リリカルなのはW.C.C   作:さわZ

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第七話 進撃の邪神様!

 なのはちゃん。アリサ。月村さんの三人が金・銀・銅(茶)のメダルトリオに目をつけられてから三年の月日が経った。

 

 「やあー、こっち来ないでぇえええ!」

 

 「待てよ、なのは~。一緒に飯を食おうぜー」

 

 なのはちゃんを追う金髪君。

 なのはちゃんの身体能力。特にこの三年間メダルトリオに追いかけられてスタミナがついた。

 

 「ついてくんなーっ、ストーカー!」

 

 「アリサは照れ屋さんだな」

 

 アリサを追う銀髪君。

 アリサも元のスペックとなのはちゃん同様に追われてスタミナとランニングスピードが上がった。

 

 「………」

 

 「元気がないなー、すずか。保健室に連れて行ってやろうか?」

 

 無表情で走る月村さんを追う表彰台あらため銅髪君。

 月村さんもお淑やかなイメージとは違い、勉強だけでなくスポーツも優秀。

 ただ、二年生の時に一人だけメダルトリオと同じクラスメイトになってしまい、メダルトリオのうち一人でも視界に入ると無表情になるという癖がついてしまった。

 …正直怖いです。

 このメダルトリオに追われている美少女トリオの三人はそれを縁に仲良くなっていった。

 一見すると、被害者友の会にも見えるのは気のせいだろうか。

 

 「なんとかしてよ裕君!」

 「裕!」

 「…ダーリンお願い」

 

 「「「モブ!なのは(アリサ)(すずか)と一緒に走ってんじゃねえ!!」」」

 

 メダルトリオに追われている少女達から助けを請われ、共に走る邪神が一人。

 今年、めでたく追われている少女とメダルトリオと同じクラスメイトになった田神裕。

 なのはちゃん達と一緒に絶賛逃走中です。

 …どうせなら、可愛い女の子に追いかけられたかったよ。

 と、嘆きながらも今の状況を打破するために俺は指笛を噴く。

 ピュイーッと甲高く響く指笛は校舎全体に広がる。と、同時に校舎の一階と二階の窓の所々が開け放たれる。

 

 「「「こっちだ、ダーリン!」」」

 

 窓の先にいたのはかつてのクラスメイト達。

 一年前、追われた月村さんが無表情で一年生で同じクラスだった俺に相談してきた。

 殆ど同じクラスに配置された男子は、その月村さんの変わりように驚いた。

 それからというもの一年生、二年生で俺やなのはちゃん達と同じクラスになった男子生徒は彼女等を守るための自警団『イエーガーズ』を結成した。

 ちなみにこの団にはドSな人はいません

 団長は俺。団長選挙戦での決め台詞は『黙って俺に投票しろぉおおっ!』。まあ、自警団を作ろうと言い出したのは俺なので自然とそうなりました。

 この自警団で運動会の出し物の創作ダンスを踊った時のシンクロ率は八十七パーセント。やはり高速で空中を舞うようなダンスは小学生には難しかった。

 ちなみにこの団体は巨人を狩りません。

 

 「やるぞアリサ!フォーメーションSNAだ!」

 

 「わかったわ!私と裕が台になるからすずかから先に行きなさい!」

 

 俺は二階の空いた窓を指さしアリサにそう伝える。

 するとアリサは俺の声に答えながら小さな布の包みをポケットから取り出し、それをトリオにめがけて投げつける。

 その包みがとけると中に包まれていた粉末状の七味唐辛子が宙に舞いメダルトリオの目に入る。目つぶし攻撃である。

 食べ物をそんな風に扱うとは…、まあ、仕方ないか。

 

 「「「ぐあああああ、目が、めがぁあああ!」」」

 

 メダルトリオがムスカしている間に、俺とアリサは校舎の壁付近まで行くと、壁を背中に両手を組み、こちらに向かって走ってくる月村さんを待ち構える。

 

 「1!」「2の!」

 

 「「「3!」」」

 

 月村さんがジャンプして俺とアリサの手の上に乗ると同時に、勢いよく手を振り上げる。

 普通の小学生のジャンプでは二階の窓には届かないだろうが、月村さんの運動神経と俺達のコンビネーションで二階の窓をくぐって二階の廊下へと入っていく。

 

 「次、なのはちゃん!」

 

 「うん!」

 

 なのはちゃんも月村さん同様に手に乗せてジャンプさせる。なのはちゃんのジャンプでは届かないが、先に二階に上った月村さんの手を取って引き上げる。

 

 「最後、アリサ!」

 

 「じゃあ、またあとで!」

 

 「グッドラック!」

 

 アリサは俺の手、肩を踏み台にして二階から手を伸ばす月村さんとなのはちゃんに捕まって二階の廊下へと登っていった。

 この三人を送り出したら俺の役目は終了だ。

 

 「「「く、俺の嫁たちは何処だ!?」」」

 

 目つぶしの効果が切れる頃には三人娘は逃走を完了している。俺は普通に一階の廊下に歩いて教室に帰る。文字通りあのメダルトリオは俺なんて眼中にないからな。

 さて、ランチだランチ。

 あのメダルトリオがあの三人に絡むようになってからお弁当がゆっくり食べる米から早く食べられるパン中心になった。なのはちゃん達も同様にパン中心だ。

 あと、『イエーガーズ』の皆からのリクエストで美少女三人が私服で街中を歩いている写真をメールで送る。あの三人の生写真一つで彼等は忍者のように動いてくれる。

 それもあの三人の魅力であり、彼等の原動力である。

 おっと返信が来た。

 『次は水着姿で』だと?

 ごめん、それはまだ出せない。レア度が高い。WCCもそう言っている。

 

 

 

 

 放課後。

 メダルトリオの目から逃れるために普段は使わない竹林に舗装された道を歩いて帰る事になった。

 

 「あの三人の所為で毎日疲れるわ」

 

 「…王城君も、榊原君も、白崎君もしつこいの」

 

 「……やめてよ、なのはちゃん。あの三人の事なんか聞きたくもないし」

 

 「月村さん、無表情怖いからやめて」

 

 彼女の隣を歩いていると突然無表情になった月村さんの顔にビビる俺。

 彼女の心労は俺では測りきれないほど溜まっているのだろう。

 今度アリサの家に行ったらバニングスさんの愛用しているソファに座ってもらおう。

 リラックス効果と疲労回復を併せ持つソファに座れば月村さんも少しは癒せるだろう。

 バニングスさんと知り合ってからはちょくちょくお呼ばれされて、バニングス邸の家具や服・装飾品などにカスタマイズを行い、より快適にとり住みやすく使いやすい環境にしている。

 その謝礼としてプラチナの指輪(脚用)をもらっている。が、さすがに高価すぎると思う。

 バニングスさんいわく、それ以上の仕事をしているという。

 まあ、確かに普通のスーツを着込んでいるように見えて実は防刃ベスト以上の強度と高級毛布に包まれているかのような癒し&体力回復効果もある。

 というか、高級スーツってあんなにレアなの?

 父上のスーツはあんなにいじれなかったのに。あれがブルジョワパワーか。

 バニングスさんはまたレアな金属のアクセサリーを用意してくれると言うが、完全にパトロン化している。

 月村さんを書斎で休ませてほしいというお願いもきっと聞いてくれるだろう。

 

 「…誰?」

 

 竹林を歩いているとなのはちゃんが急に足を止めた。

 そして辺りをキョロキョロと見渡す。

 

 「どうしたのなのは?」

 

 「…誰か呼んでる」

 

 「メダルトリオか?」

 

 「田神君、言っていい冗談と悪い冗談があるんだよ」

 

 すんません月村さん!無表情且つ油が切れたブリキ人形みたいな動きでこっち見ないで!怖いです!超怖いです!

 なのはちゃんにしか聞こえないのか、俺達三人を置いて行き竹林の少し入ったところでビーバーみたいな生き物を見つけた。

 

 「ビーバー?」

 

 「オコジョでしょ」

 

 「フェレットじゃないかな」

 

 「って、皆、この子怪我してる!はやく動物病院に連れて行かないと!」

 

 三者三様の意見になのはちゃんが大事にビーバーもどきを抱えて竹林を抜ける。

 途中で気が付いたけどこのビーバーもどき、ビー玉くらいの宝石がついた紐をつけている。

 動物病院まで運び、手当てを受けたビーバーもどきをゲージに入れる際にちょっとした興味を持ち宝石に触れると、あまりのレア度に驚いた。

 士郎さんのつけていたダイヤの指輪。バニングスさんに加工を頼まれた調度品の数々。そのどれ等よりもはるかに希少価値がある宝石。

 皆が見ている手前WCCでの加工は行わなかったが、この宝石のデータは取れた。

 

 インテリジェント・デバイス。

 

 高度の人工知識をもった機械。

 邪神。田神裕が魔法世界との最初の接触になる。

 




 とある日の邪神様。

 高町道場で裕の携帯を偶然覗いてしまったなのはを経由して、『イエーガーズ』に生写真を送っている事がアリサとすずかにもばれ、携帯電話に保存していた写真データを全部削除されて、翠屋のケーキを奢ることになった邪神がいた。

 同志達よ、本当にすまなかった。
 今度は動画で送るからな!

 新たに決意した邪神の頭部にアリサの踵落しが落ちる事は確定事項である。

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