修正前の段階で投稿してしまってすぐ消したつもりが消せてなかったんですよね。一回話を消してしまったのでしおり等が変になっているかもしれません。これが処女作なので大目に見ていただけると嬉しいです。
愛がお姉さんの家に向かう前、私は士道の監視を頼まれたわ。士道にイベントが起こるから、変なことにならないよう見ていて欲しいって。
イベントって何よ。ギャルゲーじゃあるまいし。
まあ、監視は別に良いわ。暇で時間を持て余しているし。
でも、普通に一緒にいるのはダメってどういうことよ。面倒なリクエストをするわね。愛の頼みじゃなかったら、絶対に断っていたんだから。
それで、私は今士道の監視をしている。
部屋に閉じこもっている十香に声をかける。そこから士道の一日が始まったわ。
でも、十香は相当機嫌が悪いみたいね。顔すら見せようとしない。士道が話しかけるよりも、第三者がフォローする方が良いかもしれないわね。
士道は十香の事を一旦諦めると、家事を始めたわ。ご飯を作って、掃除をして、洗濯物を干して忙しくしている。
男がやっているとは思えない丁寧な家事ね。愛は結構雑だから見習って欲しいわ。
琴里は全く家事をしないから、士道が一人でやっているみたい。あいつ仕事はできても、家庭はないがしろにする女ね。
専業主夫と結婚して全部任せようとか思っていそうね。倍率が高そうだけど。
家の中の用事を一通り済ませると士道は買い物に向かったわ。慣れた手つきで食材を選ぶ姿は完全にプロね。
家事能力だけでも士道は女から需要が有ると思うわよ。もうちょっと磨けば引く手数多になるんじゃないかしら。
買い物を済ませた士道は、傘を差しながら自宅に向かっていた。そのとき、四糸乃と偶然出会ったわ。
静粛現界した精霊に偶然出会うなんて、士道は本当に精霊に縁が有るみたいね。そして、愛はこれを予見していたかもしれないわね。本当に……愛は一体、何を知っているのかしら?
四糸乃はよしのんを探していたみたいね。よしのんは四糸乃にとっては大事な友達。
命の次に大切なものかもしれない。無くしてしまって、間違いなく困っている。
よしのんは愛が取りに行ってる。だから、士道は四糸乃のフォローに集中して欲しいわね。よしのんがいなくて、不安な四糸乃を安心させるために。
少しすると四糸乃のお腹が鳴った。食事をするために、士道と四糸乃は五河家に向かったわ。
空間震の影響で近所の飲食店が閉まっている。仕方ないけど、自宅に連れ込むなんて手が早いわね。
「随分大事にしているみたいだけど、あのパペット……よしのんってお前にとってどんな存在なんだ?」
士道は慣れた手つきで料理をこなしつつ、四糸乃のディープな部分に踏み込んでいく。
藪蛇にならないように言葉を選びながら。でも、相手の事情に積極的に関わろうとしている。
「よしのんは……友達です。そして……ヒーローです。」
「ヒーロー?」
あのときと私に話してくれたのと同じ言葉ね。よしのんは四糸乃のヒーロー。
「よしのんは……私の理想……憧れの……自分です。私……みたいに弱くなくて……私みたいに……うじうじしない。強くて格好いい。」
四糸乃はよしのんという人格を無意識下で作って心の支えにしている。本当に痛ましい人生を歩んできたのでしょうね。
「理想の自分ね。俺は今の四糸乃の方が好きだけどな。」
「わ。」
ジゴロみたいなことをサラッと言っているわね。言われた四糸乃の方が恥ずかしがっている。紅くなった顔を隠しているわ。
士道にあんな気遣いができると思えないわ。素で言っているのね。
「ん、どうした?」
「そ……んなこと言われたの……初めてで……だから。」
四糸乃も満更で無さそう。これなら今日中に攻略できるかもしれないわね。
士道に攻略されるのは癪だけど、四糸乃の為だもの。目を瞑ってあげましょう。
士道が作った親子丼を、二人並んで食べていたわ。私は隠れて一本で満足できるお菓子を無理やり詰め込んで、終わりにしたのに。
「なぁ、四糸乃。お前、ASTが攻撃してきてもどうして反撃しないんだ?何か理由があるのか?」
ご飯が終わって一息ついたわね。士道は四糸乃との会話を再開したわ。
何か四糸乃の攻略の手がかりを探しているのでしょうね。私も気になっていたから、ついでに聞かせて貰えるとありがたいわ。
四糸乃はASTの好きなようにさせているのかしら?四糸乃の力なら、簡単にあしらうことが出来るでしょうに。
「私は……痛いのが……嫌いです。怖いのも……嫌いです。きっとあの人たちも……怖いのは嫌だと思います。だから……。」
「四糸乃、お前。」
「でも、私は弱くて……怖がりだから……一人だと駄目です。痛くて……怖くて……どうしようもなくなると……頭の中がぐちゃぐちゃになって……きっと皆に酷いことを……しちゃいます。だから、よしのんは私のヒーローなんです。よしのんは…‥私が怖くなっても大丈夫って‥‥言ってくれます。そうしたら本当に大丈夫になるんです。だから……。」
本当に胸糞悪くなる話ね。要はASTが本来受けるべき負担を、四糸乃が肩代わりしているってことでしょ。本当に腹立たしい。
士道が私と同じような感情を抱いているって分かるわ。だって、さっきから怒った顔をしているもの。
今こそあなたの出番よ。男を見せなさい。
話を続けようとする四糸乃の頭を士道は強く撫でる。四糸乃は戸惑いを見せる。
「あ、あの。」
「俺がお前を救ってやる。絶対よしのんは見つけ出す。でも、もうよしのんに守って貰わなくても良い。俺がお前のヒーローになる。」
士道の言葉に四糸乃は呆気に取られている。嬉しい感情よりも驚きが強いみたい。
だけど、好印象を抱いているように見えるわね。やるじゃない士道。
「あ……りがとうございます。」
「おう。」
お礼をそのまま受け取って良いかは分からない。けど雰囲気から考えてそれほど悪くはないと思う。心なしか四糸乃も嬉しそう。
「そ、それとこの前は悪かったな。キスしちまって。」
士道は急に思い出したように話題を変える。四糸乃とのキスを思い出したのかしら。
女みたいに恥ずかしがりながら言っているわ。いつになったら免疫がつくのかしら?
「キス?」
四糸乃は不思議そうに士道に問いかけている。キスと言う概念自体知らないみたいね。
十香といい四糸乃といい、どうしてキスすら知らないような精霊がいるのかしら。そんなんじゃ、悪い奴に騙されちゃうじゃない。
「あ、あぁ。こうやって近づいて唇を触れさせることで……」
士道が実際にキスをする振りをする。もうあと少しで唇と唇が触れ合う距離まで二人が近づく。
「士道すまなかった。私が……」
そのタイミングで丁度、十香が帰ってきてしまったわね。私も士道と四糸乃に集中していて完全に油断していたわ。これじゃあ、監視の意味がないじゃない。
キスシーンに別の女が登場。正にって感じの修羅場ね。正直最悪の状況だわ。
でも、ここまでならやらかしで済んだわ。ここまでなら。
「ハーミット、どうしてここに……」
十香の後ろにはもう一人いる。つい先日戦ったばかりの相手、崇宮真那が。
崇宮真那はすぐさまCRユニットの緊急着装を行って武器を構えた。どうしてここにこいつがいるのよ。
不味いわね。他人の家の中で遠慮しているからか、いきなり斬りかかるような真似はしていない。けれど、それもいつまで持つか分からない一触即発の状況。
私はこういう時のために監視役になっていたのね。遅すぎるけど、今からでも対処しないといけない。
「四糸乃には手出しさせないわよ、崇宮真那。」
「七罪!」
「どこから出てきたのだ。」
「ちっ、《ウィッチ》までとは……。」
それぞれが私の登場に驚く。注目を私に集めることは成功したようね。
崇宮真那だけが憎々し気な目で私を見ている。遊んであげた甲斐はあったみたい。
「七罪……さん?」
四糸乃だけが微妙な反応を示す。前回会った時はこの姿じゃなかった。
不審に思われても仕方がないわね。でも、説明しているような時間はない。
「四糸乃は窓から逃げなさい。早く!」
四糸乃は私の声に気おされて、ベランダの窓から逃げ出す。四糸乃、どうか無事でいて。
♦♦♦
「それで、四糸乃は結局ASTに見つかって暴走してしまったという訳か。」
「ごめんなさい。」
場所は変わってビル街の屋上付近。ASTが飛び交っていて四糸乃に攻撃を仕掛けているわね。
でも、四糸乃が吹雪の結界を発生させている。そのせいで、ASTは手出しできないみたい。同時に私たちも近づけなくなってしまったけれど。
状況は最悪に近い。こうならないよう、私が監視役を任されていたのに。
不甲斐ない自分が嫌になる。所詮、私なんて役に立たない飾りよ。
「いや問題ない。ちゃんと話していない僕が悪かった。四糸乃が封印出来たらちゃんと全部話そう。知ってること全部。」
「愛……」
愛は失敗した私を責めようとしない。それどころか、今まで話していなかったことを全部話してくれるってこと?頑なに口を割ろうとしなかった愛の秘密を。
「後でな。今は四糸乃だ。」
「……そうね。」
愛は誤魔化すように四糸乃の方を見る。思うところは有るけど、今は四糸乃の方が重要なのは確か。
四糸乃を救うことに集中しましょう。
「四糸乃は自分の周囲に吹雪の結界を張っている。結界に入った者を凍り付かせるだけじゃない。氷塊が散弾銃みたいに飛び交っている。中に入ったらお前でもただでは済まないぞ。」
愛は警告している。見かけ以上の情報を知っていることはこの際気にしない。愛が確信しているなら私はそれを信じる。
吹雪に入るのは自殺行為に近い。これは私も同じ意見ね。
私は元々戦闘は不得意。
だから、基本的な霊力の結界で防ぐしかない。戦闘型の天使、
冷静に考えるほど私に不利な要素しか出てこない。それでも。
「私は四糸乃を助けたい。」
四糸乃は私と違って良い子よ。人を思いやって代わりに自分を犠牲にするような子なの。
あんな良い子には救いがなくちゃいけない。救いがない世界なんて間違っている。
「かなり危険だぞ。」
「そんなことは関係ない。私は行く。」
愛は反対すると思う。だって愛は私を守るために今まで頑張って来たんだもの。
でも、私は自分だけ安全圏で守られているだけなんて我慢できない。愛に反対されても、今回は好きにさせて貰う。
「……そうか、それじゃあ行こうか。」
愛はあっさりと一緒に行こうとする。自分自身で状況が悪いと言ったのに。
そんなやりとりがなかったかのように、あっさりと。余りの自然さにこっちが驚いてしまう。
「反対しないの?『私に危険なことをして欲しくない』って、そう言うと思っていたのだけど。」
「僕の好きになった七罪はそういう娘だから。友達のために全力になれる女の子だから。」
「何よそれ。」
友達なんて愛以外にいないのだけど。でも、言われて悪い気はしないわね。
「さあ行こう。」
私たちは飛び出した。
最初に向かうのは士道のところ。悔しいけど、四糸乃を救うのは士道の役目よ。だから士道は作戦に不可欠。
士道の隣には不完全な霊装を纏った十香もいる。仲直りしたみたいね。
「士道さん。」
「愛、七罪。よしのんは見つかったか?」
「ここに。」
愛が鞄からよしのんを取り出す。確かにあのとき、愉快にはしゃいでいたパペットね。
「それを俺に預けてくれないか。俺が四糸乃に届けて見せる。」
臆病風に吹かれて、逃げようなんて思っていないみたいね。もしそんなこと思っていたら、社会的に殺していたところよ。
士道は愛に必死な顔で懇願している。人の成果を横からかっさらう形になる。だから、引け目を感じているのでしょうね。
そこに関しては別に問題ないわ。四糸乃を救うことができるのは士道だけなのだから。
よしのんは士道が持つのがベストだと思う。問題はそれ以外の部分よ。
「それは別に良いですけど、士道さんはどうやって四糸乃の所に行くつもりですか?」
「俺には再生能力が有るらしい。あのくらいの吹雪は根性で耐えてやるさ。」
はぁ、呆れるほど馬鹿ね。つまり、琴里の再生能力頼りで、あの地獄みたいな吹雪を通り抜けようとしているってことかしら。ノープラン同然じゃない。
「士道君、本気で言ってる?死ぬわよ。」
「本気も本気さ。四糸乃は苦しんでる。俺が行かなきゃいけない。」
脅しをかけても動じる様子はない。四糸乃を助けるために自分の命を危険に晒すことを躊躇していないようね。馬鹿だけど、嫌いになれないタイプの馬鹿。
「それじゃあ、僕たちがサポートしましょう。」
「士道君一人だと死んでしまいそうだし。」
ここには士道と同じような馬鹿しかいないのよね。
「お前ら……。ありがとう。よろしく頼む。」
インカムから琴里の焦った声が聞こえる。この状況は想定外のようね。
内容を聞かなくても、止めようとしていることくらいは分かる。でも、それで止まるような奴はここにはいないのよ。悪いわね、琴里。
四糸乃の元に士道を送り届ける方法は非常にシンプル。士道が単身で吹雪の中に突っ込む。愛が
作戦とすら言えないようなただの力技。それでも、これで吹雪を攻略する以外の道はない。
「やばいぞこれ。
「もっと私の霊力を持っていきなさい。
スマートとは言えない、さらなる力押し。でも、これしか思いつかない。私の霊力全部持って行っても良いから、士道を四糸乃の元まで届けるわよ。
栓を抜いたバスタブのようにどんどん霊力が持っていかれているのが分かる。ここまで霊力の消費が激しくなると頭痛がするようになるのね。知らなかったわ。
でも、四糸乃はもっと苦しかった。長い間、ずっと耐えてきた。だから、これくらいは耐えて見せる。
あれから何分経ったかしら。そんなに長い時間は経っていない筈だけど、体感的にはもう何時間も経過したよう。
もう一割も霊力が残っていない。士道はまだ辿り着かないの?もう立っているのも辛くなってきた。
「士道が四糸乃の所に辿り着いたぞ。」
愛の声を聞いて思わず尻もちをつく。同時に変身が解けて本来の私の姿に戻る。
「疲れた~。」
「頑張ったな、七罪。」
愛は私の頭を強めに撫でる。ちょっと恥ずかしいけど、愛がこういうことをするのは珍しい。素直に受け入れておくわ。
それから暫くは座り込んでいたわ。霊力が残っていないから飛ぶのも辛い。今日はフラクシナスで家まで送って貰おうかしら。
「七罪さん。」
全裸に男物の上着を羽織った四糸乃が駆け寄ってきた。……これ、客観的に見たらかなり完全にアウトじゃない?
事情を知らなかったら士道が変態みたい。公然で全裸になることを要求するなんて相当よ。まあ、封印に成功したからこうなったんでしょうけど。
「迷惑かけちゃったみたいだね~、七罪ちゃん。四糸乃の事助けてくれてありがとうね。」
よしのんがおどけた様子でお礼を言う。それを見て微笑ましく思えてきたわ。
「良いのよ。私が好きでやったことだから。」
お礼が言われたいからやった訳じゃない。私が四糸乃を助けたいと思ったからやったのよ。これは珍しく私が誇れることね。
「ほら、四糸乃も。」
「七罪……さん。ありがとう……ございます。」
よしのんに応援されながら、四糸乃が精一杯お礼を言ってくれた。引っ込み思案でよしのんに全部任せていた四糸乃が。
「うん、どういたしまして。」
ここは素直に受け取っておきましょう。四糸乃が頑張ってお礼を言ってくれたのだから。天邪鬼に返すなんて失礼よ。
四糸乃は自分なりの一歩を踏み出した。だったら私も、一歩踏み出すべきなのかもしれないわね。
その後、士道には誰って顔をされたけど放置したわ。今日はもう疲れたから、懇切丁寧な説明はまた今度。
♦♦♦
「あんたが七罪……なの?」
琴里が全員の意見を代理するように疑問を投げる。他に士道と十香と令音も同じような顔。
「そうよ。私が七罪よ。今までのは
半ば開き直って堂々と宣言する。自分でもかなり嫌味な言い方になっている自覚はある。でも、これでも結構我慢している。
変身が解けた姿を見られてしまった。もう隠すこともできない。
本当は記憶がなくなるまで、四糸乃と愛以外の全員の頭を殴ってやりたい。そして、私の醜い姿を誰も見なかったことにしたい。
けれど、それじゃあ意味が無い。私も踏み出すって決めたから。四糸乃のように。
「別に悪くはないけど。ちょっと驚いたっていうか。」
士道が曖昧な言い方で誤魔化す。言いたいことが有るならはっきり言えば良いのに。まどろっこしいわね。
「ブスが美人の皮を被ってたのが見苦しいと思うなら、はっきりそう言いなさいよ。」
私の言葉を聞いて、士道は十香や琴里と顔を見合わせる。互いに不思議そうな顔をした後に、再び私の方を見る。
「七罪がブスだなんて全く思わないぞ。むしろ可愛い方じゃないか?」
「なっ……。」
士道はあっけらかんとそう言ってのける。その言葉を他全員が刻々と軽く肯いて肯定している。
何なのよこの状況は。全員打ち合わせも無しにドッキリができるの?
「行っただろ、七罪。お前は十分に可愛いって。」
愛が後ろから肩を掴んで話す。その言葉に恥ずかしくて動けなくなる。
「七罪さんは……とっても可愛いと……思います。」
愛とは逆サイドから四糸乃が声をかけてくれる。なんだかガッツポーズでどや顔までしている。可愛い。
この後私は全員から『可愛い』『可愛い』連呼され続けた。その後、唸ってしまったのは皆が悪い。
ようやく四糸乃の攻略終了です。でも、四糸乃編はあと一話続きます。流石に愛君と七罪の秘密のお話は本編に入れないと不自然かなと思ったので。というわけで次回が四糸乃編のラストです。その後番外編も入れる予定です。番外編は三話かな。
そしてリアルが忙しくなるので投稿ペースは恐らくもう一段階落ちます。三月に入るまでは忙しい時期なのでお許しください。物語の流れは大体十一巻辺りまで思いついているので逃亡する気は有りません。
最後に裏話を。今回は霊力を