裏路地の奥の奥、地面すら真っ黒に染まった場所の真ん中に位置する二階建ての建物
【
『クックック…依頼主が来る気配、全く無いですねえ。』
まあ、依頼が舞い込むはずもなく、暇な毎日を過ごす大人が居るだけだった。
『ここからハナ協会に行くのにも遠いですし、能力を公に使ってしまっては調律者案件になってしまうかもしれません。』
『今の内にでも自分の力について、再確認をしときましょうか。』
『【恐怖】。前世で使えなかった力、何故この力を持っているかは分かりませんが、何故か扱い方が分かるのが怖いですねえ。』
手に纏った【恐怖】はスライムのように形を変えることが出来る、ちょっと楽しい。
『【神秘】。何故扱えるかは分かりませんが、これで本当に【色彩】に対抗出来るのでしょうか。この世界では試しようが無いので分かりませんが。』
右手に恐怖、左手に神秘を纏う。恐怖はドス黒いのに対し、神秘は月光の光を放っていた。
『月光といえば、某狩人がよぎりますねえ、ホワイ、ホワイだったでしょうか…なんか違う気がしますね。』
ふと、考えつく
『両手にそれぞれ纏った状態で接触させてみたらどうなるのでしょう?』
いつものポーズのように肘をつき、手のひらを合わせ、指を絡める
その時、力が抜き取られるような感覚がする。
『!?これは、、、』
組んだ手に力が集まり、手のひらから一筋の光が漏れ出す。
ピュン
音と釣り合わない光の奔流、言わば、ガンダムの粒子砲、マスタースパーク、彗星アズール、スパラグモス。
触れた窓ガラスは蒸発し、気泡が出ている。
『おやおや、おやおやおや、おやおやおやおや』(混乱)
『ふ、封印しましょうか、明日、調律者が来ないことを祈るだけですね。』
『なんだか、ここにずっと居るのも駄目な気がしてきました、外に出て、依頼でも受けに行きましょう。』
「〇〇さん、指令です。」
「あ〜はいはい、、、、、【〇〇へ、力の奔流を見なさい、期限はこの依頼を受け取った5分以内に】って、どういうことだよ!」
「さあ、私は指令を届けるだけですから」
「だから、一緒にかん ピュン がええええ?」
その時、男と指令の間には一筋の光が通り、目の前にポッカリと穴が開く、少しでもズレていたら目の前の地面のようにドロドロになっていただろう。
「し、指令。達成です、、、、、」
『依頼といっても、まだ9級フィクサーですから、戦闘系があっても肉壁として使われるのがオチでしょう。』
『今回は契約の同行に関する依頼、契約なら詳しいので騙されそうになっていたら助け舟出しましょうか、クックック』
『…ちょっと勉強していきましょう。』
「ち、ちゃんと守ってくれるんだろうな!」
『クックック…駄目だったら私がハナ協会に吊し上げられるだけですから。』
今回の依頼者は工房関係者、今までライバルだった工房との取引をして合併するのだとか。
しかも、合併の話は向こうからしてきたらしい、何かきな臭いということで依頼を出したという事だ。
「頼む、、、この工房は俺の夢だ。俺がミスって持ってかれたら悔やんでも悔やみきれねえ。」
そう言って頭を下げる依頼主、世代交代を控えた契約。それの重圧は計り知れない。
『全力でサポートしますよ、安心してください。』
話をしていたら場所まで着いた。
まずは歩く時の振動に【恐怖】を混ぜ、辺りを索敵する。
部屋の中には3人。真ん中に座っているのは相手の代表だろう。だが、他の2人は違う。
『…少し、警戒していきましょう。』
「わ、分かった。」
ガチャ
「遅えじゃねえかジジイ、、、、じゃねえ?」
部屋の中に入るとヤクザのような男が足を机の上に置きながら座っていた。
(やっぱりこいつが代表か)
「あっはっはっは、こりゃあ傑作だ!怖くなってフィクサーを雇いやがったな!」
「はあ、まあいいや、ジジイ!後ろに居るだろ、でてこい、契約するんだろ?」
「痛い目にあいたくなければさっさと椅子に座れ!後、フィクサーのテメエは立ってろ」
依頼人が座っても男は机の上の足をどかさないまま契約は進んだ。
「ジジイ、そろそろ署名してくれるか?」
「まだだ、もう少し、もう少し待ってくれ。」
工房の合併、夢を次に活かすために、受け継がせるために。そんな考えを持っていた私のペンを持つ手は重かった。
「ジジイ、そろそろ限界だぞ。」
いけ好かないやつだ、今まで散々嫌がらせをしてきて、今更仲良くしましょうなんて。
「はーやーくしろよ!」アシドン
もう、書いてしまおうか、あいつの後ろにいる奴らは多分、フィクサーでもあいつの工房の職員でもない、仕組まれていたんだ全部。
震える手を抑え、契約書に書こうとしたその時。
『止めましょう、依頼人。これは罠です。』
雇ったフィクサーに手を止められた
「何してんだよ!もう書く寸前だっただろうが!」
『この契約書、勝手ながら読ませていただきました、これ、協会から発行している契約書じゃありませんね。』
(読んでみても契約書に怪しい点は無かった、小さい字も隠し文字も一切ない。)
「は?それは正真正銘、トレス協会から発行されたもんだ。嘘つくんじゃねえ!」
『ここです、協会のマークを使った書類偽装は禁止されているのは貴方でも分かりますよね。』
「そ、それくらいは知ってる!」
『よく見ると、この契約書のマーク。微妙に違っているのですよ、依頼人、比べてみてください。』
「ホントだ!よ、よく見ると、微妙に違う!どういうことだ!?」
そう言って男を詰める
「は?ははは、もういい!お前ら!フィクサー共々殺せ!!」
そう言うと、後ろにいた屈強な男たちが隠し持っていた武器を持ってジリジリと歩いてくる
「おめえらのボスに契約書のことは後で話に行くかr ザシュ
男の頭が飛ぶ。
「まあいい。こいつの工房はあんまり期待していなかった。」
『そういうことですか。』
おそらく、男も利用されていたのだろう。あんな無茶苦茶な契約書、協会フィクサーも同行せずに契約するものじゃない。
「ど、どういうことだ!なぜ殺した!」
『依頼人、私の憶測ですが、あの男も騙されていたようです。』
『離れないで後ろにいてください。』
「めんどくさくなったな、殺すか。」
「知ったからには生かしちゃおけねえな!」
戦闘開始。
1人が斧を振り回し、もう1人が剣を振る、挟み撃ちだ。
『【恐怖付与】』
あのレーザーを撃った時に無意識にしていた手に薄く力を纏わせる方法。付与系であり、身体能力を上げるバフのようなものだ。
バフがかかったことにより素早くなった体、攻撃をしゃがんで下に避け、剣士の方を攻撃する。
「グッ」
腹にクリーンヒット、みぞおち辺りを殴ったからか気絶し、倒れ込んでしまった。
「コノヤロッ、死ね!」
その隙に斧持ちが縦斬りをしてくる。
『ここです!』
肘から力を放出するイメージで加速し、斧の横を殴る。
恐怖+速度+拳。元々研究者だった自分でもそれなりの攻撃力を誇る
斧は形を凹ませそのまま遠心力で相手の後頭部に当たった。
「す、すげえなあんた。」
『戦闘は不慣れですので、、、、、さ、帰りましょう、相手を回収してハナ協会に伝えなくては。』
「ああ」チラッ
『相手の方が気になりますか?』
「いんや、あいつはいっつも嫌がらせばかりしてきて、厄介だった、工房ごと無くなってしまえばよかったのによ。」
『それなら、今回使われた契約書も回収しますか。』
ハナ協会とトレス協会に報告した帰り道
「いやーあんがとな。あのまま騙されてたらひどい目に合わされてたよ。」
『いえいえ、私は依頼を遂行しただけなので。』
「なあ、名前教えてくれねえか?命の恩人にアンタじゃまずい。」
『…私の名前はクロード、と申します。【黒服】とも呼ばれていました。』
「…じゃあ、黒服。何かしっくり来るからな。」
『クックック…では、さようなら。』
「いつか工房に来いよ。サービスしてやる、孫にも伝えてやるよ。」
『楽しみですねえ。』
ワープして家に帰る
ガチャ
「黒服、まだ飯できてないのかい?」
『イオリさん、仕事が終わって、家に帰っていきなりご飯をたかられる気持ちが分かりますか?』ズズズズ
『大人しく家に帰ってください。』ワープホールポイッ
またしても部屋の中に入ってきているイオリを飛ばし、椅子に座る。
弱者は食い物されることは今回の依頼でよく分かった、契約時における詐欺。以前の自分がしてきたからか虫唾が走る。
力を使わなければ戦うことすらも怪しい自分が出来ることがあるのか。
そんな事を考えている内に意識が落ちてくる。何処かで悲鳴の幻聴を聞きながら。
感想、評価くれると喜びます!
依頼人…ジジイ言われるとキレる、内心ぶち殺してやろうかなと思ってたり
男…違法なルートで手に入れた契約書を使ったが最終的に裏切られた
男の工房…違法な取引してたことがバレて取り壊し
黒服…不当な契約で自己嫌悪が少し湧いた、前衛が出来るバファッカー
紫…飯美味しい