今後とも長く続けるつもりなのでよろしくお願いします。
余談ですが、愛君のCRユニットに名前を付けました。命名は《ノルン》です。それに合わせて今までの話も随時修正する予定です。読みにくい期間ができますがお許しください。
甘い考え
四糸乃が封印されてしばらく時間が経った。平和な日常を満喫する時間は十分あった。
次の戦いが迫っている。つまり、次の精霊の到来が。
「次の精霊の対策を考えるわよ。」
七罪はそう宣言して部屋で準備を始めた。ホワイトボードを部屋の中央に置いて、水性ペンを並べている。やたらと気合が入っている。
この部屋は姉さんに仕込まれた僕が、盗聴・盗撮・通信の対策をしている。この部屋の話が漏れることはほぼない。秘密の話をするためには持って来いだ。
「愛の知っている未来なら、時崎狂三が来禅高校に転校して来るのよね。あの学生時代の落書きからそのまま出てきたような女が。」
「そうだよ。あのヤベー奴が来る。」
七罪がホワイトボードに懐中時計が描かれたカードを貼り付ける。狂三をイメージして七罪が描いたようだ。
七罪の言う通り、原作だと四糸乃の次は時崎狂三がやって来る。時期は忘れたけど、夏前である事は間違いない。あの最悪の精霊が。
「確認しておかなければならないわね。そもそも、狂三は本当に来るの?この世界と愛の知っている物語はあくまでも別物なのでしょ。」
七罪はまず前提を疑う。七罪の考えは正しい。
この世界は限りなく『デート・ア・ライブ』に近いけど違う世界だ。全部同じだと考えていると、痛い目を見ることになる。
常に疑う姿勢でいるべきだ。そういう意味では疑い深く、頭の回る七罪は未来を知るのに適した人間だと思う。
「原作通りになる保証はない。だけど、少なくとも今回は狂三がこの街に来るのは確実だよ。」
僕はパソコンを開いてとある写真を表示する。その画面を七罪に見えるようにターンさせる。
「これは……」
「昨日、
その写真には緋色と黒のゴシックロリータを着たツインテールの少女が写っている。霊装を纏った時崎狂三だ。
「一時間探して、三人も見つかった。十中八九、分身体だろうけど……」
「本体もこの街のどこかにいそうね。」
狂三は自身の天使、
恐らく、狂三の分身体に行動制限はない。本体から離れて分身体だけ天宮市に来ている可能性は有る。
しかし、こんな簡単な調査で三体も発見してしまった。本体も既に近辺に居ると考えた方が自然だ。
「だったら次の攻略対象は時崎狂三で決まりね。」
七罪はホワイトボードに貼った
「やる気になっている所悪いけど、狂三は封印出来ないし、する気がない。」
「……話くらいは聞いてあげるわ。納得できる話をしてくれるんでしょうね?でないとそんな中途半端は嫌よ。」
水を差された七罪は腕を組みながらそう言う。文句は有るが、全部聞いてからにしてくれるようだ。
「そもそも、精霊の霊力を
「どういうこと?」
七罪はこめかみに指を当てて考えている。最近知識を得たから活用しようとしている。
でも、僕の頭の中を全部公開できるわけではないし、言われるまで思い出せないこともある。七罪の知識は僕より一歩劣ってしまう。
「精霊の精神が不安定になると霊力が精霊に戻るって話しただろ。逆に言うと、感情を制御出来たら霊力を自由に取り戻すことができるんだよ。」
精霊の好感度を上げて、キスすることが出来たら、封印する事は出来る。しかし、精霊側から霊力を奪い返す事は可能だ。
原作で琴里や十香は封印後に霊力を完全に取り戻している。狂三が出来ないとは思えない。
「はぁ……、何よその仕様。考えた奴は頭に何が入ってるの?」
「あはは……。」
それに関しては崇宮澪の都合よりも物語としての都合が優先されている。合理の面から考えたら不親切な設計だ。
「まあ、そういうわけで精霊とキスして終わりじゃないってことだよ。精霊をちゃんと攻略した上でアフターケアまできっちりしないと意味がない。」
「……士道の役割ってホストみたいなものよね。女を口説いてその気にさせて、霊力を巻き上げる。そして、逃げないようにご機嫌取りまで……。」
微妙に否定しにくいことを言う。奪うのが金か霊力かの違いで確かにその通りだけど。
士道の力がそんな扱いをされるのはかわいそうだ。士道じゃなくて与えた人が。
「狂三の悲願に
「三十年前の始原の精霊を殺して、精霊が生み出された事実そのものをなかった事にしようとしているのだったかしら?途方もないことを考えるわね。」
狂三は過去に戻って始原の精霊、崇宮澪を殺すことだけを考えている。その為に何を差し出しても構わない。それだけの覚悟がある。
「その途方もない願いに全てを懸けているような人間だ。実質狂三の攻略は不可能だと思う。」
崇宮澪をどうにかしない限り狂三の願いは叶わない。崇宮澪をどうにかするなんて無理だから、今回はどうしようもない。
狂三の心を折る方はどうか?そんなことしたら狂三が反転して、地獄が生み出される。
「だったら、霊力は封印せず士道に協力させたら?ほら、私みたいに。」
七罪は自分の胸を掌で押さえながら提案する。悪くない考えだけど、多分実現しない。
「狂三は士道に協力することはあっても、ラタトスクに協力することはない。狂三が
「七罪は霊力を封印していないのは、他の精霊の力に対抗して貰う為って部分が一番大きいし。」
七罪はラタトスクと協力するようになって、犯罪行為をしていないし、民間人に危害を加えていない。別に、
明言されていないけど、美九や二亜の能力は霊力や魔力である程度防ぐことができると思う。でも、封印された精霊はその枠に入らない。恐らく霊力の差が大きいと天使の影響をもろに受けてしまうのだ。
緊急時にそれでは困るから、ラタトスクに七罪の封印は禁止と言い渡した。悪戯に天使を使う気はない。だから、ラタトスクに黙認されている。
「私はそれが一番だと思っていないんだけど。正直霊力の封印とかどうでもいいわよ。それよりも……キスとか……。」
「何か言った?」
七罪が何かぼそりと言った。小さすぎて良く聞こえなかったけど、何を言ったのだろうか?
「別に。その内分からせるから良いわ。」
「?」
何なのだろうか?まあ、七罪が話さないならわざわざ追求しなくても良いだろう。
「それに、狂三はウッドマン議長とカレンさんが殺したいほど嫌いだ。始原の精霊を生み出した張本人だからな。」
ウッドマン議長とカレンさんは狂三の中では崇宮澪、アイザック・ウェストコット、エレン・メイザースに続いて憎い相手だろう。
ラタトスクはウッドマン議長とカレンが創設した組織だ。狂三の協力するビジョンが見えない。
「まあ、そもそもラタトスクってDEMよりはマシってだけで、碌でもない組織よね。」
「僕はそこまでは思わないけど。」
七罪はラタトスクの事が余り好きではない。実際、原作では琴里にしか許されていない《ダインスレイフ》を勝手に使用した。背中を預けて良い組織でないのは事実だ。
でも、議長や琴里のように信の置ける人間も多い。そこまで疑ってかかる必要はないと思う。まあ、七罪には七罪の考えが有ると思うから否定する気はないけど。
「それに、狂三は下手に縛るよりも、自身の考えで動く方が士道の為になると思う。原作の陰日向で動き回っていた奴だからな。」
狂三は美九に追い詰められた士道を助けたり、DEMに命を狙われた士道の運命を変えたりしている。要所要所で狂三の存在は士道のためになる行動をしている。
これは狂三を封印していたら実現しなかった活躍だ。狂三はトリックスターとして動いて貰いたい。
「だったら、時崎狂三は殺さず封印もせずに撃退するって言うのね。本気で命を狙っている相手に対して。」
七罪の言葉には少し怒気が込められている。これに関しては僕が悪い。かなり無理なことを言っている自覚はあるから。
「でも、こっちは狂三の手の内をほとんど知っているから。無理な話じゃないよ。」
ホワイトボードに狂三の能力を一つ一つ書いていく。全部覚えている訳ではないけど、大半は覚えている。戦闘系の能力は完璧だ。
「分身体の作成、加速、減速、成長、巻き戻し、時間停止、時間跳躍。とんでもない大盤振る舞いね。これに加えて時喰みの城だっけ。一人だけ能力に恵まれすぎていないかしら。」
七罪が悪態を吐くのも仕方ない。狂三は作者に寵愛されたキャラだからな。その分とんでもない運命を背負っているけど。
「でも、弱点は分かりやすい。
時喰みの城も霊力か魔力で対抗できる。狂三の影を踏まないように気を付けたら対処は可能だ。
「本当にそうかしら。
七罪と僕はアメリカで狂三と交戦している。その時の経験から狂三の事を相当警戒している様だ。
確かに狂三は恐ろしい女だ。狂三の恐ろしさの本質は多彩な能力でなく、それを使いこなす狂三本人の頭脳と精神力だ。そこらの凡人が
「あんたよくあいつ相手に時間稼ぎできたわね。正直、私は死んだと思ったわよ。」
狂三との交戦時、僕は強引に狂三との相手を引き受けた。あの時は、時崎狂三と崇宮真那を同時に相手しないといけない馬鹿みたいな難易度の戦闘だった。
当時は崇宮真那にも対抗できなかったから実質的に詰んでいた。だから、まだ可能性が有る方を選んだのだ。七罪が崇宮真那を倒して駆けつけてくれることを信じて。
「狂三には僕が情報を色々持っていることを匂わせたからな。頭の回る狂三なら僕を生かすかもと思っていた。」
「一体どんな情報を渡したの。」
「狂三自身の情報だよ。狂三の能力や目的を言ったらどうにかなった。他にも色々知っていることは狂三も気付いただろうけど、実質的に情報は何も渡してないよ。」
狂三の能力の詳細を知っている人間は限られる。狂三の目的を知っている人間はなおさらだ。しかも、他にも色々と知っているかもしれない。そんな相手を適当に殺すほど狂三は考え無しではない。勝算はあると思っていた。
「それって、情報を渡していないって言えるの?『あんたが情報を持っている』って情報を渡していない?それって結構大事だと思うけど。」
七罪は呆れたような口調で苦言を呈す。確かに、狂三に警戒心を与えてしまったかもしれない。でも、あの時はそれしか選択肢が無かった。ほとんど情報を渡さずに乗り切れたのは幸運だと思っている。
「最悪の精霊相手にそれで済んでいるんだから、むしろ大勝利でしょ。」
「それで、今苦労させられているじゃない。」
七罪は頭を抱えて溜息を吐く。そこまで言う程だろうか。でも、相棒は楽観的な人間よりも心配性な人間の方が丁度良いかもしれない。
「僕たちの役割は、士道や精霊の皆を守ることだよ。僕たちがいなくても戦力的にはどうにかなったんだから。戦力が増えているこの状況なら守り切れるよ。」
「はぁ、分かったわ。基本的な方針は愛の言うとおりにする。でも、愛や士道、精霊の皆が危険だと思ったら、狂三はお仕置きでは済まさないわよ。」
七罪は渋々ながらも了承する。この後、僕は七罪の方が正しかったと痛感させられることになる。
愛君の甘い部分が出る回でした。作者から彼に一言述べるなら、「君の甘さは地獄を顕現させるぞ」ですね。愛君には痛い目を見て貰いましょう。
さて裏話をします。今回は狂三が半年前、アメリカに行った理由について。
狂三は人間と仲良くしている精霊の話を聞いて興味を持ちます。アメリカに居た頃の七罪のことです。それで、自分の目で見ようと思っていたんですね。
そうしたら、愛君に出会いました。狂三は七罪がどうでも良くなるくらいに愛君がとんでもない存在だと判断しました。
オリジナルの天使を登場させても良い?
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良い
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駄目
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作者の好きなように
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