ヒロインは七罪   作:羽国

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番外編:バニークリスマス④

Side 二亜

 

 というわけで始まったバニーコンテスト。トップバッターは十香ちゃんだ。

 会場の端に用意したスペースに出てくる。

 

「十香ちゃん、サポーターはどうする?」

「士道、頼むぞ」

 

 十香ちゃんはビシッと少年を指さす。その姿、とっても漢らしいぜ。

 

「さあ、士織ちゃ~ん。こっちへどうぞ~」

「お、おう」

 

 みっきーの言われるまま十香ちゃんの隣まで歩いていく少年。今は本物の女の子顔負けのきゃわわなバニーガールちゃんになってる。

 なんとか手で太ももやおっぱいを隠そうとするけど全然隠せてない。むしろ、その恥じらう姿は男心をくすぐる。

 

「それで、俺は何をすればいいんだ?」

「以前テレビで見て、やってたいと思ってたことがあるのだ」

 

 十香ちゃんは少年と作戦タイムに入る。

 さて何をしてくれるのやら。お手並み拝見といきましょうか。

 

「十香、これくらいの距離でいいか?」

「うむ、完璧だ」

 

 しばらくすると二人は作戦会議を終え、少し距離を取る。

 気になるのは少年の手の中にある大きなお皿。その内一枚を右手でぴらぴらとなびかせている。

 

 クリスマスでも定番のローストビーフだ。

 この会場に用意されてたものだけど、あの体勢ってことは。

 

「行くぞ!」

 少年はあたしの予想通り、十香ちゃんに向けて投げた。まるで水族館の飼育員のように。

 

「はむっ!」

 投げられた肉へ食らいつく十香ちゃん。その姿はまるでショーのオットセイ。

 

「はっ!そりゃ!とぉ!」

「はむっ!はむっ!はむっ!」

 

 少年は立て続けに投げるも、ドンドンと口に収めていく十香ちゃん。

 少年がうっかり高く投げちゃった肉も大ジャンプで食らいつく。地面に落ちた肉は一枚もない。

 

「はむ!むぐむぐ、ごくん」

 

 最後の一枚までしっかりと食べきり、十香ちゃんのパフォーマンスは終わった。

 少年がきれいになった皿をこちらに向けて、十香ちゃんのパーフェクトをアピールしている。

 

『お~!』

 

 その姿に思わず全員が感嘆の声をあげる。あたしも素で拍手しちゃったよ。

 皿には二十枚以上のお肉があったのに。

 

「じゃあ次はケーキを――」

「流石に止めとこうな。落ちたら洒落にならないから」

 

 少年の説得により十香ちゃんのパフォーマンスは終わった。

 十香ちゃんなら無限にできちゃうからね。適当なところで区切ってくれて良かったよ。

 

「さて、審査委員のみっきー。十香ちゃんのパフォーマンスはどうだった?」

「いや~、十香さんらしいアクションとグルメの要素が入ったパフォーマンスでした。花丸あげちゃいますぅ」

 

 みっきーもご機嫌のようだ。このままどんどん行ってみようか。

 

♦♦♦

 

「士織、お願い」

「また俺か」

 

 前に出て少年を指名するオリリン。あたしが何か言うまでもなくやる気満々だ。

 

「俺は何をすればいいんだ?」

「士織はこの席に座って」

 

 オリリンはいつの間に持ってきたのやら、椅子を差し出す。そして鮮やかな手並みで少年を座らせる。

 

「バニーガールとは本来給仕役の一種。完璧な給仕をお見せする」

 オリリンはセバスチャンみたいなポーズでかっこよく一礼した。その堂々とした振る舞いは見てるあたしまで背筋が伸びる。

 

「ええと、俺は何をすれば?」

「士織はご主人様。何なりと命令して」

「ええと、それじゃあジュースでもお願いしようかな」

「了解した」

 

 困惑気味に答える少年。その声を聞いた瞬間、オリリンは動き出した。

 

 

 左手でグラスを用意して素早く氷を入れる。同時に右手でペットボトルを開けてオレンジジュースを注ぐ。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 そして一滴も溢すことなく少年の元へ届けた。注文から提供まで僅か十秒の早業だ。

 

「ずっと手に持っておくのは大変だな。テーブルも頼めるか?」

「こちらをどうぞ」

 

 少年が言い終わると同時にテーブルが置かれる。

 早過ぎない?

 

「じゃあ、何か適当に摘まむものも――」

「フライドポテト、ローストチキン、キッシュ。士織が今食べたいものを厳選した」

 

 今度は今さっき用意したテーブルに三品が置かれる。今度は少年言い終わってすらいなかったんだけど。

 というか何で少年が食べたいものわかるの?オリリンもしかしてエスパー?

 

「注文を受けてから動くのは二流。一流はご主人様の機微を察して先回りするもの」

 

 あっ、私の心まで読まれてるみたい。

 というか先回りって。そんなちゃちなもんじゃないと思うけど。

 

「士織、髪が少しほつれている」

「お、おう。ありがとう」

 

 オリリンは櫛を出して少年の髪をとかしている。

 

「士織、カチューシャも曲がっている」

 オリリンは少年の頭に乗ったウサ耳カチューシャも直していく。本当よく見てるね。

 

「士織、衣装も少し乱れている。直しておくべき」

「折紙⁉」

 

 オリリンは衣装の際どい部分に指を突っ込んで直していく。いやー、それはアウトじゃない?

 

「大丈夫、私に任せて」

「ちょ、待て折紙。それ以上やると衣装が――」

 

 あれ漫画で描いたら編集にガチギレされるわ。そんな感じだった。

 給仕ってなんだっけ?そう思わずにはいられないね。

 

「はぁはぁ、折紙さん。素晴らしいですよ、あんな乱れた士織さんが見られるだなんて」

 まあ、みっきーが喜んでるならそれでいいか。好印象ヨシ!

 

 なお、オリリンは全員に止められた後椅子へ拘束されてた。少し可哀そうな気もするけど、仕方ないか。

 

♦♦♦

 

「さあ、次は四糸乃の番だね」

「頑張ります」

 

 スペースに出るのはよっしー。元気なパペット、よしのんも味方につけてどういったパフォーマンスを見せてくれるのか?

 

「えっと、耶倶矢さん。お願いします」

 

 ここで出たのは意外な二人。かぐやんとゆづるんの双子ペアだ。

 

「ふん、我に助太刀を所望するその慧眼。見事であるぞ、四糸乃よ」

 

 ノリノリで前に出るかぐやん。こういうお祭りみたいなの好きそうだもんね。

 

「それじゃあ耶倶矢ちゃん。椅子を用意したから座って座って」

 よしのんに促されるまま椅子に座る。さて、今度は何をするのか?

 

「私たちがやるのはバニー占い……です」

「バニー占い?聞いたことがないぞ、四糸乃よ」

 

 人よりちょっと長く生きてきたけど、あたしも初めて聞いたわ。一体どんな占いなんだろ?

 

「これはねぇ、ウサ耳の角度や左右のバランスで占うんだよ。その日の運勢やラッキーアイテム、運命の相手までわかっちゃうんだよ」

 

 よしのんの言葉を聞いてあたしは思った。んな訳ないって。

 だってあれラタトスクが持ってきた衣装でしょ。それで何かわかるわけないじゃん。

 

「あっ、今『嘘だ!』って思ったでしょ?もう、だったら証明してあげようじゃない」

 

 図星を突かれちゃったぜ☆

 まあ、宗教でももうちょっとちゃんとした占い用意しそうだしね。ここからひっくり返してくれるのかな?

 

「嘘じゃないって……証明します」

 そう言うとよっしーはかぐやんのウサ耳を確認していく。お医者さんみたいに真剣な顔をしながら。

 

「耶倶矢さん、恋をしてますね」

「な⁉」

 

 よっしーの言葉にかぐやんは強く反応する。その顔が『はいそうです』って言ってるようなものだね。

 

「最近し、じゃなくてその人とキスする夢を見てるんじゃないの?」

「そ、そ、そ、そんなわけないし!キスする夢見て朝早く起きたりしてないし!」

 

 してたんだ。いやーわかりやすい。

 あんなピュアなリアクションしちゃって。

 

「少しエッチなことも……想像してるんじゃないですか?」

「っ~~~~!」

 

 あ~あ、茹でだこみたいになっちゃって。一体どんな想像してたんだか?

 

「そんな耶倶矢ちゃんへの占い結果だよ。料理をしていたら想い人と仲良くなれるかも?」

「ラッキーアイテムはフライパン……です」

 

 う~ん、強ち間違ってなさそうな結果。料理をしてたらどこの少年と仲良くなれるんだろうか?

 

「あはは、そんなわけないし。……ちょっと飲み物取って来る」

 

 そう言いながらテーブルの上のペットボトルを無視してキッチンに向かうかぐやん。冷蔵庫もスルーしてキッチンの戸棚を開けてる。

 

「耶倶矢、フライパンはコンロの下の棚にしまってあるわよ~」

「べ、別にフライパンなんて探してないし」

『あはは』

 

 妹ちゃんの指摘でまた慌ててるかぐやん。それで笑ってるみんな。

 

「なるほど。占いじゃなくてメンタリズムに近いのね」

 

 多分本当に占いをしているわけじゃない。騙されやすいかぐやんを誘導して、それ自体を一種のパフォーマンスにしてる。

 いいねえ。なかなか面白いじゃない。

 

♦♦♦

 

 その後もどんどんとみんなのパフォーマンスは続いていった。

 かぐやんは持っているフライパンでそのままジャグリング始めるし。なかなか面白かったよ。

 

「みなさんのパフォーマンス、どれも素晴らしかったですよぉ。そろそろどれが一番か決めましょうか」

 みっきーが手を合わせて終わりを宣言しようとしている。でもそれにはまだ早いんだよな~。

 

「ちょっとちょっと、あたしの番がまだ終わってないよ」

「二亜さんもやるんですか?」

 

 みっきーは少し意外そうな目で見てる。

 

「これでもエンターテイナーの端くれだからね。何かしないと」

「そういうことなら、よろしくお願いしますね」

 

 あたしもみんなと同じようにスペースに案内される。そして真っ直ぐ会場の一角を見つめる。

 あたしのサポーターは既に決まってる。そのためにこんな回りくどいことしたんだから。

 

「愛くん、なっつん。手伝ってよ」

「私たちですか?」

 

 目をぱちぱちさせながら私のことを見る愛くん。予想してなかったって顔だね。

 

「ほら、行くわよ愛」

「ああうん、わかった」

 

 反対に全く動じないなっつん。多分、あたしが指名することなんてわかってるんだろうね。

 なっつんはあたしの気持ちも折り合いがつけ切れてないことも分かっている。その上であたしと仲良くしてくれてるんだから。

 

 なっつんが愛くんの手を引いて前に出てくる。その動き一つ取っても二人の仲の良さが伝わってくる。

 本当羨ましいよ。

 

「愛だけにするかと思ってたんだけど」

 前に出たなっつんは腰に手を当てて私の方をじっと見る。そこまで織り込み済みだったってわけか。

 

「なっつんの厚意に全力で甘えるほどダメな大人じゃないからね」

「二亜の案外考えてるところ、嫌いじゃないわよ」

 

 なっつんはあたしの返事を聞いてにやりと笑った。

 完全に手玉に取られてるな~。だいぶ年下のはずなんだけどね。

 

「それで、何するんですか?」

 愛くんの言葉で目的を思い出す。そのために二人を呼んだんだ。

 

「そんじゃまあ、よろしく頼むよお二人さん」

 湿っぽいのはあたしに合わない。馬鹿らしく楽しくしないとね。

 

「二亜って漫画家なんでしょ?」

「肯定。部屋に漫画がたくさん置いてありました」

「やっぱり絵を描いてくれるのかな?」

「楽しみ……です」

 

 観客のみんなも楽しみにしてくれてる。期待を裏切るわけにはいかないね。

 

「みんな、ここまでのパフォーマンス。悪くないけど足りないものがあると思わない?」

『足りないもの?』

 みんな首を傾げる。やっぱみんなお子様だねぇ。

 

「お色気だよ、お、い、ろ、け。折角バニーガールなんてエッロい格好してるんだから、もっとサービスしていかないとさぁ!」

 じゃないと何のためにこんな格好したかわからないじゃん。

 

「バニーガールを見に来た人はね。はみ出そうなおっぱいとか、際どい鼠径部とか、ポロリとか見に来てるのよ」

 サービスしないと冷めて帰っちゃうよ。

 

「二亜さん、いいこと言いました!私はそういうのが見たいです!」

 

 みんなが黙ってる中一人だけ後押ししてくれた。そうみっきーだ。

 目をキラキラさせて手をピシッと上げている。そうそう、そう来なくっちゃ。

 

 なんでこういうときに少年はもぞもぞしてるかな。女の子になって性欲までなくなっちゃったのか?

 ムッツリめ。

 

「というわけで、あたしが代わりにやってやろうじゃないか。愛くん、なっつん、スタンバイ」

 

 パチンと指を鳴らすと二人が用意を始める。適当なクッションを引いてその上に愛くんが転がる。

 

 そして、その上になっつんが乗っかる。愛くんの頭の横に手を突いて。

 なっつんが襲うまであと一秒。そんな感じの構図だぜ。

 

「いいねいいね。そのまま目線はこっちに。あ、愛君脚はもうちょっと立てておいてね」

「わかりました」

「なっつんは膝を乗せちゃって」

「こ、こう?」

 

 二人のポーズを微修正する。やっぱりポーズを拘るとエロ差が二割増しになるんだよな。

 

「おっぱいも触っちゃおうぜ。こんな風にさあ」

「ああん!」

 

 ついでにあたしも愛くんに触れてちょっと役得。

 

「……そうね。そのまま我慢してなさい、愛」

「七罪⁉」

 

 嫉妬して愛くんを責め立てるなっつん。ちょっと楽しくなってきたじゃない。。

 

「いいよ、そのままちょっとキープ。今の二人をスケッチに収めちゃうから」

 そうして適当な鉛筆一本で描いてしまう。プロの漫画家は道具を選ばないものなのだよ。

 

 それから十分ちょっとでスケッチ完了。我ながらいい出来栄えだ。

 

 仲いいけど十八禁要素には慣れてないのがうっすら見える。

 あのたどたどしいのがいいんだよね。ギリ少年誌でやれそうな感じ。

 

「どうよ、みっきー?」

「素晴らしいですぅ!これ譲っていただけませんか?」

「いいよ、今日はみっきーのための集まりだし。プレゼントしたげる」

 

 あたしも結構楽しかったしね。

 

「さて、みっきー。改めて、誰が一番だったのか聞かせてもらおうか?」

「そうですね、それじゃあ……」

 

 みっきーがみんなのことをぐるりと見渡す。そしてなぜかあたしのところに視線が戻ってきてしまった。

 

「二亜さんが一番でした」

「ありゃ、そうなの?」

 賑やかしのゲスト枠みたいなもんだったんだけど。

 

「こんなにいいものも頂けましたし。それに、百合百合な絡みを見られて本当に最高でした。是非受け取ってください」

「そっか、そこまで言われたら仕方ないね」

 

 そういうことならありがたく受け取っておこうかな。

 

「二亜、君の年末デートをサポートするわけだが。どうしたい?」

 れーにゃんが優しい目であたしを見てる。そっか、優勝賞品はあたしのものか。

 でも年末はコミコなんだよな。デートをしてる余裕なんて……。

 

「あ、そうだ。コミコデートをプロデュースしてくんないかな、愛くんよ?」

「なんですか、それは?」

 

 訝しげな目であたしのことを見る愛くん。そうそう、そういう空気が欲しかったの。

 

「いやー、コミコでデートなんてのも斬新かなって。ついでに戦利品も二人で分け合えるっしょ?」

「なるほど、荷物持ちが欲しいと?」

「ちっちっち!そんな勿体ないことしないよ。サークルの売り子だってやって貰うから」

 

 これならデートじゃない体を装って愛くんを呼び出せる。自然に、労働力を装って。

 

「どうかな?」

「仕方ないですね、私自身が言い出したことなので」

 諦めたように苦笑いする愛くん。その返事を聞いてどこか舞い上がってる自分がいる。

 

 なっつんに悪いと思ってる。報われない恋だってわかってる。

 だから、最後にこれだけ許して。これで、諦めて進んで見せるから。




さあ、いよいよ次回から二亜編突入です。報われない恋の結末を見に行きましょう。

今回の裏話は七罪の同性愛問題について。

何だかんだ両方いけるようになりつつある七罪。どうしてそんなことになってるのか?

恋人が一月以上女の子だったからですね。性癖を改造されました。

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