ちょっと短めですがどうぞ。
2025年2月8日
内容を追加しました。愛君の士道へのスタンスです。
「出ていけー!」
十香の叫び声が壁越しに聞こえてくる。原作を読んでいる僕には、何が起きているか分かる。だから、微笑ましく思っている。
士道が琴里の策略に嵌って十香にラッキースケベをかましているだろう。外野から見たら面白いものだ。
「何やってんのかしらね。」
七罪も呆れている。何が起こっているかは知らない筈だが、予想はついているようだ。何が起きたか察しているのだろう。
僕と七罪はが五河家に来ていた。琴里にこっそり呼び出されたのだ。
士道には秘密でと言っている辺り、何か悪巧みをしているのだろう。僕と七罪に害はないから、士道へのチクりはしない。
「おー、愛に七罪、ようこそだぞー。」
チャイムを鳴らすと琴里が出迎えてくれた。今日は白いリボンの妹モードだ。
基本的にフラクシナスで会うから、妹モードの琴里は久しぶりだ。最後に見たのはアメリカに行く前じゃないだろうか。
琴里はリボンの色で性格を切り替えている。白いリボンの可愛い妹モードと黒いリボンのサディスティックな司令官モード。
どちらも琴里で、記憶も共有している。言うなれば、鉢巻きをして気合を入れるようなものだ。別人レベルで言動が変わるけど。
「お招きいただきありがとう。」
「お邪魔するわね、琴里ちゃん。」
「どうぞなのだー。」
廊下を抜けてリビングに行くと、士道と令音さんが座っていた。令音さんも今回の参加者であることは聞いていた。
「久しぶりだな。愛、七罪。」
士道が元気なさそうに挨拶をする。先ほどの事を考えたら、元気が無い理由を察することはできる。だから、聞かないことにしよう。
「やあ、愛、七罪。君達も来たようだね。」
令音さんはコーヒーに口をつけつつ挨拶をする。コーヒーには明らかに溶け残りの砂糖が沈んでいる。一般人が飲めるような代物ではない。この人の食生活は一般人が真似したら即糖尿病レベルだ。
「お久しぶりです。」
「久しぶりね、二人とも。」
僕たちは軽く挨拶を返す。
「それじゃあメンバーも揃ったことだし、お話を始めましょうか。」
挨拶もそこそこに琴里が話し合いの開始を宣言した。琴里はいつの間にかリボンを付け替えて司令官モードに切り替えている。こうして琴里の妹タイムは減っていくのだろうな。
「シン、君には十香のアフターケアをして貰う。」
「十香のアフターケア?」
士道は不思議そうに聞いている。まあ、士道にとっては急な話ばかりで分からないことだらけだ。士道はゆっくり知っていかなければならない。自分の能力について。
「彼女は君との口づけによって精霊としての力を封印された。今二人の間には目に見えない経路、パスが通った状態になっている。」
「待ってください。そもそも封印って……」
「あの後、説明したでしょ。士道は好感度を上げて、精霊とキスをすることによって、その霊力を封印することができる。」
令音さんと琴里は冷静に説明する。士道に教えることを重要なことだから二人とも真剣だ。
一方、七罪はつまらなそうに聞いている。その辺の情報は既に教えているから、七罪にとってはただの復習にしかならない。
面白味が無くても仕方ない。もうちょっと繕って欲しいけど。
「だから、何でそんな力が俺に……。」
「そこまでは知らないわよ。ラタトスクの観測機で調べて分かったの。」
琴里は苛立ち交じりに士道に答える。琴里自身も分からないから苦労しているのだ。
それを知っているのは僕と始原の精霊のみ。僕は口を割る気は無い。始原の精霊には当分会えない。だから、秘密が明かされるのはだいぶ先の話になるだろう。
「話を戻して良いかな?」
令音さんがずれた話の軌道を修正する。微妙に悪くなった空気もついでに戻してくれる。本当にありがたい。この人は琴里の優秀なサポート役だ。
「だが、彼女の精神状態が不安定になると、君の中に封じ込められている力が逆流してしまう恐れがあるのさ。」
「はぁ。」
「十香は君の傍に居るときが数値が最も安定する。十香の住まいの準備が整うまでは、ここに住むのが一番だろう。」
「そうなんですか?」
令音さんの言葉を聞いて琴里にアイコンタクトを送る。琴里はにやりと少し笑う。
どうやら確信犯であるようだ。正しい意味でも誤用の意味でも。
ラタトスクが住まいの準備をするのに時間がかかるとは思えない。僕たちが住むために既に精霊マンションは建築されている。
部屋自体は有るのだから、長くても三日で準備は終わるだろう。そもそも、十香の検査期間中に準備すればそんな期間は始めから無かった。つまり、琴里はわざと十香の住まいの準備を遅らせているのだ。
まあ、理由は色々と考えられる。初めての精霊保護だから色々なデータを取りたいとか、士道の訓練をしたいとか、単純に大好きなお兄ちゃんに意地悪して楽しみたいとか。
最後のまで含めて許容するつもりだから、追及しなくてもいいだろう。そっちの方が面白そうだし。
「それに、これは士道の訓練でもあるわ。」
「訓練ってまだやるのかよ。もう十香の力は封じ込めたって言ってたじゃないか?」
「あはははは、士道君それ本気で言ってる?あーおかしい。」
士道の言葉に七罪が思いっきり笑い出す。士道が何を言っているか分からないって顔をしている。琴里と令音さんは微妙に困った顔になっている。
まあ事情を知っていれば、なかなか滑稽なことを言っていることが分かる。だって目の前に二人も精霊が居るのだから。
「七罪、そう笑ってやるな。士道さんは精霊の事何も知らないんだから。」
「そうね、悪かったわ。」
七罪は笑い涙を拭いながら姿勢を戻す。七罪ってなかなか
「はぁ。精霊が十香一人だなんて誰が言ったの?」
「あ。」
士道は呆気にとられたように呟く。七罪の嘲笑の意味が分かったのだろう。少し恥ずかしそうにしている。
「その通り。特殊災害指定生命体、通称精霊は十香の他に数種が確認されている。七罪もその内の一人だ。」
「はい?」
士道は突然のカミングアウトに驚いている。そういえば言っていなかったな。
これに関しては別に隠すつもりでは無かった。少し悪いことをしただろうか。
「は~い、特殊災害指定生命体で~す。」
七罪は両手を振りながら笑顔で言っている。友好的を通り越して煽ってるだろう。
まあ、七罪が楽しそうだからそれで良いか。士道の説得なんてどうにでもなるだろうし。
「どうして、精霊が封印もせずにうちの隣に住んでいるんですか?」
まあ、当然の疑問だ。封印していない精霊なんて、爆弾みたいなものだ。隣に住んでいて嫌がらない方がおかしい。
「彼女とは封印をしない代わりにラタトスクに協力をする約束になっている。」
「約束って。」
「それに彼女は一年ほどラタトスクが監視しているが、民間人に危害を加えたことは一度もない。愛が一緒にいる限り、彼女は安全な存在だと我々は判断している。」
「そこで何で愛が出てくるんですか。」
「愛が唯一、七罪に信頼されている人間だからよ。私たちラタトスクは利害が一致しているから協力関係になっているだけ。背中を預ける存在とは思われていないわ。どうやったのかは知らないけど、愛はラタトスクに会う前から七罪と関係を築いていたの。」
琴里の説明に士道は閉口する。事態を飲み込むことができない。
「愛、お前たちは何者なんだ?」
士道が僕の方に向いて問いかける。その表情はなかなか険しい。
「そうですね。何者かと言われたら、士道さんの協力者と言った所でしょうか。それ以上は余り話す気が有りませんね。」
「話す気は無いって。」
飄々と答える僕に士道は困った様子だ。まあ、味方の発言とは思えないような発言だと自覚はある。
「士道さんと精霊達の悪いようにする気は有りません。情報を伏せることには僕と七罪のメリットの為です。でも、士道さんの為という側面も有ります。情報は多く持っていれば良いというものでもないんですよ。」
僕の発言を聞いて士道は考え込んでいる。琴里もこちらを睨むように見ている。
結構含みを持たせた言い方をしているから、二人なりに考えているのだろう。まあ、現在の情報量で答えに辿り着くことはほぼ不可能だ。
こちらは涼しい顔をしていれば良い。そう、空気が読めているのに敢えて無視している七罪のように。
「七罪の話はいったん放置だ。シン、君には引き続き精霊との会話役をお願いしたい。女性との会話や扱いにますます慣れて貰う。」
「それで十香と一緒に暮らすという訳ですか。」
「その通りだ。」
士道が令音さんの言葉に食ってかからない。先ほどの話で疲れたからだろうか?だったらそれはそれで良いのだが。
息を潜めているがドアの向こうに誰かが居るのが分かる。十香が会話をこっそり聞いているのだろう。
自分が入ると気まずそうだから、タイミングを図っているといった所だろうか。
どっちにしろ未来はそんなに変わらない。素直に肯定しておく方が十香の印象は良い。だから、素直に肯定してくれると嬉しい。
「分かりました。十香を家で受け入れます。俺に拒否権は無さそうですし。」
士道は悪態をつきながらも了承する。何だかんだこの主人公は優しい。その優しさが彼にハーレムを成立させているのだから、そうでなくては。
「シドー、私はこの家に住んでも良いのだな?」
「十香!」
十香は嬉しさのあまり士道に飛びついた。士道は十香を受け止めきれず、床に倒れこんでいる。痛そうだが、士道にとって日常茶飯事だから、問題ないだろう。
結果として士道の家に十香が住むようになった。なお、その日から五河家が騒がしくなったのは言うまでもない。
♦♦♦
部屋に戻って、僕たちは適当に過ごしていた。僕は《ノルン》の整備、七罪はタブレットで何か見ている。
部屋でできる作業、というより部屋で集中した方が良い作業だ。でも、二人とも自室に戻らず、大部屋でやっている。
僕も七罪も寂しがり屋だ。それが僕たちの関係が成立している理由の一つでもある。
「愛。」
「なにー?」
互いにやる気のない声で呼びかける。きっと、話す内容自体にあまり意味はない。
どちらも集中する必要はない。僕の整備は片手間でできるほど慣れた作業だし、七罪も真剣に調べているわけではない。
自然と作業をしながら片手間にお喋りするようになる。その内、お喋りの片手間に作業をする事になりそうだけど。
「あんた士道のことどう思ってるの?」
先ほどの調子で気の抜けた感じで話している。ちょっと聞いておきたいくらいのテンションだ。
「それは人間として好きかどうかって言う話?」
「そうよ。あんたの態度を見てると、いまいち分からないのよ。士道が撃たれることを見逃したり、役立ちそうな情報をわざと与えなかったり。もしかして、士道のこと本当は嫌い?」
七罪はちょっと楽しそうに聞いている。人間の負の面とにらめっこしているするような性格だ。
七罪自身、人の問題点探しや批判が得意だ。他人がするのを見るのも楽しいのだろうか?
「別に嫌いではない。むしろ、どっちかと言うと好きだよ。」
「じゃあ、どうして酷いことしてるのよ?」
七罪は不思議そうに聞く。好きな相手に意地悪をする。真面目な状況でそれをするほど、僕が子供じゃないと知っているからだ。
「一つは情報を与えたくない相手が近くにいるから。士道さんを経由して情報が渡る可能性が有る以上、渡す情報は選ばなければならない。」
なにせ、ラタトスクの中には
だから、情報はかなり絞っている。余裕が有るように、渡しても良い情報のハードル上げて。
「でも、それじゃあ説明がつかないでしょ。よしのんのことくらい、教えてあげたら良いじゃない。」
それはその通り。よしのんのことは士道に伝えても問題ない情報。それを士道にも琴里にも伝えず抱えている。
四糸乃はよしのんと人格を切り分けることで精神が安定している。これを知らなければ、四糸乃の攻略は地味に面倒だ。
それなのに敢えて教えていない。その理由は実利と趣味を兼ねた目的のためだ。
「それは士道さんがふさわしい人間になるためだよ。」
「ふさわしいって何に?」
「精霊のハーレムを築くために。」
「……?」
七罪はまだ不思議そうな顔をしている。簡潔に話をできないのは僕の悪い癖だ。だから、僕の考えをじっくり聞かせよう。
「士道さんはこれから十人以上の精霊を封印する。」
「そうらしいわね。」
士道と言う存在は十個の
多分それは覆しようのない事実だ。始原の精霊はそのために三十年動いている。
「そして、これからどんどん攻略の難しい精霊が出てくる。十香さんはトップクラスに簡単な方だよ。」
「十香が簡単?私、ハンデがいくら有っても十香に勝てる気がしないんだけど。」
七罪は泣き言を言う。十香より攻略が難しい精霊と聞いて、十香より強い精霊を思い浮かべたのだろう。
「攻略難易度の中で精霊の強さはそこまで重要な要素じゃない。問題は性格の方だよ。」
「性格?」
「そう、性格。精霊は精神的に何か問題を抱えた娘しかいないから、それを解決することが精霊攻略のカギになる。」
十香は存在を否定され続け、人間に諦めを抱いていた。四糸乃は攻撃されるストレスから身を守るために自分自身の人格を切り分けた。これらの問題を解決することが精霊攻略の必須条件だ。
「ちょっと待って。あんた今
七罪が発言を聞き逃さなかった。自分自身も精神的に問題が有るって案に言われていることに気付いたようだ。
「じゃあ逆に聞くけど、無いと思っているの?」
「………………黙秘するわ。」
たっぷりとした沈黙の後、答えた。それは下手な肯定よりも力強く認めているぞ。
「僕はそういう七罪が好きだから。面倒くさくない人間なんて面白味がないじゃん。」
「あんた、やっぱり変わってるわね。」
珍獣でも見るかのような目で見られている。変わっている自覚はあるけど、そこまで言うほどかな?
「話を戻すぞ。これから精霊の攻略はどんどん難しくなる。だから、士道さんが成長しないといけない。僕が攻略を手助けしてたら、成長しないでしょ。」
士道は主人公だ。決して楽をさせる気は無い。
死んでもらっては困るけど、死ぬほど痛い、辛いのは我慢してもらう。それが僕のイメージする五河士道だ。
「なるほどね。なんとなく分かったわ。」
「それは良かった。」
七罪の顔は納得したというよりも、呆れたというものだ。士道に対する感情が歪んでいることは自覚している。でも、妥協するつもりはない。
「士道も大変ね。」
「僕も辛いから道連れにするよ。」
僕も始原の精霊とDEMを相手取るっていう、馬鹿みたいな難易度の挑戦を強いられている。士道一人だけに楽な思いは絶対させない。一緒に地獄に付き合ってもらう。
七罪の困った人を見る目を受けながら、僕はとっくに終わっていた作業の片づけをした。
士道君への説明会って感じです。今回はちょっと薄味ですね。次回から盛り上げていくのでお許しください。
次回から四糸乃攻略。原作とは違ってあの人が早めに登場します。
気に入って頂けたら評価等して頂けると嬉しいです。
今回も裏話を少し。愛君はどの程度「デート・ア・ライブ」について知っているか。端的に言うとほとんど全部知っています。但し、記憶があやふやな部分も有ります。狂三の能力を全部言えとか言われたら、いくつか言えません。それでも始原の精霊も含めて精霊の能力はほとんど覚えていますし、原作の流れも大体頭に入っています。