ヒロインは七罪   作:羽国

153 / 153
④ですって。一か月同人誌描くエピソード書いてるんですって。


同人誌を描こう④

Side 二亜(同人)

 

 愛くんに助けられてから四年。DEMから逃げ回りながら精霊探しをする日々が続いた。

 囁告篇帙(ラジエル)の記載を手掛かりに街から街へ。大変な旅だったけど、やった甲斐はあった。

 

 嵐を巻き起こす双子精霊、かぐやんとゆづるん。水を操る守ってあげたい系美少女、よっしー。

 凛とした剣士の十香ちゃん。百合っ子アイドルのみっきー。

 

 仲間を集めて次の街へ。それを繰り返していたらいつの間にか大所帯。国民的ゲームだったらボックスに移さないといけなかった。

 

 これだけ増えると旅も大変。ここらで安定した暮らしを手に入れるため、アタシたちは大きな交渉に出たのだ。

 

♦♦♦

 

「なるほど、そういうことだったのね。精霊が集まって妙だとは思っていたけど」

 カラオケボックスで対峙しているのは赤毛を黒いリボンでツインテにした女の子。ピカピカの中学一年生、五河琴里ちゃん。

 そして同時に精霊を保護する組織、ラタトスクの司令官でもある。アタシたちは彼女に交渉を持ちかけた。

 

「僕たちはDEMに知られない住処が欲しい。いい加減、ホテル探しは飽きてきたからね」

「随分偉そうね。無料で衣食住揃えてくれって言ってる立場にしては」

 

 愛くんが申し込んだ交渉は実に単純。住処を用意したら住んでやってもいいというもの。

 お願いしてるわけじゃないのがミソ。あくまで選択権はこっちにあるって仄めかしてる。

 

「いやなら別にいいよ。面倒ってだけで精霊引き連れて旅を続けても構わないし。

 ()()社会に迷惑をかけるかもしれないけど」

 

 愛くんは本当に悪巧みが大好き。管理職JCを本気で脅してる。

 住処を用意しないと何するかわからないぞって。

 

 こっちは街を吹き飛ばせる精霊を何人も連れてるんだから。やろうと思えばすぐに実行できる。

 本当にやる気はないけどね。

 

 ともかく、こっちの最強カードをちらつかせてるわけだ。核爆弾構えて和平交渉するどこぞの国と変わんない。

 

「別に負担だけ背負わせようってつもりはない。そっちは精霊にコンタクトする権利を得るんだ」

「それが私たちの見返りってこと?」

「大好きなお兄ちゃんは喜ぶんじゃないか?キスしたくなるような美少女が選り取り見取りで」

「……あんたまさか?」

 

 本当に愛くんはエグイ交渉しかしない。メリットがあると言いながら情報握ってることばらすんだから。

 

 この子の義理のお兄ちゃん、五河士道君は好感度を上げてキスすることで精霊を封印する能力を持っている。

 近くに住んでたら好感度上げ放題だ。ラタトスクの目的を考えたら喉から手が出るくらい。

 

 君たちにも美味しい話だよ。君たちの内情全部知ってるから僕わかるよ。

 これを初対面の相手に言われるんだよ?下手なヤクザより怖くない?

 

「うちの仲間を引き抜きたいなら好きにすればいい。個人の恋愛に待ったをかける気はないからね」

「その言葉、二言はないわね?」

 琴里ちゃんはすがるような目で愛くんを見ている。アタシの方が見てらんないって。

 

「精々頑張ってお兄ちゃんを支援してあげなよ、五河琴里」

 こうして不平等条約は締結されたのだ。

 

♦♦♦

 

 というわけで無料の部屋(結構広い)を手に入れたわけだけど、色々釈然としない。

 文句を言うため、愛くんの部屋に乗り込んだ。

 

「なんかさあ、愛くん尖り過ぎじゃない?」

「どうしたんですか、藪から棒に?」

 

 愛くんは落ち着き払った様子でアタシを見ている。

 妹ちゃんを相手にしたときみたいな棘はない。長年一緒に過ごした仲間としての情もある。

 でもどこか一線を引いてる。姿勢を正したままの態度っていうかさぁ。

 

「別にラタトスクを信頼しろとは言わないよ。あそこはあそこで信用ならないし。

 でも、琴里ちゃんに強く当たるのは違うんじゃない?あの子は被害者でしょ?」

 

「……わかってますよ、そんなことは」

 

 愛くんはアタシの言葉に口を尖らせた。

 愛くんは出会ったころから変わっていない。四年経った今も精霊になった中学生のまんまだ。

 見た目も、中身も。

 

「ただ釘を刺しておかないといけないんです。五河琴里を貫通して上層部に深々と突き刺さるくらい」

「それで妹ちゃんを串刺し?痛い——なんてもんじゃ済まないでしょ。恨みもないのに、かわいそうに」

 

 強いけど臆病なんだよね。毛を逆立てるハリネズミみたいに、触れるものみんな傷つけちゃうんだから。

 

「そんな孤独系ダークヒーローみたいな生き方しなくてもいいんじゃない?」

 本当は寂しがりやなんだから。

 

「いいんですよ、別に。いずれ一人になるんだから」

「ありゃ、どうしてそんなやさぐれてんのさ?おねーさんが相談に乗ってあげよーじゃない?」

 

 いつもの調子で相談の場を作る。

 ちょうどいい機会だ。愛くんとはいつか話をしないとと思ってたから。

 

「初めから決めていたことです。全部終わったらみんなと距離を置こうって」

「どーしてそんなこと考えてるのさ。せっかくハーレムパーティ組んでるんだから、誰か一人くらい貰っていこうって思わないの?」

 

 愛くんの身体に絡みつく。ここに候補が一人いるよって教えてあげる。

 

「そんなことは考えていません。お姉ちゃんも含めて、全員士道さんに引き取ってもらうつもりです」

 愛くんは振り払ってぶっきらぼうにそう言い放った。

 

「それは五河士道君に力を集めないと、始原の精霊を倒せないから?」

「当たり前じゃないですか」

 

 いずれ出てくるDEMよりヤバい相手。全ての霊力の源、始原の精霊。

 DEMと始原の精霊をどうにかする。これがアタシたちの最終目的だ。

 

 五河士道。彼は愛くんを除いた全ての精霊を封印できる器。始原の精霊を殺し得る二振りの片割れ。

 

「お姉ちゃんに幸せになってもらう。そのためなら僕は何でもやりますよ」

「そのために四年間せっせと精霊を集めて献上だって?いやー、凄まじい滅私奉公(めっしぼうこう)だね」

 その言葉を心の底から言ってるならだけど。

 

「全然全く自分を勘定に入れてないじゃん。愛くん、幸せになるつもりないでしょ?」

「……それでようやくこんな逃亡生活も終わる。自分のためになってるでしょう?」

「うん、そうだね。でも、愛くん本当に一人で満足できるの?」

 愛くんは目を逸らした。明らかに気まずそうな顔をしている。

 

「アタシにはさぁ、大事な人が生きていればそれでいい。自分はどうなろうが別にいいって、そう思ってるように見えるけど?」

「なんですか?子供に説教して気持ちよくなりたいんですか?」

 口が悪くなった。都合が悪くなったからかな?

 

「アタシみたいなグータラが説教したところで響かないでしょ。アタシがしたいのはもっと小さな話」

「何なんですか?」

「これだけ女の子がいるんなら、誰か一人くらい貰っていかないかなって」

 もう一度愛くんの身体に絡みつく。今度は振り払われないようにしっかりと。

 

「こんな偏屈な人間を好きになる変人、いるんですか?」

「いるよ。少なくとも一人」

「お姉ちゃん、とか言われても困るんですけど?家族愛と恋愛は別物でしょう?」

 そこでどうしてオリリンが出てくるんだか?こんなにわかりやすくアピールしてるのに。

 

「ここにいるんだけど」

「………………もしかして二亜さんのことですか?」

 『え、マジで?』って顔してる。この子、信じられないくらい鈍い。

 

「いやね、それくらいは気づいて欲しかったんだけど」

「メリットがあるし、退屈しない。だから一緒にいたんじゃないんですか?」

 なんでそこまでメリットデメリットだけで考えてるんだか。情を()けて考える癖がついちゃってる。

 

「そういう子がいいなって思うようになる。当たり前の話でしょ?」

「そう、なんですか?」

「そうなの。少なくともアタシはそう」

 守ってくれて、優しくて、一緒にいて楽しい。好きにならない方が難しいっての。

 

「僕、かなり重いですよ?」

「だろうねぇ」

 オリリンの扱い見ればわかる。かわいがり過ぎて逃げられるタイプ。

 

「それにかなり性格に難ありますよ」

「妹ちゃんとのやり取り見てたらわかるって」

 その程度で怯むようならそもそも告白なんてしてない。

 

「愛くんと一緒にいるのは楽じゃないと思ってるよ。でもアタシも負けてないからさ。

 アタシで良かったらずっと一緒にいてあげるけど。どうかな?」

 

 愛くんは目を閉じて黙り込む。次に口から出る言葉をじっと待つ。

 

「生活リズムは整えて欲しいですね。睡眠が安定しないのは嫌なので」

 返事は一歩先に進んでいた。

 

「それは愛くん次第じゃないかな。どれだけアタシを矯正できるか」

 アタシは自分で生活リズムを整えるなんて無理。二亜ちゃんはそういうの苦手なのだ。

 

「何、自信満々に言ってるんですか?

 いい年した大人でしょう?関東大空災を体験した世代の癖に」

 

「あー、それはライン越えてるでしょ!年は乙女の秘密なんだから」

 

 真面目な空気はどこへやら。徐々にただのじゃれ合いに変わっていく。

 

「なーにが乙女ですか。わざわざ突かないだけでみんな知ってますよ。二亜さんはアラフィフだって」

「アラフィフって、五十ってそんなわけ……」

 今の年と自分の生まれた年を引き算して考える。えーっと、十の位が四で一の位が……四十●歳?

 

「マジか、アタシ五十近いのか……」

「忘れてたんですか、自分の年齢?」

 思わず愕然としてしまった。愛くんが冷たい目で見下ろしてる。

 

「いや、自分の年って二十五超えたあたりから数えなくなるのよ」

 その辺りから自分は若くないって思っちゃうから。誕生日のお祝いをしても、●歳になりました~ってやらないの。

 

「公的書類に必要でしょう?なんで忘れられるんですか?」

「いやな記憶はすっぱり忘れるのが二亜ちゃんなの。自分の年思い出すのも確定申告も大嫌いなの」

「便利な脳みそしてるなー」

 愛くんの乾いた笑いが心に響く。さっきとは全く違う意味で。

 

「ねえ愛くん、何でもするから貰ってくれない?」

「清々しいくらい情けない告白ですね。こんな涙がちょちょ切れる告白は初めて見ましたよ」

 冷たい視線が突き刺さる。そんな顔しないでよ。

 

「等価交換が原則です。渡す分貰いますけど、大丈夫ですね?」

 愛くんは真面目な顔をしてアタシの顔を見る。その言葉の意味を理解しつつ、敢えて冗談めかして返す。

 

「あたぼーよ。二亜ちゃんの人生で良ければ持ってけー!」

「そうですか。ではありがたくいただきます」

 こうして二亜ちゃんは若い男を誑かし、独り身を卒業したのだった。

 

♦♦♦

 

Side 二亜

 

 読み終わった本をぱたりと閉じる。胸の内には絡まり合った感情が渦巻く。

 

 やり切った達成感。何とも言えない嬉しさ。

 描き過ぎたっていう恥ずかしさ。そして小さな小さな嫉妬。

 

「終わった……」

 力の抜けきった顔で部屋の照明を見上げる。ちっぽけな光が寝不足の目には辛い。

 

「二亜……」

「少年、このまま寝ていいかな?アタシもう限界でさ」

 眼鏡を取って右腕をアイマスク代わりに置く。そのまま目元を隠しつつ少年に力ない声でお願いした。

 

「ああ、いいぞ。ベッドに運ぶくらい俺がやってやる」

「ふふっ、頼んだよ」

 アタシはもう限界。このまま元気な二亜ちゃんを続ける余裕はない。

 

「ねえ、少年」

「どうした?」

 

「この本の中でアタシの恋は叶ったよ。好き勝手な妄想だったけど、ここで生きてるのはアタシだよ」

「そう、だな」

 

 少年の歯切れが悪い。

 大丈夫、わかってるって。二亜ちゃん、そこまで馬鹿じゃないから。

 

「でもね、アタシはああなれない。あそこで生きてるのはアタシだけどアタシじゃないんだよ」

「そうか」

 何を言ってるかは自分でもわからない。でも確かなことが一つだけ。

 

 アタシはどうしようもないくらい負けたんだ。

 

「スッキリしたよ。これでようやく前を向ける」

「二亜、頑張ったな」

 

 少年の身体に巻き付いて体重を預ける。

 

「次起きたら元気な二亜ちゃんに戻る。ちゃんと演じてみせる。

 だから、今日のアタシは忘れてね」

 

「そうだな、ここにいるみんなの秘密だ」

 

 顔が徐々に紅くなるのがわかる。そういえば、みんないたじゃん。

 

 みんなはどんな顔をしているんだろうか。

 気になるけど見ない。後で気になってしょうがなくなるだろうけど、見ないったら見ない。




ようやく一区切りつきました。これで■■のエピソードを始められますよ。

今回の裏話は同人誌の裏事情について。

琴里を脅迫していたり告白後に面倒なやり取りしていたり、やたら愛くんの解像度高いですね。

なんでかと言うと脅迫された人が手を貸してたり、お姉ちゃんが告白の内容を一部吐かせていたり。

この同人色々な人の感情が吐き出されています。

投稿日はいつがいい?

  • 月曜夜
  • 火曜夜
  • 水曜夜
  • 木曜夜
  • 金曜夜
  • 土曜昼
  • 土曜夜
  • 日曜昼
  • 日曜夜
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

俺が攻略対象とかありえねぇ……(作者:メガネ愛好者)(原作:デート・ア・ライブ)

▼ やっぱりこういう感じの方が書きやすいという……ね?▼ 私に初っ端からシリアスとか向いていないことをようやく自覚したメガネ好きです。▼ 原作読んでて思ったんです。やっぱり士道君は「貴方だけの士道君」よりも「皆の士道君」の方がしっくりくるのだと。だってヒロインの皆、全員いい子なんですもん。誰かを差し置いて~ってのはやっぱり何か違う感じがするんですよね。▼ そ…


総合評価:5309/評価:6.9/連載:46話/更新日時:2017年06月05日(月) 07:00 小説情報

転生したらヘレティックだった件(作者:インなんとかさん)(原作:勝利の女神:NIKKE)

▼1:名無しのヘレティック▼ 私がニケの世界に転生してから既に90年ほど経っています。アーク近郊で何が起こらないかと彷徨っているのですが、これは私が何かいけないのでしょうか?▼※ニケに転生した前世の記憶持ちのインなんとかさんが指揮官に一目惚れして名誉カウンターズ兼専属ニンジャみたいになるお話。原作未プレイでも読めるように書いていきます。▼


総合評価:3273/評価:8.88/連載:5話/更新日時:2026年04月25日(土) 20:37 小説情報

【目指せ】ORTの倒し方とついでに聖杯を探すスレ【極限の単独種】(作者:暴走樹海奇行ワイモ・オルトヤー)(原作:Fate/)

 ⚠あらすじを読む時はレッツゴー陰陽師を流してください⚠▼ あらゆる世界での死が転生で解決するこの令和の時代▼ 転生者達の間に築かれる掲示板が存在していた▼ 暇を持て余したどうしようもない奴らに娯楽を提供する、FGO世界に転生したバカみたいな考えの男が一人▼ その名は、オルト・エインズワース▼ そう、転生者達は彼を⋯⋯フォーリナーと呼ぶ▼ ※呼びません▼ 本…


総合評価:15931/評価:8.12/連載:59話/更新日時:2026年06月10日(水) 12:00 小説情報

一般流浪人がスタレのキャラに狙われる話(作者:しいたvol.3)(原作:崩壊:スターレイル)

我、流浪の身である。▼星神らの一瞥と童貞の卒業を求む。▼全身鎧の男がなんてことなく狙われる話。▼設定のガバ・キャラ崩壊多めです。▼リクエストの募集始めました。下記のリンクからお願いします!▼https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=338210&uid=509610


総合評価:2899/評価:8.54/完結:33話/更新日時:2026年04月03日(金) 23:01 小説情報

アストレア家の長女(作者:slo-pe)(原作:Re:ゼロから始める異世界生活)

▼ラインハルトに二つ上のお姉ちゃんがいたら。▼平和なアストレア家になってほしいなぁと。▼pixiv▼https://www.pixiv.net/novel/series/15971207▼


総合評価:2001/評価:8.76/連載:13話/更新日時:2026年06月19日(金) 20:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>