ヒロインは七罪   作:羽国

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今回の話と第六話:七罪とのデート、第十二話:精霊たちのメイクアップで出てきた服のデザインはAIで画像生成しています。キャラが着ている画像じゃなくて、服単体の画像です。あくまで脳内イメージの補強のための代物です。

pixivで公開しているので興味があればどうぞ。今回の話で登場した水着のリンクはこちらに。他のリンクも各話のあとがきに載せました。
https://www.pixiv.net/artworks/127557412


さて、こいつら作者のいないところで付き合い始めたんだろうか?そんなふざけたことを思ってしまうような話になりました。それではどうぞ。


水着選び 後編

 僕たちは士道陣営と別れて水着を選んでいる。十香と四糸乃はデート権をかけて、士道をドキドキさせる勝負をするみたいだ。

 士道たちに何かあっても大丈夫なように、不可視化した衛星(サテライト)で観察している。

 四糸乃に何かあったら、七罪が飛んでいくだろう。それこそ水着のままでも。

「愛、着替えたわよ。」

 試着室のカーテンの向こうから、七罪の声が聞こえてきた。水着を選んで着替えたようだ。どんな水着を選んだかは、見てからのお楽しみだ。

「ちょっと待って。」

「何よ?」

 カーテンを開けようとする七罪を制止する。

「うーん、どっちがいいかな?」

「一体何を悩んでるのよ。良い水着でもあったの?」

 七罪は僕の発言を聞いて、水着を選んでいると誤解したようだ。もっと大事なことだ。

「七罪の水着姿を独占するか。それとも、皆に見て貰って七罪の反応を楽しむか。どっちがいいか考えてる。」

 正直七罪の水着姿を士道に見せたくない。十香や四糸乃に見せたら、士道に見せることになってしまう。だから、僕だけで独占したい。

 でも、それはそれとして皆に見られて、恥ずかしがっている七罪も捨てがたい。悩ましい問題だ。

「あんた、本当は馬鹿じゃないの?」

 見えないけれど、半目で見ていそうな声色だ。変なこと言った自覚はあるけど、そこまで言われるほどかな?

 数十秒真剣に考えた結果、大半は僕だけ見て、良さそうなものを全員に見せることにした。

 七罪は疲れた声で了承してくれた。

「どうよ。」

 カーテンを開けて七罪が姿を見せる。

 七罪が選んだのは、上下つながっているタイプの紺色の水着だ。それだけならまだいい。しかし、肌色がほぼない。

 ハイネックな上に背中も完全に覆われている。最早、ウェットスーツに近い。

「逃げたな。」

「何よ!私みたいな胸も尻もない女もどきが、可愛いフリフリした水着を着てもどうせ似合わないんだから!初めからイロモノ枠に収まって、ピエロみたいに笑いを取りに行った方がまだ意味があるのよ。」

 七罪はここが公共の場だということも忘れて叫んでいる。相変わらずのネガティブ思考だ。

 さて、どうするか?

「つまり、目立った上に大勢から笑われたいと?」

「………………。」

 七罪は黙ったままだ。でも、分かっているんだろう。自分の選んだ水着が一周回って目立つと。

 地味過ぎて逆に振り返ってしまうようなデザインだ。プールでウェットスーツを見たら僕は二度見する。

「ほどほどのデザインにしないか?」

「じゃあ、愛が選びなさいよ。」

 七罪は膨れっ面でそう言う。僕に委ねようというのか。

「とんでもないデザインを持って来るかもしれないぞ。」

「買うかどうかはともかく、着て見せるくらいはしてあげるわ。」

 七罪は随分と心を揺さぶることを言う。そんなことを言うなら、おふざけなしで七罪に似合う水着を選ばないといけない。

 派手なものは嫌がるだろう。でも、女の子らしく可愛い要素は取り入れたい。あと七罪らしい感じにもしたいな。

 僕は店中ひっくり返す勢いで探した結果、良さそうなものをいくつか見つけた。

「これらを着てみて。」

「……へぇ~、愛はこういうのが好みなんだ?なるほどねぇ~。」

 七罪は僕の選んだ水着を受け取って、楽しそうに見つめた。表情には嗜虐心が混じっている。

 そこまでじっくり見られると、少し恥ずかしい。自分の趣味を晒してるも同然じゃないか。

 三つもあるから傾向を読むには十分だ。

「……早く着てみてよ。」

「はいはい、分かったわよ。」

 悪戯っぽい表情をしながら、七罪は試着室に入った。どれから着るのか、楽しみだ。

 

 少し経ってから、カーテンが開かれた。

「これって、私に選んだの?大丈夫?四糸乃と間違えてない?」

 七罪は心配そうに問いかける。

 七罪が着ているのは、セパレートタイプの水色の水着だ。

 ノーマルストラップのビキニトップに、フリルスカートのついたボトムスを合わせている。

 フリルには白い花柄のレースがあしらわれている。女の子らしい可愛さと清楚さを両立させたデザインだ。

「確かに、四糸乃をイメージしたデザインではある。」

「だったら、なんで……。」

 七罪は少し不満そうにしている。別の子に合わせた水着を持ってきたら、そりゃ嫌だろう。

「四糸乃と合わせたコーデにしたらいいと思って。逆に七罪をイメージした水着もあったんだ。」

 僕は近くに持って来ていた水着を見せる。デザインの基本は一緒だけど、ベースがエメラルドグリーン、レースが星になっている。

「これを四糸乃に渡して、互いのイメージの水着にしたを着るのってどう?」

 四糸乃と七罪のスイッチコーデ。一発で仲良しなことをアピールできる。思いついたとき、最高だと思った。

「…………………………。あり得ないわ。そんなもの、想像することすら……。」

 七罪は随分長い沈黙の後に否定した。全く感情を隠せていないぞ。

「今の間は何だ。絶対、悩んで『恐れ多い』とか思っただろ。」

「仕方ないじゃない。四糸乃のような優しい天使は私ごとき塵に等しい存在にさえ優しくしてくれるわ。きっと、提案も快く引き受けてくれるでしょうね。でも、それに甘えて良いわけないじゃない。四糸乃は誰もが讃える大天使よ。四糸乃のために教会を建てて、全人類が崇め奉るべきなのよ。ええ、それがいいわ。琴里に言って建てさせようじゃない。」

 また、暴走している。七罪が四糸乃に向ける愛ってこんなに重かったっけ?

 原作の最後の方ならわかるけど、まだ六月だぞ。一ヶ月くらいでだいぶ進化(?)しているんだけど。

「戻ってこい、七罪。分かったから。四糸乃には言わないから。」

「ふん、分かれば良いのよ。」

 七罪はぶっきらぼうに言った。本当に素直じゃないな。

 よしのんに言おう。四糸乃には言わないから、嘘は言ってないよ。

 

「これが一番大人しいわね。」

 次の水着を着た七罪が姿を見せた。着ているのはスポーティな水着だ。黒地に白いラインが入っている。

「可愛いのが良いけど、そればっかりだと飽きるだろ。甘味を連続して食べるときは、酸味を挟むといいんだよ。」

 メッシュ素材にして、傾向を変えてみた。可愛いだけだと面白くないから。

 それでもスカート型にしたり、胸の中心にハートのワンポイントがあったりと、女の子らしさは忘れていない。

「私はこれ結構気に入ったわ。目立たず、背景になれそうだもの。」

「……そうか?十分可愛いと思うぞ。」

 確かに先ほどのデザインと違って、可愛らしさは抑えられている。主張はだいぶ控えめだ。

 でも元の素材がいいから、全体的な仕上がりは悪くない。注目されると思うんだけど。

「愛の評価はその他大勢の評価とは別にしないと。愛の評価はそれはそれで大事だけど、一般的な感覚とはかけ離れているもの。」

 七罪は僕を軽くあしらう。僕の感覚ってそこまでずれてる?

「七罪も大概だと思うけど。」

「あんたよりはマシよ。」

 不毛な争いは勝者を決めることができずに終わった。

 

「これは私には似合わないでしょ。」

 七罪は恥ずかしそうにしている。別に露出が極端に多いわけではない。単純に全力で可愛い方向に持って行っただけだ。

 基本コンセプトは甘ロリ風プリンセススタイルだ。ピンクの下地に沢山のフリルとリボンをあしらっている。

 スカートの三段レースがピンク、白、紫と重なっていて豪華だ。両肩にはコサージュが乗っていて、これでもかというほど要素盛り盛りだ。

「似合わないと思ったら、持ってきてないけど。」

「じゃあ、実際に着ているところを見てみてどうなのよ?イメージと違ったんじゃないの?」

 七罪は口を尖らせながら変なことを言う。まだ自分の可愛さが分かっていないのか。これは教育しないといけない。

「全く、七罪は何も分かっていないな。火力は正義だ。とにかく、可愛い要素を盛りに盛って、最大火力を叩き出す。これが最高なんじゃないか。

 確かにその水着は全力で媚びている。下手な子が着ると、着られて浮いてしまうほどに。

 でも、七罪という素材があるなら話は別だ。確かに七罪には、十香さんや四糸乃みたいな分かりやすい主張はない。

 でも、いろいろ飾り立てても、映えるだけの素材の強さがある。顔はちゃんと可愛らしく整っているからその水着の魅力をちゃんと活かせている。

 ピンク系は七罪に合わないと思うかもしれない。でも、七罪が普段は使わない色だからこそ、ギャップができて、新鮮な刺激を出すことができている。

 何より可愛い水着を着ていると自覚してるからこそ、七罪の恥ずかしがる表情が見られる。『自分がこんなの着ていいんだろうか』と思っているその内心こそ最高だ。」

「~~~っ!公衆の面前で、そんな恥ずかしいこと言ってるんじゃないわよ!」

 七罪の拳が僕の頭に振り下ろされた。また、暴走していたか。

 

 そうして僕の選んだ水着は一通り全部試着した。正直、大分満足した。

「それで、愛はどれが一番いいと思ったの?」

 七罪は僕の感想を聞いてくる。元々そういう話だったのに、流れで甲乙つけていなかった。

「……どうせなら、皆にも見て貰わない?僕の評価が信じられないなら、他の人の意見も聞いてみない?」

「私はあんたの意見を聞きたいんだけど。」

 七罪は真面目な顔で僕を見る。一般的じゃない僕の意見が大事なようだ。

「大丈夫。後で教えてあげるから。」

「……分かったわ。」

 僕の心は決まっている。でも、どうせなら四糸乃たちの意見も聞いてみたい。

「皆に見せるなら、また着ないといけなんだけど。面倒ね。」

 七罪はうんざりした表情で言っている。私服に着替えたばかりなのに、水着を再度着るのは嫌なのだろう。

「それは問題ない。写真があるから。」

「何ですって?」

 僕は胸ポケットからボールペンのようなものを取り出す。中からメモリを取り出してスマホと接続する。

 スマホの画面には大量の写真が表示される。今日、撮影した写真が。

「前から思ってたんだよね。もっと手軽に七罪の記録ができないかなって。姉さんに仕込まれたから()()()()技術はあるけど、カメラやスマホを構えてたら変だし。でも、仕込みカメラとかはあまり画質が良くないし。」

 姉さんに教わったことで、好きな人の記録の素晴らしさを知った。確かな技術と高性能なカメラを使って撮った写真は価値がある。

 無論本物の方が素晴らしいけど、写真はどれだけ見ても顔を背けない。これはこれで趣がある。

「それで、ラタトスクに頼んでたんだよね。顕現装置(リアライザ)を使って、高性能化と小型化を両立したカメラ。これなら、周囲の人に不自然に思われずに、七罪の高画質な写真を撮ることができる。」

 スマホのカメラなんかじゃ話にならない。市販の小型カメラなら悪くないけど、どうせならもうちょっと本気を出したい。

 そこで、全力で手を尽くした。元々、顕現装置(リアライザ)の設計的な部分は知っているから、考えるのはそこまで手間がかからなかった。

 設計と琴里への提案合わせて、一週間くらいだろうか。その後の権利的な部分の方が、時間を持っていかれた。

「……もう、何から突っ込んでいいか分からないわ。せめて、撮影許可くらい取りなさい。」

 七罪は諦めた表情で僕を見ている。やり過ぎたかな?

「じゃあ、七罪撮っていい?」

「……好きにしなさい。」

 七罪は一切抵抗することなく受け入れた。それでは遠慮なく取らせてもらうとしよう。

 僕は早速七罪の呆れた表情を撮影した。

「あんたって鳶一折紙の弟ね。」

「何をいまさら。」

 僕は姉さんとの血のつながりを感じることが結構ある。原作の行動を思い出すと不安になることもある。

 でも、異物である僕が姉さんと確かなつながりがあって、嬉しく思っている。そっちの感情の方が大きい。

 

♦♦♦

 

「おおー、可愛いではないか。」

 十香は口を開けて七罪の写真を見ている。嘘を吐けない十香の、純粋な感想は破壊力が高い。

「どれも、似合っていると……思います。」

「七罪ちゃんも、なかなかじゃない。四糸乃には負けるけど。」

 四糸乃とよしのんが続けて高評価を下す。よしのんが変な負け惜しみをしているけど。

「とても可愛いじゃないか。」

 士道も同じように流れに乗る。

 士道に見せるのは微妙にもやっとしたけど、どうせ見せることになるのだ。寛大な対応をしよう。

「……。」

 七罪は顔を背けながら感想を聞いている。顔が赤くなっていて、可愛い。

「どれが一番いいと思いますか?」

 皆に見せたのはどれが一番いいと思うか聞くためだ。意見を聞かせて貰おう。

「私はこれがいいと思うぞ。なんだか、かっこいいではないか。」

 十香は白と黒のスポーティな水着を選ぶ。クールなデザインが十香の琴線に触れたようだ。

「私は、これがいいと思います。」

 四糸乃は水色のセパレートを選ぶ。

 僕はよしのんにアイコンタクトを送る。よしのんは視力がない癖に、アイコンタクトに反応した。

 大丈夫だ。意図は伝わっている。

 衛星(サテライト)なら、水着一着と音声メッセージを送り届けるくらい簡単だ。

 七罪と四糸乃のペアコーデ。よしのんが協力したのは言うまでもない。

「俺はこれがいいと思うな。確かに七罪にしては珍しいデザインだけど、似合っていたと思う。」

 士道はピンクのプリンセスフリルを選んだ。これが一番わかりやすい魅力がある。男の士道が選ぶのは妥当だ。

「……割れたわね。」

 七罪は腕を組みながら確認した。三人が三人とも別の水着をいいと言った。完全に意見が割れている。

「ということは、どうするんだ?」

 士道が疑問を投げる。このままでは決まらないと思ったのだろう。

「まだ、愛君の意見を聞いてないじゃな~い。」

「あ、そうか。」

 よしのんの言葉で、士道はようやく僕のことを思い出したようだ。

「それで、どうなのよ?私は初めからあんたの意見を聞いてるんだけど。」

 七罪が僕に鋭い視線を送る。結局、最終決定は僕に委ねられた。

 僕の意見は初めから決まっている。三人の意見が割れたのなら丁度良い。

「三つ全部買いましょう。そこまで高いものじゃないですし。それくらい喜んで出しますよ。」

 手を軽く叩いて自分の意見を述べる。最初からそうするつもりだった。

「……だったら、どうして士道たちの意見を聞いたのよ?」

 七罪は半目でジトっとした視線を送る。とても心地いい。

「言ったろ。僕の意見を信じられないなら、他の人の意見を聞いた方がいいって。一般的な意見としても七罪は可愛い。分かった?」

「~~~っ!」

 七罪は凄い表情をしている。読み取れる感情は怒りと羞恥。それに少しの喜び。

 感情に振り回されて何も言えなくなっている。反論がないってことは僕の勝ちでいいかな?

「そもそも、全部僕が持ってきたんだから、全部七罪に似合う最高の水着だと思っているに決まってるじゃん。」

「三つ買っても使えないじゃない!」

 七罪はフーフー言いながら反論する。それそこまで重要だろうか?七罪と水着選びを楽しむことができただけで十分価値がある。

 それはそれとして、七罪の言葉には反論できる。だったら有効活用すればいい。

「だったら、夏の間に三回遊びに行こう。」

 夏は長い。遊ぶ時間などいくらでもある。

「皆で遊びに行くのもいい。二人だけで遊ぶのもいい。三着全部使って思い出を作ろう。なあ、七罪?」

 僕は三着の水着を奪って会計に持っていく。七罪は抵抗しようとするが、水着を守りながらというハンデありで、なお僕の方が優勢だ。

 七罪と楽しい夏を過ごそう。答えを出して。




書いてたら筆が乗ってこんな感じになりました。これだから七罪は放っておいても大丈夫って思ったんですよ。愛君が勝手に絡みに行って、二人の空間を作り出すから。

さて裏話です。今回は愛君の技術面について。

愛君は元々メカニック志望です。『折紙のサポートができたらいいな』と思ってASTの門を叩きました。受けさせられた顕現装置(リアライザ)の適性検査で、信じられない適性を見せ、半強制で部隊の所属にされました。

その経緯から顕現装置(リアライザ)について、他の戦闘員以上の知識と技術を有しています。『将来的にはアスガルド・エレクトロニクスで技術職になれたらいいな』とか思っています。
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