七罪
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愛ちゃん
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――十二月二十四日 クリスマスイヴ――
Side 七罪
結局士道の家で開催されることになったクリスマスパーティー。全員バニーガール衣装を着て参加とかいう頭のおかしいイベントよ。
流石にバニーガール衣装で行くなんてことはできないわ。だから、家に入ってから脱衣所で二人ペアで順番に着替えることになってる。
「はぁ、どうしてこんなことになったんだか」
天使を出して自分に向ける。あんな恥ずかしい衣装買うのも嫌だし、今回はこれで着替えましょう。
紺色で地味目なスカートタイプ。これならバニーガールとして許されるでしょうし、まだ恥ずかしくない。
これなら変な目で見られることもないでしょ。
「いいじゃん、ちょっと趣向の変わったクリスマスパーティーって感じで。かわいいよ、七罪」
物好きな私の恋人以外は。
「はいはい、ありがとう」
愛は純粋に楽しそう。これから自分自身も女にされた上バニーガールを着せられるっていうのに。
嫌だとか思わないのかしらね?
……思わなさそうね。だって愛だもの。
「ほら、ちょっとじっとしてなさい。変身させるから」
「よろしくね」
両手を横に広げて待ち構える愛。そこに向かって贋造魔女を振るう。
愛の身体が輝いて全体的なシルエットが丸く柔らかい感じになる。普通の短髪だった髪も肩にかかるくらいまで伸びて。
折紙の双子って言われたら納得できそうな感じ。あんま言いたくないけど普通に美少女。
「うん、完璧だね」
愛はくるっと回ってポーズを決める。ピースサインを目の横で決めて、どこぞのアイドルみたい。
こいつは普通に楽しそうね。私はこんな格好誰にも見られたくないんだけど。
うさ耳のヘッドセットは無駄にきゃぴきゃぴしてるし。胸元を露骨にだしてるし。
明らかにボディラインがわかるくらいピッチリしてるし。網タイツは隠せてるようで隠せてない感じが強いし。
誰がこんなの考えたのかしら?とりあえずそいつとは知り合いになりたくないわね。
今の愛がかわいいのは否定しないけど。
「何か思うところはないの?」
「ん?そうだね、ちょっと動きにくいかな。下手にねじると胸元ずれちゃうかもだし」
愛は手足を動かしたり腰をねじったりしながら確かめてる。ただの動作確認ね。
「そういう話じゃないわよ」
「じゃあどういう話?」
「恥ずかしくないのかって聞いてるの」
「いや別に。そもそもそういうことを目的とした衣装でしょ」
こいつに羞恥心とか期待した私が馬鹿だったわ。平気で一か月くらいメイド服着てた奴が、今更よね。
「というか、何サラッと巨乳自慢してんのよ!ずれるほど胸がない私への当てつけか、コラ!」
「んんっ、七罪。そういうつもりじゃないって」
衣装越しにもちゃんと感じるくらいの大きさがある。
十香や狂三みたいにメチャクチャデカいわけじゃないけど。ちゃんと掴めるくらいには大きい。
自分でやっといてアレだけど、元男のくせにこれはイラっとするわね。
「その駄肉、少しは寄越しなさいよ!」
「はぁはぁ、別に欲しくて盛ったわけじゃないから~」
ひとしきり怒りが収まるまで揉みしだく。
愛は私のもの。つまり、この胸は私のもの。
鬱憤晴らしにいくら揉んでもいいのよ。そのまま悶えてなさい。
ただ、バニーガール衣装ってそんな丈夫じゃないのよね。見た目以外の全部そぎ落としているようなものだから。
『あっ!』
胸の部分が変にめくれる。同時に愛の胸がもろに見える。
私はそのまま掴んじゃった。愛のおっぱいを直に。
「はぁ、んふぅ!七罪、放してぇ……」
「あっ、ごめん」
いつの間にか揉みしだいていた手を放す。すごく柔らかかった。
ここが士道の家で良かったわ。
♦♦♦
着替えを終えた私たちはリビングのドアを開ける。すると異色の光景が広がってたわ。
当然、クリスマスパーティーだからそれらしい用意がしてあるのよ。ツリーとかリースとかご馳走とか。
でも全員バニーガール。ソファに座ってる子も、待ちきれずにチキンを食べてる子も、恥ずかしくて壁際で隠れてる子も。
改めて、何この異世界?ドレスコードがバニーガールなんて世界中探しても多分ここだけよ。
「ああん、待ってましたよ~。お二人とも素晴らしいですねぇ」
一番最初にやって来たのは主役の美九。ソファの中心で女の子を侍らせてる。
右手に耶倶矢(バニーガール)。左手に夕弦(バニーガール)。
そのさらに横には十香や折紙まで。
両手に華どころか抱えきれないくらいいっぱいって感じね。美九にとっては楽しそう。
「どうも、美九さん」
「本当にあんたもバニーガールなのね」
「はい!今日はバニーガールさんの宴なので」
美九は腰に手を当てて胸を張ってる。一番デカい脂肪の塊を揺らしながら。
こいつが『自分も着る』って言ったせいで、サラッと私服で参加する計画は潰れたわ。招待状に『バニーガール衣装でお越しください』ってふざけた文言書かれちゃったから。
「やあ、来たかい」
次に歩み寄ってきたのは令音。折紙が誘ったからこのパーティに参加してるわ。
折紙が増やした三人のメンバーの一人。
「令音さん!」
そこに元気よく近寄っていく愛。いつもみたいに親子の距離感で撫でられてるわ。
微笑ましい光景ね。衣装がバニーガールじゃなかったらだけど。
「中々に似合っているじゃないか、愛」
「えへへ、令音さんも似合ってるよ」
お互いの衣装を褒め合う愛と令音。これが普通のドレスだったは何も思わないけど。
令音もこの場にいる以上当然バニーガールを着てる。
そう。見た目二十代の令音がワインレッドのバニー衣装を着てる。
結構際どいラインしてて、特に装飾もない肌面積多めの格好。
なんでこれに『似合ってる』とか言えるの?普通そんなの末代までの恥レベルじゃないの?私がおかしいの?
「令音、あんたは良いの?そんなの着せられて?」
「どういうことだい?」
令音はきょとんとした顔で首をかしげてる。その顔に愛の面影を感じたわ。
「……ああそう。あんたが何も思ってないなら別にいいわ」
「?」
そうよね。こいつ、あの愛の親代わりよね。
多分こっちの方が本家なのよ。
「みんな集まってるわね」
少しすると最後の二人組が現れたわ。先頭に立つのはこの家の住人の琴里。
スカートタイプの衣装を着て堂々としてる。そして、後ろをついて来るのがもう一人。
当然もう一人も当然この家の住人。
「うう、なんで俺まで」
士道――いや、士織がバニーガール衣装を着て入ってくる。肩を縮こまらせて顔を真っ赤にしながら。
ピンク色のバニーガールでこの中で一二を争う可愛さ。とても男には見えないわね(笑)
元々中性的で女の子でも通用する顔立ちはそのままに。髪を腰まで伸ばして髪飾りで女子力をアップ。
身体つきも十香たちに負けず劣らずメリハリのあるものに。うん、我ながらいい出来ね。
『どうせなら士道も、士織も参加させるべき』
折紙がそう言いだしたときは面倒くさいとしか思わなかったけど。実物を見てみると案外悪くないわ。
士織の恥ずかしがる顔。見てると楽しくなってくるもの。
私も恥ずかしい思いしてるんだし。士道も同じような目に遭えばいいのよ。
「七罪、プロデュースは全部七罪がやったの?」
愛は士織を見ながらふんふん言ってる。アイドルを見るプロデューサーみたいね。
「身体は私、服は琴里と折紙ね」
士道を女の子にしたのは私。それは私しかできないから。
昨日、それだけやって後は琴里と折紙に投げといたわ。二人とも楽しそうに選んでたわね。
「あら、士道。かわいいんだから、そんな恥ずかしがらなくていいのよ」
いつも通り女王様してる琴里。
「素晴らしい。一枚こちらにサービスを」
いつも通り士織を激写してる折紙。
「お願いだから止めてくれぇ」
顔を覆って小さくなる士織。
「だーりん!いえ、士織さん!」
そんな士織に手を伸ばして立ち上がらせ美九。励ますつもりかしら?
「私とデュオを組んでみませんか?士織さんとなら世界を取れそうです」
「この格好でテレビに出てたまるか!」
そんなわけがなかったわね。美九の頭は常にピンク色よ。
「あはは、士織さんなら本当にアイドルになれるんじゃない?」
「……そうね」
面白半分で美九に乗る愛。強ち間違ってないから何も言えないわね。
ビジュは良いし、歌も上手い。ダンスを覚えたら本当にアイドルになれそう。
「あいつも大変ね」
士道の尊厳が玩具にされてる?別にいつものことでしょ。
♦♦♦
「それじゃあ乾杯しましょうか」
美九がクリスマスシャンパンのグラスを取ると、それに合わせてみんなグラスを胸元に構える。
「かわいいウサギさんたちに囲まれて美九はもうさいっこうの気分ですぅ。今日は楽しみましょう。乾杯!」
『乾杯!』
それぞれ近くの人とグラスを交わしていく。私も近くにいた愛や四糸乃と乾杯した。
「七罪さん、どうですか?」
「かわいいでしょ、うふん」
紺色のスカートタイプの衣装を着て恥ずかしがる四糸乃。よしのんと同じ衣装を着てとても可愛らしい。
「本っ当にかわいいわよ、四糸乃。これで靡かない男はいないわ」
「えへへ、嬉しいです」
四糸乃の純粋無垢な印象と対照的なバニーガールという衣装によってギャップが生まれてるわ。
今の四糸乃は正にプチデビル。その魅力に私もやられそう。
「ねえねえ七罪、私は?」
肩をちょいちょいと指で触られる。振り返ると愛がこっちをじっと見てる。
愛の目が何か言いたげね。
「何?あんたもかわいいって言って欲しいの?」
「う~ん、そうかな?……そうかも」
愛は人差し指を口元に当てながら考えてる。自分でもはっきりしない感じね。
「何?あんたそういうのあんま気にしなかったでしょ」
「いや、そうなんだけどね。なんというか、七罪に『かわいい』って言って欲しいなって」
女になったからか、面倒な彼女ムーブ始めたわね。なんというか、らしくないわね。
「考案。それは嫉妬ではありませんか?」
話してたら夕弦がにょきっと入ってきたわ。
「かかか、愛よ。貴様の心など我が」
「ええと、つまり私が四糸乃に『かわいい』って言ったから?」
「同意。自分もかわいいと言って欲しくなったんじゃないでしょうか?」
「…………」
夕弦と一緒に愛の方を見る。愛は無言で口をもにょもにょさせながら斜め上を見てるわ。
図星ね。愛はポーカーフェイスあんま得意じゃないからわかりやすいわ。
「へー、そうなんだ」
そう考えるととても愛らしい。四糸乃相手に嫉妬するだなんて。
ちょっとかわいいとこあるじゃない。
「いやね、どうせならちゃんと評価して欲しいから。七罪、あんまり見た目については言ってくれないし。それなりの見た目だって知ってるし」
「はいはい、私はあんたの見た目も好きよ。今の姿も、普段の姿もね」
「……うん」
ちょっと背伸びをして愛の頭を撫でる。二重の意味でかわいい顔がよく見えるわ。
恥ずかしくて言ってなかったのは悪かったわね。今度からちゃんと言ってやらないとね。
今みたいに顔が真っ赤になるくらい。
「ありがとね、夕弦。」
「謙遜。問題ありません。私も愛が羞恥に震える顔を見たかったので」
よく見ると夕弦が愛を見ながらにやりと笑ってたわ。こいつもいい性格してるわね。
夕弦が弄る相手は耶倶矢だけだと思ってたわ。
「愛ちゃ~ん。そんなに心配しなくても、七罪ちゃんはとらないから。ねっ!」
「私は応援してますよ。大丈夫です、愛さん」
巻き込まれたよしのんと四糸乃は楽しそう。むしろ、二人で愛のことを応援してるわ。
「止めてぇ。余計恥ずかしいからぁ」
珍しく愛は顔を赤くしてる。いいわね、これ。
「愛、無理せず嫉妬していいのよ」
「七罪までぇ」
ああ、愛を弄るの楽しい。私、こういうの大好きなのよ。
「はいは~い、愛さん、七罪さん。もう既にいちゃいちゃしてるみたいなので、そのままお願いしますねぇ。こちらの専用シートでどうぞぉ」
美九が大きく手を振りながら用意された席を指す。どこから持ってきたのか、二人用のテーブルが中央に置いてある。
喫茶店でバカップルが座るような感じの席。そこで見せつけろってことね。
「いや、普通に恥ずかしいんだけど」
無意識でやってたからあんまり気にならなかったけど。そんな専用席ではいやれって言われるとちょっと。
「どうしたのだ、七罪?あそこで食べさせ合いっこするのではないのか?」
「うっ、いや、その」
十香が純粋無垢な目で見てくる。その視線が地味に突き刺さる。
「大丈夫だぞ。美九は二人が仲良くしてるのを見たいそうだからな。美九への給仕は私たちに任せておくといい」
十香は胸を叩いてアピールする。それでようやく自分が譲歩してもらった立場だと思い出した。
そうよね。美九への給仕の代わりに羞恥プレイをするって取引なのよね。
「愛、行くわよ」
「それじゃ楽しもうか」
気楽な愛を引き連れて専用席に赴いたわ。
予想通りみんなの視線が集まる。やっぱこんな衣装を着てると前に出るだけで恥ずかしいわ。
そして、これからさらに注目を集めないといけない。顔から火が出そう。
顔を伏せて何回か深呼吸をする。大丈夫、ここにいる全員似たような格好をしてるわ。
恥になるような衣装を着てるのは私だけじゃない。大丈夫よ、七罪。
「どうして恥ずかしがっているの?」
「あっ、お姉ちゃん」
顔を上げるといつの間にか折紙が隣に立っていたわ。当然、こいつもバニーガール。
「恥じることも気を遣うこともない。堂々としていればいい」
「あんたみたいに?」
「そう」
この格好でも折紙は鉄面皮を崩さずお菓子を並べていく。恥じらうことも無駄に見せつけることもせず、ただ淡々と。
今すぐ本職のウェイターになれそうね。
すぐさま結構本格的な三段スタンドが堂々と置かれたわ。
中にはいろいろなお菓子が並んでる。マカロンにチョコに、ミニケーキやらタルトやら。
「お姉ちゃん、それお高い上に予約しないと手に入らないやつじゃん」
「ラタトスクが用意した。まだたくさんある」
折紙がテーブルの上にスタンドを置いたわ。私が三日かかっても食べきれないくらいいっぱいある。
愛は目をきらっきらさせながら見てるわ。こいつ本当に甘いもの大好きね。
「私たちの分は別で用意してある。これは二人だけで食べてもらって構わない」
「わーい、ありがとう!」
愛は早速手を伸ばそうとする。でも、その前に折紙が制した。
「ただし、一つだけ条件がある」
「何、お姉ちゃん?」
「変なことさせようっての?」
人参ぶら下げてやったから言うこと聞けってこと?ちょっと怖いわね。何言われるのやら。
「自分の手で自分の口に入れるのは禁止」
折紙の出した条件は地味に面倒なものだったわ。
「つまり、食べさせ合いしろってこと?」
「その通り。美九は二人の『あ~ん』が見たいと言っている」
折紙がちらりと後ろを見たからその視線を辿る。その先では、美九をちらりと見るとニコニコしながらうんうん頷いてる。
折紙も無表情だけど圧を感じるわ。そういうことよね。
「はい、七罪。これが私のおすすめだよ」
悩んでたら、先に愛が動き出す。ミニケーキをフォークで刺して私の口元まで差し出してるわ。
「甘ーい生クリームに酸味の効いたベリーソース。これが最高なんだよ!」
子供みたいにお菓子のことを熱く語る愛。美九とは違う意味で目をキラキラさせてるわ。
バニーガールとか周りの目とか忘れてるんじゃないかしら?
「食べてみて!」
「はいはい、あーん」
「どうどう?」
「……本当に美味しいわね」
もったりしたクリームが酸っぱいソースで際立つ。でも後味はちゃんと甘い。
甘いのにくどくなくてたくさん食べられそう。
「ほら、七罪も早く」
「わかったからちょっと待ちなさい」
愛は完全にお菓子モードに入っちゃってる。口を開けて私に食べさせられるのを待ってるわ。
口に放り込んであげると美味しそうに口をもぐもぐさせる。ウサギというか犬ね。
「はい、あーん」
「あーん」
これが餌付けかしら?愛がお菓子で言うこと聞くくらい単純だったらよかったのに。
「愛、美味しい?」
「うん、おいしい♪」
新しいケーキに食いつきながら笑顔でそう言ったわ。まあ、愛が幸せならそれでいいのかもね。
いろいろ考えてたのが馬鹿みたい。こいつと一緒にただ楽しみましょう。
「七罪、どうかした?」
「何でもないわ」
そう思ったわ。
久しぶりの番外編だから結構好き勝手してますね。わちゃわちゃしてて楽しい。
今回の裏話はお菓子の出どころについて。
令音が仕事にかこつけて頼んでます。自分が食べたいものをね。
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