ヒロインは七罪   作:羽国

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パーティーの後編に入りました。愛君へのサプライズもあります。


七月二十三日 パーティー後編

「それでは、会場も盛り上がってきたのでここでサプライズと行きましょう。」

 琴里の発言と共に会場の前の方に置かれた装置が光る。先ほどから琴里達がいそいそと準備していたものだ。

 僕もどんな内容か全く知らない。七罪と琴里がこそこそやっていたようだ。

 期待して待ってみる。どんなサプライズを用意したのか。

『映像と音声は大丈夫だろうか、五河指令?』

「問題ありません、ウッドマン卿。」

 そこに映っていたのは、車椅子に座った五十代くらいの男性と二十代くらいの眼鏡をかけた女性だ。ラタトスクの創始者にしてトップを務めるエリオット・ボールドウィン・ウッドマン卿。そして、その秘書を務めるカレン・メイザースさんだ。

 サプライズとはこういった内容だったのか。確かに驚いた。

 ウッドマン議長は日本に来るために、かなり忙しくしていると聞いていた。だから、声をかけるつもりはなかった。

 まさかこの方がサプライズゲストだとは思わなかった。琴里もウッドマン議長本人もなかなかやってくれる。

『半月ぶりだね、愛。楽しそうで何よりだ。』

「ええ、折角のパーティーなので楽しんでいます。ウッドマン議長もお元気そうで。」

『議長なんて堅苦しい呼び方はよしてくれ。ここにはあの口うるさい小僧共もいない。昔みたいに師匠(せんせい)で構わないさ。』

 ウッドマン議長、いや師匠(せんせい)は朗らかに笑っている。相変わらず優しい人だ。

 この人は色々問題を抱えた僕に立場以上のことをしてくれた。感謝してもしきれない。

 円卓会議(ラウンズ)のゴミ共がいなかったら、もうちょっと一緒にいられる時間が増えただろうに。色々と難癖をつけて関りを制限された。

 あいつら僕のことを蛇蝎の如く嫌っているからな。とにかく自分の欲望しか見えていない奴らだ。

「それでは、師匠(せんせい)と呼ばせていただきます。お仕事は大丈夫でしょうか?」

『ははは、心配いらない。忙しいのは確かだが、弟子のお祝いに顔を出すくらいの余裕はある。むしろ、直接会場に行けなくて申しわけない。』

 笑って言っているけど、無理しているのだろう。ただでさえ忙しい立場なのに、長期間日本に滞在しようとしているのだ。

 終わらせないといけない仕事が山のようにある筈だ。その合間を縫って時間を作ってくれたに違いない。

 感謝しなくてはいけないな。

『ささやかだが、私からプレゼントを用意した。五河指令、例のものを頼むよ。』

「承知しました、ウッドマン卿。」

 琴里が合図すると、ラタトスクのスタッフが台車に乗った巨大な箱を持ってきた。これはもしかして……。

『以前から設計していた新型の《ノルン》だ。君の戦いはこれからますます激しくなるだろう。その一助になればと思う。』

 やっぱり、新型のCRユニットだったのか。今の《ノルン》と同じで僕専用の特注品だろう。

師匠(せんせい)……。ありがとうございます。大事に使わせていただきます。」

 本当にこの人は優しい。忙しい中、新型の装備を追加で設計するなんて。僕はかなり大事にされているみたいだ。

『それと、プレゼントが装備だけというのも無骨だろう。旅行のチケットもつけておいた。七罪と一緒に行ってくるといい。』

 琴里が七罪に手渡している。こういうところがあるから、ラタトスクには砂をかけにくい。

『誕生日おめでとう、愛、七罪。君たちの誕生を心から祝福しよう。』

 素晴らしいサプライズだった。本心からそう思う。

 

♦♦♦

 

「ウッドマン卿からのプレゼントも送られたことだ。このままプレゼントタイムに入ろう。各々、プレゼントを持って集まってほしい。」

 令音さんの指示に従って参加者が僕たちの元に集まる。プレゼントが個性的で、それぞれの性格を表している。

 

「トップバッターはよしのんがいただくよ~。」

「可愛い帽子です。七罪さんに似合いそうなものを選びました。これからも一緒にお出かけしましょう。」

 四糸乃は天使のように微笑んでいる。よこしまな心を浄化しそうだ。

「ありがとう、四糸乃。飾って毎日手入れするわ。これを聖遺物として拝みましょう。なむなむ。」

 七罪は四糸乃とプレゼントを拝んでいる。もう立派な四糸乃教の信者だな。その内教皇になるんじゃないだろうか?

「か、被ってください。」

「七罪ちゃんは本当に面白いね~。」

 困っている四糸乃とにぎやかなよしのんが笑いを誘った。

「愛さんには小物入れです。」

「よしのんのスーパーテクニックで作ったんだよ~。」

 裏返してみてみるとよしのんのデフォルメ刺繍がしてある。主張の強いプレゼントだ。思わず口が緩む。

「ありがとう、コードを入れるのに使わせてもらうよ。」

 こういうのは無限に欲しくなるのだ。旅行の荷物は多くなる性質だから。

 

「次は私だ。私からは沢山フルーツをプレゼントするぞ。」

 十香がどんと音を立ててフルーツが沢山入ったバスケットを置く。中にはメロンやぶどう、桃、他にもマンゴーやさくらんぼが入っている。

「ありがとう、十香さん。とても美味しそうです。」

「うむ、そうだろう。」

 十香はとても自信たっぷりだ。腰に手を当てて何度も頷いている。

「ねえ、琴里。大丈夫?」

「安心しなさい。会場での冷蔵手段もマンションまでの配送も手配済みよ。十香が満足したら、ラタトスクのスタッフが責任もって預かるわ。」

 七罪と琴里がこっそりと話している。十香の夢を壊さないように頑張ってるな~。

 

「次は真那の番でいやがりますね。」

 真那はにやりと笑いながらプレゼントを差し出す。裏がありそうな笑顔だ。

 来ないかと思ったらあっさり来たんだよな。僕と七罪はかなり嫌われてるのに。

「救急セットでいやがります。冷却スプレーや包帯を沢山詰めておきました。」

「なんで?医療用顕現装置(メディカル・リアライザ)があったらいらないだろ?」

 あれなら、切られた四肢すら治すことができる。このレベルの医療品は要らないように思える。

「いえいえ、要るでしょう。これからテメーは毎日真那に負けて、医療用顕現装置(メディカル・リアライザ)で追いつかないくらい怪我するんでいやがりますから。優しい真那からのせめてもの情けですよ。」

「は?」

 真那はとてもいい笑顔で言っている。こんな邪悪な笑顔はなかなか見たことないぞ。

「誰が誰に負けるって?」

「テメーが真那に。順当な結果でしょう。テメーは女に守ってもらわないといけない、情けない男じゃねーですか。」

 七罪は精霊だから比べるのがおかしいとか、お前の兄はどうなんだとか、いろいろ言いたいことはある。それ全部置いておいて、言うことは一つだな。

「上等じゃないか。その腹立つ顔を地面にこすりつけて土下座させてやるよ。」

「はっ、できるもんならやってみるといいですよ。返り討ちにしてやりましょう。」

 僕と真那の間で火花が散る。新型《ノルン》で真那を叩き潰してやろう。

「本当、馬鹿よね。そんなに熱くならなくてもいいでしょうに。」

「馴れ合いではなく、本気で戦うライバルを求めている。二人とも相手に恵まれなかったから。」

 七罪と姉さんが何か言っている。完全に保護者目線になっているな。

 姉さんの言葉は間違っていない。僕も真那も、周りには強すぎる相手か弱過ぎる相手しかいなかったから。

 本気でぶつかって越えられそうな壁は喉から手が出るほど欲しい。こんな良い相手は他にいない。

 正直、真那とは仲良くしたい。『最初に敵として出会っていなかったらな』と思うことも多い。

 それはそれとしてあの顔は無理。だから、一回こいつの鼻っ柱を叩き折る。

 

「次は俺だな。俺からは調理用の温度計だ。二人とも料理得意だろ?」

 士道がプラスチックケースに入った、長い棒状の機械を取り出す。棒の先には液晶パネルがついて、そこで温度が分かるのだろう。

 存在は知っているけど、初めて見たな。そんな見た目をしているのか。

 確かプロの料理人が使うような器具だった筈だ。士道以外では思い付きすらしないだろう。

「こういうのあると、ちょっと凝った料理ができるようになるぞ。いくつかレシピもつけておいたから、試してみてくれ。」

「へー、いいわね。こういうのがあったら、鶏肉みたいな不均一になりがちなものでも、しっかり火が通りそう。」

 七罪は楽しそうに見ている。料理スキルの高い七罪は使いこなせるだろう。

「僕はあんまり使い方思いつきませんね。」

「揚げ物とかしないか?ものによって温度を調節した方がいいんだぞ。」

 士道はかなり身近な例を出して説明する。それなら僕でもやるな。

「火の通りにくいものは高温でやるんですか?」

「逆だな。火の通りにくいものは、百五十度くらいの低温でじっくりやる。揚げるのに時間がかからないものを、高温でサクッと仕上げるんだ。」

「へ~。」

 料理の知識に関しては完全に士道が上だ。参考になった。

 こういう自分にはない視点から、生活の質を向上できるのがプレゼントの醍醐味だ。

 

「私からはペアのブレスレットよ。シンプルなデザインにしておいたから、愛でも普段使いできるわ。」

 琴里は司会の役割を一旦降りて、普段通りの口調で話す。中を見てみると、銀色で装飾が少しついたブレスレット。

 七罪が付けていてもみすぼらしくないし、僕が付けていても不自然じゃないものだ。結構微妙なバランスを突いてるな。

「色々とあったけど、私があなたたちと仲良くしたいことは本心よ。これはただの友人、五河琴里からのプレゼント。そう思って頂戴。」

「琴里……。」

 司令官という立場上、琴里と衝突することは多かった。でも、優しい琴里が好き好んでそうしているわけがない。

 板挟みで辛いんだろうな。寄り添うことはできないけど、僕も琴里のことは憎からず思っている。

「琴里よりマシな司令官がいるとは思えないから、あんたがその立場に居続けられる程度には協力してあげるわ。」

 七罪は照れくさそうにそっぽ向きながら言っている。ベタなツンデレだな。

「ふふふ、そうしてくれると嬉しいわね。」

 琴里は少し笑っていた。

 

「私からはこれを贈るよ。」

「これって、腕時計ですか?」

 あんまり腕時計について聞いたことない、僕でも知ってるメーカーだ。高いんじゃないだろうか?

「君も近いうちに本格的な社交の場に出るだろう。そういうときに、ある程度の品を身につけておくことはマナーだ。」

「なるほど。」

 確かにそういった場で装飾品のランクは人の価値を測る目安にされる。こういうのをつけることがある種の防衛になるのか。

「ありがとうございます。」

「私も君の成長が見られて嬉しいよ。」

 その表情はどこか特別な感情を含んでいるように思えた。

 

「七罪には化粧品だ。」

 令音さんは箱に入った化粧品を渡す。男の僕から見ても高そうなものだ。

「これって、保湿クリームと化粧水?」

「君は既に一式そろえているようだ。色々渡すよりも、少しランクが上のものを試してくるくらいがいいだろう。」

 令音さんは七罪の疑問に答える。相変わらず気が利く人だな。

「令音、そのブランド見たことがないんだけど。どこで売っていたの?」

 琴里が首を突っ込んで、疑問を投げかける。製造元が気になったようだ。

 中学生だけど、背伸びした行動や司令官という立場上、琴里は既に色々知っている。その琴里も見たことない品に興味を持ったのかな?

「見たことないだろうね。市販品ではなく、オーダーメイドを主に取り扱っている会社だから。」

「え?」

「は?」

 令音さんのあっさり放った言葉に、琴里も七罪も驚きの声を上げた。僕も詳しく知らないけど、とんでもないことを言っていることは分かる。

「七罪の肌質のデータを医務官と一緒にまとめ、適切なレシピを考えた。それを外注したのさ。」

 何でもないことのように言っているけど、はっきり言ってイカレているぞ。それ一つでどれだけの手間とお金が必要なんだ?

 ラタトスクの力を使っているとはいえ、それを用意したのか?

「いや、こんなの貰えないんだけど。」

「それは君以外には合わないだろう。要らないのなら捨てて貰って構わない。」

 遠慮がちな七罪の言葉を先に潰す。七罪のことを知っている対策法だ。

 七罪は優しいから、人から貰ったプレゼントを捨てるなんてできない。これで確実に七罪にプレゼントを渡すことができる。

「し、仕方ないわね。あるだけ使うわよ。」

 七罪は少し声を上ずらせながら言っている。素直じゃないな。

「レシピとメーカーの連絡先も一緒につけておいた。気に入ったらまた頼むといい。」

 令音さんは僕の方を見て懐から紙を取り出す。この状況で僕の方を見るって何?

「愛、君にも渡しておこう。君の好きにするといい。」

「……ああ、そういうことですね。分かりました。」

 紙には薬品名らしきリストと会社名、電話番号が書いてある。七罪に渡したのと同じものだろう。

 気に入っていそうなのに、七罪が遠慮しているなら、僕が頼めばいいと。これだけ揃えられたら、門外漢の僕でも問題なく手配できるな。

 どこまでも先を見ている。ありがたい。

「う~。」

 七罪はかわいい目で睨んでいる。七罪を可愛くするために僕は全力を尽くす。

 本当に合わなかったならともかく、高いから買わないという選択肢はない。諦めくれ、七罪。

 

「私からはこれを。」

「これって、十徳ナイフ?」

 姉さんからは金属光沢のする品を渡された。多分便利グッズの類だ。

 厚さから言って十どころではないけど、とにかく多機能ナイフだろう。普通のナイフからはさみ、のこぎり、ドライバーまで使える便利なやつ。

「そう。どの機能も()()()使える品を選んだ。」

 姉さんの()()()はかなりハードル高い。下手すれば、プロの工具より性能が上かもしれない。

「ありがとう。こういう実用的なの結構好きだよ。」

「それは良かった。」

 最近、少し姉さんの感情が分かるようになった。今嬉しそうにしている。

 僕は思ったより大事にされているみたいだ。みんな優しいな。

 

「七罪にはこれ。」

「……これ、何?」

 七罪はプレゼントをジト目で見ている。実用的だけど、確かに変なものだな。

「防犯グッズ。催涙スプレー、スタンガン等、色々入れておいた。」

 姉さんのプレゼントは防犯グッズの中でも撃退を目的としたものだ。ちらっと銃みたいなものまで見えたけど、姉さんが用意したなら気のせいじゃなさそうだ。

「法律って知ってる?」

「法律で身を守れたら苦労はしない。自分の身は自分で守るべき。」

 七罪の疑問に姉さんは自論で返す。この人は超現実主義者だ。

 強盗どころかプロの部隊とも戦える。僕にいろいろ仕込んだのも姉さんだ。

「あなたには愛を守る義務がある。最低限の護身は覚えておいた方がいい。精霊の力に頼ってるだけではいけない。」

「……まあ、少なくとも気持ちは貰っておくわ。」

 七罪は目を閉じて防犯グッズを受け取った。

 この二人の関係はよく分からないな。でも、前よりはいい感じだ。

 

「プレゼントタイムはここで……」

「終わりじゃないよ。」

 僕は琴里の言葉を遮った。まだプレゼントは残っている。

「僕が七罪のプレゼントを用意してないわけないじゃないか。」

 持ってきた箱をテーブルの上に置く。家にあるものを把握して、何にするか時間をかけて選んだのだから。

「奇遇ね。私も用意しているわよ。」

 七罪もテーブルの上に出す。薄々そんな気がしていたけど、やっぱりそうだったか。

「では、二人の交換タイムと行こうか。好きな方から渡すといい。」

「じゃあ、僕からいいかな。」

 こういうのはそこまで得意じゃない。気の利く七罪に大トリは譲りたい。

「いいわよ。」

「ありがとう。僕からはヘッドホン。ちょっといいものにした。」

 七罪は違いの分かる人間なのに身の回りの物を安く済ませようとする。要望を出しても控えめだ。

 だから、観察して頑張った。ちゃんと好みに合うように機能を選んだ。

「愛、教えなさい。黒地に星のデザインが入っていて、ところどころ薄緑色の装飾。まるで私の好みに合わせたような見た目だけど、どこで売っていたの?」

「え、オーダーメイドだけど?」

 市販品いろいろ見たんだけど、満足できなかったんだよね。大抵どこか微妙に足りない感じがした。

 だから、オーダーメイドにする方が早いと思った。デザインまで自由にできたから、それも良かった。

「はい、これ仕様書。」

「超軽量、低締め付け、高品質ノイズキャンセリング、クリアな音質、Bluetooth&有線両対応、その他もいろいろ。

 あんた、随分詰め込んだわね。流石にこれは無駄遣いじゃないかしら?」

 何を言っているのか?能力がある人間にはちゃんとお金をかけないと。

「七罪が安物のヘッドホンで色々するのはダメだと思ってたんだよ。

 まず、七罪は高頻度でゲームやってるでしょ。ゲームに快適さを求めるのなら、ちゃんと音を拾えるものがいいって。

 最近のBGMは細部まで作りこまれているから、聞き分けられるなら聞き分けられた方が楽しめる。音楽は余すことなく味わってこそだ。

 それに、七罪は音楽聞くの結構好きでしょ。ゲームと関係するのが多いけど、J-POPやクラシックみたいにジャンル問わずに幅広く。

 いずれは作曲とかに手を出してもいいかもしれない。七罪の音楽センスならそっち方面でも十分食べていける。

 だったら、それ相応の品を用意しても問題ない。いや、むしろそうするべきでしょ。

 そのヘッドホンは才能を生かすための道具だ。だったら、これは決して無駄な出費じゃない。

 これは才能に見合った投資だよ。」

 七罪は見ながら呆れている。悪いけど、僕は全力投球しか知らない人間なんだ。七罪相手は特に。

 

「私からはこれね。」

「これはブランケット?」

 入っていたのは薄緑のブランケットかな?これを被って寝られそうだ。

「こういうの好きそうだから、ちょっと良いやつをね。」

「……。」

 よく見てみよう。七罪がその程度で終わると思えない。

 確かに布自体いいものを使っているけど、ただのブランケットとしては違和感がある。この妙な手触りの正体は――温度調節機能か。

 それによく見るとプロの仕事じゃないけど、レベルの高い白の刺繍が入っている。七罪が『AI』って入れたのか。

「ありがとう。七罪の愛が伝わったよ。」

「……少しは返さないといけないでしょ。こんなに愛して貰ってるんだから。」

 恥ずかしくて、こっちを見て言えないようだ。健気で嬉しいな~。

 

♦♦♦

 

「それでは今度こそ、プレゼントタイムは終了です。そして、名残惜しいですがパーティーもそろそろ終わりです。主役のお二人にお言葉を頂戴したいと思います。」

 琴里の宣言と同時に、ラタトスクのスタッフが僕にマイクを差し出す。それを受け取って、締めに入る。

「みなさん、今日は本当に楽しいパーティーをありがとうございました。こんなに楽しい日は人生で初めてかもしれません。

 僕は出会いに恵まれました。僕のことを見てくれる大人の方、友人。そして、家族と恋人。

 今日という日を忘れることはありません。」

 本当にいい日だった。思い付きで始めたことだけど、やってよかったと心から思える。

 マイクをそのまま七罪に渡す。七罪は少しマイクを持って考えてから、喋り始めた。

「正直、こういうのは柄じゃないからあんまり乗り気じゃなかったわ。愛がどうしてもっていうから付き合ってた。

 でも、今日は楽しかったわ。また頑張って準備するのも悪くないって思うくらいには。

 私には勿体ないくらいいいパーティーだった。ありがとう、みんな。」

 素直じゃないながらも心の籠った内容だった。会場では優しい拍手が起こる。

「……来年は少し静かにしてくれると嬉しいものね。体力が持ちそうにないから。」

 最後のオチで小さな笑いが木霊する。パーティーを手配する人が落ち着くのは、来年よりもうちょっと先の話かもね。




登場済みのキャラが勢揃いするお祭り回、個人的にもとても大好きです。
プレゼントの内容は、それぞれの個性を大事にしながら「何を贈れば相手が一番喜ぶか」を考えて選びました。実はけっこう悩んだのですが、いろいろ調べたり想像したりする時間が楽しかったです。

さて、今回の裏話。愛君の行動について──

実は愛君の振る舞いには、身近なキャラクターたちの“要素”が色濃く出ています。
例えば、ネガティブ思考や感情があふれたときの饒舌さは七罪から。
実用性を第一に考えるところや、愛に全振りする姿勢は折紙から。
その他にも、愛君の行動の“元”になっている人物がいます。
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