こんにちは実力主義の学園 作:恋キング
突然だが、今からオレが出す問いについて真剣に考えてみて欲しい。
問い・人間は平等であるか否か。
答え・お前は「平等でない」って答えてほしいだけだろ。
人間とは考える葦であるとは誰が言った言葉であるか、そんなものは特に覚えてもいない。だけど、いつも思うのだ。
みんな、みんな悩みすぎだろう。
別に平等だの不平等だの考えるのは勝手だし自由だが、そんなものを考えられるほどの行動を本当にしてから動いた人間などほとんど見たことがない。
こんな質問をするやつに限って、自分の能力の低さを、運だの環境だのに押し付けて、答えのない質問を悩み続けるのだ。
言わせてもらうなら、この世の殆どの悩みは時間が解決してくれるし、殆どの不条理は自業自得であることのほうが多いのだから、飯食べれて、風呂入って寝れるだけの時間があるなら、とっとと済ませて、筋トレや趣味にでも打ち込んだほうがよほど幸せになれるだろう。
そんな風に思っていたウチは、この春、綾小路と出会った。
この物語は、他人のことが駒にしか見えない系男子綾小路と、あーもう可愛いなぁと甘やかしてしまう系男子であるウチとの、仲良しウキウキ学園生活である。
1
東京都高度育成高等学校、という高校がある。
実力主義を教育方針にしており、なんと進学率、就職率ともにほぼ100%を誇る国立の名門校である本校は、全寮制となっており、入学後は卒業するまで外部との連絡が一切取れないということで、いろんな意味で有名である。
そんな高校に、無事に受かったウチは、座れなくて困ってるお婆ちゃんに席をゆずり、揺れるバスで立ちながら入学前の抑えきれない感情に身を震わせていた。
「君、優しいんだね」
ぽわぽわしてそうな、茶髪で目のはっきりした女の子に話しかけられてしまった。かわいい。でも、急に話しかけてくるってすげぇなと思いつつ、声を抑えるようにして会話を試みることにした。
「ありがと、同じ学校の人だよね?高育」
「うん!私は櫛田桔梗、今年からの入学なんだけどあなたも?」
「はは、バス乗ってる時点でみんな新入生だよ」
「ウチはヒナタ、夢宮ヒナタだよ」
そうやって、他愛のない会話をしているうちにバスは目的地につき、ウチらは門をくぐるのである。
「ヒナタくんは、将来の夢とかある?」
「んじゃ、櫛田さんのダーリンにでもなろうかな」
「あはは、考えておくね」
新生活が始まる上で、最初に行うことはある程度学年でのヒエラルキーを握ることから始まる。集団生活を送る上では、リーダー格となる人間はオーラが違うとよく言うものだが、さっきお婆ちゃんに席を譲ったことを見られ、そして声をかけてきたということは、櫛田さんはおそらく、この人間とは仲良くしたほうがいい。と認識したのであろうことが容易に想像できる。
だからこその牽制だ。
人は録に知りもしない人間から好意を向けられていることに気がついたとき、恐怖を覚える。ようは、利用するために近づこうとする人間に限って、自分の立場が脅かされることを恐れるので、ナンパをしたのだ。
するとこの子は、言われなれていると言った態度で笑ってみせた。
つまり、他人に依存せずともヒエラルキーの上位にいられる人材であるにも関わらず、他人に探りを入れる用心深い人間であることが、容易に伺えるのである。
「櫛田さん、面倒くさい前提はなしで、仲良くしよか」
「いいの?ヒナタくんって頭いいんだね」
「んじゃ、ウチもキーちゃんって呼んでいい?」
「あはは、ありがとね。うん、キーちゃんは初めてかなぁ」
「まあ、もしこの後に必要なら本当に考えといてね」
「その時はよろしくね、ダーリンさん?」
こうして、入学前ではあるものの、新生活でのマイフレンド兼ハニー(仮)が早速できたのである。
2
誰かが言った。入学式とは戦場である。
1年生は4クラスあり、各クラスの様子はハニーことキーちゃんと一緒にチラリと覗き込んだところ、それぞれ
Aクラス なんかメガネかけてるやつの比率が多い
Bクラス 笑顔で談笑してるやつが多い
Cクラス 素行が悪そうなやつが多い
Dクラス 机に座ってるやつまでいる
となっており、おそらく成績か何かで分けられていることまではわかったが、それだと、ウチやキーちゃんがDクラスなのは少し疑問が残るが、それは後で作戦会議のときにでもとお互いはぐらかした
「ウチは男子から回るからキーちゃんは女の子ね」
「そして後で合流だね、了解」
特に互いに説明をしなくとも、集団でのカーストを握ることが最初の目的であると理解しているためか、ウチとキーちゃんは行動に移す。
行動力を考えると、おそらくサッカー部であろう細身の彼と早めにコンタクトを取ることも大事ではある。だが、それよりも、教室の真ん中で机に足を載せている彼に先に挨拶が必要であると感じたのだ。
「はじめまして、私の名前は夢宮ヒナタと申します。不躾ではありますが、3年間を共にする身として、ご挨拶させていだきます。」
「おや、いい心がけと目をしてるね夢宮ボーイ。私は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子だ。」
「いえいえ、私などではお力になれるかはわかりませんが、今後ともよろしくお願いします。」
「礼儀がいいことに越したことはないが謙遜はよくないよ、夢宮ボーイ。」
まあ、当然である。服の上からでもわかる筋肉や頭髪料でわかる髪質、隠しきれない自尊心。富裕層が学歴だけでも泊がつくようにと、入学させたであろう彼には、卒業後の事も考えると名前を覚えてもらうことが最優先なのだ。
そして、満を持して、細身の彼とその一行に話しかける。
「はじめまして、ウチは夢宮ヒナタよろしくね」
「あぁ、はじめまして僕は平田洋介。」
「俺はーー」
何人かで既に出来上がっているコミュニティに入るのは通常であれば難しい。だが、入学式等のシーズン切り替えの時期であるならば。必ずしもそうではない。
数分間の差程度では壁にすらなりえないのだ。
平田くんやその一行と、ある程度仲良くしていると、ふと視線を感じる。その方向に目を向けると、子犬のような視線とぶつかる。
その日、ウチは運命と出会った。
気付かれない程度に集団から抜けたウチは、震えるような目でこちらに視線を向けるその一匹の子犬に話しかける。
「はじめまして」
打算に包まれた学園生活と思われていたうちの人生は。このときから歯車が狂ったのだが、それを知るものは、まだ誰もいないのである。