オーバーロード17 支配の共鳴[上]異種族の恒久的平和の為の世界平定と忘れ去られた38人目の忘れ形見(最新16巻直後からルート分岐)   作:ぽきぷし

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Tゲバーの英霊を顕現させる詠唱は、呼び出す対象以外の部分は共通しておりバランス顕現時は描きませんでした。

BLEACHの黒棺完全詠唱などをイメージして長くリズム感の良い物にしました


第一章:029話 狸の皮算用――富まされる者と、より富む者しかいない甘美で優しい経済支配【前編】

 

 

 

 時間は少しばかり過去へと巻き戻る。

 作戦段階1の二日目。第二回対スレイン法国戦略評議という、極限まで張り詰めた知略と威圧の応酬――双方の思惑が交錯する死線めいた外交戦を無事に乗り切った直後のことであった。

 ナザリック地下大墳墓、第九階層。

 無数の重層的な魔術的防壁と、常人ならば呼吸すらままならぬほど重厚かつ絶え間なく揺らめく濃密な魔力に満たされた、静寂と荘厳の執務領域。その中枢たる「玉座の間」にて、新たな英霊を現世へと引きずり出すための極秘儀式が執り行われようとしていた。

 幾重にも張り巡らされた魔法陣の中央に立つのは、送魂術師――レスタト=Tゲバー=エアーハーヴンである。

 彼の纏う異国風の装束が重厚な魔力の風に揺れ、手にした宝杖が暗闇の中で鈍い光を放つ。レスタトは静かに瞳を閉じ、深く息を吐き出すと、霊魂の深淵へと意識を没入させた。

 そして、その口唇から――世界の法則すら圧迫する、重厚な言霊が朗々と紡ぎ出された。

 

【滲み出す混濁の紋章 傲慢なる魂魄の器湧き上がり・否定し 痺れ・瞬き

絶絶たる眠りを掠め取る  破行する因果の脚条

絶えず自壊する生の形形(なりなり)  死の影影(かげかげ)

渦巻く怨嗟  母国に遺されし栄光の残響  千の指先  万の囁き

結合せよ 反発せよ 地に満ち 己が無力を知れ

連なる位相 静寂を喰らう生命の咆哮  破砕する記憶 灰色の天蓋

寄り集いて惑うな 紡がれし因果の鎖  沈黙の刻限 歪む世界の果て

渇望せよ 貪り尽くせ 光を撒く道 闇を纏いし手足

滅びの果てに遺されし執念

潰えぬ欲望の地平より いま来たりて立ち昇れ

刻まれし歴史の軌跡 遺されし記録の残響

囚われし英霊の檻 沸き立ち・沈み 瞬き・繋ぐ

位相の網律 絶え間なき因果の脈動

忘れ難き名を拾い 失われし記憶を束ねよ

破滅の刻は来たりて 旋律を刻む亡霊

幽世(かくりよ)の檻を解き放ち

鉄の契約 血の誓約 断ち切られし因縁の果て 渦巻く混沌に呑まれよ 

真なる座を刻み 己が存在の重みを世界に示せ

歴史の深淵に刻まれしTゲバーの位相よ

断絶せよ 還流せよ

誰かが遺した言葉を魂とし

誰かが刻んだ記録を寄る辺とし

誰かが遺した名を己が存在として

幽世の底 開かれし虚構の門扉

積層する無数の記憶と執念を従え

生を拒み 死を欺き 無の領域に己が存在を解き放て

拒絶の拒絶 天を覆う残留の濁流

灰色の因縁を手繰り 手繰りて

生と死の狭間 灰燼より集う魂の束となりて

世界の理(ことわり)を書き換えよ――

顕現せよ___

エチゴヤ=Tゲバー=ロストチャイルド!】

 

 レスタトの手にした杖が、僅かな音を立てて空を切る。

 その瞬間――何も存在しなかったはずの空間に、一筋の微かな亀裂が走った。

 音はない。だがまるで世界そのものが、不条理な存在の介入を拒絶するように悲鳴を上げて軋んだ。

 空間が歪む。壁の幾何学模様が歪む。黒大理石の床が歪む。視界そのものが、静寂な水面へ落とされた一滴の重油を中心に波打つように乱反射を起こした。

 歪んだ空間の奥から、青白い光の粒子が一つ、また一つと浮遊しながら滲み出してくる。

 それは光であり、記憶であり、怨嗟であり――そして未だ形を成さぬ「概念」の欠片であった。無数の魂の波長が青白い光芒となって現世へと具現化していく。

 詠唱の残響が広がるにつれ、粒子は爆発的に増加していった。

 数十。数百。数千。数万。やがて視界を埋め尽くす光の奔流。粒子は互いの波長を喰らい合い、爆ぜ、交ざり、巨大な質量を持つ「渦」へと変貌を遂げていく。

 その瞬間。――世界が、鳴いた。

 耳で聞く物理的な音ではない。大気を震わせる振動でもない。世界の在り方そのものが歪み、軋み、悲鳴を上げているかのような理解不能の位相差。玉座の間に居並ぶ従者たちすら、それを単なる現象として消化することはできなかった。自分たちが存在するこの空間の基盤そのものが、力任せに塗り替えられようとしているのだと、魂の深層で理解させられていた。

 空間が激しく捻れる。壁と床の境界線が一瞬だけ消失し、距離や容積といった基本的な概念すらも怪しくなった。光の奔流の奥底に、見たこともない景色の断片が浮かんでは消えていく。

 見たこともない建築様式の都市、滅びゆく古の王国、血と硝煙に塗れた戦場、廃墟、そして――そこに生まれ、欲望を抱き、倒れていった無数の者たちの執念。世界という名の巨大な記録媒体から、記憶そのものが無理やり引きずり出されているかのようであった。

 詠唱の深まりとともに、世界の拒絶反応もまた限界を迎える。

 現在という一つの結末へと向かうはずだった時空の奔流へ、本来ならば存在し得ないはずの「異物」が打ち込まれる。死者の記憶、失われた名、果たされなかった欲望。それら全てが一つの位相へと束ねられ、形を成していく。

 世界は必死に拒絶する。だが、レスタトの紡いだ言霊の絶対律が、その拒絶を力任せに押し潰す。

 いや、押し潰すのではない。世界そのものへ『この存在は最初からここにいた』という偽りの記憶を書き込んでいるのだ。存在しなかったはずの魂を。『存在した』という強固な記録だけを寄る辺として、現実へ引きずり降ろす。

 青白い光が、激しく爆ぜた。

 その中心で……巨大な何かが、ゆっくりと確かな輪郭を持ち始める。無数の記憶と因果が絡み合った、巨大な「可能性の質量」。それが世界の法則を軋ませながら、降臨する。

 光の収束点。その真正面――玉座の上には、魔導国の絶対なる支配者、アインズ・ウール・ゴウンが深々と腰掛けていた。その眼腔に宿る赤き神火が、静かに渦巻く光の中心を見つめている。傍らにはアルベドやデミウルゴスをはじめとする側近たちの鋭い視線が集まっていた。

 最後の光の粒子が収束する。

 記憶が魂へ。魂が形へ。形が肉体と質量へ。

やがて、世界の悲鳴がピタリと止んだ。世界が、ついにその存在を「現実」として承認したのだ。

 まばゆい光の残照の中から姿を現したのは――中年のふくよかな体をゆったりと揺らす、一匹の「狸の獣人」であった。

 金糸の豪華な刺繍が施された絹の羽織を思わせる、極めて上質な意匠の衣服を身に纏っている。だが、その丸みを帯びた佇まいには、数多の修羅場や死線を潜り抜けてきた熟練の商人特有の泥臭さと、底知れぬ老獪さが濃密に同居していた。

 英霊エチゴヤ=Tゲバー=ロストチャイルド。

 重々しい瞼が、ゆっくりと開かれた。

「……ほう」

 開口一番、漏れ出たのは感嘆でも恐怖でもなかった。

エチゴヤはまず己の丸い手掌を見つめ、指を握ったり開いたりして感覚を確かめる。次いで、黒大理石の壁、床の装飾、居並ぶ異形たちの圧倒的な威圧感、そして何より――室内に充満する「絶大な権力と財貨の気配」を、鼻をひくつかせて嗅ぎ取った。

「なんやなんや……ここが噂の、転移した後の世界かいな!」

「左様でございます、エチゴヤ殿」

 レスタトが粛々と杖を納め、静かに一歩前へ出る。

「ここはナザリック地下大墳墓。そして、あなた様をお呼び立てしたのは――」

「ハハッ、言わんでも分かってますかいな! 魔導国の商売を丸ごと仕切ってほしいっちゅう話やろ?」

 レスタトの言葉を軽快に遮り、エチゴヤは細い目をさらに細めてガハハと腹を揺らして笑った。

「……既にご理解を?」

「そりゃそうよ! ワシみたいな金の亡者をわざわざあの世から引っ張り出すっちゅうことは、力づくで土地奪って終わるんやなくて、金と流通で首輪かけたろかいいう魂胆やろ? ガハハ、いやぁ話が早くて助かるわ!」

 エチゴヤは手慣れた動作で懐から枚の古びた、しかし丁寧になめされた羊皮紙を取り出し、卓上へパシッと音を立てて滑らせた。

 そこには大陸西部の詳細な地図が、恐ろしいほどの正確さで描かれている。旧王国、帝国、法国、聖王国、そして無数の都市国家。エチゴヤはその地図を愛おしそうに撫で、しかし品定めをするような鋭い眼光で見つめた。

「いや〜、まいったね! 随分とまぁ、儲け甲斐のありそうな大陸やないの!」

 ヘラヘラとした笑みが深まる。だが次の瞬間、その瞳から道化の色彩が完全に消失した。そこに現れたのは、膨大な数値を一瞬で弾き出すプロフェッショナルの冷酷な眼光であった。

「……せやけどアインズはんよぉ。魔導国が欲しいのって、今ある金やらこれから大陸中で生まれてくる儲け……それだけやないんやろ?」

「……ほう。そこまで見抜くか」

 アインズは玉座の上で僅かに身を乗り出した。エチゴヤは肥えた指をどすりと地図の中央――旧王国領から各国へと繋がる街道の要衝へ置いた。

「なら話はもっと簡単やで! この大陸そのものを、もっとドカンと儲かる仕組みに丸ごと改造したったらええねん!」

(……ん? 儲かるようにする? 奪うのではなく、大陸全体の経済を食い潰すのではなく、むしろ膨らませる……ということか?)

 アインズは内心で前世の営業サラリーマン時代の知識と経験を高速回転させつつも、魔導王としての重厚な威厳を崩さず、低く重々しい声を響かせた。

「……面白い。単に魔導国の財貨を掠め取るのではなく、大陸そのものを豊かにする。その副産物として、あるいは構造として魔導国に利益が還流するということか?」

「それそれ! さすがアインズ様、話がわかるわぁ〜!」

 エチゴヤはパチンと指を鳴らし、手揉みをしながら白い歯を見せた。

「貧乏人から無理やり金を絞り取るなんてな、盗賊か三流の泥棒商人がやることなんですわ! 相手を儲けさせて、自分も儲ける。そんでもって、次はもっと儲かるようにインフラを整えてやる! これをぐるぐる回して、大陸中の金と物資が勝手に魔導国通らんと動かんようにしたったらええんですわ! 横取りするんやなくて、蛇口の元栓をこっちで握ってしまうんです!」

「ふむ……水流の元栓か」

「そうそう! そのために、まず使えるもんから使い倒させてもらいますで! アインズ様、前に『分からせて』教化させたとかいう『八本指』の連中……あいつら遊ばせておくんは、商人として血が騒ぐほど勿体ないわ! ワシの手足として、ゴリゴリに使わせてもらいますんで!」

 アインズは僅かに骨の眉根を寄せる素振りを見せた。

「八本指を……か? 彼らは犯罪組織の幹部だぞ。恐怖と服従によって抑え込んではいるが、本質は欲望に塗れた裏社会の者たちだ」

「ハハッ、人間としては救いようのないドクズですな! けどアインズ様、『金儲けの道具』として見るなら話は別ですわ!」

 エチゴヤは肥えた指を一本ずつ折り曲げて見せた。

「密輸、奴隷、麻薬、金融、商業、物流、情報! かつて王国を陰から食い物にしてた八本指の連中、こいつらは長年、表のお堅い役人やぬるま湯の商人なんかより遥かにエグい『生の実体経済』見てきてますからね! 『どこから買えば一番安いか』『どこ投げたら一番化けるか』『どの役人にいくら握らせたら落ちるか』『どの街が何に困っとるか』……これだけ裏も表も知り尽くした連中を、罪人やから言うて処分したり奴隷で使い潰すなんて、勿体なさすぎてワシが寝込んでまいますわ!」

「ならば、どう料理するつもりだ?」

「犯罪の『毒』だけ、キレイに抜き去ったったらええんです!」

 エチゴヤの細い目が、ギラリと怪しい光を放った。

「あいつらの持っとるエグい知識も人脈も、裏の物流網も市場データも全部そのまま残す! ただし今後は『全部完全な合法』でやらせますねん! 密輸ルートは正規の爆速物流網に、闇市は公認の特区市場に、裏金は正規の投資ファンドに、ヤクザ組織は巨大な商業組合に脱皮させる! 八本指そのものを……魔導国の繁栄を支える『八本の手足』に仕立て直してみせますわ!」

(うわぁ……反社組織を丸ごと買収・再編して、巨大なコンサルティング兼プライベート・エクイティファンドみたいにする気か……! エチゴヤ、恐ろしいビジネスセンスだな。前世のコンサルタントだってここまでは思いつかないぞ……!)

 アインズは内心でその極端すぎる合理性に慄きつつも、表面上は一切動揺を見せず、満足げに頷いた。

「……見事な着眼点だ。八本指の知識をナザリックの益に変えるというのならば、一切の異論はない。必要な権限を与えよう」

「おおきにアインズ様! 任せてもらいましたで! ほな、早速ガッツリ仕込みに入らせてもらいますわ」

 その日のうちに、魔導国の完全管理下におかれている旧八本指の生き残り幹部たちへ、緊急の全集結命令が下された。

 集められたのは、ナザリックの圧倒的な恐怖と絶対的な服従を骨の髄まで叩き込まれた者たちである。かつて王国の裏社会を牛耳り、人の命を金貨数枚で売り買いしていた者たちが、今は全員、薄暗い執務室で身を縮こませ、寒さに震える雀のように身を寄せ合っていた。

(次は何だ……? 再びあの恐怖の虫部屋に送られるのか? それとも誰かが逆鱗に触れる行いでもやらかしたのか……? ただ、慎ましやかに正しく生きるというだけの事がなぜできないのだ。王都の滅びから救ってやった忠実な者とその家族だったはずなのに選別を誤った愚か者は誰だ! いや待て、この場には幼子などは召集されてない、実務経験のある者が呼ばれたのであれば何かしらの任務を与えられる可能性もあるのでは?)

 七人の幹部たちの葛藤と絶望的な沈黙が支配する室内。

 重い扉が開き、姿を現したのはナザリックの異形の悪魔でも、美しくも冷酷な戦闘メイドでもなかった。仕立ての良い衣服を着た、肥満体の狸の獣人――エチゴヤであった。

「はいはいハーイ! 皆さん、なにそんな辛気臭いツラしとんですかいな! 今日からあんたらの上司になるエチゴヤですわ! まぁ肩の力抜いて、仲良くやりましょや〜!」

 朗らかな関西弁。しかし、その親しみやすい口調とは裏腹に、エチゴヤの目の奥に宿る光はナザリックの悪魔たちとはまた異なる冷たさを秘めていた。

 それは、「人間を感情や尊厳を持つ存在としてではなく、単なる数字、流通の単位、利回りとしてしか評価しない」冷徹な絶対合理主義者の目であった。幹部たちは直感的に悟った。この男を怒らせたら、肉体的な拷問以上の「精神と存在の破滅」が待っていると。彼らは一瞬で背筋を伸ばし、直立不動となった。

「おっ、ええ返事や! 話が早くて助かるわぁ!」

 エチゴヤは机の上に、八本指が過去数十年にわたって蓄積してきた極秘資料の山をどさりと置いた。

「自分らが血反吐吐いて溜め込んできたこのデータ……いや〜、実に見事なもんやで! 表の役人や生ぬるい商人には逆立ちしても真似できん『生の経済データ』や! 密輸に使ってた獣道、地方代官に握らせてた賄賂の相場、地下金庫の場所、闇金の顧客リスト……これ全部、明日から『魔導国の合法インフラ』として使わせてもらうで!」

 幹部の一人、かつて金融部門を仕切っていた男が恐る恐る挙手し、声を振るわせた。

「は、合法……ですか? 我々の人脈やルートは、法の手が届かない非合法だからこそ利益率が高かったのです。それを表に出せば、関税や規制で利益が飛んでしまいます……」

「アホ言いなや自分!」

 エチゴヤは鼻で笑い、ペロリと舌を出した。

「非合法やから警察やら兵隊にビクビク怯えて、余計な警備費やら隠蔽工作の金がかかってたんやろ? 捕まるリスクがあるから利益上乗せせざるを得んかっただけや! これからは魔導国のバック……つまり絶対的な武力と完璧な法律が後ろにつくんやぞ? 盗賊に怯える必要もなければ、関税誤魔化すために下品な代官の顔色窺う必要もない! 堂々と表の大街道を通って、堂々と適正価格で大量に仕入れて売りさばけばええねん! 商売の回転数が桁違いになるんやから、粗利が下がったって手元に残る純利益は何倍にもなるわ!」

 幹部たちは目から鱗が落ちる思いであった。

「よし、ほな具体的に各自の担当発表するで! メモの用意はええな?」

 エチゴヤは八本指の各部門へ、容赦のないスピードで具体的な再編命令を叩きつけていった。

「まずは『密輸部門』! 自分らは明日から『魔導国公認・特殊物流調査隊』や! 王国が潰れて途絶えた僻地やら危険地帯への輸送ルートを繋ぎ直して、アインズ様が貸してくれるアンデッド輸送隊の運行スケジュール組みなはれ! 今まで袖の下渡してた悪徳役人は、過去の汚職記録ぜ〜んぶ洗い出してリスト提出! 法律で裁かせるか、その知識を生かして復興事業への労務奉仕を命じるか、きっちり使い倒したるからな!」

「次に『奴隷部門』! 人材の確保と管理はお手の物やな! これからは人を売り買いするんやなくて、適性見極めて配置するプロになってもらうで! 明日からは『人材配置・職業安定課』として、復興作業に入る人間やら亜人の適材適所、安全な労働環境の維持、給与管理をやってもらいます! 搾取して使い潰すのは三流! 元気に働かせて長くガッツリ納税させるのが一流のやり方や!」

「『金融部門』! 闇金の法外な高金利で絞り上げるのは今日限りで禁止! 代わりに、魔導国のドデカい資本を背景にした『超低金利・長期返済の復興事業融資』を旧王国の小事業者に持ち込みなはれ! 金貸して担保奪って潰すんやないで? 金貸して事業大きくさせて、自立して稼げるようになるまで支えるんや! ほんで成長した後も、魔導国の銀行から離れられへんようになる超便利な仕組み作ったるねん!」

「『警護・武力』『暗殺』『窃盗』は真っ当にやる以上閉鎖や! ほんで『薬物部門』! 麻薬・毒物栽培は即刻全面禁止! 代わりにその設備と植物知識を全部使って、魔導国公認の『総合製薬・医療支援部』に鞍替えしてもらうで! 人を廃人にして使い潰す薬やなくて、魔導国製の独自の治癒ポーションの素材収集と製薬の補佐、品質保持を引き受けて、いずれ開院する医療施設の人員を育成するんや!」

「最後に『情報部門』! 弱み握って脅すための興信所は終わり! 明日からは『市場動向・価格調査アナリスト』として、どの街で何が足りてなくて何が余っとるか、物価の動きを毎日正確に記録してワシに提出すること!」

 八本指の幹部たちは、自分たちがこれまで培ってきた「闇の犯罪ノウハウ」が、そのまま鏡をひっくり返すように「超効率的な近代商業システム」へと変換されていくプロセスに、寒気と同時に猛烈な興奮を覚えていた。

「逃げ出す奴には、ナザリックの皆様による死以上の絶望をプレゼントしたる。けどな、真面目に結果出した奴には、相応のご褒美と安全を保証したるわ! アインズ様の御名においてな!」

 エチゴヤが笑顔で締めくくると、八本指の面々は一斉に床に平伏し、二度と裏切ることのできない誓いを立てたのだった。

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