ヒロインは七罪   作:羽国

65 / 147
長かった夏休み編も終わりが見えてきました。強化合宿はもうすぐ終わり。その後、愛くんと七罪のデートで終了です。


強化合宿 ーータッグバトルーー

 僕は姉さんと七罪、二人と向き合っていた。それぞれ槍の武器、エインヘリヤルと魔女箒の天使、贋造魔女(ハニエル)を構えている。

 この二人と戦うのは少し気が進まない。でも、それより僕の頭を悩ませる問題がある。

「何でテメーと組まなくちゃいけねーんですか?」

 不機嫌さを隠そうともしない真那だ。チームメイトであるはずの僕に敵意を向けている。

「仕方ないだろ。チームのバランスをとるとこうなるんだよ」

 この四人の実力は七罪>僕=真那>姉さん。他のメンバーは実力が離れすぎていて本気の勝負は難しい。

 結果、僕と真那が組んでしまうことになるのだ。不本意ながら、僕と真那の実力は大差ないから。

「ちっ、足引っ張らねーでくださいよ」

「そっちこそ、下手に前に出て狙い撃ちされるなよ」

 とてもではないけど、同じチームで戦う雰囲気じゃない。自分でも少し、いやかなり不安になる。

「それでは、両チームとも準備はいいですね。それでは始め!」

 審判役の神無月さんが合図をする。それと同時に戦いの火ぶたは切られた。

 

 最初に突撃するのは真那。電光石火の勢いで七罪との距離を詰める。

 そして、そのまま七罪のレイザーエッジを振り下ろす。

 チェーンソーのように回転する刃は霊装すら容易く切り裂く。精霊の中では最低レベルの七罪の霊装なら、無事では済まないだろう。

 攻撃をまともに受けていたら、の話だけど。

千変万化鏡(カリドスクーペ)――鏖殺公(サンダルフォン)

 それよりも前に贋造魔女(ハニエル)鏖殺公(サンダルフォン)に変身させて受けに回っている。刃の軌道をずらして綺麗にかわしてしまった。

「あんたが私を狙うことなんてわかり切ってるのよ。次からはもうちょっと頭を使いなさい」

 七罪はいたずらっぽく口元を緩めながら煽りを入れる。大人モードのクールな雰囲気が煽り性能を強化している。

「舐めるな!」

 煽りが十分に効いてしまった真那は連続攻撃を仕掛ける。しかし、七罪は全部捌いている。

 十香に剣技を教わっただけある。かなり練度が高くなっている。

「遊んであげるわ、真那ちゃん」

 七罪は性格の悪さを発揮して、楽しそうに微笑んだ。

 

 真那と七罪の戦いが激化する中、僕は必然的に姉さんと戦うことになる。挨拶代わりの攻撃をしようか。

 手元に五機の衛星(サテライト)を集めて魔力を充填する。この攻撃を喰らったらただじゃ済まないだろう。

 十分に魔力が溜まったと判断した。そのタイミングで、姉さんの死角となる()()()()魔力砲を放つ。

 後ろから不可視化した別の衛星(サテライト)での攻撃。ちょっとした不意打ちだ。

 相手の調子を崩すのによく使うんだけど。そう上手くいかないみたいだ。

「あなたの性格はよく知っている。私と同じで効率的、実戦的な戦い方を好む」

 姉さんはダメージを受けた様子がない。それどころか動揺すら見せない。

「だからこそ、あなたの行動は予想できる。隙を見せていない相手に無策で大技は見せない。やるとしたら、それは十中八九陽動」

「ばれてたか」

 わざわざ目立つように魔力を充填していた。不意打ちを成功させるために。

 それを予想していたら、準備はできるよね。随意領域(テリトリー)を広げて本命の攻撃を探したかな?

「やっぱり、この程度じゃ効かないか」

「この程度……あなたにとって、先ほどの攻撃が簡単なもの?」

 姉さんは真剣な顔をして聞いてくる。

「?そうだよ」

 どういった意図かいまいちわからない。とりあえず、正直に答える。

「今の攻撃は簡単に実施できるものではない。少なくとも、私には不可能」

「僕は特殊型だからね。足りない火力を小細工で補ってる。僕と同じことができなくてもいいと思うよ」

 僕は足りない実力を補うため、正気を疑われるようなことをしている。何度、師匠(せんせい)に苦い顔をされたか忘れてしまうくらいに。

 姉さんは僕と同じにならなくていい。むしろ、そうならない方がいい。

「……それでも、あなたは魔術師(ウィザード)として私より遥かな高みにある。同じレベルの装備を得た今、ようやく実力差が理解できた」

「そんな開きがあるとは思ってないけどな~。姉さんは今までまともな特訓相手がいなかっただけだよ。すぐに追いつける」

 ASTのみんなはいい人たちだけど、実力者ではない。姉さんの相手には力不足だ。

 それ故に姉さんの才能は腐っていた。

 一方、僕はアメリカで経験を稼いできた。あの地獄みたいな環境を経たら、誰でも強くなると思う。

「だったら、私はここで力を得る。これからのために、力が必要」

「いいよ。喜んで協力する」

 僕の得てきた技術、使えるものは全部教えよう。挨拶を終え、本格的な戦いが始まった。

 

「さて、衛星(サテライト)の新しい力を試してみようか」

 少し試してみたけど、とてつもなく難しくて強力だった。実戦でも使えるように練習しないといけない。

 十二機の衛星(サテライト)を展開する。旧型の限界を軽く越えるこの数が新型の標準だ。

「その兵器を十二機⁉そんなことが人間の脳で可能なの?」

 姉さんは衛星(サテライト)の数を見て目を見開く。そんな顔をするってことは、姉さんは衛星(サテライト)について知ってるな。

「もしかして、姉さんも使ったことあるの?」

「少しだけ。私は四機を数分間動かすのが限界だった。」

「初めてでそれだけ使えるなら十分だよ。ほとんどの人は二機が限界だから」

 嫌味でも何でもない本音だ。僕以外で四機以上使える人は、片手で数えられるくらいしかいない。

「どうやってそんなに?」

「ちょっと機能を追加してもらったんだ。フルオートモード、《ウルズ》。

 自立思考して、僕の指示通りに戦闘してくれる。勿論、僕自身が操作しているときほど上手くないけど」

 ちょっと特殊な僕でも、そのままなら十二機操作できるわけがない。それを解消するために、AIによる制御を以前から考えていた。

 前は使い物にならないレベルだったけど、ようやく実戦へ導入できるレベルになった。開発を手伝ってくれた五河夫妻には感謝だ。

「それが新型の力?」

「その一部だね。今から存分に見せてあげるよ」

(一から四号機、モード《ウルズ》。姉さんを包囲して攻撃。目的は撹乱。無視できない強さの攻撃を継続的に実施)

 頭の中で対象の衛星(サテライト)に指示を出す。その指示と同時に、四機の衛星(サテライト)が姉さんを取り囲んだ。

「ただ機械に劣るほど、今の私は弱くない」

 姉さんは槍型の武装、《エインヘリヤル》を振りかぶって攻撃する。訓練された鋭い一撃だ。

 姉さんの言葉通り、ただの機械だったら避けられなかっただろう。でも残念ながら、新しい衛星(サテライト)に搭載されたAIはそんなに()()()()()()

 姉さんの攻撃をかわし続ける。人間の可動域と逆に動くよう、立ち回って。

「……やりにくい」

 姉さんは渋い顔をする。あんな避け方をされたらそういう顔になるだろう。

()()()()()()をモデリングして作ったAIだからね。そう簡単には壊せないよ」

「……なるほど、()()()()()()()を真似して作ったAI。前言撤回、その兵器も舐めてかかっていい相手じゃない」

 姉さんは何かに気づいたように態度を変えた。

 誰がモデルかわかったから言い直したのか。優しい姉さんらしい。

 

 気を取り直して攻撃を再開する。

 ありとあらゆる方向から姉さんのをうレーザー。今の姉さんの防性(プロテクト)随意領域(テリトリー)なら、左程ダメージにはならないだろう。

 でも、無視はできない。絶妙な鬱陶しさだ。

 姉さんなら、抜け出すのは難しくない。しかし、無理をして抜け出すと、その瞬間を狙われる。

 そのことを姉さんもわかってる。だから、様子見をしている。

 

 状況は膠着している。今のうちに畳みかける。

(五から八号機、モード《スクルド》)

 モード《スクルド》はモード《ウルズ》の逆だ。フルマニュアルで衛星(サテライト)の制御を僕が全ておこなう。

 制御難易度は上がるけど、細かい操作ができるようになる。こんな風に。

「なっ⁉」

 姉さんが驚愕の声を上げる。避けた筈の攻撃が直角に曲がって再び襲い掛かったから。

随意領域(テリトリー)を使って、攻撃の軌道を曲げたというの⁉」

「正解。姉さんは理解が早いね」

 姉さんの言う通り、一から四号機は攻撃、五から八号機は補助・妨害という形で分けている。分担することで、攻撃の厄介さを上げたんだ。

「まだまだこんなもんじゃないよ」

 軌道を曲げるのはただの初歩だ。収束、加速、威力強化とできることは選り取り見取りだ。

「何て自由な攻撃。その上、ジャミングまで」

 姉さんの随意領域(テリトリー)の出力が下がっている。ぼくのせいで。

「いいでしょ。魔術師(ウィザード)の天敵だよ。DEM相手には最高の武器だね」

 姉さんの言う通り、あの衛星(サテライト)たちは顕現装置(リアライザ)を妨害する電波を発している。

 実力ある魔術師(ウィザード)随意領域(テリトリー)でも出力を下げられる。

 エレン相手でも有効だ。無論、姉さんにも。

 姉さんの動きがさっきに比べて鈍い。攻撃も防御も、ただの移動でさえ。

 随意領域(テリトリー)魔術師(ウィザード)の生命線。それを妨害されるのは鳥の羽を毟るのに等しい。

「相手を妨害して、味方に支援する。シンプルな戦術でしょ」

「そんなレベルで実行できるのは、あなたくらいしかいない」

 姉さんは《エインヘリヤル》でビームを切り払う。何とか大ダメージを避けているけど、いつ状況か崩れてもおかしくない。

 全力を出せない状態。それなのに、全方位から息つく暇もなく様々なレーザーが飛んでくる。

 これ以上なくやりにくいだろう。そう思っていたんだけど。

 姉さんが《エインヘリヤル》の魔力を急激に増大させる。さっきの何倍の威力だ⁉

「はあ!」

 そのまま巨大化させた刃で衛星(サテライト)を切り払う。……三機やられたな。

「新しい兵器を手に入れたのはあなただけじゃない。慢心が過ぎるのはあなたの悪癖」

「……魔力を吸収する能力があるのか。《ブリュンヒルデ》、いいCR-ユニットだね」

 魔力の流れを改めて感じると、姉さんの手元に集まっている。二人分の魔力を集めて強化したのか。

「でも、あんな使い方したら残ってないでしょ」

 戦闘で空間に散った魔力を集めて利用する能力。でも、逆に言えばそれで集められる魔力には限りがある。

「…………」

 黙ってるけど、わかるよ。無駄に一か月以上過ごしたわけじゃないんだから。

「さあ、追い込みと行こうか」

 手元に残しておいた四機で大技の準備をする。

 姉さんが言った通り、大技を使うときは隙を作るんだよね。今は絶好の機会だ。

 

 魔力を充填しているその瞬間。急に邪魔が入る。

 随意領域(テリトリー)が変なものを察知した。空を割いて僕に激突しようとするバレーボール。

 この場にはある筈のないものだ。だからこそ、何が起こったのかが大まかに想像できる。

 一瞬考えた結果、攻撃を止めてそいつを受け止める。弾丸のような速度で飛んできたから、攻撃を止めて随意領域(テリトリー)を使用する羽目になった。

 一応味方だし、助けないといけないだろう。

「大丈夫か、真那」

 僕にぶつかってきたバレーボールは真那だ。随意領域(テリトリー)を使ったら、なんとなくわかった。

 七罪にやられたんだろう。仕方ないから、随意領域(テリトリー)で戻してやる。

「テメーに心配されるほど、落ちぶれちゃいねーですよ」

 元の姿に戻った真那が悪態をつく。

 助けてやったのに、失礼な奴だ。そして、真那の言葉は全く信じられない。

 完全な七罪のいいようにしてやられたのだろう。真那は決して弱くないんだけど。

「あら、元に戻っちゃったの?よく飛ぶいいボールだったのに、残念ね」

 七罪がこっちに寄ってきて真那を思いっきり嘲る。絶世の美女の口が三日月のようになっている。

「今度は何がいい?リクエストがあれば、好きな姿に変えてあげるわよ。どうせあなたを変身させるの機会なんて、腐るほどあるんだし」

 七罪はとても楽しそうに語る。何度やっても真那が負けるって。

 七罪は普段抑えているだけで、人を小馬鹿にするのが大好きだ。真那相手には遠慮なく発揮してる。

 本当、いい性格してるよ。……微笑ましく思っちゃ、ダメなんだろうな。

「あの性悪女。ぜっっったいに、泣かせてやります」

 真那が目をぎろりと鋭くさせる。殺意をひしひしと感じる。

 完全に切れてるな。()()()()()()()()

 真那は大事なことに気づいていない。あの煽りも含めて七罪の作戦だ。

 それをわざわざ説明してやる気にはならない。でも、チームメンバーとして、このまま突貫させるのは流石にダメだな。

 

「落ち着けよ、真那」

 真那の前に衛星(サテライト)をやって、真那の行動を止める。

「邪魔しやがらないでください。これはあの女との戦争でいやがります。邪魔するなら、テメーから先にやりますよ」

 真那は僕にも殺意を向ける。こいつ、僕が同じチームだって覚えてるよな?

「作戦もなしに突撃したら、さっきの二の舞だぞ」

「じゃあ、どうするってんですか?テメーがあいつを倒す作戦を考えると?彼女を本気で倒すことができるんですかねー?」

 真那の目は無理だと言っている。僕が七罪相手に手を抜くと思ってる。

「あんまり舐めないでほしいな。僕は七罪より弱いんだ。弱者が強者に手心を加える余裕なんてないよ」

「ほぅ、じゃあ聞かせてもらいましょうか、テメーの彼女をぶっ倒す作戦とやらを」

 真那は目を細めて話を促す。その舐めた態度を崩させてやろう。

 僕は真那に作戦を聞かせた。真那の反応は悪くない。

「とりあえず、テメーの作戦に乗ってやりましょう。色々ごちゃごちゃやるのはテメーだけですし」

「まあ、その通りだ。真那はいつも通りにやればいい。僕が攻撃を通しやすくするから」

 さあ、ここからがチーム戦だ。七罪に一泡吹かせてやる。

 

♦♦♦

 

「大丈夫、折紙?」

 ボロボロの折紙に声をかける。戦況が悪そうだったからちょっかいかけたけど、だいぶ酷いわね。

「……問題ない」

「そう見えないけどね」

 相変わらず素直じゃないわね。前に比べたら言葉の棘がなくなったけど。

「愛は強いでしょ」

「……正直、あそこまでとは思わなかった。顕現装置(リアライザ)の扱い自体も高レベルだけど、何より戦術が厄介」

 折紙は悔しそうな顔で呟く。愛に負けてる自分への怒りかしらね?

「あいつは時間を与えると次々奇策を考えるわよ。考える時間を与えないよう、間断なく攻めなさい」

 

「……了解した」

 私の言うこと聞くのは不服そうね。でも、愛を自由にさせると厄介なことがわからない折紙じゃないでしょ。

 愛は単純に強くて、それ以上に厄介なのよ。何して来るかわからないけど、絶対に戦場をかき乱す。

「さて、残念だけどさっきのアドバイスは一回忘れなさい。私たちは既に作戦会議の時間を与えてしまったわ」

 私たちが話をしている間に愛と真那も何か話してたみたいね。愛のことだから、何か仕掛けてくる。

「何が起こっても驚かないようにしなさい」

「わかっている」

 折紙は槍を構えて覚悟を決めた。私もしっかりと油断ならない相手を見据える。

 

 一番最初に動いたのはさっきと同じで真那。でも、真那だけじゃない。

「折紙、真那の周りに衛星(サテライト)がついてるわ」

「きっと、あれで何かする気」

 真那の周りには三機の衛星(サテライト)がぴったりくっついてる。

 真那だけでも十分脅威なのに。おまけまでつけてくるなんて。

「私が真那の相手をする。七罪は愛を」

「わかったわ、行きなさい」

 折紙はすぐに陣形を決めたわ。

 愛の対応を私がやるのは妥当ね。 近接戦闘メインの折紙より、私の方が向いてるわ。

 愛は後ろで動かないけど、そのまま操作に集中するつもりかしらね?そんなことさせないけど。

千変万化鏡(カリドスクーペ)――氷結傀儡(ザドキエル)

 四糸乃とよしのんの力を借りる。これで愛を狙い撃ちにする。

 愛の弱点は火力がないことよ。シンプルな弾幕が一番刺さる。

「四糸乃直々に教えてもらった技の威力、見せてあげるわ」

 作り出すのは馬鹿みたいな数の氷の弾丸。一発一発が愛より大きい、致命の一撃。

 それを一気に発射する。避ける隙ができないようにわざと範囲を広げて。

 

 氷の弾幕が愛にダメージを与える。それができなくても、衛星(サテライト)を操作する集中力を削ぐ――そのつもりだった。

 なんというか、感触がおかしい。抵抗がなさすぎる。

 あっさりと随意領域(テリトリー)を破壊してしまった。まるで愛がそこにいないみたい。

「――まさか⁉」

 そこまで考えてやっと気づいた。あいつならやりかねない。

千変万化鏡(カリドスクーペ)――颶風騎士(ラファエル)穿つ者(エル・レエム)】」

 耶倶矢の天使を使って最高速で()()()()()()()へ近づく。予想が当たっていることを確信しながら。

「やっぱり」

 そこにいたのは三機の衛星(サテライト)。ダメージを受けて随意領域(テリトリー)が維持できなくなったから、化けの皮が剥がれたのね。

 さっきそこにいるように見せてたのはただの立体映像。随意領域(テリトリー)で気配まで誤魔化してただけ。

 やられたわね。あいつ、どんどんこういうのが上手くなってる。

「七罪、ここにいるのは真那じゃない!」

 折紙が事態を伝えるために叫ぶ。でも、ここまで来たら驚かない。

「……そうなるわよね」

 こっちの愛が贋物なら、あっちの真那も贋物。真那に衛星(サテライト)がついてたんじゃなくて、衛星(サテライト)が真那の贋物を作っていたってことね。

 

「折紙、多分本物がどこかに……」

 折紙に警戒を促したそのときだった。なんとなく嫌な予感がしたのは。

 その予感に従って全力でその場から飛びのく。

「完全に虚を突いたつもりなんですがね~」

 そこに立っていたのは真那だったわ。さっきまで私がいたところに刃を振り下ろしてた。

 あと少しで刃の餌食になるところだった。危ないわね。

「まあ、気持ちの悪い余裕を崩せただけ良しとしましょう。あいつの力を借りたのは気に食わねーですが」

「ふん。愛の力を借りて粋がってるなんて、お子様らしくていいわね」

 強がってみるけど、実際のところ冷や汗だらだらよ。私はあいつの攻撃まともに一発でも受けたら負けるんだから。

 真那は舐めてかかれるほど弱くない。近接戦なんて長く続けたら絶対負ける。

 だから、実力が発揮できないよう怒らせてたのに。愛ったら、余計なことしてくれちゃって。

 あともうちょっとで攻撃が届くところだったわよ。

「じゃあ、もう一回です。今度はきっちり当ててやりましょう」

 真那はまた空気に溶け込むように消えていった。やっぱり、不可視化(インビジブル)で隠れてたのね。

 しかも気配まで消えてる。

 単純に火力が高くて速い真那。その攻撃を通すために真那を攻撃の瞬間まで認識できなくさせる。

 どう考えても愛の作戦ね。真那の力を完全に引き出してる。

 

 多分、贋造魔女(ハニエル)を別の天使に切り替えようとしたら狙われる。だから、このまま颶風騎士(ラファエル)で対処するしかない。

 風を起こして身を守る。身を守るためじゃなくて、攻撃を感じ取るためのセンサー替わり。

 一瞬の変化も見逃しちゃダメ。見逃したら、次の瞬間には斬られてるから。

 私の周囲を渦巻く風が変な流れをする。すぐ上から来る。

 それを感じてすぐに前方へ少し動いた。

「もらった!」

 真那が一瞬遅れて攻撃を仕掛ける。後一瞬遅かったら負けてたわね。

 でも、これでチェックメイトよ。真那は今最も無防備な姿を晒してるんだから。

「はぁ!」

 身体をひねって穿つ者(エル・レエム)の矢じりを突き出す。攻撃の最中に横から思いっきり受けた真那は飛んでいく。

 随意領域(テリトリー)もあるんだし、死にはしないでしょ。ちょっとは加減してやったし。

 真那が気絶してるのを確認して一息つく。

 

「引き分けかな?」

 背後を見ると愛が立っていたわ。気絶した折紙を抱えながら。

「そうみたいね」

 タッグ戦で互いに一人ずつ再起不能。流石に引き分けかしらね。

「新しい兵器も手に入れたし、勝てるとかもって思ったんだけどね。やっぱり七罪は強いや」

 愛は残念そうに頭をかく。

「あんたは十分強いわよ。今までみたいに模擬戦で圧勝なんてのはもう無理」

 愛はどんどん強くなってる。騙し騙し勝ってきたけど、そろそろきつそうね。

 今回の勝負も一歩間違っていたら私は負けてた。

「そうかな?だったらいいんだけど」

 信じてなさそうな顔の愛。もうちょっと強さを自覚してくれないと、私が死にそう。

「頼むから、本気の攻撃は止めて。私の霊装、あんたの随意領域(テリトリー)より薄ぺらいのよ」

「そうなの?じゃあ、今度から一応威力の調整を考えないとね」

 そんな心配いらないでしょって顔してるわね。私が攻撃全部避けると思ってるのかしら。

 信頼してくれるのは嬉しいけど、過大評価よ。私、戦闘のプロじゃないからね。




魔術師組メインの回でした。こいつらも強いけど、最上位組が化け物なんだよな。だから、色々活躍の場を考えてます。

今回の裏話。七罪は顕現装置に関して勉強しています。当然、愛くんによる影響です。

原作知識、現地で得た知識関係なくひたすら教えています。呆れ顔をしながらも、七罪は真面目に勉強しています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。