さて、今回は愛君がちゃんと折紙の弟だと実感してもらいましょう。それではどうぞ。
僕は時崎狂三に喧嘩を売った。だが、それはあくまで僕の方針。
士道や琴里は別だ。狂三の攻略を考えている。
それで正解だ。今後の為にも士道には狂三の好感度を稼いで貰わないと困る。
別に封印できる領域になる必要はない。食べるのを戸惑う程度に興味を持たせたら十分だ。
狂三の攻略のために士道は狂三をデートに誘った。分身体だからといって何もしなければ狂三の攻略には繋がらない。
それに、本体は影の中から見ている。放っておける状況ではなくなったら、狂三を引きずり出すことができる。
狂三をデートに誘う。それ自体は良いのだけど、士道とデートをしたい人間は一人でない。
開校記念日で与えられた休日。士道は狂三以外の二人からデートへ誘われてしまった。十香と姉さんだ。
それ自体は原作と同じ展開だから、特に驚きはしなかった。『トリプルデート頑張れー』と軽い気持ちで応援していた。
しかし、それは許されなかった。我らが
今回、仕事もせずにのらくらしている僕たちに苛ついていらっしゃったようだ。僕と七罪にミッションが課せられた。トリプルデートの三分の一を受け持てと。
相手は姉さん。僕と七罪の二人でデートをしろとのお達しだ。
勿論、僕が代わりに出て相手しろと言う話ではない。七罪が士道に変身して代わりにデートしろという意味だ。
原作で七罪は一日足らずで士道の真似をして見せた。二か月も近くで見てきた今なら、一日誤魔化すことはできる……と思う。結構不安だけど。
というわけで僕はフラクシナスから士道に変身した七罪と連絡を取り合っている。七罪が上手く誤魔化せるようにフォローするのだ。
『どうして俺がこんなことを……』
「頑張ってくれ。お前ならなんとかできる。僕も全力でフォローするから。」
七罪は愚痴を吐きながらも、既に役に入り込んでいる。インカムから流れてくる声やフラクシナスで映し出されている映像からは士道としか思えない。
時刻は十一時を少し過ぎている。約束の時間は十一時だから既に遅刻だ。
誤魔化す時間を減らすため、不自然でない範囲でわざと遅刻している。
姉さんの方は既に待ち合わせの天宮駅前の噴水で待っている。一時間近く前から来ていた。
我が姉ながら全力投球が過ぎるのではないだろうか。騙す罪悪感が増してきた。
『すまん、折紙。ちょっと遅れた。』
士道に化けた七罪は小走りで姉さんに駆け寄って急ぎましたアピールをする。本当は先ほどまでフラクシナスでゆっくりしていたのに。
『問題ない。私も今来たところ。』
姉さんもさらっと嘘で返す。本当は一時間近く待っていたのに。……何なんだ、この虚飾にまみれた会話は。
『ええと、今日はどこに行くんだ?』
流石七罪だ。優柔不断な士道の態度を完全に再現できている。女慣れしていないところまで含めて完璧だ。
『映画。』
『その映画って一体どこで観るんだ?』
『天宮クインテット』
姉さんは端的に答える。端的過ぎて、なかなか感情が読み取れない。十中八九、士道(七罪)に興奮しているのだろうけど。
「何のんきに聞いているのよ。そっちには十香と士道が居るわ。場所を変えさせなさい。」
後ろに座っていた琴里が文句を言う。琴里は士道の方のサポートをしているが、一応こっちのデートの様子も把握している。僕が何も考えてないと思って言ったのだろう。
「そんな無駄なことしたくないよ。」
「無駄なことって、あんたねえ……」
琴里は僕の態度を見て文句を言おうとする。その途中で僕の言ったことが正しいと証明される。
『先に渡しておく。なくさないで。』
『ありがとうな、折紙。』
姉さんがチケットを取り出して、士道に変身した七罪へ手渡す。これを知っていたから、無駄なことと言ったのだ。
「姉さんは行動力の塊みたいな人だぞ。士道さんをデートに誘ったなら、行く施設全てで時間を取られないように予約を取っておく。予定外のことが起こっても問題ないように、サブプランも複数考えておく。姉さんの計画を変えるなら姉さんを納得させるしかないぞ。」
「どうしてそんなことが分かるのよ。」
「家族だからな。少しくらいは行動が予想できるものだろ。」
何年も一緒に過ごしてきたのだ。多少の行動の予測はできる。その上で予測を斜め上に突っ切るのが姉さんだが。
『どんな映画を観るんだ?』
『ラブロマンス。』
姉さんの答えは高校生としては一般的なもの。しかし、僕には落ちが読めた。
「十八禁と十五禁のどっちかな?」
「なんで初デートでそんなものを選ぶのよ!」
「だって姉さんだもん。」
どうせ、狂三とは違う意味で士道を
因みにチケットの映画を検索してみたところ、十五禁だった。流石に十八禁を買えなかったか。
『じゃあ、行くか。』
画面の中で士道に化けた七罪が声をかける。姉さんもこくりとうなずいて歩き始めた。
姉さんは士道(七罪)の腕に自身の腕を絡ませる。べったりと身体を預けて、胸も完全に当たっている。一線を越えた後のカップルのようだ。
「ボディタッチか。基本だね。」
「そうですね。姉さんにしてはまだ大人しい方ですね。」
スナック菓子を食べながらテレビ感覚でデートの様子を見る。かなり平和的な光景だ。令音さんも同意してくれる。
「何令音まで納得しているのよ!」
琴里が僕と令音さんをまとめて突っ込む。あんまり痛くないけど、頭を叩かないで欲しいな。
その後、姉さんは士道(七罪)をレストランに案内した。社会人が婚約者と一緒に行っても、恥ずかしくないような立派な店だ。
というか、姉さんがそのつもりで士道を誘っているんだろうな。将来の相手として。
ウェイターは飲み物の注文だけ取っていった。つまり、すでに料理の予約をしてある訳だ。
士道のアレルギーや好みは把握しているから、代わりに注文しても問題ないと判断したのだろう。
『なあ折紙、今日はなんで俺をデートに誘ったんだ……?』
士道(七罪)が姉さんに問いかける。姉さんは士道(七罪)をじっと見つめて答える。
『今日は、できるだけ一人にならないで欲しかった。』
『え……?』
『デートが終わったら、うちに来て欲しい。そして、しばらくうちに泊まって欲しい。』
『えーええっ?』
七罪は驚いた振りをしている。七罪も有る程度姉さんの所業を知っている。この程度で驚きはしないだろう。
ただの士道のエミュレーションだ。かなり精度が高く、違和感がない。
「それは不味いな。あの家まで連れて行かれたら詰みだ。」
姉さんは家を強固な要塞にしている。侵入したら僕と士道以外の人間は生きて帰ってこれないだろう。あの家のセキュリティレベルは、それくらいにヤバい。
「そうね。何か上手い言い訳を考えなさい。」
琴里が偉そうに命令する。まあ、元からそのつもりだしやるけど、ちょっとイラっとした。後で仕返ししよう。
今は姉さんの対処だ。姉さんを何とかしないと七罪が襲われてしまう。士道本人だったら別に良いけど、七罪が襲われるのは駄目だ。
「それじゃあ七罪、『野外の方が興奮しないか?初めてはネカフェってのも良いな。』って言ってみろ。」
「……何言ってるの?脳みそ溶けて耳から出てくるの?」
後ろから琴里の苛立った声が聞こえる。そこそこお怒りのようだ。
「真面目な作戦だよ。姉さんの目的は士道の保護だ。姉さんはラタトスクが保護していることを知らないからな。手の届く範囲に士道さんがいないと姉さんは納得しない。」
姉さんの目的は士道の保護だろう。狂三が士道を食べるって言っていたからな。
しばらくの間、自宅で匿うつもりなのだ。今日は士道(七罪)を帰す気が無い。
「だから、宿泊を受け入れた上で、介入する余地のある施設に誘導した方が良い。それなら意見も通りやすい。下手に断って拉致られるよりずっとマシだよ。」
「そんな頭のおかしい提案を受け入れる女が存在するわけ……」
琴里が否定しようとする。常識で考えてるから後手に回るんだよ。
相手は常識が通用しないのだから、始めから常識なんて捨ててしまった方が対処しやすい。
『分かった。愛がそう言うのならその通りにする。折紙について一番詳しいのは愛だろうし。』
七罪が琴里の言葉を遮って小声で了承する。相棒が信頼して背中を預けてくれているようで嬉しい。
『なあ折紙、野外の方が興奮しないか?初めてはネカフェってのも良いな。』
七罪は僕の台詞をそのまま再現して姉さんに伝える。本来なら熟練した変態でも拒否されるような提案だが……。
『……分かった。候補を探しておく。』
姉さんは早速スマホの操作を始めた。近くのネカフェを探しているのだろう。
「嘘でしょ!」
「だから言ったでじゃん。姉さんは士道さんが相手なら何でも受け入れる性欲モンスターだよ。」
「あんたの姉よねえ?姉のことなんだと思っているのよ⁉」
琴里は絶叫しているが、僕にとっては完全に想定内の出来事だ。
なんなら、姉さん本人の前でも同じことを言える。姉さんも特に気にしないと思う。
姉さんと士道(七罪)は運ばれてきた料理を食べ始めた。料理は凄い美味しそうで、フラクシナスで適当な昼食を取っている僕は羨ましくなった。
ただ、姉さんの相手の代価としては安すぎる。先ほども途中で席を離れた士道(七罪)の使っていたフォークを回収して、新たに新品を出していた。
姉さんは七罪の使った食器を
なお、琴里は困惑顔で見ていた。令音さんはふむふむ言っていた。
そして、食後は予定通りに映画の時間だ。姉さんたちはポップコーンやジュースを買って席に座る。
始まるのはベッドシーンが入っている大人向けの作品だ。十五禁だからそこまで露骨に描写されないだろうけど、高校生には刺激が強い。
ただ、内容にさえ目を瞑れば、これだけでかなりの時間が消費できるからお得。と琴里たちは思っているのだろう。
僕は姉さんのことをそんなに甘く考えていない。暗くなったシアタールームの中でも暗視カメラで姉さんをしっかり見張った。
映画の中盤も終わり、そろそろ濡れ場に入った。そこそこ有名な外人女優が服を脱いで男を誘っている。局部を見せない構図になっているが、結構わかりやすい。
そして、姉さんも動き出す。手を士道(七罪)の膝に触れさせ、徐々に腰の方に移動している。明らかなセクハラ行為だ。
『あのー、折紙さん?』
『映画館ではお静かに。』
姉さんは士道(七罪)の指摘に尤もらしい返答をする。分かっていてそう答えているな。それ以上の追及をやりにくくなるように。
さて、また対処を考えないと。こんな場所で合意も無しだったらセクハラで終わるだろう。でも、七罪は嫌そうだ。
姉さんに止めさせる一番の手はこれかな。
「七罪、『物事はじっくり楽しまないと損だろ。今は気持ちを盛り上げるだけにしよう。』って言ってみろ。」
「それじゃあ、士道が変態みたいじゃない。なーに家の兄のイメージを落としてくれてるのよ。」
琴里がまたちょっかいをかけてくる。士道の評判を落としているのはお前だろうが。
「大丈夫。姉さんは士道さんの情報を拡散しないだろうから。」
「そういう意味じゃないのよ。」
じゃあどういう意味なんだよ。姉さんの対処を考えるの大変なんだぞ。なお、七罪が完全に再現した結果、姉さんは綺麗な姿勢で残りを観続けた。
『ネットカフェを探しておいた。』
映画を観終わった後、姉さんはすぐにネカフェに行こうとしている。さっき探して決めていたのだろう。
でも、もうちょっと時間を稼いでほしい。狂三の様子を見ると、
「七罪、『姉さんの服を選びたい』って言ってみろ。」
「あんたの口からまともなデートプランが聞けてほっとしたわ。」
琴里が失礼なことを言っている。僕は相手に応じて適切な手段を講じているだけだ。非常識な人間みたいに思わないで欲しいな。
『なあ折紙、その前に服を見に行かないか?折紙の可愛い姿が見てみたいな。』
『……分かった。近くに
姉さんは迷いなく歩いて行く。有名なブランド服や大衆向けのチェーン洋服店を過ぎ去り、辿り着いたのは
「コスプレショップじゃない!」
琴里の言う通りコスプレショップだ。巫女服や超ミニのセーラー服など明らかに
「今すぐ普通の店に変えさせなさい。わざわざこんな店で服を選ぶ必要ないじゃない。」
お年頃な
「待て琴里。ここの方が都合良い。」
「何言ってるのよ。馬鹿じゃないの?姉のコスプレ鑑賞がしたいなら、二人で勝手にやりなさい。」
琴里は僕を変態に仕立て上げたいようだ。そういう意味じゃないのに。
「ここなら本物の士道さんと接触する可能性が低い。それに、こういう服の方が複雑な構造をしていて、着るのに時間がかかる。」
これは
「もう嫌、この姉弟。頭おかしい。」
「よしよし。大丈夫だよ、琴里。」
琴里が令音さんに抱き着いてガチ泣きしている。そこまでか?
姉さんは慣れた手つきで服を選んでいる。普通の洋服店とは勝手が違うから、同じ感覚で選ぶことはできない筈だ。
結構通っているな。
姉さんはいくつか選んで試着室に入る。想定通りにたっぷり時間をかけて着替えている。これならなんとかなりそうだな。
『似合ってる?』
試着室のカーテンを開けて姉さんは士道(七罪)に着替えた姿をお披露目する。
白く華奢な肢体を惜しげもなく晒している。辛うじて黒い布が恥部を隠す役割を果たす。
その上からフリルたっぷりのエプロンで肌面積は減っているが、かえって背徳感をもたらすのに貢献している。
姉さんのチョイスはマイクロビキニにメイドエプロンだ。特殊な趣向の中でも、一部の選ばれた者しか選べないような逸品だ。
「攻めてきたなー。」
「もうそういう領域の話じゃないでしょ。あんたの姉、頭おかしいんじゃない。」
失礼だな。確かに僕もこれはどうかと思うけど。
『ええと、もうちょっと肌を隠した方が良いんじゃないか。』
士道(七罪)も苦笑いで違う衣装を進めている。驚きすぎて士道の演技ができなくなっているな。士道なら絶叫しているぞ。
『わかった。』
姉さんは士道(七罪)の言葉を聞いて新しい衣装を選び始めている。どれもこれも布面積が大きいだけで特殊指向ばかりだ。
いつか、士道を落とすのに有効な衣装選びを教えなければ。
なんなんだこいつ。書いた本人が言うのもアレですが、愛君は変わった子です。(精一杯マイルドな表現)今までも少し描写していましたが、本格的に書くのは初めてですね。
愛君もちょっと変わっているかなと自覚しているけど、実態は想像を軽く凌駕しています。折紙の思考を再現できる時点で相当なんだよ。だから、被った猫の皮から本性が飛び出ています。本人もそこまで気にしてないんですが。七罪に嫌われなけでなどうでも良いと思っているので。
そして、七罪はこいつヤバいと思いながらも、理解のある彼女面しています。彼女自身も時々変な奴を好きになっちゃったと思っています。でも、考え直すことはしません。惚れた弱みというやつです。可愛いですね。
さて裏話について。今回は二大ヒロインについて。
この作品には七罪を除いて物語への影響力が格段に強いヒロインが二人います。そのうち一人が折紙です。現時点で既に「弟ができる」「精霊に殺されたのが父親だけになる」という原作との違いが生まれています。
その影響で原作と心境が変わっています。次の章で描写するのでお待ちください。
愛君の血縁者だけあって、折紙が動くと原作が破壊されるんですよね。折紙編のプロットがある程度できたけど、原作がかなり破壊されました。個人的に楽しみな内容ではありますが。
オリジナルの天使を登場させても良い?
-
良い
-
駄目
-
作者の好きなように
-
タグを付けるのなら