理由は人生の岐路に立たされているから。そして、一次創作の方もそろそろ頑張りたいなって思ってるからです。
無論、作者が死なない限りは最後まで書ききるつもりなのでそこはご安心ください。これからも『ヒロインは七罪』をよろしくお願いいたします。
ASTの基地から少し離れた大通り。私は小柄な少女と向き合って話をしている。
岡峰美紀恵。岡峰重工の社長令嬢だけどASTっていう最前線に立ってる変人。
多分あれでしょ。鳥かごの中で飼われてたお嬢様が外の世界を見たいっていうわがまま。道楽ね。
まあ、私としては都合がいいんだけど。そういう警戒心も覚悟もない相手からは情報が抜きやすいから。
「すみません、わたくしこういうものでして。少しお話お聞かせいただけないでしょうか?」
岡峰美紀恵に名刺を差し出す。
「天宮オンライン?メディアか何かですか?」
「はい。天宮市を盛り上げるため、天宮市の様々なものをまとめて発信しております」
私が昨日起ち上げた即興サイトだけどね。あんなのよその適当なコラムをアレンジしてまとめるだけでそれっぽくなるのよ。
「ほえー、それはすごいですね。でも、なんであたしに?」
「はい、わたくし人を見抜く目には自信がありまして。あなたのお仕事に対する熱意、是非お聞かせ願えないかと」
「そ、そんなことありませんよ。私なんてまだまだで」
とか言いながら嬉しそうにしてるわね。多分、詐欺とか簡単に引っかかるタイプよ。
「いいえ、まだお若い方じゃないですか。職場で将来有望なエースになれますよ」
「えへへ、そんな。でも、ちょっといろいろ語れないことが多くて」
これならもうちょっと押せばいけそう。
「お仕事に対する意気込みだけで十分です。」
「それじゃあちょっとだけ」
「ありがとうございます」
堕ちたわね。案外ちょろかったわ。
♦♦♦
こいつの話を聞いててよくわかったことがあるわ。
まず、秘密を隠して会話をするってことが全くできてない。ある程度事情を知ってる奴が聞いたら情報筒抜けよ。
何?最近、外部から来た人が偉そうって。
外部の組織から人員が来たことをばらしてるし。そもそも、そんなヤバい状況だって言ってるようなものだし。
こいつ絶対機密とか知っちゃダメな奴よ。無意識で情報ばらして仲間を危機に追い込むタイプ。
つまり、想定を遥かに超える馬鹿ね。
まあ、こいつはその分強いみたいだけど。多分、それで組織にいることを許されてるんでしょうね。
肉弾戦とかしたら面倒そうなタイプ。
負けることはないでしょうけど、相手にはしたくないわね。今度見かけたら一番最初に絞めておきましょうか。
正直、その辺はどうでもいいわ。一番気になる情報はこいつの先輩の話ね。
「先輩がお仕事をお辞めになってしまったのですか?」
「はい。私が入るきっかけになった憧れの先輩だったんですけど、何か事情があるみたいで」
こいつの会話の流れからして、その憧れの先輩は多分鳶一折紙って奴ね。こいつと同じで高校生なのにASTに入ってる変人。
年の割に活躍してるエースって情報だし。精霊から他人を助けられる実力も合致するわ。
「それに、その弟も辞めることにしちゃったみたいで」
鳶一折紙の弟は鳶一愛。こいつも同じようにASTの隊員だったわね。
姉弟でASTに入ってる人間なんて他にいないだろうからほぼ間違いないでしょ。
奇妙ね。あの莫大な霊力を感じた直後のタイミングでASTを辞めるなんて。
偶然ならそれでいいけれど。もし何か知っていて身を引いたとしたら?
あり得るわね。私だったら、そんな危険なことに首突っ込みたくないもの。
「だから、先輩たちの分まで私が頑張るんです」
「そうですね。こういうときこそ踏ん張りどころだと思います」
鳶一折紙と鳶一愛。こいつらが次の調査対象ね。
さて、どうやって調べましょうか?
♦♦♦
あれから数日。俺たちは七罪を攻略するための会議を開いていた。
正直あんまり気乗りしないんだよな。なんか横恋慕してるみたいで。この世界では別に関係ないのは知ってるんだけど。
「少年、そんな気概で愛くんに勝てると思ってるのかい?もうちょっとやる気出してもらわないと」
溜息を吐いていると、ビシッと指をさされてしまった。内心が顔に表れていたようだ。
しかし、待って欲しい。琴里ならまだしも、俺はどうして彼女に注意されているんだ?
「どうしてお前がそんなやる気出してるんだよ、二亜」
俺の部屋で作戦会議に参加している人物。その中には何故か二亜が混じっていた。
参加っていうか、琴里と二人でガッツリ進行している。俺はそもそもどうしてここにいるのか理解できてないのに。
本条二亜。狂三が連れてきた新しい精霊だ。
灰色のショートカットヘア、ユニセックスな私服、親父臭い言動と今までにないタイプ。失礼ながら、一瞬男だと見間違えてしまいそうになる子だ。
そして、まだ封印していない。それなのに、何故か平気で我が家に入っていた。
「あたしにとってもちょーっと無視できない話でね。協力しようかと妹ちゃんに申し出たわけよ」
二亜は指を振りながら意味深な顔をしている。ちょっとよくわからない。
「いきなりラタトスクの秘匿回線でコールがあったときは肝を冷やしたわよ」
琴里は腕を組んで苦笑いする。秘匿回線っていうくらいだから、本来は相当な緊急事態でしか使わないんだろう。
でも、そんなの二亜は平気で素通りできる。何せ二亜の天使は全知の
知ろうと思えば何でも知ることができる。ラタトスクの機密情報までばっちりだ。
「あはは、脅かして悪かったね」
「まあいいわ。精霊からのアプローチはこちらとしても歓迎するところだし」
琴里は仕方ないという顔をしている。どうしようもないからポジティブな方向に捉えるってことか。
「琴里、まだ封印してない精霊を攻略会議に参加させちまってもいいのか?」
二亜に聞こえないように小声で話しかける。どうせ調べられちまうだろうけど、一応な。
「妙にやる気だし、今は七罪の方が急務よ。協力してもらわない手はないわ。それに、単純接触を増やすのも攻略の一部よ」
琴里は二亜の方をちらりと見ながら答える。まあ、そういうことならいいか。
二亜は長年人間社会に溶け込んできた精霊みたいだし。二亜が連載してる漫画って俺が小学生の頃からやってるようなものだ。
前の七罪と一緒で今すぐどうこうなることはない。後回しにしても大丈夫だろう。
「おいおい少年、妹ちゃん。覚悟が足りんのじゃないかね?あたしの方見ながらなっつんの攻略だなんて、無謀にもほどがあるよ」
会話の中身は知られちまってるようだ。その上で立ち回っているような裏が見えるけど。
「まるで難易度ルナティックみたいな言い方だな。確かにあいつは厄介だけど、
そもそも今の愛はほとんどただの一般人だ。
それに対して、こっちはラタトスクのサポートと全知の天使がついてる。正直、愛に申し訳がない。
「何言ってんの少年?むしろこっちが断然不利だよ」
「どういう意味だよ?」
二亜は俺の言葉を否定して
「まず前提として、愛くんは
「それはまあ、そうか」
あいつ頭いいし、すぐに俺が思いつかないような作戦考えるもんな。確かに厄介か。
「士道、認識が甘いんじゃない?あいつは七罪と二人でラタトスクを完封した奴よ」
「そんなことあったのか?なんだよ初めて聞いたぞ」
琴里は頭を抱えながら語り始めた。
「あんたが愛と会う一年くらい前の話よ。私は交渉を持ち掛けられて、あいつの言い分を全て吞むしかなかった」
琴里が悔しそうな顔をしてこぶしを握り締める。愛の恐ろしさが改めて身に染みる。
「愛くんはなっつんを誰よりもよく知ってるんだよ。情報のアドバンテージなんて平気で埋めてくる。そこのところしっかり理解しておいてよ」
「お、おぅ」
確かにあいつなら七罪の行きそうなところを当ててもおかしくない。だって愛だし。
「それともう一つ。愛くんは天使の力をほとんど失ったけど、まだ少しだけ使える」
「それは一体どんな能力が?」
あの恐ろしい天使の能力だ。一部だけでも使えるなら、ひっくり返されるかもしれないな。
「それは――愛くんの周囲一メートルの生物を解析する能力だよ」
二亜はおどろおどろしい雰囲気を出して言い放った。
「そういえばそんな能力持ってたな」
言われて思い出す。愛の天使の能力は解析と改変だって言ってたっけ。
「好き勝手生物を弄り回す能力はもう使ってこない。でも、間合いに入った相手を問答無用で調べる能力は健在なんだよ」
二亜はびしっと指を立てて宣言する。
「それは、この状況だと最強の能力ね」
その言葉に琴里が戦慄する。しかし、俺にはちょっと意味がわからなかった。
「どういう意味だよ、琴里?」
「冷静に考えてみなさい、士道。七罪の能力は何?」
「あ、そういうことか⁉」
ようやくわかった。愛の能力、七罪の変身を封殺できるのか。
「その通り。愛くんは半径一メートルに入った時点で、なっつんの変身だとすぐにわかってしまうんだよ。しかも天使を出さず、ノーモーションで」
「それは恐ろしいな」
変身しても一瞬で七罪だと看破しちまう。そして、七罪は気づかれたことに気づくことすらできない。
「これで愛くんの恐ろしさがわかったかな?あの子は優秀な
「それは、そうだな」
確かに俺が同じことをできても愛と同じように動くのは無理だ。
「ほら、わかったらさっさと動くよ。時間はあたしたちの味方をしてくれないんだから」
「わかったよ」
そうして俺はやる気の出ない作戦会議に参加した。
♦♦♦
明らかに年齢不相応なことばかりしてきたけど、僕は十四歳だ。まだ義務教育の最中。当然、学校に行く義務がある。
前の世界では中学校にほとんど行ってなかったけど。流石に
今は学校の帰り。紅くなり始めた空を見ながら、同じ帰宅部の琴里と歩いている。
「琴里はよく耐えられてるね。会話合わなくならないの?」
ラタトスクで過ごしていると、子供ではいられない。自然と思考が中学生らしくなくなっていく。
無邪気におしゃべりしている振りをしていると、疎外感を覚えてしまう。
「別にそんなことないぞー。こないだなんて加奈ちゃんから手作りのマフラー貰ったんだ。どうだ、いいだろ?」
琴里は首に巻いているマフラーを自慢げに見せつけてくる。
白と赤の二色で編まれている。琴里のリボンと髪色に合わせたんだろう。
「そういえば琴里は無理して大人ぶってるだけだった」
琴里が黒いリボンをつけたときはラタトスクの司令官。その優秀さを発揮して令音さんや神無月さんを従えている。
でも、イコール琴里の内面が大人ってわけじゃない。素はどっちかというと中学生に近いだろう。
白いリボンをつけているときはかなり子供っぽい。ラタトスクで大人ぶってる弊害もあるんじゃないだろうか?
それに黒いリボンのときも子供っぽい部分が多い。チュッパチャプスにツインテールに猫さんグッズ。どれも琴里の趣味だ。
「ははは、何を言ってるのかな~?愛も令音に甘える子供じゃないか」
琴里は明るい声のままプロレス技をかけてくる。
「琴里、手が早くない?」
「安心していいのだ。ちゃんと相手は選んでるから」
背後から首を絞めて落とそうとしている。手を差し込んで極められないようにしたけど。
「愛はもうちょっと人付き合いを覚えた方がいいと思うぞ。ある意味、七罪より酷いからな~」
琴里は技を続行しながら口撃に移る。このままじゃ気が収まらないみたいだ。
「まあ、否定はしないよ」
拘束を抜けて再び琴里の隣に立つ。琴里もジト目でこっちを見ながら歩みを再開した。
「学問を学ぶ場所としての価値はないけど、同年代とのコミュニケーションを学ぶ場としては価値がある。どうせ行くなら価値を見出さないとね」
なんだかんだ僕の精神は子供のままだ。それをようやく受け入れられた。
もうちょっと矯正する必要がある。その訓練施設として学校は丁度いい。
「ひねくれ者だな~」
失礼だな。前向きに考えてるのに。
「まあ、楽しくないなら楽しい場所に変えてしまえばいいんだよね。琴里、一人二人僕のクラスに転入させるくらい難しくないでしょ?」
七罪がいれば学校にも彩りが増す。というか、七罪がいる場所なら喜んで行こう。
「安心するといいのだ。
琴里が『封印した精霊』のあたりを強く強調している。士道が封印するっていう宣言なんだろう。
「ごめんね、琴里。霊力封印してない精霊を通わせるから、迷惑かけることになるだろうけど」
負けるわけないだろう。何をおいても七罪のことだけは負けるわけにいかない。
「あははは、そんな心配しなくていいんだぞー。ちゃーんと精霊は封印して保護するからなー」
琴里も勝負に燃えている。その無邪気な笑顔の裏には、獰猛な化身がいるかのようだ。
「後でだーい好きなおにーちゃんへ泣きつくことになるな、琴里」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるぞー。今のうちに令音の膝を予約しておいたらどうなのだー?」
剣呑な雰囲気のまま歩き続ける。互いに笑い合っているが、その不気味さと言えば言葉に尽くしがたい。
僕たちの周囲に、人っ子一人近寄らなかった。ただ一人を除いて。
「申し訳ありません、少々お時間よろしいでしょうか?」
一人の女性が話しかけてきた。その言葉に僕も琴里も喧嘩を忘れて見入ってしまう。
その姿には見覚えがある。装いこそ違うものの、誰よりもよく知っている人物だ。
「あの~、私の顔に何かついていますか?」
誰もが振り返るような整った顔だち。艶やかに伸びたエメラルドのストレートヘア。
すらりと伸びた長い脚。美九と張り合えるグラマラスな体型。
鴨が葱を背負ってやって来た。正にそんな状況だ。
そこには、話題にしていた七罪がいた。
真面目に行動して調査を進める七罪。それでも、ハンターに狙われるカモでしかありません。かわいそうに。
さて今回の裏話は学校での愛くんについて。当然ながら問題児でした。能力が開花し始めていて、一番調子に乗ってる時期なので。そこに擬態できる愛くん登場となったのでみんな首をひねっています。
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