また毎日投稿したいから溜めてるんですよ。折紙の誕生日をスタートにしたいと思ってます。
磨き上げられた大理石が反射する浴場。下手な温泉を凌ぐ広さのそこへ私たちは案内されていた。
「なんでこんなことになってんのよ?」
七罪がタオルを握り締めて前を全力で隠している。恥じらいを越えて恐怖を感じてるな。
「気持ちはわかるけど我慢してほしい。美九さんがやってくれないと計画が破綻しかねないから」
七罪の肩に手を置いて説得する。いざとなったらこの身を差し出そう。
「うふふ、そんなに緊張しなくてもいいじゃないですかぁ。女の子同士なんですから」
背後から美九が湯気をかき分けて現れる。両手を広げ抜群のプロポーションを惜しげもなくさらしている。
その目はぎらぎらとこちらを見つめている。
胸や鼠径部を視線が往復しているのは気のせいじゃないだろう。舐め回すようにいやらしい視線を嫌でも感じる。
「約束を忘れないでくださいよ。一緒にお風呂に入ったら、天使を使ったステージを見せてくれるって話」
そのためにこんな危険人物とお風呂に入っているんだから。この人と一緒にお風呂に入るなんて獣の檻に飛び込むのと大差ない。
「大丈夫ですよ~。ちゃ~んと、皆さんの限定ライブを披露してあげますからね~」
美九さんは満面の笑みで肯定する。とりあえず、約束を破る気はなさそうだ。
「何が楽しくてこんな凹凸のない身体見たいのよ。ロリコンなの?」
七罪は訝しげな目で美九のことを見てる。後ずさりして少しずつ距離を取っている。
「何言ってるんですか七罪さん?おっぱいに大きいも小さいもありませんよ~。
女の子のおっぱいは全て私を誘惑する禁断の果実なんですぅ。も・ち・ろ・ん、七罪さんも」
「ひぃ!」
七罪は美九の言葉を聞いて悲鳴を上げる。顔を青くして身を震わせる。
完全に怯えてる七罪はかわいいけど、この状況は許容できない。二人の間に割って入る。
「悪いですけど、七罪は私のものなので。七罪の身体を美九さんに許すつもりはありません」
美九を軽くにらみつつ七罪の前に立ちふさがる。
「あらあら、嫉妬ですか~?」
唇に手を当てながらくすくす笑う美九。反抗的な態度を楽しんでいそうだ。
「そうですよ。彼女を狙われて平静でいられるわけないでしょう」
この世界で一番大事な子だ。絶対誰にも渡さない。
「愛……」
七罪は私の後ろに隠れる。絶対に手を出させてなるものか。
「いいですね~。女の子同士で仲良くする子は沢山見てきましたけどぉ、あなたたちほど仲が良いペアは見たことありません」
美九は舌なめずりをする。獲物を狙う蛇のように。
「すごく欲しいですぅ。やっぱり私のものになりませんかぁ?二人一緒にかわいがってあげますよぉ」
甘い声で囁く。霊力で私たちの脳を揺らしながら。
「お断りしますよ。二股はしない主義なので」
七罪は完全に私の背中で身を小さくしている。死んでも守らないと。
「うふふ、気が変わったらいつでも言ってくださいね?三食おやつ付きで一生かわいがってあげますから」
そう言って美九は身体を洗い始める。美九の力は効かないけど、精神衛生上悪いんだよな。
♦♦♦
薄暗い会場の中、観客はたった三人。私と七罪と姉さん。
それぞれペンライトを持って主役の登場を待っている。
「わざわざ天使を使ったライブをみたいだなんて、何が目的?」
姉さんが横目でちらりと見る。私がミーハーでないことを知ってるから、裏があると思ったんだろう。
「単純だよ。美九さんの天使、
姉さんを見ながら微笑む。口角を思いっきりつり上げながら。
「七罪の天使の能力?」
姉さんも天使の能力はそこそこ把握してる。
「まあそれもあるけど、本命は
「あなたの天使、そんなことも可能なの⁉」
姉さんが目を見開く。
「
最初に精霊化したとき、
解析した天使の情報を
「解析に時間がかかることだけが弱点かな。最低でも十分は天使を解析しないと再現できない」
「いや、そんな条件あってないようなもんじゃない。それで天使の能力完コピできるって」
七罪が半目で見てくる。能力を不完全にコピーする
「本当、あんたの天使ってチートよね。絶対
七罪が会場の席に背中を預けてふんぞり返る。不平不満は仕方ない。
「まあ、それが自然かもね。力の由来を考えたら」
「それって一体……」
姉さんの問いかけと同時に会場がライトアップされる。ステージの幕が開き、霊装をまとった美九に視線が集まる。
話は自然と終わり、私たちもステージに集中する。
「愛さ~ん、七罪さ~ん、折紙さ~ん。今日は誘宵美九のスペシャルライブですよ~。是非楽しんでくださいね~」
美九がこっちに向かって手を振る。観客が三人しかいないから完全にこっちしか見ていない。
ペンライトを振って返事代わりにする。美九はそれを見てにっこり微笑む。
「最初は新曲ですよ~。聞いてください、egoistic lily」
美九が澄んだ声でねっとりと歌いだす。
歌唱技術は超一流だし、麗しい見た目も歌の魅力を引き立てる。アイドルに必要なボーカル、ビジュアル、ダンス。全てが高水準だ。
しかし、純粋に楽しめない。歌に支配欲がまとわりついている。
霊力で身を守っていなかったら鳥肌ものだっただろう。耳にヘドロでも流された気分だ。
「この曲、七罪が作ったんでしょ?」
「美九が何度もせがんでうるさいから仕方なくね」
七罪が腕を組んで口を尖らせている。七罪はオールマイティに何でもできるハイパー人材だ。
美九はそこに目ざとく気づいて要求してきた。本当に我儘な人だ。
その要求に対し、プロに見劣りしない曲を数日で作り上げてしまった。私の彼女、凄まじい。
「皮肉であの曲名つけてやったんだけど、なぜか気に入っちゃって」
「今の誘宵美九を体現したかのような曲」
姉さんの言葉通りだ。どこまでも我儘で周囲を顧みない孤独な百合の花。
美九はそれに気づかずステージの上で歌い続ける。哀れなピエロのように。
「お人形はアレのことを絶賛し続けるんでしょうね。本当、哀れな奴」
七罪は冷め切った目で肘をつく。耳が手に覆われることも気にしないで。
「救い出してくれるといいんだけどね」
細めた目でステージの上を見つめ続ける。心を無にして解析にひたすら集中しながら。
これなら耳栓でもした方がマシだな。
♦♦♦
ギターが生きているように音を鳴らす。軽快なリズムで主旋律を奏でる。
まるで自分じゃないみたいだ。意識しないでも指が勝手に動く。
最後に弦を思いっきり弾いてポーズを決める。周囲からはぱちぱちと拍手が巻き起こる。
「すっご~い、士織ちゃんギター上手いじゃん」
「っていうか、私たちより上手いんじゃない?」
「もしかしてライブ経験者?」
山吹、葉桜、藤袴のアイマイミートリオが褒め称える。ちょっとくすぐったい。
「そんなことないですよ。身内にそういうの得意な人がいて」
ステージ勝負が決まってから約一週間。寝る間も惜しんで練習させられた。
この曲だけなら目を閉じても弾けそうだ。今は無意識に指がコードを抑えようとするくらい。
「専用の曲まで貰っちゃったし、本当に士織ちゃんの身内の人様様だよね」
山吹がスマホでデモ音源を流しながらありがたそうに拝む。琴里が用意したこのステージ専用曲だ。
プロに依頼して作らせたようだ。本当、ラタトスクの力って凄まじい。
「かかか。士織よ、我らと並び立つにふさわしいレベルまで到達したようだな」
「微笑。待ちくたびれました。」
耶倶矢がドラムスの前に立ち、夕弦がベースを握っている。二人とも遊びのようなメロディを奏でているだけなのに、レベルの高さがよくわかる。
情熱的かつパワフルでありながら、旋律を引っ張っていくドラムス。流れるような指遣いで華やかさを加えるベース。
聞いていると呆気に取られてしまう。素晴らしい音色だ。
「鈍っておらぬようだな、夕弦よ」
耶倶矢とスティックでポーズを取りながら夕弦を挑発する。
「反論。耶倶矢のように三歩歩いただけで忘れるような忘れん坊ではありません」
「誰がニワトリじゃコラー!」
和やかな喧嘩をしながらリズムは加速する。じゃれ合いの中でリズムはより磨かれていく。
この二人が何でもできる理由がわかった気がする。こうして二人で高め合ってきたんだな。
「いや、本当に三人とも最高の助っ人だよ。こんな急にプロレベルの三人がバンドに入ってくれるだなんて」
「ほんとほんと」
「欠員出て困ってたの」
アイマイミートリオが両手を握り締めて祈るように感謝する。その言葉に苦笑いが出てくる。
どっちかというとこっちの都合で勝手にやってるだけだからな。最優秀賞を取らないと一生メイドにされちまう。
「シド、じゃなかった。士織よ、見てくれ」
十香が音楽室に入ってくるりと回ってみせる。いつもの制服じゃなくて白と紺のメイド服だ。
白いエプロンがふわりと舞い、十香の夜空のような髪色とコントラストを描く。メイド服定番のカチューシャも心をくすぐる。
大きめのリボンが個性となっている。十香という素材の良さもあってドキドキする。
「似合ってるぞ、十香」
「そうだろそうだろ、えへへ」
十香は犬みたいにすり寄ってくる。頭をなでてやるとピコピコと揺れる耳が見えるようだ。
「おっしゃー、これで準備は整ったわ」
「今年こそ打倒竜胆寺よ」
「最優秀賞は私たちのものだ~!」
アイマイミートリオが拳を上げてやる気を出している。俺たちも一緒に乗っておく。
できることは全部やった。後は当日全力を尽くすだけだ。
♦♦♦
フラクシナスの訓練場。
彼女のために設えられた新兵装、《フレイヤ・キャット》。
彼女のイメージに合わせて作られた猫のような外見の兵装です。どこか以前の装備、《チェシャ―・キャット》を彷彿とさせます。
感覚器の延長となる猫耳がピコピコと反応しています。第三の手となる尻尾もゆらゆらと揺れている。
臨戦態勢ですね。私相手に全くひるんでいません。
「行きます!」
猫のように伏せた状態から身体のばねを使って一気に加速します。
見失いそうなほど速いですね。ただ――
「真っすぐ過ぎます!そんなんじゃ当たるものも当たんねーですよ!」
初動と速度から予測して剣を置くように振るいます。野球のピッチングのようにきれいに決まりました。
そのままミケさんはごろごろと転がり最初の地点に戻ります。
「いった~」
ミケさんは頭を撫でながら立ち上がります。ただ、ダメージはほとんどなさそうですね。
「フェイントや不意打ちを絡めてここぞというときに本命を打ち込みやがってください。頭を使いながら戦うんですよ」
「はい!」
ミケさんは一呼吸おいてすぐに攻めてきます。今度はフェイント絡めながら。
今は稚拙過ぎてフェイントと本命の区別が簡単につきます。ただ、素直で全力投球。
技術なんか後でいくらでもついてきます。大事なのは諦めない根性と向上心です。
真那の刃を右爪の《セスル・クロー》と左爪の《ビョルグ・クロー》で捌いていきます。攻撃がなかなか当たらなくなってきました。
《フレイヤ・キャット》の能力、未来予測。高精度な演算機能によってこの程度の攻撃の軌道はあらかじめわかっているようです。
ただそれだけじゃありません。
「いいですね、動きに無駄がなくなっていきました。」
「ベルさん、アルテミシアさんと戦った記憶がありますから」
なるほど。《チェシャ―・キャット》には本物のアルテミシア・ベル・アシュクロフトの意識が宿っていたんでしたね。
その記憶をに追いつける装備を得て技術が生き始めたと。
「これは嬉しい誤算でいやがりますね。もうちょっと本気で行きますよ」
「お願いします!」
ミケさんは腰をぐっと落として両手の装備を構えます。指導なんて柄じゃないと思ってたんですけど、案外悪くねーです。
そろそろ美九編も準備が整ってきました。次回から天央祭スタートですよ。
今回の裏話は《フレイヤ・キャット》について。
デート・ア・ストライクを読んだ方はわかるでしょうが、彼女が以前使っていた《チェシャ―・キャット》を基にした兵装です。いろいろとラタトスクのノウハウが導入されています。未来予測以外にも能力があるんですが、それはまた後日。
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