透き通ってない都市にて黒服憑依   作:駄文量産機

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弱者は安全を求める

 

 特許戦争の下準備のためにバラ撒いた契約書だがあれは〈契約〉を〈約束〉にして契約内容の出来る範囲と破った場合のペナルティを落としたものである

契約書を使い安全を確保しただけの使い方をしただけでは足止め程度にしかならないのだ

大体の期限は3日、それを超えれば契約書の保護を失ってしまいまた怯える日々に逆戻りである

さて、特許戦争に焦っているのは契約者だけではない、相手もそうだ。そんな中に契約を結ばれ三日ほど何も出来ない状況に陥ればどうなるだろう。

 

そう、次の契約書を使われて期限が引き伸ばされることを何が何でも阻止しようとする、そして使った方は新しい契約書を入手しようと必死になる。

一足早い戦争の幕開けだ

この抗争を乗り越えられるものは元から戦力をある程度持っているか契約書を何枚も使って特許戦争まで持ちこたえた組織だけである

どんどんと流通する契約書を減らし、奪い合い、死が闘争を引き立て、強者と強者の皮を被った弱者が生き残る

 

段々と約束だけじゃ安心できなくなり、より良いものを求める

〈約束〉じゃ確約出来ないモノが〈契約〉によって確約できるものだとしたら?その契約ができるのが悪魔だけだとしたら?

契約できずに自ら針山に落ちるか、契約して悪魔に魂を売るかの二択である。

 


「所長、前に契約書を奪った工房が潰れました」

「、、、、そうか、契約書の残りは?」

「1枚です」

「残りの日数は?」

「1日です」

「周りのまだ契約書を持っている組織は?」

「、、、、、、もうありません」

「も、もう止めましょう所長!これ以上先延ばしにしても周りに敵を作るだけです」

「だまれ!きっとすぐに特許戦争が始まる、それまでの辛抱だ!」

「でも、もう契約書の残りも少ないじゃないですか!奴らもそのことを感じ始めたのか周りにうろつき始めました。もう限界です」

「もう少し、もう少しの辛抱だ!」

「もう少しもう少しってずっと言ってるじゃないですか」

「黙ってろ!お前は早く他の契約書を取りに行って来い!」

「、、、、、、、」

「な、何をしているんだ?武器を構えて何をっ」


2週間もすれば問題が発生した

今までと違うフィクサー、ハナ協会がこの抗争に介入して来そうなのだ

これは予想外である、特許戦争が近い中で来るとは思っていなかったから準備をしていない

偽名と顔を使ってフィクサーとして登録しているがもし関係性があるとバレた時はまずいので一旦状況を整理するために契約書の供給を止めて様子を見守る

 


《ハナ協会南部 会議室》

「今回の依頼内容は、最近都市伝説として認識された〈黒の契約書〉が関わったとされる工房、仕立て屋の監視です」

「現在、目標地域では《黒の契約書》によって多くの工房、仕立て屋が一時的な保護下に置かれている状況であり、それを好ましく思わないものや契約期間の延長を望む者、新たに保護下に入りたい者の三つ巴の抗争が始まり、このままでは巣にまで影響が出る可能性があるため監視という形です」

「そろそろ特許戦争の時期になるため、こちらからの余計な刺激を与えるのは危険と判断したため大きな介入が出来ません」

「そこでだ、今回の依頼の最終目標は未使用の〈黒の契約書〉の入手となっている」

「部長、契約書の具体的な内容はどうなのですか?」

「内容は使用者によって違い、その多くは契約違反の罰も弱く、期限が3日と決まっていてな」

「そのため対立する組織間での抗争が激化し、契約書の奪い合いも多発、他のフィクサーが巻き込まれた事案がある」

「〈黒の契約書〉の入手が目的だが、実際には未使用の物を入手する形となるため、契約書を取り合うこの抗争に混ざる形での作戦だ」

「では作戦開始!」

 

 


さて、そこら中にハナ協会のフィクサーと思われる奴らがうろつき始めた

今はクロードとしてあたりを偵察しているのだがバレバレである

「そこのフィクサー!ちょっといいか?」

武器を持っていてスーツ姿となればフィクサーとわかってもらえるのはありがたい

 

『どうしましたか?』

「最近このあたりで黒い契約書を見かけなかったか?」

『いえ、このあたり()()見ていません』

 

「そうか、もし見つけたのならそこらの奴らに渡さずにハナ協会南部に持ってきてほしい、渡したものは正当な報酬を出す。覚えていてくれ」

 

そう言ってフィクサーは行ってしまった

 

『クックック、協会も大変ですね。まあ、その原因が私なのですが』

『さて、そろそろ本業に入りますか』

 

アタッシュケースからいくつかの契約書を取り出し、隠すように配置する

あとは火種を作るだけである


 

路地裏から複数の戦闘音が聞こえてくる

この都市に生きているものならいつものことだがこの場所では意味合いが違う

互いが互いに牽制しあい、表面張力で張った泥水のような状態だったが、それは新たな契約書がまだ発見されていないからこその一時的休戦、平和とは言えない戦争準備期間

そんな中、路地裏の一帯に響き合う戦闘音、均衡を崩すのには十分な火種であった。

 

一瞬にしてその一帯は戦争となった

小汚い街路は血で乾くことなく真っ赤に染まり、何人分かの肉塊が固まって山になっている

飲食店の看板が壊され、遠くで人の体を貫いている、看板には《肉食べ放題!》と書かれていた、これを武器に使ったものは趣味が悪いようだ

工房が襲撃され、決死の抵抗も虚しく殺され、バラバラにされて捨てられている遺体を誰かが漁って食していた

特許戦争に参加しない工房や会社が職員の血でリフォームされ、勝者が満足そうにそこで眠っている

 

そうしていると徒党を組んで悪戯に()()をする奴らが現れた。

巻き込まれたフィクサーと数少ない工房が必死になって集めた契約書まで使って結託し、敵から奪い取れば良いと契約を加速させる

抗争は続き、最終的には最初の戦闘音のことすら忘れ、路地裏一帯の技術を奪い合う戦争に発展した

後に《契約抗争》と呼ばれる、裏路地に大規模な被害を生んだ最悪の戦争として協会の歴史に刻むこととなることを黒服は知らない。

 

『おやおや、生き残りですか、大変でしたねえ』

『ですが、本当に運が良い。力を貸していただけませんか?』

 

力無き者たちはその紙に縋り、惑い、破滅の道を結果と死体で作り続けた。

いつしかその上を通る自分達を夢見ながら

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