考察をして頂けるのは大歓迎なのですが、突っ込んだ考察はハーメルンのメッセージかXのDMでして頂ければと思います。いずれ、誰でも見られる感想欄で話してはいけない内容が出てきそうなので。
秘匿の会話なら、もう少し突っ込んだ回答ができると思います。判断はお任せしますので、よろしければ対応お願いいたします。
そして、今回はどうして前編になっているのでしょうか?単純に筆が乗って長くなり過ぎたからですね。それではどうぞ。
色々あって今日はもう疲れた。だから、早めに寝ることにした。
二人ともお風呂は済ませている。後は寝るだけだ。
二十時にもなっていないから早い気もするけど、疲れたからそれで良いかと思っている。
七罪は髪をまとめている。あの長さでそのまま寝ることはできないから、女の子は大変だ。
ぼーっと七罪を見ていると、スマホの通知が鳴る。
「……明日にしようかな。」
疲れて寝ていたことにしたいな。今から何か対応するのは面倒だ。
「ちゃんと出なさい。緊急の用事かもしれないでしょ」
「……はい。」
七罪が半目になり、呆れたように息を吐いた。完全におっしゃる通りだから、素直に言うことを聞いた。
僕は大人しく通知を開いて内容を確認した。
「………………。」
通知の内容を見て、寝る準備に入っていた頭が勝手に動き始める。僕にとって、都合の良い展開にできると思えたから。
どうすれば、望み通りの展開に持っていける?七罪の反論を予測して対策を考えた。
「なあ、七罪。」
「何?」
七罪は無警戒に返事をする。僕が悪巧みをしていたことに、気づいていないようだ。
「琴里と士道のデート先が、オーシャンパークに決まったらしい。」
「プールと遊園地を合体させたようなあれね。良いと思うわよ。変に気取った場所じゃないのが、特に。」
七罪はデート先に好印象を抱いたようだ。声色が少し明るい。
士道はいいデート先を選ぶだけの、引き出しがまだない。ラタトスクメンバーの大半は変に拘り過ぎて、琴里が引くような場所を選ぶ。
だから、令音さんが誘導したのではないだろうか?まともなバランス感覚を持っているのは、あの人だけだ。
「それで、士道さんの訓練のために、明日は十香さんと四糸乃の水着を選びに行くって。」
「……どうしてそうなるわけ?意味が分からないんだけど。」
七罪はジト目でこっちを見ている。僕を責めてもらっても、困る。
「士道さんがデート本番で目移りしないように、十香さんたちで目を肥やすって。」
「……本当にラタトスクって、変な組織よね。上から下まで、誰一人まともな奴がいないじゃない。」
七罪は訓練の内容に呆れを示す。理解はしたけど、一切納得できなかったようだ。
「まあ、良いんじゃない。いずれ夏が来るし、水着を買っておいても。」
「そうかもしれないわね。水着があると、行き先のバリエーションは広がるし。好きにすればいいと思うわよ。」
七罪は完全に他人事で、どうでも良さそうに聞き流す。四糸乃もいるのにこの反応だとは思わなかった。
「それでさ、一緒に……。」
「嫌よ。」
七罪は僕の言葉を遮って宣言した。
「まだ、最後まで言ってないんだけど。」
「どうせ、一緒に水着を選びに行こうとか言うんでしょ。嫌よ。自前でいくらでも用意できるのに、どうしてわざわざ買いに行かなきゃいけないのよ。」
七罪は不機嫌そうにそう言った。興味なさそうなのは、関わりたくなかったということか。
精霊は、霊力を使って好きな服を用意することができる。十香や四糸乃と違って、封印されていない七罪は可能だ。
だから、無駄なことにお金と時間を費やすことを嫌がっている。――わけじゃないだろう。
「今でも可愛いものを着ることには抵抗があるのか?」
「………………。」
七罪は答えない。でも、返事は必要ない。尖らせた唇が物語っている。
「水着を買いに行かないか?」
「嫌よ、必要ないのに。」
七罪は頑なに断る。だったら、論理的に崩していこうじゃないか。
「服を作るのには霊力を使うじゃないか。いざというときのために霊力は温存しておきたいし、ASTやDEMに見つかるリスクも避けたい。市販の水着を買っておいた方が良くないか?」
断られることなんて想定済みだ。どれだけ一緒にいたと思っているのだ。言い分くらい、先に用意している。
「……愛、それ本音?」
「勿論、違うけど。僕はただ、七罪の色々な水着を着ている姿が見たいだけ。」
七罪は僕が建前を言っていることに気づいたみたいだ。そして、僕も隠す気はない。
「あっさり認めたわね。悪びれもしないで。」
「隠してもややこしくなるだけだし。それに、さっき言った理由も嘘ではないよ。」
「……ちっ、好き勝手言っている癖に、言い分自体はまともなのが性質悪いわね。」
七罪は舌打ちをしながら、分の悪さを認識する。
こっちは七罪の反論を考えた上で、勝利までの道筋を考えたのだ。僕の想定外の要素を出ない限り、七罪に勝ちはない。
「それでどうする?反論がないなら、明日は一緒に水着選びへ行くけど。」
「……どうしてこんな絶壁の水着を見て喜ぶのよ?」
七罪は自身の胸元に視線を下ろす。そこには、精霊の中で最低値を誇るバストが存在する。谷間どころか影すら生まれない、完全な平坦さだ。
コンプレックスを抱えた身体の水着姿を見られたくない。それが七罪の本音だろう。
「ふっ、箸にも棒にもかからないとはこのことね。」
七罪は自嘲する。
随分と上手いことを言うな。確かに七罪の胸には、何も引っかからないだろう。
肯定したら殴られそうだから、反応はしない。話題を別の方向にもっていこう。
「正直、大きいとか小さいとかあんまり興味ないし。胸がなくても七罪は十分可愛いし。そもそも、七罪の恥ずかしがってる顔が見られたらそれで特に問題無いし。」
未だに変な低評価をしているから、僕の認識で塗り替えたらいい。七罪はこれで良いのだ。
「あーもう、好き勝手言ってくれちゃって!よくもまあ、本人の前でそれを言えるわね!あんたほど厚顔無恥な奴、見たことないわよ!」
七罪は顔を赤らめて叫んでいる。やっぱり、七罪は可愛いなあ。
「どうして、あの会話と同じ日に、そんなこと言えるんだか……。」
「あの会話?」
七罪が小さく呟いた言葉の断片を、聞き取ることができた。あの会話ってどの会話だ?
今日一日の行動を振り返ってみる。今日は朝から琴里の所に行って……。
「ああ、琴里のデートの話か。」
記憶を探ってようやく思い出す。琴里の恋の話したのも、そう言えば今日だった。
色々と重い話をしていたから、同じ日だと微妙に忘れていた。
「……そうよ。」
七罪は微妙な表情で僕の言葉を肯定する。流石にあの会話と同じにこの会話をするのは、雰囲気の落差が激しかったか。
「それで、行くの?」
話を戻して、水着を買いに行くか確認する。ここまで追い詰めたら、大丈夫だろう。
「仕方ないわね。確かに水着を買うことに意味はあるみたいだし。行けばいいんでしょ、行けば。」
渋々ながら、七罪は行くことを決めた。論戦で負けたから、諦めたようだ。
でもどうせなら、積極的に行く姿勢を見せて欲しいな。だから、おまけ情報を追加しよう。
「そう言えば原作での展開なんだけど。」
「今更何よ。」
七罪は疲れた顔で話を聞いている。もう敗北したから、これ以上の話はどうでも良さそうだ。
でも、中身を聞いて同じ反応をできるかな?
「四糸乃って、よしのんを左手につけているよね。」
「……?そうね、それがどうかしたの?」
七罪は不思議そうに聞く。四糸乃は左手を常によしのんのスペースとしている。
そんなこと、四糸乃を知っている人なら、誰でも知っている事実だ。どうして言及するのか不思議なのだろう。
「四糸乃って水着を上手く着られないんだよ。左手を上手く使えないから。」
「あっ!」
七罪は気づいたようだ。僕が何を言いたいのか。
「中途半端に水着を着て、四糸乃が半裸姿になるんだけど、士道に見られてたよ。」
「おらぁー、絶対に行くわよ!大天使四糸乃のお身体を、士道ごときに晒して良いわけないでしょうが!そんなことしたら、士道は明日から『士織ちゃん』として女の人生を歩んで貰うわ!」
どうやら、やる気になってくれたようである。やり過ぎなくらいに。
七罪は原作知識を得る中で士道の女装姿、『士織ちゃん』を知っている。七罪がやるなら、女装では済まないだろうけど。
何度目か分からない合掌を、五河家に向けた。士道が士織ちゃんになっても、精霊たちに愛してもらえるといいね。
♦♦♦
そして、日は変わった。僕たちは水着を買いに行くため、集合場所に向かった。
目的地では士道が待っていた。独り言を話しているように見えるから、インカムでフラクシナスと通信してるのだろう。相手は令音さんかな?
「おはようごさいます、士道さん。」
おはようと言うには遅い時間だけど、別に良いだろう。
「おはよう、愛。……どうして七罪はそんなに不機嫌なんだ?」
士道は隣の七罪を見て困惑している。七罪は既に警戒態勢だ。
身体の体積のかなりの部分を占める癖っ毛を、目一杯震わせて威嚇している。猫みたいだ。
「士道。四糸乃に何かしたら、もぐわよ。」
「何を⁉俺何かした⁉何もしてないよな!」
七罪の発言に、士道は悲鳴を上げた。
七罪は原作の展開から、士道を警戒している。起こっていない出来事で警戒されている士道は、困惑しかないだろう。
「シドー!」
「やっはー、おっまたせー。」
七罪と士道の微笑ましい(?)会話を聞いていると、声が聞こえた。振り返ると、淡い色のキャミソールとスカートを纏った十香と、サスペンダースカート姿の四糸乃が立っていた。
「おはようございます、十香さん、四糸乃。」
「おはようだぞ、愛。」
「おはようございます、愛さん。」
対照的な二人と挨拶を交わす。
「愛君と七罪ちゃんも今日は一緒なの?」
よしのんが楽しそうな声で聞いている。このウサギは何か悪巧みしているな。
「そうだよ。僕が説得して連れてきた。」
「あらあら、だったら七罪ちゃんには可愛い水着を選んであげないとね。」
「そっちもな。四糸乃に似合いそうなのがあったら教えるよ。」
僕とよしのんは満足げにうなずき合う。小さな手を取って固い握手をする。
こころなしか、パペットの変わらない表情がにやりと笑って見える。僕も悪い顔をしているだろう。
やっぱり、僕とよしのんは気が合う。僕とよしのんの関係を一言で表すなら悪友だ。
四糸乃よりも微妙に精神年齢が高いから、話が通じやすい。そして、互いにいい子ではない。
そして何より、互いの相棒を可愛くするために協力できる。話してみるまで、こんなに気が合うとは思わなかった。
「それじゃあ行きましょうか。四糸乃、七罪と手をつないでくれないか?」
『フシャー』という鳴き声がしそうな勢いの七罪には、リードが必要だろう。僕でもいいけど、多分四糸乃の方が強い抑止力になる。
「わかり……ました。七罪さん、手を……つなぎませんか?」
四糸乃は控えめに手を差し出す。純粋な微笑みは悪しき考えを浄化するようだ。
「いや、そんな、私みたいなノミ以下の存在が……恐れ多いというか。」
七罪はしどろもどろになりながら断ろうとする。先ほどの士道への警戒など忘れてしまったかのようだ。
「私と手を握るのは、嫌……ですか?」
「滅相もございません。ありがたく御手を握らせていただきます。」
四糸乃の不安そうな顔を見て、七罪は迅速に手を握った。
今の一瞬、見えなかったぞ。本当にステータス最弱クラスの精霊か?
「七罪ちゃん、本当に面白いね~。」
「ーーっ!」
よしのんは七罪のことを楽しそうに見ている。対して、七罪は顔を赤らめて、少し俯いている。
恥ずかしがってるな。四糸乃と絡むと面白いことになるから、見ていて楽しい。
「じゃあ右手は僕が貰おうか。」
空いている七罪の右手を握る。こんな機会を逃す手はない。
「私、今日死ぬんじゃないかしら。」
七罪の変な言葉が聞こえる。こんなことで大げさな反応をして貰っては困る。
これを日常にするつもりなのだから。
「シドー、私たちも手をつなぐぞ」
「はいはい。」
十香も僕たちを見て、士道と手をつなぎたがった。士道はそれを受け入れて、手を握った。
僕たちは仲良く手をつないで水着コーナーに向かった。
♦♦♦
「そういえば、シドー。」
水着コーナーに辿り着いてから十香が思い出したように発言した。
「ん、なんだ?」
「水着とは一体何なのだ?」
「え?」
士道は目を丸くして聞き返した。十香の世間知らずっぷりが炸裂した。
「十香って本当に何も知らないのね。」
ようやく手を離した七罪は呆れながら十香を見た。
「それが十香ちゃんの武器じゃな~い?」
「ふむ、確かに欠点もあそこまで振り切ると武器になるか。」
よしのんは独自の視点から十香を評価する。僕もその考えに同調する。
十香は本当の意味で精霊だ。純粋に霊力から生まれた存在だから、これまで人間として生きたことがない。
身体が大きいだけで、内面は赤子同然だ。本当に何も知らない。
それ故に、十香の純粋さは個性になっている。何の知識も持たないから、士道の好きに染め上げることができる。
ある意味、最高のセールスポイントだ。
「負けま……せん。」
四糸乃が珍しく瞳に強い意志を宿している。僕とよしのんが十香を褒めたから、闘志に火が点いたみたいだ。
「四糸乃のような大天使が負ける筈ないわ。四糸乃は見た目が清楚で守ってあげたくなる可愛さがあって、おまけに心まで綺麗っていう最高の美少女なんだもの。四糸乃の水着姿を見たら、士道なんて一瞬で全財産を差し出して、犬のように媚びへつらいながら、『俺を四糸乃様の奴隷にしてください』というに決まっているわ。だって、四糸乃はこんなに最強の美少女なんだもの。」
七罪の、四糸乃を賛美する言葉が火を噴いた。長文で四糸乃の素晴らしさを語り尽くそうとしている。これだけ喋っているのに、まだ足りないと顔に書いてある。
完全に暴走しているな。もうちょっと周りを見た方がいいんじゃないだろうか。
「ありがとう……ございます。」
四糸乃は困ったような嬉しいような顔をしながら、七罪にお礼を言った。その顔を見て七罪は満足そうに頷いた。
七罪ってやっぱり変わってるよな。そこが良いんだけど。
士道が十香に説明している横で、僕らは楽しく談笑していた。
最近シリアス書きすぎたからギャグを書こうとしました。前編はちゃんとギャグですね。後編は糖分が増えます。
さて裏話をしましょう。今回は愛君とよしのんについて。
本人が言及している通り、この二人は相性がいいです。二人で頻繁に悪巧みしています。一番多い話題が七罪と四糸乃がどうしたら可愛くなるか。
四糸乃がいないとよしのんは成立しないし、わざわざ四糸乃と愛君が二人きりになる理由もない。だから、基本三人+一匹の状況です。それで、遠慮なく互いの相棒を褒め称えます。七罪と四糸乃にとってはいい羞恥プレイですね。