オーバーロード17 支配の共鳴[上]異種族の恒久的平和の為の世界平定と忘れ去られた38人目の忘れ形見(最新16巻直後からルート分岐) 作:ぽきぷし
SS3 あの頃の鈴木悟の日常①
あらゆる個人企業が大手資本の出資と結び付いた結果、自国籍、多国籍の巨大複合企業数社が国内外の市場と雇用の9割以上を占有している現代において、没入型VRMMOゲームは、小市民であり向学心もなく日々社畜として暮らしていた鈴木悟にとって唯一の逃避先であった。
取引先に営業に向かうにしても開発部の推したいらしい商品の知識を詰め込み想定問答を脳内で組み立てアポをとっても、相手の返事は凡そ決まっており同行する先輩、同僚、後輩と共にと玉砕し嘆息する日々。
足繁く通いようやく信用が得られた矢先実交渉の際には、学閥や縁故採用の上司・或いは高学歴の意識高い系若手社員が案件ごと持っていく。学歴も社会的信用もない自分の扱いは退職まで変わらないのであろう。
そんな疲弊した生活の逃避先のユグドラシルでも最近ギルド内が閑散としてきており、レベリング中の数名の若手(それぞれ他ギルドの間諜でないのか、社会人で一定の経済力があるのか?の厳正な審理を通過した信用のおける期待の新戦力だ)以外のIN率低下が顕著である。
(何かテコ入れをしようにも今でも意見の対立に右往左往している俺のキャパオーバーだしなー常識的に考えてテコ入れ呼びかけるなら腹案の一つでもなきゃ駄目だろうし。)
ままならないものだな。と今日も若手底辺社員として淡々と業務をこなすのであった。40になるまでに社会が変わるか会社に変革がなければ一生飼い殺しの社畜だろうけど、自分には営業マンの平々凡々なスキルとユグドラシルしか寄る辺がないのだから。
とうにすっかり陽が沈んで帰宅し軽く食事をとって時刻は22時、今日も日課のユグドラシルをプレイすべく電脳世界へダイブする。
「あれ?有象武将さん。珍しく時間が合いましたね 今日はお休みだったんですか?」
「あ!モモンガギルマス〜♪お疲れ様です。今日は…」
そして現在
駄目だ思い出せない。あの時有象無象さんは何を話した?有象武将さんの職業は現実での職業は確か…いや今更思い出しても過ぎ去った日々の事だ。
感傷に浸るのは、大陸でのナザリックの立場が安定してからでいいじゃないか。
そう俺には悠久の時間がある、飽きが来るまでこの身が滅びるまでこの異世界を楽しみ尽くしてやる。
去っていったギルドメンバーの分も含めて取り敢えず100年後に起きるかも知れない世界の変節期までに地盤を固めてユグドラシルプレイヤーだろうが誰だろうが迎え入れてあげよう。敵対して来ても揺るぎないアドバンテージを持って先達者としての度量を持って。いつか現れるかも知れない友の為に、いや新たに現れるかも知れないまだ見ぬ友の為に。
眼窩には決意新たに揺らめく赤い光が灯っていた。