ヒロインは七罪   作:羽国

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久しぶりの金曜日投稿です。最近執筆ペースが週一万字以上に戻りつつあります。

我慢できなくなっちゃいました。この展開、本当はもうちょっと先のつもりだったのに。


中学校体験入学 ーー七罪の仕返し(?)ーー

「いつもいつもいつもいつも。ふっざけんじゃないわよ、あの姉弟!」

 私は大声で怒鳴っていたわ。そうしないと耐えられなくなりそうだったから。

「七罪ちゃん、荒れてるね~」

「大丈夫ですか、七罪さん?」

 そんな自制すらまともにできない咎人に救いを差し伸べてくださる、ラブリーエンジェル四糸乃。

 矛先の見当たらない怒りをぶつけてしまったのに、心配してくれる。大好き、結婚したい。

「大丈夫……とは言い難いわね」

 本当にそろそろ限界が近い。愛と鳶一折紙の大迷惑姉弟のせいで。

「一体、何があったの?不満がたまったときは吐き出すのが一番だよ。カウンセラーよしのんに聞かせてごらん?」

 四糸乃の使いの天使、よしのんは優しく促してくる。というか、よしのんマジでカウンセリングしようとしてないかしら?

「誕生日パーティーをするって話したわよね。私と愛の」

 愛が暴走した結果、小さめの会場を貸し切って、本格的なパーティーの準備が進んでいるわ。いや、本当に何故そうなってるか、自分で言っててよくわからなくなるけど。

「来週だよね?素敵じゃな~い」

「おめでとうございます!」

「ありがとう」

 よしのんと四糸乃が祝福してくれるから軽く応じる。参加どころかスピーチまで引き受けてくれた二人には感謝しかない。

 超プリティ女神、四糸乃。アーメン。

「それはいいんだけど、あいつら好き勝手言うのよ。料理は変わったものを用意したい、令音を司会にしたい、十香専用スペースを作りたい。

 放っておいたら、どんな豪華なパーティーになるかわかったもんじゃないわ」

「豪華なことが、悪いこと……なんですか?」

 四糸乃は可愛らしく首をかしげている。そんな姿さえ、可愛さ全開でそのまま飾っておきたくなるわね。

「愛は放置したら、等身大の私の像とか作りかねないわ。自分の像が作られたらどう思う?」

「それは、ちょっと……恥ずかしい……です」

 四糸乃は顔を赤らめて恥ずかしがっている。私の気持ちが伝わったようで、嬉しいような悲しいような複雑な気分ね。

「でも、愛くんなら作っちゃいそうだよね。この前も嘘を教えてくれるドキドキサイコロ、作ってくれたし」

「……残念ながら、その通りよ。鳶一折紙は3Dプリンターが使えるから、愛が撮りためた写真を使ったら、精巧なものが作れるでしょうね。

 ううっ、変なこと考えるんじゃなかったわ」

 よしのんの言葉を聞いて、嫌な想像が止まらなくなる。夏なのに寒気がしてくるわ。

「でも、愛くんのこと好きなんでしょ?」

「……そうよ」

 恥ずかしいけど、否定したくない。

 折角時間と手間をかけて堕としたんだもの。そこだけは嘘が吐けない。

 変人で困った奴だけど、いいところも沢山ある。優しくて一途で真面目で何でも言うことを聞いてくれる。

 とてもいい彼氏だと……思ってる。

「愛さんにお願い、してみませんか?」

「そうだね、言いたいことは言った方がいいよ~。これから長い付き合いになるんだろうし~」

 四糸乃とよしのんが提案をしてくれた。愛にもうちょっと行動を改めるように注意することを。

「それもできればしたくないわね」

「どうして、ですか?」

 四糸乃は私の面倒な言い分も聞いてくれる。四糸乃様、マジ神、愛してる。

「愛ってここ数年、大変なことばかりだったのよ。父親が亡くなったり、鳶一折紙(家族)と喧嘩別れしたり、死にかけで戦ったり。

 それでようやく掴んだ幸せで平和な日々だもの。できるだけ楽しんでほしいのよ」

 近いうちにDEMや崇宮澪との戦いが待っている。束の間の平和だからこそ、邪魔はしたくないわ。

「七罪さん……」

「いい子だね、七罪ちゃん」

 四糸乃とよしのんは目をウルウルさせながら話を聞いてくれた。そこまで感激されることじゃないと思うんだけど。

「まあ、それはそれとしてこの鬱憤は晴らしたいわね。愛に仕返しして」

 それはそれ、これはこれ。幸せを享受しているんだから、多少の不幸せくらいは受け入れてくれるわよね。

「何がいいかしら。

 電気ショックとか面白そうよね。急に後ろからビリっとしたら、愛は飛び上がりそう。

 後はネズミのおもちゃとか?駆動音なしで動き回るやつだったら、地味にリアリティあって怖いわよね」

 色々とイタズラのアイディアが浮かんでくる。まだ試したことないのをやってみたいわね。

「七罪ちゃん、黒いこと考えてるね~」

「楽しそうだから……大丈夫……でしょうか?」

 四糸乃とよしのんに悪い顔を見せながら、色々と考えたわ。

 ごめんね、四糸乃。私は四糸乃と違って悪い子なの。

 

「相変わらずね、七罪」

「ああ、琴里。いたの?」

 半目でこっちを見つめる琴里が近づいてくる。

「『いたの?』って、ここが誰の家だかわかってる?」

「そういえばここあんたの家だったわね。すっかり忘れてたわ」

 士道や琴里がいなくても勝手に入って、四糸乃と遊ぶために使っていたわ。正直、セカンドハウスだと思ってる。

「はあ、別にいいわよ。あんたが一番、家の扱い丁寧だし」

「……?別に特別なことはしてないわよ」

 なるべく来たときの状態に戻しているだけね。出したものは片付けて軽く掃除する。使ったものは補充する。

「本当、失礼なんだか礼儀正しいんだか」

 琴里は呆れた顔で見つめている。何だか変な気分ね。

 

「そんな話はどうでもいいのよ。四糸乃、体験入学の件だけど週末には実施できるわよ」

「本当ですか?」

 四糸乃は琴里の言葉を聞いて嬉しそうにしている。四糸乃を騙すなんて、万死に値するわね、琴里。

「待ちなさい。体験入学って、四糸乃を学校に行かせるってこと?」

「そうよ。私の中学にって……何でそんな腕組んで睨んでるのよ」

 琴里は自分の罪も自覚せずに、四糸乃を地獄に放り込もうとしているわ。許しがたいわね。

「学校なんて場所に四糸乃を行かせようとしてるんだもの。そりゃ、思わず止めるに決まってるじゃない。

 学校は刑務所一歩手前の場所よ。何も知らない子供を一か所に集めて、効率よく洗脳する非人道的施設だもの」

「いや、どうしてただの学校をそこまで悪し様に言えるのよ?」

 既に洗脳されている琴里は、蟻地獄に四糸乃を引きずりこもうとしている。こいつはもうダメね。

「学校って、実は怖い場所なんですか?」

 四糸乃はまだ洗脳されていないみたいね。今のうちに認識を改めないと。

「そうよ、学校なんて碌でもないところなの。『個性を大事に』って建前だけ掲げて、実際は工場の量産品みたいに無個性な人間に仕上げるのよ。

 奴隷はその方が都合いいから。ああ、なんておぞましいのかしらね。

 スクールカーストに縛られて不満の溜めている学生は、常に虐める対象を探しているわ。出しゃばったことを言ったら、陰湿ないじめの餌食にされて、教師は見て見ぬふり。

 学校ってのはそういう収容施設なのよ」

「そ、そんな」

「学校がそんな恐ろしい場所だったなんて、よしのんびっくり」

 四糸乃とよしのんは学校の真実におののいているわね。残酷だけど、手遅れになる前に伝えられてよかったわ。

「いや、そんなわけないじゃない。だったら日本人はほとんど奴隷ってことになるわよ。……確かに少し否定しにくい部分はあるけど」

 琴里(洗脳済み)は学校の真実を知りながら、矮小化しようとしているわね。四糸乃が騙されないようにしないと。

「実際、日本人なんてほとんど奴隷でしょ。夜のビルがそれを証明しているわ」

 浩々と輝くよるのオフィス街。その光の数だけ身も心も削りながら働いている奴隷が居るのよ。

 今すぐに日本は改革すべきね。

「というか、どうしてそこまで学校が嫌いなのよ?七罪って学校に通ったことあるの?」

「……いや、それは……」

 学校に嫌な思い出はあるわね。いじめられ続けた精霊化前()の思い出が。

 愛との秘密に関わるから言えないけど。

「食わず嫌いなんじゃない。だったら、ネットの書き込みや妄想でできた、学校へのイメージを早急に正した方がいいわよ」

 言い淀んでいると、琴里が勝手な結論を出す。陽キャは陰キャの話を聞かずに結論を出すから嫌なのよ。

「あんたも体験入学に……」

「絶・対・嫌!」

 琴里が言い切る前に即答する。何が楽しくて学校なんて行かないといけないんだか。

「大体、学校に行かせるなら、先に行かないといけない奴がいるでしょ。そっちに声かけなさいよ」

 愛は中学生だけど、もう一年以上通っていない不登校。色々言うならそっちが先でしょ。

「そいつには既に返事をもらってるわ。『七罪が通わないなら通う意味がない』だそうよ」

「……絶対言うわね、あいつなら」

 愛は既に中学校で勉強することなんてない。今すぐアスガルド・エレクトロニクスで即戦力になれるだけの能力があるんだもの。

 あいつ、普通に高スペックなのよ。部屋に専門書並べてるし、顕現装置(リアライザ)関係の発明の()()()にもオンラインで参加している。

「そもそも、あいつってアメリカに行くから学校に行かなくなったんでしょ。何で今も通ってないのかしらね」

 琴里は文句を垂れている。司令官と中学生の二足の草鞋を履いている琴里からしたら、愛の自由は面白くないでしょうね。

「まあ、あいつの行動も理解できるわ。DEMの情報網に引っかかるかもしれないし」

 愛は今最もDEMに狙われている存在。行かなくてもいい学校に通って、無駄なリスクを背負うのが嫌ってのも同意。

「私も行く意味ないから行かな――待って」

 拒否しようとしたときに、脳裏をかすめたアイディア。それは今までのイタズラとは一線を画すものだったわ。

 これなら、愛にダメージを与えられるかもしれない。思わず口角が上がってしまうわね。

「七罪さん?」

「いきなりどうしたのよ、七罪?」

 急に黙った私を見て、四糸乃たちが不思議そうに顔を見てくる。それを見て、私も姿勢を正す。

 愛にダメージを与えられるなら、多少のコラテラルダメージは許容してもいいかもしれない。私が行くことが愛を中学校に行かせる最低条件だもの。

「琴里、条件を呑むなら体験入学に行ってもいいわ」

「ふーん、とりあえず言ってみなさいよ」

 琴里は全部を聞いた後、快く協力してくれたわ。そう言えば、こいつも愛の好き放題の被害者だったわね。

 愛の恥ずかしがる姿を楽しませてもらうわよ。体験入学のために色々と準備を整えたわ。

 

♦♦♦

 

 普段、僕は朝起きる義務がない。昼まで寝ていようが、基本文句は言われない。

 でも、七時には起きるようにしている。ほどほどに健康な生活を送るために。

「ん?」

 朝起きて固まっている筋肉をほぐす。そんな日常を再現しようとしたとき、違和感を覚えた。

 全身の感覚がことごとく変だ。まるで自分の身体じゃないみたい。

「……これは⁉」

 ベッドから出て立ち上がると、不自然さがより明確になる。肌の質感、重心の位置、髪の長さ。

 何よりも、胸の僅かな膨らみと股間の滑らかさ。自分がどうなっているのか、ある程度予想がついた。

「女の子に……なっている⁉」

 ペタペタと全身を触って確認した。間違いない。

 精霊化したときと似た感じだ。姉さんによく似た見た目になっていることだろう。

「……冷静になれ、僕。現状は僕が女になっている。()()()()()()()だろ」

 頭をトントンと叩いて頭を冷静にさせる。現状を正確に把握して、原因を推測する。

 あのときと違ってみなぎる霊力を感じない。精霊になった訳じゃない。

 結論はひとつだ。

「どう考えても、七罪だよな~」

 こんなことができるのは七罪しかいない。

 贋造魔女(ハニエル)で僕を変身させたのだろう。変幻自在の天使の力なら、男を女にするのなんて簡単だ。

「さて、どうするか」

 問題は何故こんなことをしたのか?悪戯の範疇ではあるけど、結構本気度が高い。

 別にこのままでも()()()()()()()()()()。どっちかというと、七罪の精神状態の方が問題だ。

「怒ってそうだな~」

 やり過ぎちゃったかな?最近は好き勝手してたし。

 七罪の我慢が遂に限界を越えたのかもしれないな。

「とりあえず、甘んじて受け入れるか」

 そう覚悟を決めて、部屋を出た。

 

「おはよう、七罪」

「おはよう、愛。随分かわいくなったわね。似合ってるわよ」

 七罪は()()()()()()()で返事をくれた。僕はそれがとても怖い。

 感情に鈍感な僕ですらわかる、不穏な空気。七罪は僕にわからせるため、わざとそうしている。

「はい、これ鏡」

 とても楽しそうに七罪が鏡を取り出す。しっかり今の自分を認識させるために。

「…………」

 鏡には予想通り、姉さんとよく似た白髪ショートボブの美少女が映っていた。数年後には立派なクールビューティーになりそうだ。

 我ながらかわいいと思う。半目になっていなかったら。

 さて、誠意を伝えようか。裁判官(七罪)の心証を良くするために。

「ええと、何をお望みでしょうか?このまま着替えて外出?それとも、女の苦労を知るお勉強?」

「中学校の体験入学に行くわよ」

 機嫌を取るための伺いを無視して、七罪は言い放つ。手には琴里と同じ制服が握られている。

「女子生徒として一日学校に通えということでしょうか?」

「そうよ。衆人環視の中でスカート履いて、恥ずかしがるあんたの姿を見たいの。何か言いたいことはある?」

 質問の体を取っているが、聞く気なんてないだろう。僕も七罪の機嫌を損ねることは遠慮したい。

「喜んで行かせていただきます」

 僕は頭を下げて、七罪の持っている制服を受け取った。サイズはぴったりだった。

 

♦♦♦

 

 着替えてすぐに、僕たちは精霊マンションと五河邸の中間で待ち合わせ。琴里と四糸乃も一緒に向かうようだ。

 そう言えば、『アンコール』にそんな話があったなと思っていた。こんな形で巻き込まれるとは。夢にも思わなかったけど。

 白いセーラー服に青色のプリーツスカートという、少女らしさ全開の制服。案外、機能も確保されているな。

 通気性があって、この季節に着ていても何とか耐えられる。伸縮性もあるから動きづらくない。

「あんた、ずいぶん堂々としてるわね。戸惑いとか羞恥心とかないの?あんた、女になってるのよ?」

 七罪が訝しげに聞いてくる。確かに原作の『士織ちゃん』と比べると、変かもしれない。

「僕、自分の見た目にあんまり興味とかないから。性別もそこまで拘りないんだよね」

「は⁉それ、そういう問題⁉」

 七罪は驚いた顔で追及してくる。やっぱり、この考え方は変わってるか。

「男のメリットは七罪が異性愛者(ノーマル)っぽいから、都合がいいってくらいかな。正直、七罪が愛してくれるならどうでもいい」

「な、な、何言って……」

 七罪はもじもじしている。下手人の方を困惑させてしまった。

「あ、でも七罪って四糸乃のこと好きだよね。七罪に同性愛の趣味があるなら、僕はこのままでもいいよ。両性愛者(バイセクシャル)だって言うのなら、気分で変えてくれても構わないし」

「いや、あの、自分の性別を私に投げられても困るんだけど」

 七罪の手を握って要望を確認する。それが七罪の願いなら叶えてあげたい。

 贋造魔女(ハニエル)があったら、性別変更なんて難しくない。いい考えだ。

 

「七罪さん、愛さん、お待たせしました~」

 四糸乃とよしのんが合流する。四糸乃もよしのんとお揃いで制服を着ている。

「随分と可愛い姿になっちゃったね、愛くん。いや、愛ちゃんって呼んだ方がいいかな~?」

 よしのんが楽しそうにからかってくる。脚から顔まで一巡してにやにやしている。

「愛くんは止めてほしいかな。この姿が男の姿と繋げて見られると面倒だから」

 この姿は男の姿の遠い親戚という設定にするつもりだ。男が女になる現象なんて、身内にしか信じてもらえないだろうし。

「相変わらず仲がいいですね」

 四糸乃が僕たちを見てたおやかに微笑む。その視線の先には握りっぱなしの僕と七罪の手がある。

 恥ずかしくなった七罪は手を引っ込めてしまった。残念だな。

「話はまた後でね、七罪」

「別にしなくていいわよ、そんな話題」

 七罪はつんとした態度で拒否してくる。でも、本当は望んでいるかもしれないから、七罪の様子を見てかな。

「全員、揃ったみたいだな~」

 白いリボンを揺らす琴里が姿を現す。登場頻度が低い妹モードだ。

 こっちの琴里は純粋無垢で少女らしい性格になっている。司令官モードと違って、お子様度が高い。

「おはようございます、琴里さん」

「おっは~、琴里ちゃ~ん」

「おはようだぞ~」

 四糸乃とよしのんの挨拶に琴里は元気よく手を振る。

「リボン変えるとキャピキャピした性格になるわね。ここまで一気に変わると、不気味を越えて尊敬するわ」

 七罪が琴里の振る舞いを見て毒を吐く。自分の変身時の性格を思い出して言ってほしいけど。

 それを聞いた琴里はフッと一瞬消える。

「あははは、ほめても何もでないぞ、なつみ~」

 気づいたときには七罪の後ろに回って、チョークスリーパーを決めていた。こいつはバトル漫画のキャラかな?

「あが、やめ、やめなさい、琴里」

 七罪はあたふたしている。タップしてギブアップを要求しているが、琴里は解放してくれない。

 琴里の怒りも理解できる。七罪が悪い部分があるのは確かだ。

 でも、どんな状況でも僕は七罪の味方になると決めている。

「そこまでだよ、琴里」

 腕を大きく振りかぶって琴里の頭に手刀を落とす。

「あだっ!」

 その衝撃で琴里の腕が緩む。その隙を突いて七罪は逃げ出し、僕の後ろに隠れた。

「暴力反対だぞ~、愛」

「その言葉そっくりそのまま返すよ、琴里」

 七罪の壁になるように前に出る。しかし、七罪はこんな風に絡まれそうだな。

 できればずっと傍にいて守りたい。

 でも、この姿で恋人面するのは早計だな。通うとしたらあの中学校だろうし、女の姿が七罪の恋人と認識されたら面倒だ。

 ……いいことを思いついた。だったら、女の子でも女の子を守るのが自然なキャラクターにすればいいんだ。

 一人称は『僕』のままがいい?いや、スイッチを切り替えるために『私』に変えよう。

「お姫様への手出しは許さないよ、琴里。()が見ている限りは」

 イメージは女子高の王子様。半分おふざけで七罪をお姫様扱いしていると周囲に喧伝する。

 七罪を軽く抱きしめて過剰に振舞う。そういうごっこ遊びとして受け入れさせる。クールビューティーな見た目との相性も悪くない。

「愛……」

 七罪が私のことをじっと見つめる。制服を握りしめる手が強くなる。

 その反応を見ると、七罪への印象は悪くなさそうだ。

「あらあら、愛くんはそういうのもできるのね」

「かっこいいです」

 四糸乃たちもイメージ通りの印象を持ってくれたようだ。今日はこのままで行こうかな。

「朝からラブロマンスは勘弁してほしいのだ~」

 琴里は逃げるように学校に向けて歩き出す。

「待ってください、琴里さん」

「おいて行くなんて、琴里ちゃんのイジワル~」

 四糸乃がその後を追いかける。

「行こうよ、七罪」

「……うん」

 七罪の手を引いて学校に向けて歩き出す。こういうのもアリかもしれない。




学校体験をやって欲しいってアイディアを頂いていたんですよ。ただ、不登校の愛くんの扱いが面倒だったので没にするつもりでした。

しかし、突然アイディアが湧いてきました。”愛くん”が問題なら”愛ちゃん”にしちゃえばいいじゃないと。

今回の裏話は愛くんのジェンダー意識について。
『アンコール』で士道の女装に対して男装していた折紙とは違います。愛くんは本気で自分の性別に拘りがありません。七罪が言ったら喜んで女の子になります。

理由は大きく分けて二つ。一つは精神性を重視し過ぎて、あまり肉体に興味がないから。もう一つは『鳶一愛』の能力のせいです。
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