前倒しにしたうえで増やしました。作者は頭がおかしいのでしょうか?まあ、愛君を書ける人間と言うことでお察しください。
さて、このデートマジで何も用意してないところから書き始めたんですよ。全部その場のノリに任せた結果、中編なんてものができました。それではどうぞ。
現在、僕は七罪と手をつないで屋内プールの近くを歩いている。傍から見たら仲の良い光景に見えるだろうか?
実際の意味は真逆だ。信用が地に落ちたから、手をつないで暴走を抑え込まれている。
意味合いとしては小さな子供に近い。それもこれも僕自身の行動が原因だ。
僕は琴里の疑念を払拭するために、士道からインカムを奪った。これで琴里は、士道の言葉が言わされているものだと思わなくなった。
これで変な心配をせずに士道の言葉に耳を傾けることができる。効果はあった。
しかし、フラクシナスの指示が聞けなくなるのは十分な懸念要素だ。僕たちが代わりに通信しているとはいえ、とっさの指示はできない。
僕はそのデメリットを考慮した上で、フラクシナスの指示は聞けない方がいいと判断した。しかし、この判断は微妙なところだ。
せめて七罪に相談してからやれば良かったと少し反省している。イラっとしたから、ついやっちゃったんだよね。
許容はされたけどイエローカードだ。僕は七罪による拘束を受け入れるしかなかった。
「何、楽しそうにしてるのよ。」
七罪は呆れた顔で僕を見る。この状況で楽しそうにしているのを怪訝に思ったのだろう。
「いや、正直悪くないなと思って。七罪から手をつないでるこの状況。」
反省しないといけないことは理解している。それはそれとして、好きな子と手をつないでいる現状が嬉しくないわけない。
恥ずかしがり屋な七罪は普段自分から手をつなごうとしない。僕や四糸乃が求めたら拒否はしないけど。
だから、七罪の方から手をつないでいるこの状況は貴重だ。
「なるほど、明日起きたらベッドに縛られているのがいいのね?くすぐり地獄がいいのね?最低でも十分は続けるけど、文句はないわね?」
七罪は早口でまくしたてる。さっきのは割と冗談では済まない行為だったようだ。正直、舐めてた。
「すみません反省しております。なので、どうかお慈悲をください。」
僕はすぐに心からの謝罪をする。七罪の機嫌が直るなら、僕自身の尊厳なんてどうでもいい。
「……この馬鹿、どうやって扱えば良いのかしら?将来が不安ね。」
七罪は深いため息を吐く。
「七罪の言うことは基本的に聞くよ。」
「言わなきゃいけないから苦労してるのよ。あんたの行動を予想しないといけない立場にもなってみなさいよ。」
七罪は苦労の原因に向かって不満をぶちまける。耳の痛い話だ。
でもなんだかんだ言いながら、僕の面倒を見る気でいる。そんな七罪に甘えている。
「なるべく迷惑かけないように善処するよ。だから、これからもよろしく」
「……本当に、どうしてこんな奴好きになっちゃったんだか……。」
やっぱり僕にはこの子しかいない。この子じゃないとダメだ。
「好きだよ、七罪。」
「……。」
七罪は何か言おうとしたが言葉を呑んで顔を伏せた。表情は分からないけど、ほんのり染まった耳が七罪の内心を教えてくれる。
手を握る力が少し強くなったのは返事の代わりだろうか?
♦♦♦
『ウォータースライダーを滑ってきたまえ。』
令音さんからの指示が入る。士道はインカムをつけていないから、僕と七罪に指示が向けられる。
原作通りの選択だ。ベタだけど悪くないと思う。
「了解したわ。適当に誘導しましょう。」
七罪は早速士道たちの元に駆け寄る。当然、手をつないでいる僕も一緒に。
「ウォータースライダーに行かない?愛がどうしても滑ってみたいって。」
七罪は僕に責任を押しつける。まあ、七罪が自主的に言い出したら不自然だ。僕が言い出したことにした方がいい。
でも、どうせなら乗っかってやろう。全員一緒に楽しめるように。
「そうなんですよ。一緒に滑ることを七罪が了承してくれたので。」
「誰もそんなこと……。」
七罪は本当のことを言いかけたけど、琴里をの顔を見て止めた。琴里はまたひねくれたことを言いそうな顔をしている。
気づいたんだろう。七罪が嫌がったら、琴里は素直に『士道と一緒に滑りたい』と言えないって。
「……そうよ。私は愛と一緒に滑るから、琴里は士道と一緒に滑りなさい。」
恥ずかしがりながらも僕の言葉を肯定する。琴里の勇気を促すために。
「……士道がどうしてもって言うなら、一緒に滑ってあげてもいいわ。」
琴里にしては頑張った。まだ士道に言わせようとしているけど、十分な成長だ。
「ああ、そうだな。どうしても琴里と一緒に滑りたい。我儘な兄ちゃんの願いを聞いてくれないか?」
士道は琴里の意図を汲みとる。士道の方が琴里よりも成長が早い。素直な子はよく伸びる。
「ふん、仕方ないわね。不甲斐ない兄だけど一緒に滑ってあげるわ。」
顔を背けながらも、琴里は士道と一緒にウォータースライダーへ向かった。
「愛、あんた図ったわね。」
「なんのことやら。僕は琴里が素直になるきっかけを作っただけだよ」
「……。」
白々しい態度と理解しながら、七罪の視線を受け流す。
大したことはしていない。ちょっと希望を通しただけだ。
先ほど反省したばかり。これくらい控えた行動にしないと。
♦♦♦
ウォータースライダーの頂点からは、オーシャンパーク全体がよく見える。大型浴場や遊園地の様子まで分かる。
あっちの方も余裕があったら行ってみたいな。
「なあ、琴里向き変えない?士道の方向いて滑った方が、恋人っぽいぞ。」
現在、琴里は士道の股の間に座って滑ろうとしている。同じ方向を向いて滑るスタイルだ。
それでもいいけど、どうせならもっと大胆に行く方が面白い。向き合ってドギマギしろよ。
「な、恋人って……。別にいいでしょ。一緒に滑るんだから。」
ここまで来ても琴里はまだ躊躇う。そっぽ向かれてしまった。
さてどうしようか?どうすれば琴里を素直にさせられるか。……この方向で攻めようか。
「はー、仕方ないな。琴里も士道さんの妹ってことか。」
「どういう意味よ?」
琴里は訝しげに聞いてくる。餌に食いついた。後は引き揚げるだけだ。
「最後の最後で踏み切りが悪いチキンって意味だけど?」
琴里を全力で馬鹿にする。こういうときは恥を忘れさせるほど怒りの感情を引き出すのが重要だ。
イメージするのは
「誰がチキンよ!上等じゃない!女を見せてやるわよ!」
煽り耐性の低い琴里は簡単に引っかかった。体の向きを変えて士道の方に向き直る。
「それ、
後ろで七罪が呆れた目をしていると思う。士道も困った顔をしているが無視だ。
「ちょっと後ろに下がりなさい。」
「おお。」
琴里は士道に抱き着いて、慎ましやかな胸を押し付ける。
「変なことしたら、七罪の漫画に士道のポエムを取り入れて貰うわよ。」
照れ隠しに、琴里は暴言を吐く。その格好でその台詞はただの理不尽ではないだろうか?
「凄い現実的な脅迫だな……。大丈夫、変なことなんてしない。行くぞ!」
士道は勢いよく滑り出す。このウォータースライダーは高低差がかなりある。
「うっ、わぁぁぁぁぁっ!」
スピードがあってスリル満点だ。士道も楽しそうな声を上げている。
絶叫に聞こえるのは気のせいだ。
「さあ、僕たちも行こうか。」
「そうね。」
士道たちも滑り終わった。少し間を開けて、僕たちも準備を始める。
僕が先に座って、七罪が座ろうとする。僕に背中を向けて。
「琴里は士道に抱き着いてたよ。負けていいの?」
琴里と同じように七罪も少し煽ってみる。
「あんたがそう仕向けたんでしょ。それに、勝負なんてしてないわよ。」
しかし、七罪は挑発には乗らない。七罪は琴里と違って冷静だ。僕の意図が理解できてしまう。
誘導する意思が見えると煽りの効果は半減する。この状況で、七罪の行動を僕の意思で捻じ曲げることはできない。
「七罪が嫌なら全然いいよ。無理強いするつもりはないから。」
「……その言い方はずるいわ。」
七罪はぼそりと呟く。
誘導できないなら、七罪が自発的にやって貰えばいい。
七罪はゆっくりと体の向きを変えて、僕の方を見る。
なんだろう?覚悟を決めたような表情をしている。
一瞬目を閉じてから、蠱惑的な笑みを浮かべた。そして、肌が触れ合う面積を少しでも増やすように、ゆっくりと大胆に抱き着いた。
「今日は随分と好き勝手してくれるじゃない?やっと、責任を取る気になったのかしら?」
耳元で囁く声は、艶やかに響く。まるで大人モードのときのような、人を惹きつける色気を放つ。
普段の七罪に大人モードを取り入れたような状態。それぞれのいいとこどりをした、最強の七罪。そんなことを思ってしまった。
心臓の鼓動が早くなっているのが分かる。流れる血液が体温を上昇させる。
生唾を飲んで少し気持ちを落ち着ける。でも、焼け石に水だ。
この状態で冷静さなんて取り戻せない。だから、僕は現状を素直に伝えた。七罪の言葉に対する返事を。
「最後のピースが足りない。それさえ揃ったら、すぐに返事する。」
自分で『何を言っているのだ』と思う。説明が足りなさ過ぎて、絶対に意味が通じない。
でも、長い説明をする余裕はない。時間的にも、脳のキャパシティ的にも。
「そう、分かったわ。愛は私と一緒の未来へ、ちゃんと進んでいる。それで……十分よ。」
七罪は満足げに笑う。僕はその顔から眼を離せない。
「行くわよ。」
「う、うん。」
七罪に促される。このままここに長居すると邪魔になるかもしれない。
僕は身体を進ませて滑り始める。勢いはつけていないが、重力によって速度が出る。
しかし、アトラクションに乗っていることなど忘れてしまう。速度よりも、全身にくまなく感じる柔らかさが意識を支配する。
この瞬間が永遠に続いたらいいのに。そんなことを考えてる間に、楽しい時間は終わってしまった。
「ぷはぁ、案外悪くないじゃない。」
七罪は水面から顔を出して、素直な感想を述べる。プールに入った衝撃で、僕とは離れている。
珍しく楽しそうにしている。普段はこういうアトラクションを褒めることなんてないのに。
「そう……だね。」
七罪はアトラクションを楽しんだのだろうか?それとも僕と一緒の状況を楽しんだのだろうか?
答えをほぼ確信しながら、七罪の後姿を見た。僕の視線に気づいた七罪は、意味ありげな笑みを浮かべた。
♦♦♦
『大丈夫かね?』
インカムから聞こえる令音さんの声は、僕を心配している。先ほどの状況を鑑みての発言だろう。
「大丈夫です。平静とは言い難いですが、あの二人の面倒くらいは見れます。」
未だ鼓動のテンポは少し早い。思考力は残っているけど大部分を七罪に割いている。それでもあの二人の相手には十分だと思っている。
『………………そうか。』
今の沈黙が僕への不信を表している。『もう使い物にならないかも』なんて思われているかもしれない。
「愛が動けなくても特に問題ないわ。既に雰囲気はできているし、私もいるもの。」
『……そうだね。頼んだよ、七罪。』
令音さんは七罪に信頼を預けた。釈然としない。僕がこうなったのは七罪のせいなんだけど。
『次は流れるプールに行くんだ。浮き輪でもレンタルして来るといい。』
「了解しました。」
「分かったわ。」
僕はやる気なく士道たちの方に走った。
「士道さん、今度は流れるプールに行きましょう。」
士道に向けて話す。琴里じゃなくて士道の方が話を振った方が楽そうだ。
「今度は何企んでるのよ!」
しかし、士道ではなく琴里が反応した。やたら激しく反応している。
冷静になって、僕に乗せられたことに気づいたのか。結構強引なやり方をしたからな。
まあ、琴里も馬鹿じゃないから気付くだろうとは思っていた。思ったより早かっただけだ。
「別に今度は何も企んでないよ。というか……もう色々やりたくない気分。」
あの出来事の後に悪巧しようと思えない。正直、もうこの二人放置して七罪と二人きりになりたい。
「あんた、一体何があったの?」
何故か琴里は僕の心配を始めた。僕が悪巧みしないのはそこまで変なのか?
琴里は先ほど何があったのか知らないから、そういう感じの反応なのか。
「ウォータースライダーではしゃぎ過ぎて疲れちゃったのよ。そうでしょ、愛?」
七罪は適当なフォローを入れる。
「……まあいいわ。私たちには関係なさそうだし。行くわよ、士道」
「ちょっと待てよ、琴里。」
裏がありそうなことを察しながらも、琴里は言及しなかった。今は琴里に感謝しよう。
「愛、ちょっと左耳を貸しなさい。」
七罪はインカムをつけていない耳を要求している。何か企んでいそうな悪戯っぽい笑顔だ。
疑問に思いつつも少し身を低くして、七罪の顔に高さを合わせる。
「琴里もいい雰囲気になって来たし、次の場所で上手く言ったら、離れてもいいんじゃない?」
「それってつまり……。」
「そう、二人きりで楽しみましょう。」
少し距離を取って七罪の顔を見る。
七罪の顔はまた先ほどと同じものになっている。僕を誘う笑顔に。
男なんて単純だ。それを僕は頭で理解していた。次は、その身で理解することになる。
僕がやる気になったことなど、言うまでもないだろう。
七罪の見た目は子供、雰囲気だけ大人にしよう。そんな天啓が降りてきました。天は電波塔くらい簡単に交信できるみたいです。
さて裏話をしましょう。今回は七罪の内心について。
七罪は自分の身体へのコンプレックスがなくなったわけではありません。それなのに、普段の姿で誘惑したのはどうしてでしょうか?
七罪は普段の愛君の反応を見て、一つの予想をしました。こいつ見た目に興味はないとか言っているけど、普通に幼児体型が好みなんじゃないかと。それで今回やってみたら、かつてないほどの反応が得られました。実際のところどうなのかはともかく、七罪は予想が合っていたと思いました。
それで調子に乗っています。後で、思い出して一人反省会が開かれます。可愛いですね。