ヒロインは七罪   作:羽国

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評価者が五人になったことで平均評価が表示されるようになり、総合評価が急上昇しました。そのおかげか今までより沢山の人に読んでいただいています。
皆さまありがとうございます。これからもお気に入り、評価、感想等お待ちしております。

さて、今回はただただ作者が書きたいことを書き殴るだけの話です。偶には趣味だけの話をしたくなるんです。

楽しくなって過去最高の文字数を軽く更新しました。何だよ本文だけで九千字越えって。
それはそれとして、七罪の魅力が伝われば嬉しいです。それではどうぞ。


番外編:精霊たちのメイクアップ

「折り入って頼みが有ります。」

 僕は今五河家に居る。ここに居るのは四糸乃と令音さんという中々見ない組み合わせだ。でも、僕はこの二人の協力を得ることが不可欠だと考え、集まって貰った。

「愛さん……一体……どんなお願い……ですか?」

 四糸乃が間を空けながら聞いてくる。よしのんの力を借りずに人と話せるように練習中だ。まだたどたどしいが、いずれは一人で会話できるようになるだろう。今後に期待だ。

「私で良ければ力を貸そうじゃないか。」

 令音さんは冷静にそう言う。正体を知った上でよく分からない人だ。でも、今回の指導者としては彼女が最適だと思っている。この人は色々と万能なのだ。

「ありがとうございます。単刀直入に言うと七罪にメイクを教えて欲しいんです。」

 僕は望みを告げる。ここ最近で一番真剣な内容だ。正直、崇宮真那なんかよりもこっちの方が大事だと思っている。

「ふむ。メイクを教えるのは構わないが、何故七罪ではなく君が頼んでいるのかな?」

 令音さんが当然の疑問を呈す。頼むとしたら本人が頼むものだ。それを同居人とはいえ別人が頼んでいるのだから。令音さんが不思議に思っても仕方がない。

「七罪ってお洒落に興味は有るのに、自己評価が低いからメイクをしようとしないんです。自分みたいなブスがやっても無駄だって。」

 原作でも七罪は自分からメイクをしようとしなかった。メイクを始めたのは士道たちに無理矢理メイクを施されて、自分を可愛いと思えるようになってからだった。心の奥底に可愛くなりたい願望は有るけど、過去のトラウマが邪魔して向き合えないのだ。だから、贋造魔女(ハニエル)で理想の自分を作って代償行為をしていた。

 最近、七罪は本来の姿で人前へ出るようになった。けど、それは自分の姿に自信を持ったからではない。自分の姿がばれてしまったから、投げ槍になっているだけだ。

 七罪はラタトスクと利害関係を築いている。原作と違ってばれたから社会的に抹殺というのもできない。だから、渋々本来の姿で人前に出ることを受け入れている。

 僕はこの状況を良くないと思っている。別に七罪のコンプレックスを解消する義務や必要性はない。けれど、好きな女の子がコンプレックスで悩んでいるのを見ているだけなんて嫌だ。

「だから、七罪に教えてやりたいんです。七罪は贋造魔女(ハニエル)を使わなくても可愛い女の子だって。」

 確かに僕は七罪の内面に惚れた。でも、七罪の見た目も可愛いと思っている。抱えやすいミニマムなサイズとか、手入れが絶対大変なのに短くしない癖っ毛とか、ジト目の似合う瞳とか。

 最近は栄養失調気味だった身体が、健康的な食事で肉付き良くなっている。このまま行けば小柄な美少女になることができると確信している。

 素材は良いのだから、上手に仕上げたら輝くのだ。少なくとも僕はそう思っている。磨けば十香や四糸乃に勝つことも可能だ。

「あら~男らしくて良いじゃな~い。よしのんも協力しちゃうよ~。七罪ちゃんを可愛くお化粧してあげようじゃな~い。」

「わたしも……七罪さんのために……お手伝いさせてください。」

 献身的な美少女と面白そうなことに便乗する道化が応援してくれる。七罪と仲良くなってくれて本当に良かった。四糸乃が居なかったら今回の作戦の難易度は一段上がっただろうから。

「ありがとう、四糸乃、よしのん。君たちには一番重要な役目をお願いしたい。」

「一番……重要な……役目ですか?」

 四糸乃は不思議そうに首をかしげている。保護欲を刺激する控えめな態度だ。学校に通い始めたら勘違いする男が増えることだろう。

「そう、七罪が逃げないように捕まえておく役目だ。」

「逃げない……ように……ですか?」

 四糸乃はピンと来ていない。七罪の逃げる理由が分からないからだろう。

「七罪はメイクをしようとしたら、逃げると思う。メイクをしても可愛くなれない自分を見たくないから。」

「え~。よしのんは七罪ちゃんがお化粧したら可愛いと思うんだけどな~。」

「私も……そう思います。」

 四糸乃とよしのんは僕の言葉を即座に否定する。この二人(一人と一匹か?)も七罪のことを可愛いと思ってくれている様だ。

「僕も同意見だ。七罪は自己評価が低いだけだと思っている。でも、それを証明するためには七罪にメイクをして本人に可愛いと思わせないといけない。多少強引にでも。七罪を逃がさないようにするためには、四糸乃が捕まえておくのが一番効果的だよ」

「私が……ですか?」

「そうだ。これは四糸乃にしかできない。」

 七罪は四糸乃の事を大事に思っている。普段の言動からそれは間違いない。だからこそ、七罪の行動を誘導できる。

 七罪は四糸乃の善意を拒否できない。七罪は良い子には強く出られないタイプの人間だから。

 四糸乃が一緒にメイクをしたいと頼んだら、七罪は歯噛みをしながらも受け入れるだろう。僕が相手なら何だかんだと理由をつけて断るかもしれない。こういうのは根回しと準備が大切なのだ。

「まっかせなさ~い。よしのんが七罪ちゃんを捕まえて離さないよ~。このワイルドハンターよしのんからは、誰も逃げられないんだから~。」

「頑張り……ます。」

「ありがとう。」

 こうして七罪を可愛くするための作戦が開始された。こういう時にあの台詞をいうべきなのかな?一度言ってみたかったんだよね。

「さぁ、僕たちの戦争(デート)を始めよう。」

 

♦♦♦

 

「愛、あんた騙したわね~。」

 七罪はギャアギャアと騒いでいる。まあ、ちょっと大掛かりな日用品の買い足しと騙して、大型ショッピングモールに連れてきたから仕方ない。

 来てみたら十香、四糸乃、琴里、零音さん、士道と勢揃いだ。七罪は見た瞬間に脱兎の如く逃げ出そうとした。それを分かっている僕が逃がす訳ないのだけど。

 逃げる七罪を捕まえるのは大変だった。コツは腰を両手でホールドして隙間を完全に無くすことだ。相手を本気で攻撃する気が無ければ、これで捕まえることができる。

 こうして七罪をドナドナした。僕たちを迎えるのは無邪気に笑う十香と四糸乃、苦笑いをする琴里と士道、全く動じない零音さんだった。

 僕の提案は琴里に受理され、ついでに十香と四糸乃にも教えることになった。受講者は七罪と十香と四糸乃の三人。指導者が零音さんと琴里。僕と士道は荷物持ち兼評価係だ。

 僕としては指導者と四糸乃が居たら文句は無い。十香や四糸乃も数少ない人間社会を全く知らない精霊だからな。こんな良い機会を逃す手はないだろう。

「私はメイクなんて絶対にしないわよ。どうせ皆表では褒めておきながら裏で『アレはないよね~。』とか『ピエロみたいで笑いを堪えるのに必死だったwww。』とか『皆さん人を笑うのは良くないと思います。七罪さんはこれから上達するんです。』とか言っているのよ。騙されてやるもんか~。」

 七罪は僕の腕の中で喚いている。暴れるけど爪や歯を使わないからダメージは無い。なんならちょっと役得感が有る。

「七罪さん……お化粧は嫌……ですか?」

 嫌がる七罪に四糸乃が尋ねる。七罪の事を本気で心配している目だ。ここで七罪が嫌と言えば、四糸乃は七罪の味方をするのではないだろうか。

「ぐぬぬ。」

 しかし、それにYESと言える人間ではない。純粋な四糸乃を利用することができないのは七罪の良い所だ。

「分かったわよ。やるわ。とっとと終わらせて百均に行くんだから。」

 七罪は嫌々ながらも化粧品コーナーの方へ歩き出した。本人としては力強く踏み込んでいるのだろうが、体重が軽いからそこまで音が響いていない。可愛い。

「そう来なくっちゃ~。」

「七罪さん……一緒に可愛くして……貰いましょう。」

「待ってくれ七罪、四糸乃、よしのん。」

 七罪の後から四糸乃と十香が付いて行く。少し騒がしいが、零音さんと琴里がなんとかしてくれるだろう。

「それじゃあ、あんた達は適当に時間を潰していて頂戴。」

 琴里が虫でも追い払うように、手を振る。この妹様は男性陣には当たりがきついのである。神無月さんに比べたら百倍マシだが。

「了解で~す、司令官様~。」

「また後でな、琴里。」

 僕と士道は逆らわずに女性陣と別れた。

 

♦♦♦

 

「士道さん、どこに行きます?特に何も考えてないんですけど。」

 僕と士道はメイク講座が終わるまで、時間を潰さなくてはならない。ここはショッピングモールだ。ゲームセンターの様な娯楽施設も有るから、いくらでも時間を潰すことができる。

「どこかで軽食でも食べながら話さないか?」

「良いですよ。じゃあ、この店で良いですか?苺のパフェが美味しいんですよ。」

「ああ、それじゃあ行こうか。」

 士道はアフタヌーンティーをご所望のようだ。時間的にはちょっと早いけど別に良いだろう。僕はお気に入りの店に士道を案内した。

 店は少し混雑気味だったが、なんとか席を確保することができた。僕は季節限定と迷いながら苺のパフェを注文し、士道はエスプレッソを注文していた。

「一度、愛とは腰を据えて話したかったんだ。余り落ち着いて話せてなかったからな。」

「なるほど、どんな話がしたいんですか?」

 士道の言う通り、僕は士道と余り会話をしていない。

 ちょこちょこフラクシナスに通っているから、琴里や零音さん、神無月さんとはそこそこ話をする機会が有る。四糸乃も最近部屋に来て七罪と遊んでいるから、仲良くしている。主によしのんと。

 でも、士道や十香とは接する機会が少ない。嫌いな訳ではなく、単純に生活リズムが合わないのだ。

 士道たちは学校に通っているから、日中会うことは無い。学校から帰ってくる頃には自分たちの夕食作りを始める。

 すると、必然的に士道と十香とはすれ違ってしまうのだ。攻略会議はラタトスクと意思疎通ができていれば良いから、士道と話す必要も余りないし。

 だから、少し興味が有る。士道がどんな話題を出してくるのか。面白いものを見せてくれたら、少しサービスをしても良いと思っている。士道の精霊攻略が楽になる様な情報を。

「愛はどうして七罪を好きになったんだ?」

「はえ?」

 士道の質問は僕の想定外のものだった。思わず変な声が出てしまった。

 てっきり、僕が何を考えているのかとか、どうやって精霊の情報を手に入れたのかみたいな話かと思っていたのに。

「愛は七罪を幸せにするために、俺やラタトスクに協力しているんだろ。どうして、そこまでしようと思ったんだ?折紙と離れてまで。」

「……どうして……ですか。」

 さてどこから話したものか。士道さんに前世の話をする気は無い。少なくとも今は。

 でも、嘘を言う程不誠実にもなれない。四糸乃が七罪の為に動いてくれたように、士道も僕の為に聞いているだろうから。適当に情報を伏せつつ本当の話をするのが妥協点かな。

「僕と七罪が出会ったのは、大体一年半前の秋ごろです。ASTの任務で出会いました。」

 あれはASTに入って初の精霊討伐任務の日だった。同時に僕が前世の記憶を思い出した日でもある。七罪を見たことで記憶の扉が開いたのだ。きっと、()()()()()()()()()()、記憶を取り戻すことは無かっただろう。

「その後、街でばったり出会ったんです。七罪に。」

「街中で精霊に出会ったのか?よく無事だったな。」

「交渉したんですよ。七罪は攻撃しない代わりに、僕もAST上層部に報告しないって。後、友達として付き合って欲しいとも。」

「チャレンジャーだな~。」

 あの時は必死だった。折角の推しとお近づきになれる機会を逃すまいと。

 七罪の反応は案外悪くなかった。多分、理想の姿を好ましく思われて気を良くしていたのだろう。こっちの世界を楽しむための協力者もできる。裏切ってもASTが攻めてくるだけだ。

 七罪からしたらデメリットが余りないから、別に受けても良い。それ位に軽い気持ちの協力関係だったと思う。

「それから数か月の時間をかけて、ある程度の信頼を勝ち取りました。家の合鍵を貰えるくらいには。」

「それは良かっ……ちょっと待て。どうして精霊が家に住んでいるんだ?それはラタトスクと協力する前の話だろ。」

 士道はツッコミを入れる。思ったよりも僕の事情について知っているな。琴里から聞いたのだろうか?

 琴里に渡した情報は士道に伝わる前提で考えているから、別に問題無いけど。

「大きな声では言えませんが、贋造魔女(ハニエル)を使ったら、家を借りるために必要な書類の偽造は簡単なんですよ。ラタトスクと協力するようになってからは、しなくなりました。」

 素の性格が完全なインドアな七罪は、変身してもその性格が滲んでいた。最初の方は外で遊ぶことが多かった。だが、後になって本性を現すと、ゲームや漫画のようなインドアな趣味に精を出すようになった。

 そして、そういう趣味を堪能するためには、落ち着ける家が必須だった。僕の家は姉さんが居るから都合が悪かった。

 その為に七罪は適当な家を借りた。現金も文字通り葉っぱを変身させることで用意できた。僕も薄々犯罪だと気付いていたけど、考えないようにしていた。

 七罪の家は漫画やゲームが多い、遊び部屋みたいな場所だった。あの頃は一緒に遊ぶゲームや買う漫画を真剣に吟味していた。

「一緒に遊ぶ中で、七罪の事が好きになったんです。初めて会った時から既に好きでした。でも、昔の好きと今の好きは毛色が違うんですよ。七罪に接する中で、初めて七罪という人間を知ったと言うか。」

 七罪に抱いている感情は前世()今世()で違う。前世()は七罪を人間として見ていなかった。多分、七罪という偶像を見ていた。

 でも、今は一人の女の子として見ている。あの面倒くさい娘の為なら何でもできる気がする。

「それから色々有りました。でも、七罪を好きだって感情は無くならない。むしろ、以前と比較にならない程強くなりました。だから、僕は七罪の為なら全部を差し出せます。」

 思い返せば本当に色々有った。七罪の本来の姿を見てしまって「私を見つけて」をする羽目になったことも有った。姉さんに七罪の事がばれて銃口を向けられたことも有った。背中を預けて命懸けで戦ったことも有った。

 七罪に関わったことで辛いことや苦しいことは間違いなく増えた。でも、七罪から離れようとは思わない。七罪無しの人生なんて考えられない。

「そうだったのか。案外、シンプルで好感が持てたよ。」

「男なんてそんなものじゃないんですか。」

 僕と士道は笑いあった。精霊に心奪われた者同士、気が合うのかもしれない。

 士道さんと話すネタはいくらでもあったから、退屈することは無かった。僕たちの日常は精霊によって彩られている。思い出話は尽きない。

 十香が回転寿司でテーブルを埋め尽くした話、四糸乃と可愛い帽子を探してウィンドウショッピングをした話、琴里の友達にからかわれた話等々、聞いていてとても面白かった。

 僕は話に熱中し過ぎて、溶けかけていたパフェを急いで食べる羽目になった。

 

♦♦♦

 

 それから軽く映画一本見ることができる時間は経過したはずだ。時間がかかるとは思っていたが、こんなにとは思っていなかった。琴里から呼び出される頃には、太陽がオレンジ色に輝き始めていた。

「待たせたわね。ちゃんと可愛くなったから、賛辞の言葉を準備をしていなさい。」

 琴里が自信満々に言っている。時間をかけただけあって、満足いく出来になったのだろう。

「それで、肝心の十香と四糸乃と七罪はどこに居るんだ?」

 士道は琴里に聞きながら周りをキョロキョロと見ている。ここには琴里と零音さんしか見当たらない。どこに行ったのだろうか?

「折角だから一人ずつ紹介した方が良いじゃない。三人ともそこの角の向こうに居るわ。合図で出てきてもらうわ。」

 琴里の指さす方にはエレベーターホールが有る。こちらからは死角になっている。そこを待機室替わりにしているのだろう。そういう演出なら楽しませて貰いましょう。

「先ずは十香からだ。来てくれ、十香。」

 零音さんが合図をする。その声を聞いた十香がつかつかと歩いてくる。

 メイクと一緒に服装も変えたようだ。ベージュのカットソーに黒のハイウエストパンツという、十香にしては珍しいスタイルだ。普段のガーリーなイメージとは違って、格好いいイメージを与える。

 肝心なメイクはやはりナチュラルなものだ。元々、メイク無しでも周囲の女性陣を圧倒する美貌が有るのだ。過剰なメイクは彼女魅力を損なってしまう。

 明るい色のファンデーションを使うことで透明感が強くなっている。ナチュラルなアイシャドウを使うことで、優しい目元を演出している。全体的に柔らかいイメージだ。

「どうだ、シドー。似合うか?」

 士道の正面に立ち、右手を腰に当ててモデルの様なポージングをする。普段の純粋無垢な印象は鳴りを潜めて、神に愛された容姿の素晴らしさが際立つ。

「……。」

 士道は何も言わない。十香の可愛さに呆けているようだ。

 ある意味最高の賛辞なのだが、それではいけない。僕は肘で士道をついて正気に戻す。

「すまん、見惚れてた。とっても可愛いぞ、十香。」

「そうか、うむうむ。」

 士道の言葉に気を良くした十香は何度も肯いて嬉しそうにしている。

 性格的にメイクなんて面倒くさがるだろうに、士道の為に頑張ったのだろう。流石士道大好きっ娘である。

「可愛いですよ、十香さん。」

「おおそうか。ありがとうだ、愛。」

 僕が言葉を尽くしても無粋だろう。当たり障りのない感想を述べて、二人の邪魔をしないようにした。

 士道に褒められて十香は満足したようだ。士道の隣に陣取り、主役の舞台を次の者に譲った。

「それじゃあ次は四糸乃よ。来て頂戴。」

 琴里の合図で四糸乃がこっちに来る。十香のように堂々とした歩き方ではなく、歩幅の小さい控えめな歩き方だ。ちょっと緊張しているのが傍目にもわかる。

 四糸乃も可愛い服を新しく選んだようだ。白いフリルの付いたブラウスにパステルブルーのフレアスカートを合わせている。リボンのついたカンカン帽で四糸乃らしさがばっちりだ。どこかの令嬢みたいな上品さと可愛さが同居している。

 どうやって用意したのか、よしのんも同じような装いをしている。恥ずかしがり屋な四糸乃と違って、あはんうふんと聞こえてきそうなポーズを取っている。

 メイクで健康的な血色の良い肌色に仕上げて貰っている。薄い青系のアイシャドーを引いて大人びた印象を与える。普段の子供らしさを抑えた背伸びメイクだろうか?

「どう……ですか……士道……さん?」

 四糸乃は不安そうに士道に聞く。琴里達に太鼓判を押されているだろうに。やはり、男の意見は気になる様だ。

「可愛いぞ、四糸乃。綺麗になっていて驚いちまった。」

 士道は腰を落として四糸乃に目線を合わせながら褒める。その言葉を聞いて四糸乃がぱあっと明るい表情になる。

「あり……がとう……ございます。」

 四糸乃は帽子のつばを持ちながらお礼を言う。とても嬉しそうだ。

「あ~ん、士道君。よしのんもよしのんも。」

「ああ、よしのんも可愛いぞ。」

 よしのんも士道に言葉をねだる。士道に可愛いと言われたよしのんは、短い手を器用に動かしてリアクションを取っている。どうやったらあの身体でくねくねできるんだろうか。不思議だ。

「凄い可愛いよ、四糸乃、よしのん。良家のお嬢様みたいだ。」

「うれしい……です。えへへ。」

 四糸乃は照れ笑いをしている。四糸乃は十香と違って普段から仲良くしているし、僕が邪魔にはならないだろう。

「あら~、もしかして四糸乃の魅力にノックアウトされちゃった?四糸乃は士道君にお熱だからごめんね~。ふがが~。」

 よしのんがからかうようにそう言う。流石道化らしいかき乱し方だ。四糸乃がよしのんを抑えたため、それ以上の発言はキャンセルされたが。

「四糸乃も可愛いけど、僕には七罪が居るから。」

「あちゃ~それは失敬。よしのんとしたことがうっかり~。」

 よしのんがたははと笑っている。よしのんには軽く弄ばれた。

 でも、何だかんだで僕はこの道化が気に入っている。悪友と言う奴だろうか。今まで無かった関係性ができて新鮮に思っている。

「それじゃあ、次は本日の主役だよ~。おいで~七罪ちゃ~ん。」

 よしのんが司会の役割を奪って最後のメンバーを呼び出す。その声を聞いて七罪は現れた。そっぽを向いていて素直にとは言い難いが。でも、しっかりお洒落している。

 トップスはエメラルドグリーンのショートシャツだ。七罪のイメージとして肩に星型のカットアウトが入っている。

 ボトムスを黒のプリーツスカートにしている。ショートシャツと合わせてスラリとした印象になっている。星のレースがあしらってあり、本当に自分のイメージを大事にしていることが分かる。

 メイクは十香や四糸乃に比べたら大胆に施している。どっちかと言うと二人がナチュラルに寄り過ぎなだけだが。

 保湿をしっかりとして、肌はつやのあるもちもちとした感触が想像できる。光陰をはっきりとさせて、鼻筋や頬の立体感がある。

 目もエメラルドグリーンのグラデーションに仕上げてあり、黒っぽい色を目尻に入れている。これで小さく見えがちな七罪の目を大きく力強く見せている。よく見たらまつ毛も雰囲気が違うから、マスカラを付けているのだろう。

「ふん、お世辞は要らないわよ。」

 七罪は右手で左肘を掴みながら不機嫌そうに言う。どういう感情を抱いているのかは分からない。十香や四糸乃がどう言ったのかは分からない。でも、僕は伝えたい。僕の感情を。

 七罪の手を取り言いたいことを全部言う。

「やっぱり七罪は美少女じゃないか。普段のもそれはそれで良いけど、今のちゃんとお洒落した姿も素晴らしい。七罪は磨けば光るダイヤの原石だったんだよ。いや、七罪のイメージから考えたらエメラルドかな。七罪って言う素材を塗りつぶすんじゃなくて、魅力を高める方向で服やメイクを選んでいるのが最高。大枠は零音さんたちが考えて、七罪が細部の調整をしたんだろ。星は七罪の趣味だもんな。かなり高い完成度じゃないか。やっぱり七罪はセンスあるよ。大人モードのファッションセンスは七罪自身のものだもんな。七罪はやればできるんだよ。これからも……」

「そこまでにしなさい。七罪が困っているわよ。」

 琴里が僕の頭に手刀を落として僕の言葉を強制中断させる。少々暴走してしまったようだ。皆の視線が少し痛い。

 まだ言い足りないけど、後の感想は細切れにして伝えよう。七罪は自己評価が低いから少し大げさに言う位で丁度良い。思っていることをそのままぶちまけるだけだから、そこまで大変じゃないし。

「あぅ。」

 七罪は下を向いて顔を合わせてくれない。折角のメイクが見えなくて残念だ。でも、その態度自体も極上だから、それはそれで楽しませて貰う。

「愛ってこんなに喋るんだ。」

「これで七罪の告白を断っているらしいわよ。意味が分からないわ。」

「……ふむ、複雑なものだね。」

「見せつけてくれるね~。」

「頑張ってください……七罪さん。」

「皆何を話しているのだ?シドー。」

 後ろのギャラリーが何か言っているが僕は気にしている余裕が無かった。今、僕の意識は全て七罪に持っていかれていたから。




とても楽しかったです。七罪は可愛いんです。七罪は可愛いんです。大事なことだから二回言いました。皆さんも七罪の好きな所を教えていただけないでしょうか?

さて次回からは狂三編です。『デート・ア・ライブ』の顔とも言える彼女はどう動くのか。愛君と七罪は対処できるのか。ご期待ください。年始が終わったので間違いなくペースは落ちますが。

今回の裏話をしましょう。今回は愛君と七罪の過去について。士道との話の中で少し出ていましたね。

どんなことが有ったかは決めています。ちょこちょこと書いていますが、探すのも面倒だと思うので簡単に纏めておきます。愛君の学年を基準にすると下記のようになります。

小六  十月:七罪と初めて出会う・前世の記憶を思い出す・七罪と遊ぶようになる
小六 十二月:七罪の本来の姿がばれる・「私を見つけて」勝負をする・七罪が本来の姿で接するようになる
中一  四月:ラタトスクと協定を結ぶ・折紙に七罪との接触がばれる・アメリカに渡る
中一  十月:狂三&真那と交戦
中一 十二月:八舞姉妹と接触
中二  四月:プロローグ

これをちゃんと書こうと思ったら書けます。需要が有るか分からないし、長くなるのが分かっているから書かないだけで。

2025年2月23日追記
デート中の七罪たちのコーデをAIで生成しました。服だけですが、イメージの補強に使ってください。
https://www.pixiv.net/artworks/127557048
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