達の主である八神はやてを救い出した報酬はお払い済みなんですか?』と言いきられた時にはシグナムとリインフォースはその場で地面に崩れ落ちていた。ヴィータはユウに何か飲みたい物はないかと聞いている。シャマルは元から裕の悪戯にも寛容で彼が望むなら大体の事はしてあげるつもりだった。今この場で苦しんでいないものは邪神にちゃんと報いている。もしくは報いていこうとする者だろう。

 それからはシュテルの指示の元、ユウがいた部屋はまるで南国のビーチを思わせるような装飾に作り替えられ、シグナムとリインフォースには騎士甲冑と言うバリアジャケットをパレオの水着に変形させてシュテルも率先してパリアジャケットを変形させてフラダンスを始める。こうやって邪神の少年を楽しめなさい。と言う。

 はやてはユウを膝枕しながら三人がフラダンスしているところを見せる。その隣ではハンマーのような形をしていた自分の愛機を大きめのうちわにして仰ぐヴィータ。そして邪神だけではなく邪神がシュテルに言われて用意させたハンモックやソファーを作りださせ管理局の皆さんを座らせたザフィーラをパシリにして買い物行かせて、その買って来た物を簡単なつまみとして飲み物をシャマルが配っている。いつの間にか、私達管理局員は突入した部屋でシュテル指導の下、南国気分を満喫していた。

 

 「って、なんで南国築いているんだぁー!」

 

 冷静にかつ慎重にツッコミを入れたクロノ。

 息子以外の管理局(自分も含む)がいつの間にか形成された南国フィールドに毒気づいた局員達の尻を蹴り上げる。その威力は半端ないものだった。さすがはリーゼ姉妹に鍛えられただけの事はある。ギルだけでなく彼女達にもお礼をいわなければならないな。って、違う違う。下手にシュテルの機嫌を損ねるとどうなるか、想像できない。これが邪神のデータを手に入れたというものの力(話術)か。

 人の痛いところをついて、あらかじめ用意しておいた逃げ道へと誘導する。だが、それは罠でこちらを籠絡させ、時間稼ぎをする物であり、本来の意図を誤魔化すもの。まさに邪神と言う存在ではなく心を揺さぶるその手腕、恐るべし。特に有無を言わせず、力づくと言った非人道的な事をすれば邪神本人による報復があるので下手に手出しが出来ない事も考えると本当に・・・。この目の前にいる少女は確かに邪神の力を持っている。落としどころというのが分かっている。

 

 「気を取り直して、君は闇の書の欠片だと言ったな。何が目的だ」

 

 「そちらには高性能なデバイスのパーツを用意してもらえるだけでよかったのですが?」

 

 「それを何に使うんだ?」

 

 「私達自身の為ですよ。私達は闇の書。いえ、夜天の書にある守護騎士プログラムのような物ですのでそちらに自分の核のような物を移して完全に独立したいのですよ。・・・邪神の手によって作られた物でね」

 

 「見逃せるか馬鹿!」

 

 確かに。

 MADE IN JASIN

 これほど安心できない物はないな。

 クロノがその様な事を見逃せるはずがないとシュテルも分かっていたのだろう。そしてその不敵な笑顔でこういった。

 

 「残念でしたね。もう時間の様です」

 

 「何の、時間だっ」

 

 「私が邪神を誘拐してから何も考えずに時間を稼いでいたとお思いですか?」

 

 「まさか何かあるのか?!」

 

 「まさにその通りです。私達という存在はあまりにも不安定なものなのでいつ消えてもおかしくありません」

 

 ドヤ顔で自分の命があと僅かだと伝えるシュテルに思わずツッコミを入れるクロノ。もし、息子がいなかったら自分がツッコミを入れていただろう。

 

 「じゃあなんで時間稼ぎをしたんだよ!」

 

 「それは私達が中途半端に危険性が無いということを印象付ける為。再び復活した時に貴方達に私達を問答無用で攻撃させない為に良心につけいる記憶を植え付ける為。そして、邪神の元で復活した時。再び邪神を手に入れる為の下準備をしていこうと思ったまでです!」

 

 何気に邪神を既に手中に収めたかのような物言いにはつっこまないぞ。そして復活した時邪神であるユウをさらっと巻き込んでいる辺りが酷い。更に復活した時に管理局員が彼女達を捕まえにくくしている。更には邪神と言う保険もかけている。本当に人を転がすのが性の邪神のデータを受け継いでいやがる。

 

 「くっ、ならばそうはさせないためにもこのまま封印を」

 

 「ふっ、残念でしたね執務官。今の私がその気になればすぐにでも無へと帰る事が出来るんですよ」

 

 「もう気合と根性で立っているという事じゃないか!」

 

 そう言いながらシュテルの体は風景に溶けていくようにその体が溶け出していくかのように薄くなっていく。これでは封印も間に合わないだろうその中で守護騎士達にはもっと邪神に優しくするようにと。管理局員側には邪神に対する待遇をよく計らうようにと言いながらシュテルは消えていった。相変わらずはやての膝枕でくつろいでいるユウ少年だが、確かに彼はJ・S事件に闇の書事件を解決した英雄と言っても過言ではない存在。たとえそれを望まなくてもそれに対する恩赦を忘れてはいけない。それを僕達に教えてくれたのだと思う。

 ユウを保護したうえで八神はやて達も自分達が住んでいる家へと帰る。

 騒動の真ん中にいた邪神。その姿はまるで生まれたての鹿のようにブルブル震えていたが確かに彼は頑張った死ぬ危険性があった事件に介入して何度も死にかけた場面がありながらもそれを誇ろうともせず、今度から無いようにしよーぜと守護騎士達にも声をかけていた。

 そうだ。忘れていた。管理局としての正義。それは魔法だけじゃない。体を張って、力無き者達の為に力を振るう。傷つき倒れながらも誰かの為に進む彼の姿はまさに正義じゃないか。

 シュテルは間違ったことは言わなかった。・・・ありがとうシュテル。僕等は邪神の行動を見て学ぶこと大切にしていくものを再確認できた。

 そしてありがとう邪神ユウ。君が道化な事をしてるのはその周りにいる人達に気を負わさないものだろう。そんな彼の優しさに付け込んで我々は不当に当たっていたのではないのだろうか。

 送り出されるユウとはやて達を見ながらクライドは思った。

 

 ありがとう少女よ。私は彼の恩に報いることに全力を尽くそう。

 ありがとう邪神よ。僕等は忘れない。君の様にパンツを履くのを忘れても誰かを守りたいという正義を忘れないよと心に誓うのであった。

 




 アースラに戻るとリンディーを含めた管理局一同から「聞こえていたんだよバカ!」と言われた。ああ、あれだけつっこむのを我慢させていたけど念話中継での思考はアースラの船体全域聞こえる仕様になっている。そして事件だっため、艦内の殆どはおきていながら館員の殆どはシュテルとクロノの漫才をクライドの解説付きで見ていたのである。そんな喜劇が繰り返されていたが一応彼等も管理局職員必死に彼等のコントを笑わないようにしていたが、クライドの最後の報告で、自分の口を塞ぎ笑いを押さえていた笑いが放出させられ、アースラの船の中は大いに笑っていたのであった。

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