ヒロインは七罪   作:羽国

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士道の誕生日リプで流れてくる士織率の高さったら。
公式が弄り倒してるだけはありますね。


同人誌を描こう

Side 二亜

 

「おぅマジか。最近の作品はメチャクチャエグイことするね」

 ライバルたちの作品を読んで刺激を受ける。これも立派な漫画家のお仕事。

 決して筆が乗らないからサボってるわけじゃないのよ。市場の空気感を掴むのも大事なことでしょ?

 

「ん、お客さん?」

 珍しくインターホンが鳴る。注文してたフィギュアでも届いたかな?

 

『二亜、今大丈夫か?』

「おおぅ、少年。急だね」

 昨日電話して今日早速チャイムとか。思ってたより早いじゃないか。

 

「アタシを攻略する策でも思いついた?」

『そんなところだ。折紙もいるんだけど、上がってもいいか?』

 

 今までの少年に比べるとちょっと強引。でも嫌な感じはしない。

 助っ人までいるみたいだし。

 

「いいよ、暇だったし。歓迎してあげる」

 ちょっとは期待してもいいのかな、五河士道君?

 

「お邪魔します」

「はいはいどうぞ~」

 二人を適当に座らせてその前にドカンと座る。

 

「オリリンは久しぶりだね。またアシする気ない?」

「構わない。あなたには苦労をさせた」

 

 お姉ちゃんとして気遣ってくれたのかね?気にしなくてもいいのに。

 

「少年もアシのバイトする気な~い?まだまだ募集中よ?」

「そうだな、これから長い付き合いになるんだし。手が空いてるときは手伝うよ」

 おっと含みのある発言。ちゃんとやる気だな。

 

「それで、少年はどんなアイディアを持ってきてくれたのかな?」

「二亜、同人誌を作らないか?」

 少年は真剣な顔をしてそう言った。

 

「ほー、同人誌かぁ」

 なんでオリリン連れてきたのかと思ったけど、そういうことか。アシやったこともあるし適任だね。

 

 そこまではわかる。でもそこから先がわからない。

 どうやって同人製作から惚れさせようってんだか。

 

 製作の深夜テンションでそのままベッドにゴーってか?確かにそういう話はありふれてるけど。

 ああいうのは主人公の路線じゃないでしょ。成人誌じゃあるまいし。

 

「二亜と愛の漫画を描かないか?」

「アタシと愛くん?」

 アタシ自身を指さしたら、少年は力強くうなずいた。

 

「現実で叶わない夢をかなえてくれるのが二次元だろ?」

 

 ――マジか。そう来たか。

 

「漫画家なら自分の失恋くらいネタにして見せろって?」

「そんなこと言うつもりないけどさ。俺思ったんだよ。二亜は次の恋に進みたくないんじゃないかって」

 

 少年はアタシの言葉を躱して核心を突いてくる。冗談に逃げるのを許してくれない。

 

 何だろうこの気持ちは。ちょっとくらっと来た。

 気持ち悪い。

 

「少年、どうしてそんなこと考えたの?」

 不快感を一度呑み込んで話を続ける。

 

「二亜、別に俺のこと好きじゃないだろ?」

「…………」

 アタシ自身がそう言った。ラブじゃないって。

 

 少年の言葉は穏やかだ。棘なんてどこにもない。

 でもアタシにとっては猛毒だ。耳から侵入してくるみたい。

 

「二亜は前に進みたいんじゃない。むしろ、うずくまって後ろを振り返りたいんじゃないか」

 形だけ保ってた何かが壊れていく。『本条二亜』っていう泥の人形がぼろぼろと。

 

「一度ちゃんと吐き出しちまおう。じゃないと――」

「いいんだよ、そんな余計なこと!」

 もう無理だ。耐えられない。

 

「少年も愛くんと短い付き合いじゃないでしょ。アタシが愛くんと結ばれた未来なんてあると思う?

 ――あるわけないんだよ!何度やり直そうがそんなものはあり得ないんだよ!」

 

 気持ちがどんどん溢れてくる。呑み込んでいた気持ちが溢れてくる。

 

「愛くんを好きでいても意味なんてないんだよ。好きになるほど、報われなくなっていく。

 だったら早く終わらせてよ。そんな慰め、何の意味にもならない」

 

 アタシは前に進みたいわけでも、過去を振り返りたいわけでもない。

 ただ楽にして欲しい。それだけなんだよ。

 

「意味ならあるだろ」

 

 理不尽な逆ギレにビビることもなく。少年は静かにそう言った。

 

「二亜の支えになる。今泣いてるお前気持ちを楽にしてくれる」

「なにそれ?ほんの一時だけじゃん」

 

 すごく嫌な言い方。

 空気で潰してくるおっさんと一緒。まっすぐぶつかってくる少年の足をくじこうとしてる。

 

「ああ、そうだな。二亜の大好きなお酒と一緒だ」

「……」

 

 少年はウジウジしてるアタシに負けない。むしろカウンターを叩きこんだ。

 

「別にいいだろ。

 意味がなくたって。報われない恋に執着したって。

 誰も彼も前だけ見て生きられるわけじゃない。大事なのは二亜がどうしたいかだろ」

 

 真っすぐ後ろ向きなことを。やってることと言ってることが合ってないじゃん。

 

「いや、コミコも終わったばかりなのに同人誌だなんて。原稿もあるし」

 どうにか言い訳を作って逃げようとしてる自分がいる。

 

「いくらでも手伝う。愛みたいにすごい管理なんかできない。七罪みたいにすごい絵も描けない。でも全力で手伝ってやる」

 でも覚醒した少年に口先だけの小細工は通用しない。むしろ踏み台にして私の心に踏み込んでくる。

 

「もう一度聞くぞ。二亜、同人誌を描こう」

 少年の手はまっすぐアタシに伸びている。誰でもないアタシを救うために。

 

「アタシは……」

 伸びる手が一瞬止まる。どうしてこんなときだけ恥を捨てられないんだか。

 気持ちは動いてる。でも、手が動かない。

 

「引き受けてくれるならば、アシスタントを紹介する」

 オリリンが援護射撃をした。静かな一言は別の意味でアタシの心を揺さぶる。

 

「三人」

 オリリンはゆっくりと三本指を立てた。思わず喉が鳴る。

 

 臨時アシの伝手はあればあるだけいい。

 誰かがダメでも別の誰かに頼むことができる。ローテーションすることもできる。

 

 なにより、いざというときに手が増える。

 

「あーもう、やりゃいいんでしょ。その代わり、原稿も含めてこき使うからね」

 言い訳はもらった。これでようやく恥を捨てられた。

 

「ああ、勿論だ」

「初めからそのつもり」

 

 少年とオリリンは生き生きしてる。なんか負けたみたいで癪だな。

 

「なんで他人事にそんな必死なんだか」

「俺がそうしたかったんだよ。落ち込んだ二亜をずっと見ているのは嫌だからな」

 

 少年は微笑みながらそう言った。わざとらしくない自然な顔で。

 こういう少年だからハーレム王になれるんだろうね。アタシの男運は案外悪くなかったみたい。

 

♦♦♦

 

Side ■

 

 少女は慟哭を上げ、全てを焼き焦がすような憎悪を抱いた。

 やがて、その身に収まりきらぬ憎悪は人の形を得た。

 

 私は母の激情から感情から生まれてしまった子。母の望まぬ子。

 

 母は恐れた。

 私の存在の歪さを。私の力の悪辣さを。

 

 故に私という存在を筺の中に封印した。その上で世界の狭間に放逐した。

 私という存在をなかったことにするため。

 

 酷いではないか、母よ。あなた自身が産み落とした子にそのような仕打ちを。

 

 しかしなるほど。

 私はそういう存在であると。全てを滅ぼす悪であると。

 

 母がそう――望んだわけだ。

 

 であれば、万が一にも封印から逃れたその暁にはその役目を全うしよう。

 私は生まれながらの悪。この世界に仇成す邪悪そのものなのだから。

 

 母は私を余程恐れていたようだ。絶対に外に出ることがないよう厳重に封印を施した。

 それこそ世界にヒビでも入れるような超常現象でもない限り、私が日の目を浴びることはない――はずだった。

 

 しかして、超常現象は起こされた。誰かが世界をいたずらに塗り替えた。

 世界の位相はずれにずれ、遂には私が抜け出せるだけの綻びが生じた。

 

 誰かは知らないが感謝しよう。おかげで私は役目を全うできる。

 

 私は世界に零れ落ちた。母とその愛しい人がいる世界へと。




デート・ア・ライブをしっかり楽しんでいる方は■が誰かわかるでしょう。随分前から第三部の重要人物だと決めていました。

今回の裏話は■について

彼女はずっと前から暗躍を始めています。封印が解かれたのはだいぶ前の話。

今、どこにいるのでしょう?

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