ヒロインは七罪   作:羽国

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この作品は大雑把に三部に分けられます。琴里編までの一部。折紙編までの二部。最終章までの三部。それぞれである程度伏線や流れが独立しています。

つまり、琴里編は一旦物語が収束する章です。伏線の大回収と怒涛の展開が待っています。なので派手にやろうと思っています。

具体的には章の終わりで例外的な処理をしようと思っています。章完結までの五話くらいを毎日投稿でやろうと思っています。準備しているので待っててください。

12話:「光を目指して」に演出を加えました。良ければどうぞ。

毎回本編以外が長くてすみません。それではどうぞ。


生まれながらの邪悪

 あれからしばらく経って、士道と四糸乃が起きたらしい。一応、フラクシナスに向かった。

 僕は士道、七罪は四糸乃の方だ。両方様子を直接見ておきたいから別れることにした。

 士道はレストルームにいるらしい。琴里との会話が終わって間もないと聞いた。

 自動ドアを開くと、そこには士道と真那の二人がいた。これは想定外の相手だ。

「兄様、真那はラタトスクでお世話になることにしました。よろしくお願いします。」

 真那は犬のように士道にまとわりついている。真那は士道や琴里など、身内と認定した相手には露骨に好意を示す。

 逆もまた然り。部屋に入った僕を完全に無視して話を続けている。別に広い部屋じゃないのに。

「よろしくな、真那。」

 その空気を察して、士道は苦笑いをしている。僕と真那の仲を察しているから困っているのだろう。

 君の家族は良い人ばかりだけど、変な人でもある。頑張ってくれ。

 先に冷蔵庫へ持ってきたものを仕舞う。

 真那もいて丁度良かったかもしれない。真那にも聞きたいことがあるし。

「こほん。」

「ああ、いやがったんですか?」

 わざとらしく咳ばらいをすると、真那はようやく反応した。絶対気づいていた癖に。

「お前には少し聞きたいことがあるんだが。」

「何でいやがりますか?業務連絡なら聞いてやりますよ。」

 暗に『業務連絡以外で話しかけるな』と言っている。やっぱり、こいつとは仲良くできないようだ。

 引き抜きしたの僕なんだけど。

「DEMには何て言ってきたんだ?」

「DEMの日本支部に退職届を送りつけてやりましたよ。テメーの言う通り、ちょっと調べたら悪事の証拠も出てきやがりましたし。」

 狂三との決戦の少し前から僕は真那と交渉していた。DEMの悪事なんて吐いて捨てるほどある。

 転生前の知識無しでも、この一年ちょっとの間に得た情報だけで十分なくらいだ。いつどこで役に立つか分からないから、DEMの悪事の証拠は集めてある。

 真那を心変わりさせるのには十分な内容だった。駄目押しで狂三の情報を渡すと言ったら鞍替えした。

「あの社長、よくも真那のことを騙してくれやがりましたね。ただでは済まさねーですよ。」

 そして、真那自身もDEMの被害者だ。三十年前に捕らえられて記憶を消された上、実験台にされている。

 真那は世界最強に迫るほどの顕現装置(リアライザ)の使い手だ。しかし、それは魔力処理というドーピングによるもの。代償に寿命の大半を持っていかれている。

 真那は中学生の見た目ながら、後十年も生きられない。それなのに、本人の同意どころか周知すらしなかった。

 やはりDEMは滅ぶべきゴミみたいな企業だ。

「これから僕らはアイザック・ウェストコットを殺すために動く。覚悟はできているな。」

「当たりめーです。あの社長の首は真那が貰います。」

 真那は威勢良く言い放つ。正義感の強い奴だから、長い間、悪事を隠されていたことが腹に据えかねているのだろう。

 殺意を燃やす僕たち。それをよく思わない人がこの部屋にいる。

「なあ、そのウェストコットって奴も殺さないといけないのか?」

 当然、士道だ。嫌そうな顔をしている。

 でも、前のときのように反射的な否定はしない。士道も修羅場を越えて少し成長したから。

「士道さん、アイザック・ウェストコットは絶対に殺さないといけない世界のガンですよ。」

「……そこまで言うほどか?会ったことないから、分からないけど……人をそんなに言うなんて、よっぽどだぞ。」

 士道は事情を知らないし、力がないことを自覚した。狂三との戦いで、危険な相手がいることも知った。

 だから、士道は疑問の提起という、妥協案を取っている。悪くない成長だ。

「僕は士道さんが狂三を救うことには、どちらかと言うと賛成の立場です。救えるなら、是非救ってください。」

「え?」

 士道は呆けた顔をしている。唐突な話題の転換に驚いたようだ。おまけに、数日前と違うことを言っているから、そういう反応になるのは分かる。

「僕は安全策として、狂三には適切な対処をした方が良いと思っています。……でも、狂三は救われるべき人間です。僕は救う気がないけど、士道さんが救うのなら協力します。」

「お、おう。ありがとう。」

 士道は戸惑いながらも礼を言う。微妙に引かれている気もするけど、気にしないようにしよう。

「でも、アイザック・ウェストコットを生かすことには、絶対に反対です。……どうしてもと言うのなら、僕は士道さんの前に敵として立ち塞がりますよ。」

「それほどなのか?」

 士道はアイザック・ウェストコットを知らない。人間の底知れない闇を知らない。

 だから、そんなことを言えるのだ。

「兄様、こちらをご覧ください。」

 真那がパソコンを開いて士道に見せる。画面には設計図やそれに関する記述がずらりと並んでいる。

 それを見て真那の意図が分かったから説明を真那にパスする。そのデータは士道の意識を改めるのに丁度良い。

「これは?」

「DEMから奪ってきた()()の実験記録でいやがります。」

 士道の問いかけに真那は答える。真那もDEMの悪事の証拠を掴んできたようだ。

「俺、そんなもの読めないぞ。」

「概要だけで十分でいやがります。それで、あの社長のイカレ具合は伝わると思います。あの社長は何回死んでも償いきれないことをしていやがります。」

 真那はウェストコットへの怒りを露わにする。つい最近まで恩人だと思っていた相手をここまで言うのだ。何を見たのかは想像に難くない。

 士道は促されるままにデータを見る。最初は仕方なく見ていたけど、読み進めるにつれて士道の顔色が悪くなる。

 精霊を殺せる強力な兵器を作る、なんて優しい話ではない。倫理観を置き去りにした非人道的な話だ。

「兵器って、これ人体実験じゃないか!」

 士道の言う通り、これは人間を兵器の一部として扱った実験だ。素人の士道が見ても、大勢の人間が使い潰されていることが分かる。

「兄様のおっしゃる通りです。胸くそ悪いことに、DEMは兵器のため、人の脳を使用していやがります。」

「何のためにそんな酷いことを?」

 士道は人の業を知らな過ぎる。人体実験なんて顕現装置(リアライザ)が登場する前から人間の歴史で何度も行われてきた行為だ。

 技術を大きく発展させるために人体実験は有効な手段だ。現代の医学や生物学は大量の人体実験の上に築かれている。

 特に顕現装置(リアライザ)はそれが顕著だ。顕現装置(リアライザ)のコンセプトからしてそれは必然だ。

「兄様、顕現装置(リアライザ)がどういうものか、知っていやがりますか?」

「いや、凄い技術を使えるものとしか。街を一日で直したり、凄い兵器を作ったり。」

 士道の答えはかなり曖昧だ。まあ、まともな説明もされていないから仕方ない。

「正確には、コンピュータ上の演算結果を現実に再現する装置です。分かりやすく言うなら、魔術を科学で実現化したものでしょか。」

「な、なるほど。」

 士道の顔を見ると全然わかって無さそうだ。まだ、基礎中の基礎の説明なのだけれど。

 まあ、今回の話の本質はこの後だから、別に良いか。

「そして、顕現装置(リアライザ)は人間の脳を介して使用しやがるんです。」

「それくらいは琴里から聞いてる。愛も真那も頭に機械を埋め込んでいるんだろ。」

 士道は明らかに大雑把な知識を身に付けていることを自白した。

 もう少しちゃんとした説明をした方が良いだろうか?精霊と士道を全員集めて。

「つまり、顕現装置(リアライザ)の発展には、人間の脳が必要不可欠でいやがります。DEMの研究では、人間の脳を湯水のように使い捨てていやがります。」

「そんなことをするなんて……。」

 士道の考えは随分と甘い。顕現装置(リアライザ)は今までの常識を大きく覆す万能装置だ。

「人の欲望を甘く見たらいけませんよ。顕現装置(リアライザ)の為なら、多少の犠牲はやむなしと考える人間は少なくありません。」

顕現装置(リアライザ)ってそんなに大事か?大勢の人の命を奪うほどに」

 士道は一切納得していない。話は理解できても、受け入れることはできないといった所か。

「大事ですよ。少なくともそれをやった人間は、そう思っている。DEMの中だと、珍しくない意見ですよ。」

 活躍できる分野は戦闘に限らない。医学、工学、その他複数の分野を百年レベルで進歩させた。

 それほどまでに顕現装置(リアライザ)の存在は偉大だ。顕現装置(リアライザ)は良い意味でも悪い意味でも世界を変えてしまった。

「何とかする手段はないのか?人を犠牲にしなくても済むように。」

 士道は諦めずに考えている。アイザック・ウェストコットの考え方からして無駄だけど。

「アスガルド・エレクトロニクス、ラタトスクの顕現装置(リアライザ)は人間の脳なしでも使えます。でも、敵に態々情報提供しろって言うんですか?その先で何が起こると思います?」

「……っ!」

 士道は絶句した。DEMの技術の発展が、誰に牙を剥くのか思い至ったようだ。

「最近、DEMでも脳で制御せずとも動かせる顕現装置(リアライザ)が開発中という話を聞きやがりました。多少マシになるかもしれません。」

 士道に気を遣ったのか、真那は気休めの情報を出す。

「ああ、そうなのか。」

 真那の説明で思い出した。原作でそういう話があったな。優秀な魔術師(ウィザード)の脳を再現した顕現装置(リアライザ)。この時期に開発していたのか。

「とにかく、ウェストコットは既に大量の犠牲を出していますし、これからも出し続けます。」

「……。」

 士道は黙り込んでいる。

「まあ、本質はそこじゃありません。」

「え?」

 士道は先ほどとは別の意味で言葉を失った。

「狂三もDEMも目的のために大量の命を奪っている。そこに大きな違いはありません。問題はどんな感情でそれを行っているかです。」

「感情ってどういうことだよ?」

 多分、そのまま話題に入っても理解できないな。直近で見た人間と比較しながら、ウェストコットの異常性を説明しようか。

「士道さんは命を狙われていたとして、銃を持っていたらどうしますか?」

「どうって……銃で脅して引かせるとか?」

 士道は迷った上で、随分と甘い答えを出す。撃たないというのは想定外だった。でも、士道らしい答えだ。

「そんな甘いことはして欲しくないですが、まあ戸惑いますよね。人を怪我させたり、命を奪う行為は。」

「当たり前だろ。」

 士道は何を言っているんだと言わんばかりだ。それが世界の常識で、誰でもそう考えると思っていそうだ。

「狂三はどんな感情で命を奪っていると思いますか?」

「どうしてそんなことを聞くんだ?」

 話題が逸れているから不自然に思ったのだろう。

「良いから答えてください。狂三の本質が理解できないと、ウェストコットの問題は分かりませんよ。」

「……何か理由があって仕方なく、だと俺は思っている。狂三の分身体は……救いを求めていた。平和な生活に憧れていた。あれが狂三の本心だと、俺は信じている。」

 士道は記憶を探りながら、ゆっくり答える。脳裏には狂三の顔が浮かんでいるのだろう。若い狂三は救いを求めそうだな。

「あんな性格最悪な殺人狂の方を持つなんて。兄様はもう少し人を見る目を養った方が良いと思います。」

 真那はそんな士道に不満げだ。狂三嫌いな真那からしたら、兄が狂三のことを擁護するのは面白くないのだろう。

「僕は強ち間違ってないと思いますよ。狂三は本質的には悪人ではない。目的のため、長い年月をかけて歪んだだけ。そう思っています。」

 あくまで推測としておく。原作知識で知っているけど、それをそのまま明かしてはいけない。

 狂三の行動から導き出した体にする。

「だからこそ、狂三は救う余地が有ります。苦しみながら銃を握っている狂三は、頑張れば攻略できます。」

 狂三の復讐を成就させることも諦めさせることも難しい。でも、妥協点を見つけて解消することはできる。

 例えば、過去ではなく現在の崇宮澪を殺して終わりにするとか。

「あの戦闘狂がそんなセンチメンタルとは思えねーですけど。」

 真那はかなり懐疑的だ。

 言いたいことは分かる。狂三は戦闘や殺人を楽しんでいる節がある。

「人の心ってよく分からないものだぞ。普通の人でもストレスで別人みたいになってしまう。根は普通の女の子かもしれないぞ。」

 初めは、楽しいからやっているわけではないと思う。

 楽しいと()()()()()()()やってられない。そういった自己暗示を無意識に欠けていたのだと思う。

 それがいつしか心に染みつき、狂三の一部になってしまった。

 長い年月の中で歪み狂った化け物。それが狂三の正体だ。

 それでも信念だけは変わらず持ち続けている。驚嘆すべき精神力だ。

「それで、ウェストコットとどう繋がるんだよ?」

 士道は疑問に思っている。微妙に話が逸れたけど、ウェストコットの比較対象は揃った。これでウェスコットの異常性がわかりやすくなった。

「ウェストコットは嫌で殺しているわけではないってことですよ。ウェストコットは笑みを浮かべて、殺人や拷問をするような奴です。人の命を使い捨てることを推奨しているんですよ。」

「な!?そんな人間がいるのかよ?」

 士道は驚愕している。

 士道はつい最近まで平和な世界で生きてきた。武器を握る手は震えていて、引き金を引くときは歯を食いしばるものだと思っている。

 大半はそれで合っている。大半の兵士は身近なものを守るため、立ち上がった普通の人だ。でも例外はいる。

「世の中には生まれながらの邪悪がいるんですよ。存在自体が忌避される、狂三とは格の違う化け物が。」

 後天的に化け物になった狂三と違って、ウェストコットは先天的に化け物だった。精神が歪み切っていた。

 あいつは生まれた時から、魔王になる宿命を背負っていた。

「だから、殺さないといけないって言うのか?そういう人間は、生きてちゃいけないって言うのか?」

 士道の語気が強くなる。

 まあ、今の話だけだとウェストコットは、生まれた時から生きる資格がない。そう言っているように聞こえるだろう。

 それは十香の否定と重なる。生まれた時から莫大な力を持ち、世界の害となっていた精霊の否定と。

「そんなことは言ってませんよ。でも、先天的に問題がある人間は義務がある。社会に牙が向かないように気を配る義務が。それを怠るどころか、積極的に世界を滅ぼそうとしている。ウェストコットは死ななくてはいけません。」

 はっきりと断言する。これは譲れない。ウェストコットは死ななくてはいけない人間だ。

「どうしてもか?」

「士道さんも、ウェストコットと直接会ったら分かると思いますよ。あの男の気持ち悪さを。精霊の攻略を続けていたら、いずれ会うでしょうし。」

 僕自身、遠目に一回しか会ったことがない。でも、あの男の異様さはすぐに分かった。

 あの人の皮を被った化け物の匂い。()()()()嫌悪感を覚えた。

 僕はあいつになり得た。好きになった人から簡単に影響される僕は簡単に邪悪になれる。

「……俺は死ななくちゃいけない人間がいるなんて思えない。」

「それが世界の害にしかならない存在だとしてもですか?」

 世界にはどうしようもない人間がいる。たった一人のため、他の人間を全て差し出すような人間が。

「そんなことを言い始めたら、俺は精霊を誰一人救えない。十香も四糸乃も最初は世界から否定されていた。でも、ラタトスクの援助を受けて普通に生活できるようになった。」

「それは士道さんが霊力という一番の問題をほとんど取り除いたからです。ウェストコットの問題は人間性にあるから、取り除くなんて不可能ですよ。」

 精霊とウェスコットでは問題の種類が違う。あれと共存するためには人間性を変えさせないといけない。

「……同じじゃないか?」

「……意味が分かりません。」

 僕の考えと全く逆のことを言う。何が同じだというのか。

 一周回って興味が出た。主人公の論理を聞かせと貰おう。

「確かに人間性を大きく変えることはできない。でも、人に迷惑をかけないよう、調整できるんじゃないか?狂三だって、普段は問題なく学校に通っていた。話し合って妥協点を見つけることができるなら、ウェストコットとも共存できるんじゃないか?」

 随分と世の中を舐め切った甘ったるい理論だ。でも、嫌いになれない。

 僕は理想論が大嫌いだったんだけどな。どうしてこんな気持ちになっているのだろうか?

「ウェスコットにそんな甘い理論を適用できるとは思えません。……でも、もう士道さんを説得することは諦めました。僕は好きにするので、士道さんも好きにしてください。」

「分かった。好きにさせて貰う。」

 士道は強い意志を持って答える。ただ振り回されるだけの一般人から主人公に成長しつつある。

 想像以上の成長速度だ。力は未だゼロに等しいけど、精神が成長している。

 これなら崇宮澪をどうにかできるかもしれない。

 僕は五河士道に期待している。僕の望む未来に連れて行ってくれると。

 

♦♦♦

 

 この後、議題を琴里にして士道の内心を聞いた。予想通り、琴里を攻略することに戸惑いがあった。

 士道が情けないって言うより、琴里が変なんだよ。義理とはいえ、兄に本気の恋愛感情を抱いているのだから。

「琴里を攻略なんてできるのか?」

 士道は意味のない悩みで頭を抱えている。

 琴里の好感度を封印可能領域に持っていけるか不安なのだろう。失敗すれば琴里を失うかもしれないから。

 琴里の好感度なんて常に限界なんだから。稼ぐ必要なんて別にないのに。

 少し助け舟を出すか。無駄に雰囲気を悪くされても困るし。

「士道さん、『琴里を助けなくてはいけない』って考えに囚われ過ぎじゃないですか?」

「え?」

 士道は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。完全に想像の外の意見だったようだ。

「琴里の好感度を上げたいのなら、琴里を楽しませるためにデートをしないといけませんよ。義務感でデートされて、喜ぶ人なんていません。」

 好感度を上げると言うか、琴里を満足させるためのデートだけど。まあ、重要なところは変わらない。

「相手のことだけ考えて、相手を喜ばせるために全力を尽くす。デートを成功させる方法を僕はそれしか知りません。」

 七罪とデートするときはただ七罪のことだけ考えた。秘密を見逃して貰うって言う目的はあった。

 でも、そんなことをデート中に考えていたら駄目だ。デート相手のことで頭をいっぱいにしないと。

「鳶一愛の癖に良いことを言うじゃないですか。兄様は考え過ぎでいやがります。もっとスパッといきましょう。」

 真那がうんうんと頷きながら主張する。恋愛経験はないだろうけど、女心は分かるからな。

 琴里とタイプが違うから、真那の意見を鵜呑みにしてはいけないけど。

「……そうだな。琴里とデートするのに、琴里のことが見えてなかったよ。」

 士道の顔に迷いはまだ残っている。でも、さっきよりいい顔になった。

「士道さん、もう一つおまけです。血縁のない実子と養子の恋愛関係は何一つ問題ありません。互いにその意志さえあれば、結婚すら可能です。そのことをお忘れなく。」

「……?分かったよ。」

 あの顔は何もわかってないな。琴里は大変そうだ。

 あとは何とかしてくれるだろう。五河士道は主人公なのだから。




愛君の思想は設定として固まっています。でも、どういう話で書くかはその場の流れで決めています。まさか、真那が補助に入るとは思っていませんでした。

さて今回の裏話。
狂三編の最後の方で愛君は真那のスカウトに行っていました。愛君はなるべく情報は出したくないと思っていました。なのでDEMの悪事を伝えて、寝返らせる方向で考えていました。

あと少しで落とせそうって所で、狂三が《ノルン》を壊しました。結構本気で愛君は怒りました。そこで崇宮澪という名前を避けて、狂三の情報をほとんど渡す条件を提示しました。DEM離脱に傾いていた真那は、人参をぶら下げられてあっさり寝返りました。
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